世にも不思議な転生者   作:末吉

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他者視点をはっきりとさせました。次回以降もこのような感じになります。


13:交わる運命

 災厄神夜刀神。前に生きていた世界では呪われ、我を忘れた神たちを作り上げた張本人で、俺達が乗っ取られた巫女ごと倒したはずの神様。

 

 神は一度倒されたら数百年以上の時をかけなければ再び顕現できることはかなわない。それにはどんな例外もないというのが神様たちの話。

 

 なのに後ろから感じる気配はどうだ? あの対峙した時から感じている気配だ。間違えるはずがない。

 

 こいつは、あの時と同じだ。

 

「アハハッ。やっと、やっと会えね。随分懐かしく感じるよ」

 

 言葉を聞くたびに心の中で『何か』が募る。それは今にも爆発しそうだが、それを必死に押さえつけながら訊いた。

 

「……何の用だ」

「怖い、怖いよ。だけどそれでこそ僕が会いたかった大智だ」

「だから何の用だと聞いてる!」

 

 思わず発した怒声。それを聞いたそいつは「分からない?」と聞いてきてからいきなり俺の前(テーブルを挟んで)に現れ、あるモノを取り出した。

 それは前に俺が拾った宝石っぽいもので、何故か知らないが輝いていた。

 

 それを手のひらで転がしながら、倒した時と変わらない姿のそいつは邪悪な、それでいて人を魅了するような笑顔で言った。

 

「これを取りに来たんだよ。そして君を介入させるために」

「どういうことだ」

「分からないならいいさ。というより、分からなくていい。君が僕のことだけを考えてくれるなら、それでね」

「……」

「ふふっ。君のその顔。怒りに支配され、僕に憎悪を向けるその顔! 僕だけを見ているというその目!! あぁ! なんて愛らしいんだ!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、俺は無意識に身体能力のリミッターを外し銃弾を超える速度でテーブルを越え、そいつの首をつかんでいた。

 

「黙れ……」

「嬉しいね、二度(・・)も殺してくれるのかい?」

 

 無言でつかんでいた手に力を入れる。が。

 

「……な~んてね。さすがに復活したばかりの君に殺されたいと思わないよ」

 

 夜刀神はいつの間にか後ろに回り込んでいた。

 どういった原理で移動しているのかよくわからなかったが、リミッターを解除している俺にとって、いや奴曰く怒りに支配された俺にとって心底どうでもよかった。

 

 ただ殺したい。ただ憎い。それだけが渦巻いていた俺は、嬉しそうに笑っているそいつを振り返ってから睨みつけ、言った。

 

「……殺す」

「うん。その混じり気のない、本当に殺そうというその気持ち。嬉しいねぇ。そんなに僕のことを想ってくれているんだから」

 

 でもね、俺がすぐさま攻撃に移れるように態勢を整えていると、奴がこんなことを呟いた。

 

「君にはもっと苦しんでもらわなきゃ、殺してあげられない。苦しんで苦しんで苦しんで……僕という存在以外に君が考えられなくなったら、殺されてもいいよ。だから……またね」

 

 その瞬間奴の姿は消え、持っていた宝石もどきも消えた。

 

「…………ナイトメア」

『マスター。何する気ですか?』

「すぐに残りの魔力反応の場所を調べろ。あいつのことだ、どうせそこに顔を出す」

『……お断りします』

「そうか」

 

 なぜなのか、なんて理由は聞かない。そんなことに思考を割く理由も時間もなかったから。

 俺はナイトメアをテーブルに放置して自室へ戻り、あるものを持ってきてから家を出た。

 

 ナイトメアがとめた気がしたが気にせず、身体能力に物を言わせて屋根の瓦を吹き飛ばしたりしながら一本の光の柱のほうへダッシュした。

 

 夜刀神に乗っ取られた立花遥佳を、もう一度この手で殺すために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく来たね。僕の愛を受け止める気になったかい?」

