世にも不思議な転生者 作:末吉
なのはに連行されてヘリに乗ることになった俺。正直転移すればあっという間に目的地に着けるのだが、まぁそれをやって先に終わらせたらこいつらの成果が分からないのでいいか。
ぶっちゃけなのはやフェイト(遅れて)が来るし、雄樹もいるのだから俺はいらないだろうと思うのだが、なのはが教官なので逆らえない。
下っ端はこれが辛いんだよな…と思いながらヘリに揺られていると、緊張しているらしい四人の姿が。
それを見たなのはが俺を見てきたのが分かったので、ため息をついてつぶやいた。
「固くなるなよお前ら」
『!!』
聞こえたのか更に身を固くする四人。
逆効果だったかと思いながらも、口は滑らかに動いていく。
「初めてで緊張するなら、そりゃ当たり前だ。誰だってそうなる。だが、お前らはちゃんと準備出来ているんだから大丈夫だろ。なのは教導官なんて最初はぶっつけ本番だぞ?」
「え、な、なんで知ってるの!?」
「神様に聞いた。というか、ユーノを連れてきた時に何かしら巻き込まれたんだなと思った」
「ひょっとして、その時から知ってたの?」
「興味がなかったから聞くことはなかったが、不思議生物――今になればユーノだと分かった――が脳に直接語りかけてきたのを聞いた次の日にユーノを連れて来て推測した」
「だったら手伝ってくれたってよかったかも」
「今ならともかく昔なんて空気だった俺だぞ? しかも接点なんてほとんどなかっただろ」
「……そういえばそうだったね」
当時を思い返したのか苦笑しながら答えるなのは。
それを聞いた四人は驚いており、スバルが恐る恐ると言った感じで訊ねてきた。
「あの……大智さんってジュエルシード事件から解決していましたよね? 興味がなかったのならどうしてやったんですか?」
「ん? ああ……ジュエルシードを一個拾ったから巻き込まれたって感じだ。なし崩し的に最後の方関わったが、所詮最後の方だけだ」
「え、そうなんですか?」
「そうなんだよ。まぁそのおかげで大智君と仲良くなれたけど」
『もうすぐ着きます!』
通信から連絡が入る。それを聞いたスバルたちの顔は再び緊張する。
それを見て、今まで黙っていた雄樹が言った。
「僕達もいるから失敗を恐れなくていいよ。君達は君達が培った技術で戦えばいいよ」
……。
「お前が偉そうに言えるか? いや大丈夫だったな」
「あ、大智にそう言ってもらえるなんてなんか照れるね」
「私はどうかな?」
「微妙」
「そんな……」
『ハッチ開けますよ!』
操縦者からそんな通信が入りハッチが開く。
それを見た俺はナイトメアに「魔力解放Fランク」と指示する。
『了解しました!』
「先行くぞ」
「え、ちょっと!」
「頑張れお前達」
とりあえずエールを送り、俺はハッチから飛び降りた。
*斉藤雄樹視点
僕達は大智があっさりとハッチから飛び降りて姿を消したことにそれほど衝撃を受けなかったけど、付き合いの短い彼女達は驚いて僕達に寄って来た。
「え、大丈夫なんですか!?」
「ん? ああ大丈夫。大智の実力は魔力あるなしじゃあまり変わらないから」
ティアナさんの質問に僕はそう答えた後、なのはさんに「そろそろ僕達も行こうか」と提案する。
「うんそうだね。みんな、準備して」
『は、はいっ!』
そう言ってから自分で先に降りてしまったので、僕は苦笑しながら「じゃ、君達には列車の方を任せるよ」と言って自分も降りることに。
そしてバリアジャケットを展開して宙に浮き、僕達は大智がいるという場所に向かった。
んだけど……。
「あのさ、フェイトちゃん」
「……何かな、なのは」
「大智君だけでどうにかなるってわかってたけど、まさか自分で攻撃せずに相討ちで減らすって……」
「あそこまでの身のこなしはまだできなさそうだ」
大智が囮の様に動いて宙を移動しているガジェット達の動きを誘導して相討ちさせているんだから。
もう固まるしかない僕達だけど、数が半数以下になったらしい大智は急に動きを止めて僕達の方を見た。
えーっと……。
「こっち見たよね」
「そうだね」
「なんか嫌な予感しかしないね……」
僕が不意に呟いた言葉。それが現実になった。
大智が一瞬で僕達のところに来て、「あとは任せた」と呟いて一瞬で消えた。
残されたガジェット達は僕達を自然とターゲットに。
……ですよねー。
襲いかかってくるガジェット達に恐怖心はなかったけど、大智に文句を言いたくなりながら剣を構えた。
*
『押し付けてよかったんですか?』
「残り十機だろ。五秒で全滅できる」
『マスター基準ですよね』
「別に。あの程度ならカートリッジすら使わずに倒せるだろ」
そんなことを言いながら俺は列車の後を気配を消して追いかけていた。
ぶっちゃけ並走している形。だからエリオたちが苦戦しているのも見えているし、気配でスバルたちが善戦しているのも把握している。
レリック自体はスバルたちの方が近いのでそのまま取りに行かせるつもりなので並走する意味はないと思われるだろうが、エリオたちが苦戦している様子を観察しないとどうしようもない。
あの二人が一番若いというのもあるが、苦戦している理由を見ておきたい。
