世にも不思議な転生者   作:末吉

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5ヶ月ぶりです。筆が進んでおりませんが、投稿します。


130:緊急的な休日

 それは神様達のトレーニング(俺以外に言わせると超地獄な特訓らしい)が始まって数日経ったことだった。

 

「もうアカン! 地球に帰って羽休めたいわ!!」

「どうしたはやて。ついに発狂したか?」

「大丈夫? はやて。ちゃんと休んでる?」

「なんであんたらは顔色一つ変えへんのや…?」

 

 いきなり叫んだはやてに対し俺と雄樹が心配すると、今度はげんなりしてそんなことを言っていた。

 

 ……トレーニング辛いんだろうなきっと。そう思いたくなるような発言だったためにどう答えたものかと思ったが、素直に答えた。

 

「慣れてるからだな」

「僕もかな。なんだかんだで慣れることが一番重要だし。神様達相手となると基本的に実力も規模も違うから」

「大智はともかく雄樹もそっち側に行ってもうたん? うちなんておいて?」

「え、いや、そんなわけないよ! 僕は男だからね、負けたくないんだ」

「本音を言うならはやてを傷つけたくないから我慢してるだろうに。毎日毎日苦痛に顔歪めてるだろ?」

「そこでそれ言うのは反則じゃないかなぁ!?」

 

 そう突っかかれたが俺はどこ吹く風。その場をさっさと離れてはやての説教を受ける雄樹を想像しながら苦笑した。

 

 なんだかんだであいつも尻に敷かれてるよな。

 

「あ、大智。はやて大丈夫?」

「雄樹に説教してる……今日は休むんじゃないか、訓練」

 

 すれ違いそうになったフェイトにそう教えると、「やっぱりそう考えるよね」と呟いたのが聞こえた。

 

「休むなら勝手にしてくれ。俺が言わなくてもスサノオたちは察してるだろうが、まぁ連絡してくる」

「待って。大智も休めばいいよ」

 

 肩をつかまれてそう言われた。どういう思考に至ったのか知らないが、余程嫌なのだろう。力が強い。

 俺は休みになったのなら久し振りに何でも屋(本業)をやろうと思っていただけなんだがな…と口にせず、「別に問題ない」と言って掴んでいた手をそっと外し、再びつかまれる前に全力でその場を駆け出した。

 

 

 

「で、休みになったと」

「誰かさんのおかげでね。まったく。涙浮かべられたら僕に勝ち目なんてないじゃないか」

「そういうな。それだけお前の事を愛してるってことなんだろうから」

「それは嬉しいけどさ……ところで大智」

「なんだ?」

「これどういう事?」

「逃走防止用の拘束だろ」

 

 隣同士で両手両足を拘束された状態の俺達は、そんな会話をしながら司令室の隅で座っていた。

 

 あの後、すぐさま世界を跳んだ俺は仕事の書類を確認してすぐにできそうな仕事をいくつかやってこちらに戻ってきた。

 時間が過ぎていれば忘れているだろうという計算があったのだが、そうも問屋がおろさなかったようで。

 戻ってみればなのはとフェイトが待ち構えており、二人とも拘束具で俺を拘束。

 

 で、今に至る。

 

「ところでこれ、どうにかならない? 外したいんだけどさ」

「ちょっと待て。今から自分の外す」

 

 拘束されてこちらに来てから数分。その間に構造を調べた俺は息を大きく吸って止め、息を吐くと同時に両腕に力を込める。

 

「フッ!」

 

 あっさりと壊れる手錠。随分脆かった。

 足にあるのは普通に殴って壊し、雄樹のは普通に魔力を流し込んで外す。

 

 両方外れた俺達は大きく伸びをしてから誰もいない司令室を見渡して呟いた。

 

「全員休みか」

「今お昼だけど……食堂もいなさそうだね」

 

 とりあえず気配を探るために目を瞑る。

 気配はまばらにあるが大多数の人間はいないようだ。

 