 

 近くのビルの屋上までノンストップで跳んできた俺が見たのは、二人の少女の間で俺を見上げてそう言う夜刀神だった。

 その少女の近くにフェレットやら狼みたいなやつがいたが、そいつらは夜刀神をにらみつけていて、俺に気づいていなかった。

 

 言われた俺は、自然と頭が冷えていた。おそらく、追いかけるために運動したおかげである程度思考能力が戻ったのだろう。

 だが、それに反して俺の体は行動を起こしていた。

 

「……そんな気はさらさらねぇよ!」

 

 と言ったと同時に、持ってきていた刃渡り二十センチのナイフを夜刀神に向かって投げた。

 未だリミッターを外したままの全力投球。肩が悲鳴を上げ、腕の神経に痛みが走ったが、そんなことを気にせずビルの屋上から飛び降りて、今度はマグナムを腰のホルスターから取り出して速射。

 安全装置などない。この銃は俺がいつぞやに提出した自由研究のものだから。

 

 そして発射された弾。これも俺が作ったもの。

 対神様用に作られた、核兵器以上の威力を持つ弾丸。

 マグナムみたいな拳銃に装填できるサイズであるのにもかかわらず、一発で世界を焼き尽くすほどの高火力な弾丸。

 …………それの劣化版だが、とっておいた。

 

 こんな時のために。

 

「オラァァァァァ!!」

 

 落下している最中、弾切れになるまで撃った俺は地面にクレーターを作って着地し、急いでマガジンを交換して再び銃を向ける。

 先ほどの銃撃のせいで視界が爆風にさえぎられたので待っていると、上空から声が聞こえた。

 

「そんな紛い物、僕に効く訳ないじゃない! でも、君のその殺意(想い)、確かに受け取ったよ。そのお礼として、なんだけど……」

 

 上を見上げてすぐさまナイフを投擲。しかし夜刀神は避けるそぶりも見せず、そのナイフを掴んだかと思うと握り、手のひらから流れ出る血を見てうっとりとしていた。

 

「焦らないでよ。でも、君によって傷つけられたことに関しては不覚にもドキドキしちゃった」

 

 前の世界でもそんなことを言っていた気がしないでもなかったが、どうでもよかったために銃口を向ける。

 

 だが、今の俺には分かっていた。

 こいつを俺は殺せない、と。

 

 無論、それは実力的な問題だ。しがらみを捨て一度殺したことがあるこいつを二度殺すのに、ためらいなど一つもない。

 だが、あの時が高校一年生であったことと、とある術式を使用していたことを考慮すると、現段階では不可能だと結論が出る。

 

 一応、その術式は使えるのだが……あの時の副作用を思い出すにおいそれと使えず、しかもそれを使えたとしても現在の体が追い付かないと薄々勘付いていたので、無理、という方向に落ち着いてしまうのだ。

 

 故に俺は銃口を向けつつも頭の中では自分に対して苛立ちをぶつけていた。

 畜生。畜生畜生。畜生畜生畜生畜生畜生畜生! 

 どうしてこんな風にまた後手に回らなきゃなんねぇんだ! どうして俺はそんな時に限って無力なんだ!

 

 どうしてだ。一体どうしてなんだ……!?

 

「うふふっ。困ってるね」

「くそっ!」

 

 ついに言葉にまで出てしまう。それほどまでに、自分に対してのやるせなさを責めていた。

 

 そんな俺を上空で見ていたらしい夜刀神は、思い出したかのようにさっき持ち出したのと同じようなものを俺に見せながら言った。

 

「それじゃぁ僕はこれを持ってくから。また会おうね」

「「待て! (待って!)」」

 

 誰かの声と被ったが俺は気にせず、反射的に引き金を引いた。

 それと同時に黄色い球が夜刀神に向かって飛んだが当たらず、俺が放った銃弾に当たり、大爆発を起こした。

 