そんな訳で開放してある魔力全て使ってエリオたちの方に移動した俺は、飛び降りるルシエとフリード、そして少し大きなガジェットを目撃し別にいいかと離れることに。
かわいい子には旅をさせろという訳ではないが、力に怯えてばかりではなくその力の振るい方を決めるにはいい場面だと判断したから。
なので、そんな邪魔をしようとする奴を排除するために、俺は崖の上にある嫌な気配に近づいた。
「魔力解放Aランク」
『了解しました』
気配も魔力もあらわして崖に降り立った俺は周囲を探るように見渡す。
気配は未だ近くに存在する。それだけしかわからない気配を。
と、そんな時だ。
『マスター! 正面から高エネルギー反応!! 十秒で直撃します!』
「何!?」
ナイトメアが感知した攻撃がすぐ目の前に来たので、反射的に崖から飛び降りて避ける。
ブオン! と暴力的な音をさせて直線状に伸びたそれは数秒で消える。
崖に立っている俺は正体を知ろうと足に力を込めた時――崖からそいつが飛び降りてきた。
太陽が背になっているせいでシルエットでしかわからない。分からないが――俺は本能的に地面を蹴って迎え撃った。
「うらぁ!!」
魔力で身体の保護をした上に拳の威力を高めて殴りかかる。速度が上乗せされた威力は崖崩れを容易に起こせるものだろうが、そいつはくるりと一回転したと思ったら踵落としで俺の拳に合わせた。
するとどうなるか。答えは単純。
俺が全部を合わせた速度で地面に叩きつけられる。
ドゴォォン! とレールが敷かれた部分に直撃し壊れるが、俺は無傷。
衝撃が強かったなと思いながら起き上ろうとしたところに先程のレーザーみたいなのが飛んできたので転がって回避。
その途中で体勢を戻したところ、声が聞こえた。
「随分弱くなったんじゃないか、おい」
砂煙の中で聞こえるその声の正体を悟った俺は、舌打ちをしてから返した。
「テメェが敵側かよ、
その言葉を聞いたそいつは、砂煙が晴れて姿が現れた時に「まぁな」と返事をした。
「だってその方が多く戦えるだろ? ぶっちゃけ俺神話じゃ敵だし」
嫌な感じだと思いながらも両手にライフルを一丁ずつ出現させて警戒すると、「お、いいね。ま、原作通りになったらしいからやる必要ないらしいけど、そんなのお構いなしでやろう。俺はお前と闘うために敵になった」と言って爬虫類特有の舌を出す。
見た目少年であるために若干気味の悪さを感じる奴もいるだろうが俺に関係はない。
この場でこいつを消さなければ後が大変である。そう直感した俺は余裕そうな八岐大蛇に対し二丁のライフルを構えてぶっ放した。
反動で俺は後ろに下がり、それを利用してライフルからナイフに切り替えて投げる。
爆発して砂煙が発生した中にナイフが飛んで行ったがすぐに弾かれた音が聞こえたため、俺は地面に足をつけて逆に距離を詰める。
「お、いいね」
一歩で近づいたところそんな言葉を笑顔で呟く大蛇。
俺はその勢いのまま殴り掛かろうとしたところ、
時間を止められたわけじゃなく、行動自体を固定された感じ。まるで何かの命令によって。
俺のそんな姿を見た八岐大蛇は目をぱちくりさせてから上を向いて「ふざけてんじゃねぇぞ!」と不機嫌そうに叫ぶ。
が、返事はない。
それがあちら側でどう伝わったのか大蛇は盛大に舌打ちして「またな。今度は邪魔されないことを祈ろうぜ」と俺に耳打ちして消えた。
それと同時に俺の止まっていた動きは再開し、全力で空を切った大振りのジャブを繰り出した。
それが止められたことに悔しさを覚えながら、どんな神様がやればこんなことが可能なのかをその場で立ったまま考えていた。
* ――視点
「ったく。テメェのせいで折角の勝負が一つ消えたじゃねぇかマキナ」
「原作にない行動は僕の意義に反する。それだけ」
「知るかよ」
不機嫌な少年の姿をした八岐大蛇は、入り口で体育座りをしている少女――マキナに対し盛大にため息をついてから聞いた。
「で?
「新入り。その紹介」
「物好きな奴がいるんだな」
「
「…へぇ」
マキナの言葉に反応して八岐大蛇は舌なめずりをする。それを見たマキナは顔を空に向けて言った。
「こちら側だから」
「戦うのはナシってか。ま、別にいいけどよ。俺を満足させるのは大智だけだしな」
「へぇ。この世界に長嶋大智がいるってのは本当なのかい」
八岐大蛇が入ろうとしていた建物側から聞こえた女の声。それを聞いた彼は眉をひそめた。
「死んだわけでもないのにどうしてこの世界に来てる?」
「雇い主がこの世界に飛ばしてくれたんだよ。あっちはもう生き辛くてね」
「なるほどな。あんただったらこっちも戦力としては十二分だぜ。こっちにはガジェットと偽神もいるし」
「偽神が味方、ね……。まぁいいさ。あたしが死ねる戦場に花が添える。なんたって、
「戦闘狂もここまで来ると立派だよな。なぁマキナ?」
「気持ち悪い」
「子供にはわかんない気持ちだから別にいいさ。…ああ、雇い主が呼んでるよ」
「ああ」「分かった」
マキナと八岐大蛇は女の後をついていく様に建物の中に消えて行った。
大智とスカリエッティ博士が初めて遭遇し、完全に廃墟と化している研究所の中に。
ご愛読ありがとうございます。