「食堂空いてなさそうだな」

「それじゃぁどうしようか?」

「どうするも食堂行って食材使って飯作ってからじゃないのか?」

「まぁそうしようか」

 

 手首をさすったりしながら今後の方針を決めた俺達は、ひとまず食堂へ向かうことにした。

 

 

 

「はやて達はどこへ行ったのかな?」

「知るか。地球に戻ってたりするんじゃないのか?」

 

 食堂の食材を使って二人分の料理を適当に作った俺は、雄樹と食べながら戦闘班たちの行方の話をする。

 

「案外そうかもね。こうしてのんびりできるのも――」

 

 ピー! ピー! ピー!

 

「「…………」」

 

 食事の手が止まる。

 

「……しょうがない。俺が行って仕事を終わらせてくる」

「ああ、うん。ごめん」

「気にするな」

 

 そう言って食事を中断した俺は司令室まで転移して状況を確認し、現場へ転移した。

 

 

 

 

「ただいま」

「ああおかえり。五分って速くない?」

「別に。ただの置忘れだったから呼び出してすぐさま押し付けて帰ってきた」

「って、本物だったのか。僕達がいて良かった――」

 

 ピー! ピー! ピー! ピー!

 

「「……」」

「じゃ、今度は僕が行ってくるよ」

「頑張って来いよ」

「うん」

 

 そして雄樹は食堂を後にした。

 

 食べ終わった俺が食器を片づけて食堂を後にしたのは雄樹が出て行って三十分後。

 すると、雄樹が伸びをしながらこちらに来た。

 

「昼食は?」

「終わった」

「それじゃぁこれからどうしようか?」

「そうだな――――いつ鳴っても良いように司令室に行くか」

「確かに……結局はそれしかないかな」

 

 苦笑しながらも俺の言葉に同意した雄樹は、足の向きを変えて俺と同じ指令室へ向かった。

 

 そこからなのはたちが戻ってくる実に四時間。俺達はアラームが鳴り響くたびにその現場へ交替して向かった。

 途中で雄樹がへばったので残り一時間は俺がずっと向かったが、今日という日になんでこんな重なるんだという怒りに駆られて犯人をボコボコにしたり建物壊したり叫び声をあげながら忘却神具を回収したりした。

 

 戻ってきた気配がしたころには俺達は完全に息が上がっており、司令室に最初に来たやつがそんな俺達を見て叫び声をあげたのだけは覚えているが、そこが限界だった。

 

 

 ……俺達なんかしたか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* フェイト・テスタロッサ視点

 

 私達ははやてが言った『今日は全員休みにしたる!!』という言葉で解散し、各々好きなことをするという事になったけど……

 

「雄樹君や大智をあのまま置いといてよかったのかな」

「え、長嶋さんと斉原教導官、基地にいるんですか?」

「斉原君ははやてちゃんに心配かけた罰として、大智君は私達の言葉も聞かずにどこか行ったからだよ。二人とも私達以上に頑張ってるけど、それとこれとは話が別だからね」

 

 キャロルの質問に助手席に座っていたなのはが答える。最初の事件以降キャロルと仲が良くなったエリオは彼女の隣に座りながらも窓の外を見てぼんやりしていた。

 

「どうしたの、エリオ?」

「……僕も残ればよかったかな」

「どうしてエリオ君?」

「え、べ、別にいやってわけじゃないから!」

 

 キャロルの質問に慌てるエリオを見た私となのはは顔を見合わせて笑い合いました。

 

 今回の休日は神様達との特訓がハードすぎて私と雄樹君と大智以外何もする気が起きなくなったことが発端。

 エリオはかろうじて元気といった感じでしたが、他のみんな――特にはやては疲労困憊で書類すら手付かず。

 それも仕方ないかもしれない。なんたって夜天の書のスペックをフルに使って魔力が無くなったら強制的に回復させられ、気絶したら強制的に回復させられ……の繰り返しでしたから。

