世にも不思議な転生者 作:末吉
「最初は俺だ!」
そうペルセウスが名乗りを上げたと同時に接近してきたので全力で顔面に回し蹴りを繰り出す。
「ぐぅぅぅ!!」
レアスキルの効果ですべてを回した一撃。それをペルセウスは見て腕でガードしたが、踏ん張れずにそのまま吹き飛んだ。
それを見た雷神が名乗りも上げずに俺の頭上に雷を落としてきたので、直撃する直前に一歩踏み出してから雷神への距離を詰める。
「やるわね!」
そう言いながらも俺の背後に平然と回り込んできたので背後に向かって振り向きざまに太刀を横一閃するが、余裕で受け止められた上に電流を流された。
声を漏らさずに踏ん張りつつ、俺はそのまま振り抜くが雷神が斬れた様子はないのでそのまま銃弾を具現化させて撃ちこむ。
「そんなの当たるわけないじゃない」
そう言って余裕を持って躱す雷神。だが、そんなこと俺はとうに知っている。
電気を浴びたせいで何か障害が起こっているだろうなと思いながら人差し指を左から斜め下に振り下ろす。
その瞬間、雷神の右腕が左から斜め下に銃弾が貫通した。
「っ!」
腕をかばいながら距離をとる雷神。流れ出ている血が少ないのは、きっと雷で傷口を焼いたからだろう。
「……何をやったの?」
「……教えるかよ」
「おぅらぁぁぁ!! まだ決着ついてないぞ大智ぃぃ!!」
そう言ってペルセウスは空中から矢を放ってきた。
一本だと思ったその矢は近づくたびに数を増やしており、百本に。
だが別に慌てていない俺は「サジタリウス」と呟いて太刀を突き刺し弦を引く。
「壊せ」
発射されたレーザーは蛇のごとき動きで矢を悉く粉々にし、矢を放った本人でもあるペルセウスの腕を貫いた。
「チィッ!」
盛大に舌打ちしたペルセウスを見た俺はニヤリと笑って追撃しようと足に力を入れたところ。
不意に、ナイトメアが呟いた。
『…マスター。マスターが怖いです』
「……」
飛び出そうとした体が止まる。自分の気持ちが一気に冷めるのが分かる。
その隙を見逃さないペルセウスはそのまま突っ込んできたので、俺は息を吐いてハルパーの攻撃を太刀で受け流す。
「お?」
ハルパーをいなされたペルセウスはそのまま後ろの方へ突っ込んでいく。その入れ代わりのように雷神が雷を落としてきたので銃弾一発で散らす。
先程までの戦い方は本当に相手を殺すもの。戦争という過程に覚えた、この世界には不要な技術。
一度立ち返ってみたが(というより無意識のうちに引っ張り出していたが)……やはりこれは見せても得はない。
この強さはあいつらには不要。そう考えた俺は、ペルセウスの代わりに乱入してきたトールの攻撃を軽くいなした。
* 高町なのは視点
「……凄いね、フェイトちゃん」
「うんそうだね、なのは」
みんなが地面に仰向けになって息を整えている場所へ向かった途端に始まった神様達対大智君。最初の方は鬼気迫る…というより殺気をまき散らして戦っていたけど、少ししてからなんていうか、いつも通りの戦い方に戻っていました。
大智君の戦っている姿は最近まで見えなかった。兎にも角にも速度が速すぎて、私の目じゃ追いつかなかったから。
最近では何とか見える様になってきたんだけど……その分どれほどすごいことをやっているのかを今更ながらに実感した。
トールさんがハンマーを振り下ろしたところで大智君は雷神さんのところへ体を向けて移動する。
それに気付いたトールさんがハンマーを振り下ろす向きを変えた時には大智君は雷神さんへ迫っていた。
けれど雷神さんは瞬時に大智君の後ろに移動したところ――それを読んでいたのか彼は後ろで爆発を起こした。
思わず距離をとる雷神さん。爆風に乗って進んだ大智君は後ろを振り返らずに銃弾の形をした魔力弾を大量に作って一斉に発射。と、同時に振り向いて駈け出し、地面を蹴って天高く飛んで何かを投げたのかトールさん達がいた場所が爆発した。
そんなとんでもなく常識はずれの攻防を目の当たりにして、改めて大智君の強さを実感しました。
そして、これから戦う相手らしい神様達の実力も垣間見た気がしました。
「ねぇフェイトちゃん」
「なに、なのは?」
「私達、まだまだ強くなれるよね。大智君と一緒に戦えるぐらいに」
「うん。なれるよ」
「おうらぁ!!」
お互いの意思を確認した私とフェイトちゃんは、大智君の叫び声を聞いてクスリと笑いながらも、みんなが起きるまで――起きてからも大智君が戦うのをやめるまで――ずっと見ていました。
*
「疲れた」
『今日はやけに楽しんでいましたね』
「まぁ吹っ切れたというのもあるだろうからな。多分」
『?』
伸びをしながらなのはたちの方へ歩きつつそんな会話をしていると、「いやー途中から力の使い方変えやがってテメェ。全く対応できなかったじゃねぇか」と隣に来ていたペルセウスが称賛した。
俺は表情を変えずに鼻で笑った。
「勇者が呆れるな」
「うっせ。ドラゴン相手よりテメェ相手する方がしんどいだっての」
「まぁ確かに。ラグナロクの際もきつかったが、あれは条件が条件だからな」
「というより、完全に動きを読んでいたわよね、私達の」
何時の間にやら来ていたトールと雷神が口々にそう言うので、俺は「読んでいたというか、あれはほぼ勘の方が強い」と言ってやると、三人とも固まった。
