世にも不思議な転生者   作:末吉

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134:衝撃とお風呂

「なんかこう言うのって恥ずかしいけどよ……まぁ自己紹介するわ。俺の名前は霧生元一。大智の会社の社員で、現在は俳優業を主にしてるぜ。趣味は料理だ! で、こっちが…」

「あ、初めまして……えっと、元一の婚約者で女優の、水梨木在です。よろしくね」

『あ、はい。お願いします』

 

 サラリと自己紹介に入った二人につられたのか異世界出身の四人は反射的に頭を下げた。が、地球出身者たちはそうはいかなかった。

 

「え、いつの間に婚約したの二人とも!?」

「そんな話聞いてないで!?」

「そうだよ!」

 

 そんな声が女性陣から上がる。それに対し木在はもじもじと指を動かしつつチラリと元一に視線を向け、それを受けた元一は「いやまぁ。したのだってつい最近だしな」と俺の方を見てきたので知らないふりして焼けてる肉や野菜を食べる。

 

「しっかしデカいケーキだな……食べきれるのかよ」

「ほれはもんふぁいない(それは問題ない)」

「あっそう。でもどうやって切るんだよ」

 

 口にモノを入れて喋っているのに会話が成立するのは長年一緒に居たからだろう。

 そんなことを思いながら呑み込んだ俺は元一に「斬るか?」と訊いてみる。

 

「いや無理だからな!? 俺裕也達みたいにそんなに影響受けてねぇからな!?」

「いやいやいや。君だって十分に影響受けてるからね。メイク術とか演技とか。君の出演するドラマ、結構な視聴率だろう?」

「見んなよな力也。こちとら恥ずかしいんだから」

「好きな奴の後を追いかける勇気があるのに今更恥ずかしいだと?」

「ぬぁぁぁぁぁぁああああ!! その話を蒸し返すなぁぁぁ!!」

 

 羞恥に悶えながら叫ぶ元一。それを聞いた俺と力也と裕也は苦笑いを浮かべながら、持ってきたケーキを見る。

 

「二メートルはあるね、高さ」

「ホールサイズ間違っただろ絶対」

「いや合ってる」

 

 そう言うと俺は魔力で一メートル超の長刀を造り出す。

 突如として現れたそれに周囲が静まったが、慣れてしまった男子二人は「頑張れ」「綺麗に切れなかったら僕が交代しよう」と言い出した。

 

「祝いものを雑に切断できるか」

 

 力也の言葉にそう返した俺はログハウス前のテーブル一つを陣取っているケーキに視線を移す。

 力の込め過ぎは誰も得しない結果を招く。それが分かったいるため俺は一度目を閉じて考えることにした。

 

 どうすればいいものかなんて答えは出ている。テーブルを切らず、ケーキのみ切る。ただそれだけ。

 右手でつかんでいるその長刀を消した俺はナイトメアに「魔力解放Dランクに制限」と指示する。

 

 実際その通りになったので今度は肉を切るために使っていた包丁を手にする。

 

「さて、切るぞ」

「おー頑張れよー」

「爆散させたら笑うよ」

 

 すでに笑う準備をしてるのだろうか。そんな益にならないことを考えた俺は魔力を包丁に流して強化し、「ふっ」と息を吐いて切り出した。

 まず今俺がいる場所で縦に両断する。少し移動し、もう一回縦に両断する。

 それを時計回りに行い、丁度最初の真裏に来たらジャンプしてケーキを一段一段切り分けていく。この間わずか五秒。

 

「っと」

「ほっ」

 

 切り分けたケーキを力也と裕也が何気なく皿に載せていく。俺もすぐさま包丁を置いてから皿一枚一枚にケーキを載せた。

 

 そして最後の一切れが力也の皿に載り終った時、裕也が「まったく。こっちが準備してなかったら危なかっただろうが」と呟いた。

 

「って、え? 天上君はともかく、如月君の動きが常人じゃなかったんだけど……?」

 

 すべてを見て理解していたのか、今更な質問をぶつけてきたフェイト。

 それを聞いた俺達は苦笑し、代表して元一が答えた。

 