 

 そんな訳ではやて達は家族と一緒に買い物へ、私達はとりあえず遊びに、ティアナたちはどこかへ行きました。

 

「それにしても、姉さんもついてきてよかったの?」

「お母さんとアインスさんが何やら楽しそうにしてるからこっちに来ちゃったよ。それに、私も特にやる事があったわけじゃないし」

「そうなの?」

「ところで大智いないって本当?」

「うん! フェイトちゃんの声を無視してどこか行ったからその罰!!」

 

 怒りが再燃したのか声が大きくなるなのは。それに対し私は優しく言いました。

 

「別に私は無事だったからよかったけど」

「それでも! 大智君は少し頭を冷やすべきだよ!!」

 

 こうなったなのはを宥めるのは難しい。ずっと近くにいた私と姉さんはそう思って苦笑してその話題から離れようとしたところ、エリオがポツリと言いました。

 

「長嶋さんはすごいですよね。あんな風になりたいです」

 

 思わず私はエリオが大智のようになった姿を想像して「それはダメだよ!」と叫んでしまいました。

 

「どうしたのフェイト?」

「え、なんでもないよ姉さん」

「でも、長嶋さんは本当にすごい人です。あんな人が一緒に居てくれると、なんだかとても安心します」

 

 キャロルのその言葉に私達三人は思わず「そうだね」と同じタイミングで言っていました。

 

「小学生のころからとんでもなく飛びぬけていたし」

「偶に出る笑顔がかっこいいし」

「さりげない配慮とかしてくれるしね」

「……怒ってたんじゃないんですか?」

 

 エリオのその言葉に我に返った私達は、結局苦笑するだけで誤魔化しました。

 

 

 

 そして遊びに行って帰ってきた時。

 司令室の方から悲鳴が聞こえたので全力で駆けだして着いた私達が目撃した光景は、

 

「………ハァ、ハァ、ハァ………誰か、来たみたいだよ、大智」

「…………あいつら、わざと仕事増やしやがった……くそっ…………」

 

 バタン。

 限界だったのか床に倒れ込んだ大智と、仰向けに横たわって息を整えている雄樹君の姿。

 私達は思わず「大丈夫!?」と叫んで二人に駆け寄りました。

 二人とも入り口近くで倒れており、大智に至っては気でも失ったのか眼を開けないまま呼吸が荒い。

 

「大智君! 大丈夫大智君!?」

「斉原教導官! 大丈夫ですか斉原教導官!!」

「なんやこの騒ぎは……って、雄樹!? 一体何があったんや!?」

 

 私達が呼びかけをしているとはやてが来て、雄樹君を見るやダッシュで近づき体を起こさせながら叫びました。

 それに対し雄樹君は「……お帰り」と言っただけで何も語らず目を閉じました。

 

「え、ちょっと、こんなのウソやろ? なぁ、目を開けて嘘だっていうてな雄樹!!」

 

 突然のことに混乱しながら体をゆするはやて。私達の方はというと、動きが迅速でした。

 

「なのは、医務室へ行って二人を診てもらう様に言ってきて!」

「分かった! 行こう、アリシアちゃん!」

「うん!!」

 

 私の言葉になのはと姉さんは医務室へ向かい、私は大智を立ち上がらせました。

 

「一体何の騒ぎですかみなさん? ……って、大智さんに雄樹さん!? どうしたんですか!?」

「分からない。帰ってきたら倒れていたから……二人は雄樹君の事を連れて来て」

「「わ、分かりました!!」」

 

 私の言葉に様子を見に来たらしいスバルとティアナは慌てて雄樹君を起き上がらせ、私と同じように肩に手を回して運び出します。

 私も歩き出しますが、大智の身長が高いのであまりうまくいきません。

 

 それを見ていたシグナムが黙って私の反対側へ行きました。

 

