世にも不思議な転生者   作:末吉

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138:神の定め

「さて」

 

 ふっと微かに笑った大蛇は気を取り直して説明を始める。

 

「神様っていうのはまぁ世界創ったりとか英雄的行動をとったとかで一定のお前たち(人間)から信仰を得られた存在だ。で、だ……あー」

 

 急に言葉を濁しだした大蛇に全員首を傾げていると、「めんどくせ」と急に言い出した。

 

「やっぱり俺に説明役合わないっての! 大体傷だらけの俺を行かせるんじゃねぇ!!」

「敗軍の将が何言ってるんじゃ全く」

「あでっ」

 

 急に殴られて頭を押さえ、蹲っていると、隣にスサノオが現れた。

 

「自分から行きおってからに全く。その傷は自業自得じゃろ戦闘狂」

「黙ってろ天災」

「あ?」

 

 そう言って大蛇を睨むが、その周囲だけが恐れるだけとなった。

 それを見たスサノオは咳払いをしてから「大智は神様になり、その時に自分で力を使った。その結果あいつは『闇の牢』に閉じ込められたんじゃよ。だから何人にもあいつを探すことなど出来ぬし、わしらは探すことなく放置する。あやつが消えるその日までな」と説明した。

 

「本来なら詳しい説明をしたいのじゃが、もうそこまでする必要もなかろう。あやつに関してはもう忘れた方が――」

「出来ません!」

 

 スサノオの声にかぶせるように否定する声が聞こえたので全員が何事かと見たところ、なのはがテーブルを叩いて立ち上がっていた。

 

 それを見た彼はため息をつき、「やれやれ。一途というのはさすがにすごいわい」と言ったところ、アラームが鳴るより早く基地内の施設が爆発した。

 

『!!?』

 

 全員が立ち上がって現状を把握しようとしたところ、「もう、終わらせよう」という言葉と共に食堂が破壊の嵐に見舞われた。

 

 瓦礫の山になった食堂の前に降り立った少女は、すこしだけ食堂を見てから宙を浮かび「さようなら」と呟き、そして――

 

 

 

 機動六課のために存在した基地は、完全に崩壊して海に沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 少女は海に沈んでいく基地を空から眺める。

 どうせ憎き神がいたのだから全員無事なのだろうと思いながら行動したが、久し振りに【力】を振るったせいか感覚がおかしい気がした。

 

「……『力』。探さないと」

 

 そうと決まればすぐ実行するのか、彼女は忽然と姿を消した。

 

 

 

 

 

「…………暇だ」

 

 手錠につながれた俺は何もすることがなくただ呟く。

 動くことも、食べることも、何もすることがない。

 現状どうなっているのかさっぱりわからないが、世界は一体どうなっているんだろうか。

 なんて考えたところで何もすることが――

 

「ん?」

 

 何かがいる。今まで気が付かなかったが、この空間には俺以外にも存在してる。

 

 なんで気が付かなかったんだと思いながら『何か』が存在している気配の方を睨んでいると、

 

 『黒』が、俺に向かってきた。

 

 

 

*――視点

 

「世界は常に不平等である。というのは、当たり前であるのが一般常識だと思うがどうかね?」

「誰に向かって言ってるんだ、釈迦」

「やめたまえ。私はその名を持ちえない罪深き存在だ、伊弉諾」

 

 どこかの空間。すべてが白いこの世界で、色を持つ二人が対面していた。

 

 仮面をつけ、白衣を身にまとう釈迦と剣を突き刺し飄々とたたずんでいる伊弉諾=竜一。

 

「つぅかマジで大丈夫か? 物語は終わっちまったんじゃないのか?」

「それはない」

「あっそ」

 

 あまりにも簡単に否定されたことに対し、竜一は肩をすくめてそっぽを向く。

 そのいじけ方に人間らしさを見た元・釈迦は「どうでもいいが、私の空間に勝手に乗り込んでくれないでくれ」と苦言を呈す。

 

「どうでもいいんだろ? だったら気にする事じゃねぇよ。釈迦。いや、こういった方が良いか?」

 

 そう言って言葉を区切る竜一に元・釈迦は思わず苛立たしげにつぶやいた。

 

「……何を言う気だ?」

「その反応するなら間違ってないってことだな。永劫輪廻尊の封印後すぐさま自分で戒律を破り同じ処遇を受けることとなった、悲しい神様。それがあんた――初代釈迦だ。えぇ? 自分の妻に復讐されてる悲しい夫よ」

「…………何時調べたのかね」

「んなもん葉山一族が生まれる前にはとっくに気づいてたさ。あの一族を造ったのはあんたで、一家離散させたのもあんただってことも」

「……そうか」

 

 そう言うと初代釈迦は徐に仮面を外す。

 次の瞬間、白い空間がすべて黒に塗り替わった。

 

「少し昔話をしよう。君達にとっても懐かしい、一組の悲しき昔話を」

 

 黒い世界の中、仮面を外した初代釈迦はそう言って何もない空間にまるでそこに椅子があるかのように足を組んで座った。

 

 

「へぇ。その当時俺は母さんに呪い掛けられて必死に頭下げたところだったからな。神様伝手でしか聞いたことがなかったんだが……まぁ話してくれるならいいさ。どうせ今回の件につながるんだろうから」