「こいつの動き、中学からこうだったから。体育じゃ力也と大智、そして裕也の三つ巴が定番だったんだよ」

 

 おかげで俺はとばっちりだぜとぼやいていたが、そんなものフェイト達には聞こえていなかったようだ。

 まぁそれはともかく。

 俺は手に持っているケーキの皿を元一に渡した。

 

「ほらよ」

「……ああ、悪いな」

「水梨さん、どうぞ」

「あ、どうも力也君…」

「さて、配るかー」

 

 俺達二人の様子を見た裕也がそう言うと、我に返ったすずかとアリサがこちらに来て手伝い始めた。

 

 

 

「で、風呂どうする? 俺達の家に帰ってばらばらに入るか?」

「なんでそんな発想になるのよ。ここは普通に銭湯でしょ」

「ああ三か月前に完成したスーパー銭湯だったか」

 

 夕飯&デザートを食べ終えて片付けた俺達は風呂の話をしていた。

 外で思い思いに過ごしているから厳密に言えば俺と会話しているのはアリサだけ。

 が、周りになのはやフェイト、アリシアやすずかがいるので合っていると言えば合っている。

 

「でもなんでそんなに詳しいの、大智?」

 

 アリシアが納得できないのかそんな質問をしてきたので、俺は普通に答えた。

 

「連絡取ってるから。あと、普通にこっち来て仕事やってるし」

「ええ!? いいなぁ」

「俺が暇だからな」

「大智らしいね」

「そうだね」

 

 と、ここでなにやらのんびりとした空気が流れそうだったので、「さっさと風呂入りに行こうぜ」と尻を軽く叩きながら立ち上がる。

 

「そうだね。なのはちゃん達のお話もゆっくり聞きたいし」

「積もる話もあるしね」

 

 賛成するようにすずかとフェイトが言うと、アリサが「ほらみんな! お風呂入りに行くわよ!!」と指示を出した。

 その指示を受けた雄樹たちは集まり、それを見たアリサが「それじゃ、タオルとか持っていきましょ?」と事態を進行させていった。

 

 

 

 

「うわぁ」「おっきいね……」「そうだね……」

 

 スーパー銭湯についてアリシア、なのは、フェイトが真っ先に感想を漏らした。そんな感想を聞きながら、俺はさっさと建物に入る。

 

「そういや一階が吹き抜けだったか……」

 

 建物の中を見て俺はここの構造を思い出した。

 二階建てで、一階が風呂、二階が休憩がてらの商業施設というものだった。入ってすぐが吹き抜けになっているので天井までの距離があり、そのお蔭か広さをさらに強調している。

 

「さっさと風呂入るか」

『ここは待ちましょうよ』

「いやもう来てるだろ」

 

 現在フロントを通り過ぎて(フリーパス持ち)脱衣所にいる。ナイトメアは防水完璧なのだが、こんなものを持ち込む必要がないので外す。

 

『ちょっとマスター!? 外さないでくださいよ!!』

『目立つ』

『えぇ!?』

 

 さっさと服を脱いだ俺はナイトメアの言葉を無視してタオルを肩に乗せて風呂場に向かった。

 

 普通に体を洗っていたところ、ようやくなのか雄樹達が入ってきた。

 石鹸の泡をお湯で流しながら「遅かったな」というと、「お前が早すぎるんだよ!」と元一に突っ込まれた。

 

「いや普通だろ」

「そうだったな……お前には常識関係ないんだったな」

「いや、一応持ってるぞ」

「一応だろ、一応!」

 

 風呂場なのに叫ぶと、元一は俺の隣に座って体を洗い始めた。

 その様子を横目で見ながら頭を洗い始めると、俺の右脇に座っていた裕也が「そういや元一。お前明日休めるのか?」と訊いた。

 

「あ? ……明日は料理本の握手会だから無理だな」

「……どうしよう。元一が有名人の道歩んでる」

「本人が望んで歩んでいるのだから問題はないよ、雄樹」

 

 いつの間にか俺の両脇に固まっていた四人……四人?