「ありがとう」

「仲間が大変なら手伝うのは当然だ。はやての事はヴィータとザフィーラに任せる」

 

 それから私達は黙って医務室へ運びました。

 

 

 

 

 

「なぁシャマル。長嶋達の様態はどうだ?」

「今は普通に眠ってるわ。二人とも疲労困憊で倒れたみたいね。だから怪我とかはないわよ」

 

 シャマルさんのその言葉に私達はホッと息を吐いて安心しましたが、はやては雄樹君の事をなおも心配そうに見ていました。

 無理もありません。小学生の時に一度雄樹君が目の前で死んだ光景を目撃しているのですから、状況が違えど目を開けないというのは相当こたえるものが在るはずです。

 

 そう言う私も大智が死んだように眠っているこの状況は気が気でありません。なのはや姉さんも同じなのでしょう。

 

 と、そんなお通夜みたいな医務室の中にグリフィス君が入ってきました。

 

「失礼します。ちょっと雄樹さんと大智さんの事について――」

「なんや! 一体何があったんや!!」

 

 最後まで言う前に叫んだはやてをグリフィス君がパチクリと驚きながら少し見て咳払いをし、「お二人が司令室にいたのでアラームのログを解析したところ、原因が分かりました」と言いました。

 驚く私達。特にはやてはグリフィス君に顔を近づけて「さっさと言わんかい!」と怒鳴りました。

 

「は、はい!! えーこのログを見たところ、午後一時ぐらいから午後五時ぐらいまで数分から数十分単位でアラームが鳴り、その度に交互に出動していたようです。最後の一時間は大智さん一人で約二十件解決してますね。それがお二人あのように倒れていた原因でしょう。空いてる時間に報告書も作成していたようで、後半二時間ぐらいは作る余裕がなかったようです」

 

 なぜそこまで事件が発生して出撃することになったのか分かりませんが。最後にそう言って締めたグリフィス君はそのまま頭を下げて部屋を出ました。

 

 とんでもない事実を聞いた私達がその時間帯やっていたことを思い出しながら後悔していると、「……すごいですね、大智さんに雄樹さんは」とスバルが呟きました。

 

 しかし誰も返事をすることはありません。

 

 それも当然だと思います。なんていったって、残した二人が私達がいない間の業務をやってくれたのですから。

 

 結局、誰も言いださずに各々自分の部屋に黙って戻っていくことになりました。

 

 はやてと私、なのはに姉さんを除いて。

 

 

 

 

 

 

 

 夢の中でスサノオたちに『お前らに対する天罰だ!』と宣言され、薄々気づいていた俺と雄樹は黙って頷き合ってから『それを言うならそっちは自業自得か?』とボコボコにされた痕が見える男性神達に対し言い返してからの二対六の喧嘩をしていた最中に雷に打たれて目を覚ましてベッドの上にいることを認識して首を動かすと、なのはとフェイト、アリシアが俺の手の甲に手を重ね合わせていた。

 

「ねぇ大智。起きてる?」

「ああ。身体の方は大丈夫か?」

「うん。疲れが無くなってるよ……そっちは?」

「もともと一日寝れば疲れがリセットされるからな、俺は」

「いやーさすがにずるいねそれは」

「ないものねだりするな。……ところで、そっちにはやて居るか?」

「うん」

 

 雄樹はどうやら俺の反対――足の方で寝ているようだ。声の反響で理解した。

 

「今、何時だ?」

『朝五時ですよマスター!』

「……そういえばお前よく黙っていたな」

『言っても聞かないので黙ってましたね! 心配でしたけど!!』

「そうか」

「…………大智?」

 

 俺達の会話で起きたのかフェイトが俺を見る。

 説教か何かか知らないが、とりあえず手と手が触れている心臓が高鳴っている状況で泣き出されたら俺はどうすればいいのだろうかと思いながら、「おはよう」と短く返事をした。

 

 

 当然、泣かれた。




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