別におかしなことを言ったわけではなく空気を読んだというか、思考の探り合いを放棄して気配だけを感じ取って行動した結果。故にどちらかというと勘の意味合いが強い。
正直アレを使えば対等どころか圧倒できなくもないのだが、流石にあの状態で使うのはもったいない。
アレ――神性変化は正真正銘最後の切り札。出来れば使いたくない。
使えば使う程俺は――
不意に足を止めて自分の左手の手のひらを見つめる。
どこも悪いところは見られない。見られないが、あの後に起こった症状を思い返せば不用意に使いたくない。
「どうしたー?」
「いや別に。なんでもない」
ペルセウスが振り返って質問してきたので俺は誤魔化す。
それをそのまま受け取ったらしいあいつは「ほれさっさと来いよ」と手招きしてきた。
「ああわかった」
考えても仕方ないので俺はなのはたちのところに先に着いたペルセウスたちへ一歩で追いついた。
「お疲れ、大智君」
「お疲れ様」
「ああ……見事に全滅してるな」
「にゃははは……そうだね」
「無理ないと思うけど」
フェイトの言葉に俺は「かもしれない」と同意してから後ろを振り向く。
すると、何かが飛んできていたので咄嗟にその物体か何かに手を触れて勢いを落とすように流れに逆らわず、自分の体を回転させる。
体の回転に合わせてスピードが落ちるそれ。二回ぐらい回って完全に速度が無くなったようなので立ち止まり、それを見る。
「……蜜柑?」
「それわしのおやつじゃ」
すっと俺の手のひらにあった蜜柑が消える。速すぎたわけではなく俺の呼吸に合わせて持っていったのだ、スサノオが。
突如現れたスサノオに驚きの視線もむけず見ていると、「これじゃこれ。この粉を振りまいとけ」と言って小さなツボを渡してきた。
「なんだこれ?」
「元気になる粉じゃ」
「……薬物じゃないよな?」
「当たり前じゃろ。わしらをなんじゃと思っておる」
まぁある意味において信用していたので念のため程度だったが、まさかそこまで本気で否定するとはな……。
器量が狭いのかなんなのか。そんなことを思いながらスサノオに蹴りを入れられながらもツボの中の粉を握って倒れている奴らに振りかける。
効果はすぐさま出た。
呼吸を整えていたり眠っていた奴らが一斉に目を覚まして立ち上がったのだから。
「本当に何だよこれ?」
「神様達が愛用してるものを人間用に薄めて粉上にしたものじゃ」
「……それって不老不」
「んなわけあるか、たわけ。滋養強壮剤じゃよ」
全員驚いているのに説明も出来ないのは歯がゆいんだがな……そんなことを思いながら首を左右に曲げて「大丈夫かお前ら?」と質問する。
代表してなのか、雄樹が答えた。
「うん。さっきまでヤバかったんだけど……なにしたの?」
「詳しいことは何も。それより、お前はどうしてそこまでへばってたんだ?」
言外に俺と特訓していたのにどうしてという意味を含ませたものだったが、どうやら雄樹はきちんと言葉の意味を理解したようで答えた。
「急にランスロットの稽古が生き死にのラインぎりぎりになってね……おかげで何もかもすっからかんでさっきまで倒れてたよ」
「まだまだだな」
「まぁ、そう言われても仕方ないね」
そんな会話をしていた時、恐らくペルセウスだろうが、誰かが「んじゃ、もう一回やるぞシグナム!」と元気に叫んだ。
それを皮切りに自分達が鍛えると定めた奴らを連れて行く神様達。
ほとんどの奴らが絶望の表情を浮かべて俺を見てくるが、どうすることも出来ないので手を振って見送る。
そして誰もいなくなったのを確認し、俺は「ナイトメア、セットアップ」と指示する。
『二回目ですね!!』
ナイトメアの張りきった声を聴きながらバリアジャケットを展開した俺は、太刀を右手で握った状態で誰もいない眼の前に言った。
「さぁ来いよ”四神”達。さくっと終わらせて次の段階へ行ってやる」
そう宣言した瞬間、誰もいない前方の空間が開いたので、俺は躊躇わずに飛び込んだ。
*……視点
「特訓やってるみたいだねぇ」
「干渉はルール違反」
「観賞するだけってか。そろそろ戦いたいんだけどな」
「許さない」
強い口調で少女――マキナがそう言ったので、八岐大蛇ともう一人の少女は苦笑いを浮かべる。
現在彼らは特に何をしているわけでもない。故に戦闘がもっぱらの二人には苦痛以外の何物でもなかった。
「暇ってのは嫌だねぇ」
「まったくだ。考えることと暇になるってのは嫌いだね俺は」
「……脳筋共」
「「なんだって?」」
マキナがぼやいた言葉に瞬時に反応する二人。その視線を受けながらも、彼女は何をするわけでもなく只体育座りでボーっとしていた。
「ああやって時間を潰せる奴みると若干羨ましいって感じるのはなんでかね」
「俺は一度も思ったことないな。喧嘩喧嘩の毎日だったから」
「それはそれで羨ましいね。来世でも私のままなら導いてくれない?」
「おう良いぜ、別に」
「僕はシナリオを守る。その邪魔さえしなければいい」
そう呟くとマキナは消えた。
その光景を見て二人は顔を見合わせてからため息をついた。
「いやだねぇ」
「まったくだ。それだったら俺達居らねぇだろ」
「頑固はこれだから……もうシナリオなんてない、
ご愛読ありがとうございます。次回更新は……変わらず未定です。