「……毎度思うのだが、伊弉諾のその軽さは些か緊張感を壊すぞ。少しは危機感を持ったらどうかね」

「べっつにー。大智自分で『闇の牢』行ったし、お前の奥さん先制攻撃で基地ぶっ壊しちまったし、これからどうなっていくのか分からないって」

「まぁ月読でもこの未来は分からなかっただろうし」

「尚更騎士団にいる未来予知ができる嬢ちゃんにも無理だろうなぁってか?」

 

 胡坐をかいて伊弉諾が言うので、「だろうな」と肯定してから初代釈迦は語り出した。

 

「永劫輪廻尊の魂を厳罰に処して百年と幾ばくかの月日が流れた時だった。私は処分を下した彼の魂がどう生きているのかを監視しながらこの世を眺めていたところ、とてつもない力の奔流を察知したので他に気付かれる前に自らその地に運び原因を探したところ、一人の少女が気を失っており、辺りにはなぎ倒された木々だけの現場に着いた」

「あれ? そんなことあったっけ?」

「伊弉諾はその時妻と喧嘩別れしそうになって慌てていただろ」

「あーその頃か」

 

 当時を思い出したのか遠い目をし出す伊弉諾に、息を吐いてから初代釈迦は続けた。

 

「彼女が着ていた服はボロボロだが、体に傷はなかった。その上、纏っている雰囲気が私達と同じだったことから治療と観察ということで彼女をその世界から運んだ」

「また慈悲深い釈迦が誰か連れて来たよなんて誰しも思ってたろうな」

「だろうな。そして私の住まいに暫くおいておくことにした。彼女はとても華奢だったのでな、栄養失調なのかもしれないと思って」

 

 当時を思い出したのか懐かしむような口調に伊弉諾は「あの頃は輪廻のことがあってしばらく外界から入れることに関しては否定的な風潮だったろうに。そう考えるとあんた、結構すごい事やってたな」と言う。

 

「実際やる必要もなかったことかもしれない。だがそれは、私の在り方に反していたのだよ」

「宗教の一番上ってのも大変だねぇ」

「まぁな。ともかく、その当時は色々あった後だったのでその子の件でしばらく住まいに籠って看病と観察を続けていた」

 

 そうだったのかと今更過去の事に関し頷く伊弉諾。彼は基本的に伊奘冉との問題しか起こしておらず、また年中その解決に追われていたので少しばかり事情を理解していなかった。

 

 まるで出来の悪い子供を相手してるような初代釈迦は「その間天国での裁きはゼウスに一任していたが、まぁそれで回っていたのだからそれほど忙しくはなかったのだろう」と付け足す。

 

 すべてが黒い空間の中、それでも彼らがいる場所だけは光があるのかはっきりと姿が見える。

 

 仮面を外した初代釈迦はもはや声からは想像が出来ないほどしわくちゃな顔立ちで、髪は当然坊主。袈裟ではなく白衣なのは罰を受けている身だと示しているからか。

 

 対し伊弉諾はいつも通りのTシャツジーパンで、長い髪を背中で一つにまとめているだけというファッションセンスの欠片のない恰好。

 動きやすければ問題ないのかこれぐらいしかないのか定かではないが、彼は胡坐をかきながらも目の前に刺さっている持参した剣を見つめていた。

 

 と、そこでふいに伊弉諾は思いついた疑問を訊ねた。

 

「そういやよ」

「なんだね」

「その少女って……結構美人だったのか?」

「ふむ。美人かそうでないかと問われると美人だったと断言できるが、どちらかというと可愛らしい顔立ちをしていた」

「ふ~ん」

「というか、今の質問の意味はなんだ?」

「いや、俺会ったことないからさ。どんな感じの子だったのかなと思って」

「……」

 

 はぁと黙ってため息をついていると、「そんでいつごろ目を覚ましたん?」と軽い口調でさらに質問する。

 それに対し「目が覚めたのは四日後。最初は何がどうしてこうなってるのか分かっていなくて慌てていたがな」と淡々と答える。

 

「そりゃまぁそうだろうよ」

「まぁ説得するというか状況を理解させるのに半日かかったがね」

「んで、何時したんだ、結婚?」

「それから十年経った日だ。そこにお前もいただろう」

「あ、そうだったけか? そこら辺は丁度母さんとの冷戦期間内だったから半分そっちに思考割いてた」

「お前達はよく喧嘩しているようだな……かくいう私も、そんなものだろうが」

「だろうな~。そんなもんに巻き込まれた大智達は堪ったもんじゃねぇだろう」

「おそらくだが、大智はすでに知っている。スサノオ辺りが漏らしただろうからな、あの時に」

「……闇の書ね。だったら納得だわ」

 

 そう言って欠伸を漏らす伊弉諾。話が長いことに嫌気がさしているのか、それとも元来集中力がないのか判断できないが、そんな事お構いなしに元釈迦は続ける。

 

「このような喧嘩になった原因は……私が彼女の正体に恐れをなしてしまったからだ。いくら仏と言えどもまだ人間の理性は残っていたらしい」

「あ? そんな様に全く見えねぇんだけど……ってか、あいつの正体って何だっけ?」

 

 首を傾げながら伊弉諾が質問したところ、じろりと睨んだ元釈迦は「あいつ呼ばわりはやめてもらいたいな。こうなってしまったが、未だに夫婦なんだから」と忠告してから律儀に答えた。

 

「彼女――今回のラスボスの正体。それは、”鵺”だ」




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