 

「エリオは女子風呂か?」

「ん? ああ。本人は顔を赤らめて抵抗してたが、助ける気がなかったから任せた」

「裕也、着実に大智の道を辿ってるよ」

「見過ごしたのは雄樹も一緒だろ」

「……まぁ、外の露天風呂が混浴になっているからそこから来れるさ」

「服は女子更衣室だがな」

「「「「あー」」」」

 

 カポーンと桶の音が響き渡るほど静かな風呂場(男子)。女子の方の声は聞こえないが、そのように設計したので問題はない。

 

 横一列で風呂に入った俺らは、壁に腕を載せながらまったりしていた。

 

「しかし静かだね」

「完全防音にしたからな」

「ここ設計したの大智だし」

「え!?」

 

 驚く雄樹に俺は顔を上げて天井を見ながら「まぁな。裕也が持ってきた仕事だから」と言っておく。

 

「いやいやいや。資格とかどうしたのさ?」

「とった。高校三年の時に」

「最年少で取ったって騒がれてたよな」

「その次の試験で僕も取ったけどね」

「しかも二人とも満点だぜ? もはや何も言えないだろ」

「うん……そうだね」

 

 呆れたもの良いの元一に賛成するかのようにため息をつく雄樹。その二人に、俺は今思った疑問をぶつけてみた。

 

「お前ら結婚するの何時だ?」

「「ぶふっ!!」」

「あ、それ俺も気になるな」

「僕も多少気になるね。婚約したということは近いうちに結婚するだろうし、八神さんと雄樹の付き合いはそれこそ十年来。いつ結婚してもおかしくはないと思うからね」

「え、い、いや、それは……互いの気持ちが……」

「僕達はほら……仕事で忙しいから……」

 

 段々と声を小さくして答える二人。それに対し俺達は顔を見合わせてから二人に迫り、こういった。

 

「「「そんな言い訳良いからいつ結婚する予定か答えろ」」」

「いやなんでだよ!?」

「そ、そうだよ!!」

「いや」

「だってなぁ……」

「大智や僕達より先に結婚が見えるのが君達だからね」

 

 そう力也が言うと「「やっぱり……」」と二人は肩を落とした。

 

 が、俺は午前中からどこかおかしい奴がいたのを知っているので、付け足した。

 

「……まぁ、それより早く裕也がありえそうな気もするがな」

「なっ、何言ってるんだ大智。お、俺がそんなわ…」

「「なんだって!?」」

 

 防音のお蔭で女子達に会話が聞かれることはない。そればかりは感謝すべきだろうと思った俺は露天風呂に入るために立ち上がり、「ま、詳しくは知らん」と言い残して風呂から上がった。

 

「大智待てお……」

 

 無視だ無視。

 

 

 露天風呂に入る。いうだけあって空はきちんと見えている。月が綺麗である。

 寒いわけではないがそそくさと湯船につかると、先客が驚いていた。

 

「だ、大智君!? あ、こ、こっち見ないで!!」

 

 特に視線を声がした方へ向けずに空を見上げ声の主に言った。

 

「見てないから安心しろ、なのは」

「……それはそれで傷つくよ」

 

 そう呟いたのが聞こえたと思ったら、ゆっくりと俺がいる隣まで近づいて座ったのが分かった。

 肌と肌が触れ合いそうになる距離のせいか鼓動が早くなってきたなと冷静に緊張状態を分析しながら若干上ずった声で「離れろよ」というと、「嫌だよ」と即答された。

 

「だって大智君。自分から近づいてきてくれないじゃん」

 

 それはまさにそうなので言い訳が出来ない。

 他に言うべきことも見つからなかったので俺は聞いた。

 

「変わってたか? 俺達の故郷は」

 

 そう言うとなのはは「ううん」と否定してから続けた。

 

「少しは変わっていたけど、やっぱりみんな変わっていなかった。でも大智君がお世話になった警察官とお姉ちゃんが結婚しそうだという話を聞いた時は驚いたけど」

「その話を切り出そうとするたびに事件で有耶無耶になってるから延びてるんだ。そうじゃなかったらすでに結婚しててもおかしくなかったと思うぞ」

「えぇ! そうだったの!?」

「ああ」

 

 そう言うとなのはは「そうなんだ……全然気づかなかった」と呟いた。

 家にほとんど帰らなかったらそうなるだろうなと思ったが言わないでおくと、「ねぇ大智君」と声をかけられたので空を見つめたまま返事をする。

 

「なんだ」

「大智君はこれ終わったらどうするの? 管理局辞めるの?」

「ああ。元の仕事に復帰する」

 

 内心で俺が(・・)生きていたらな(・・・・・・・)と付け足しておく。

 

 それに気付かない彼女は「やっぱりそうなんだ」と呟いてから何かを決意したのか「こっち……向いてくれるかな」と言ってきたので顔をそちらに向ける。

 当然なのはは裸で入っており、見えてしまっているのだが、それで興奮するほど俺は人間になっていないようだ。感慨も何もない。

 

 ジッと見つめる。彼女の次に話す言葉を待っているために。

 

「……あのね」

「……」

「……」

「?」

「やっぱり無理!」

 

 そう言って思いっきり顔を背ける。それを見た俺は何をしようとしたのかを推測してから「なのは」と名前を呼んだ。

 

「……何?」

 

 背中をこちらに向け、顔だけを向けて訊いてくる。

 それを見た俺は近づいて身体をこちらに向け、なのはの唇に俺の唇を重ねた。

 

「!!? な、だ、大智君!?」

 

 一瞬で唇を離して距離を置くと、なのはが顔を真っ赤にさせて俺の名前を叫ぶ。それを見ながら、「これがしたかったんだろ?」と軽く言う。

 

「そ、そうだけど! なんか……考えていたのと違うよ!!」

「人生考えた通りになるわけじゃないぞ。俺だってファーストキスだ」

「……もう!」

 

 そう言って頬を赤くしながらも笑みを浮かべるなのは。

 その場の雰囲気に流されてやってみたものの、なんでこんなことしたんだろうかと内心首を傾げた。

 けれど自分が彼女の事を好きだという認識が出来たのでよかったのだろうか。

 

「わ、私もう上がるね!」

「ああ」

 

 のんびりと思考していたらなのはがそう言って小走りに戻った。

 それを見ずに空を見上げていた俺は、自分の中の【力】が湧き出そうになるのを感じ取って目を瞑って歯を食いしばり抑え込む。

 

 …………ふぅ。

 抑え込めたのでため息をつく。そして俺は風呂を上がることにした。

 

 

 

 

 

 諸々の追及から逃げて先にあがった俺は、自分の感覚が以前より鋭くなっているのが分かった。

 そのおかげで、この世界に来ている別世界の奴を見つけることができ、悟られる前に行動することができた。

 

「どうしたスライム」

「……」

 

 河川敷で佇んでいるスライムに声をかける。すると俺の方に触手を飛ばしてきた。

 

 よく観察する。と、その中に光るものが見えたので手を差し出す。

 スライムはその触手の中のものを俺の手に出した。

 

「これは……レリックか」

「……」

「なるほど。お前達の世界にあったから届けてくれたと。ありがとうな」

「……」

「? 前と雰囲気が変わってる? そうか……そう感じるのか」

 

 スライムと会話しているという奇妙な光景を他者が見たら絶叫モノだろうなと思いながら「ありがとな」と言って片手で(・・・)スライムを元の世界に返した。

 

『…マスター?』

「どうした」

『どうしたんですか?』

これが(・・・)完成してしまった(・・・・・・・・)俺なんだよ」

『それってどういう意味なんですか?』

 

 ナイトメアの質問に俺は答えず、軽くジャンプして空気を蹴り銭湯へ戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まぁ普通にばれたよな。俺がなのはにキスしたこと。迫られた時は羞恥心で逃げたが。




今後ともよろしくお願いいたします。

そして、お読みいただきありがとうございました。
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