「ぐっ!」

 

 思わず目を腕で隠したので光を直視せずにすんだが、目を開けたらそこに奴の姿は存在していなかった。

 

 代わりに、巨大な人型――但し全身が黒く禍々しいやつが、雄叫びをあげていた。

 

 久しぶりに見たその姿に、俺はポツリと呟いた。

 

「最終術式コード『限界突破』起動。行くぞ――――【F式】」

 

 そして俺はマグナムとナイフを持って、そいつに飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *高町なのは視点

 

 

 

 私は目の前に次々と起きている現象に頭がついていけません。先程までフェイトちゃんとジュエルシードをかけていたのに、途中十五、六歳ぐらいの綺麗な女の人が乱入してきてそれを奪ったので取り返そうとしたところ、ビルの屋上から見覚えのある男の子がその女の人に向かってナイフを目視出来ないほどの速さで投げると同時に飛び降り、何かを構えたかと思ったら地面が爆発していました。

 その爆発が何回か起こったのですが、女の人がいつの間にか空を飛んでおり、男の子が上空をにらんでいました。

 

 そこで私は気づきました。男の子の正体が同じクラスで近所の長嶋大智君だということに。

 

 彼は最近こそいるかどうか怪しい存在になっていますが、前はちゃんとクラスメイトとそれなりに話せていました。

 その原因となったのはきっと……

 

 今はそんなこと関係ありませんね。ともかく、長嶋君がその女の人に向けて何か――よく見たら拳銃でした――を向けて固まっていました。

 その顔にはいつもと違い、怒りや恨みを浮かべていました。

 

 今までで見たことのない表情。一度たりとも見なかった感情。

 どうして長嶋君がここにいるのかとか、あの女の人はいったい誰なのかとか、聞きたいことが頭の中を巡りましたが、ユーノ君がこう言いました。

 

「まずい……なのは。ここはおとなしく逃げないと」

「でもジュエルシードが……」

「それもそうだけど!」

 

 その時です。上空にいた女の人が消え、フェイトちゃんが放った魔法と何かが爆発し、黒くて巨大なものが現れたのは。

 それは人のような姿をして、三メートルぐらいの高さがありました。

 

「ねぇユーノ君。あれは一体なに?」

 

 あまりの巨大さにユーノ君に訊きますが、ユーノ君は返事をしません。それどころか、とても怯えていました。

 

「ユーノ君……?」

「あの時と同じだ……あの女の人、そして巨大な魔生物……」

「え?」

 

 心配になって呼びかけたら何かを思い出したかのように呟いていたので聞き返そうと思いましたが、それはできませんでした。

 なぜなら。

 

「テメェに用はねぇんだよぉぉ! さっさと呼び主戻してきやがれぇぇ!!」

『GYAAAAA!!!』

 

 こちらにまで響く長嶋君の声と、それに呼応するように声を上げるそれに遮られたからです。

 ハッとそちらに視線を向けると、いつの間にか魔力を放出している長嶋君が、まるで流星のように縦横無尽にそれの周りを駆け回り、手に持っているらしい武器で攻撃していました。

 

 移動している間や攻撃している姿など見えず、音ですら遅れて聞こえるほど。

 

 まるで嵐のようだと思っていると、長嶋君は距離をいったんとり、傷だらけのボロボロのそれに何かを言ったと思ったら姿が消え、次の瞬間にはそれの胸の部分に穴が開いていました。

 

 そのまま崩れていく黒い巨人。私はフェイトちゃんの事を思い出して探そうとしましたが、すでに姿はありませんでした。きっとうまく逃げれたのでしょう。

 

「良かった……」

 

 ホッとしましたが、長嶋君の事が気になったので巨人がいた場所へ行ってみたところ、そこに人のいた気配はなく、誰かの血だけが飛び散っていました。

 

「帰ろう、なのは」

「うん……」

 

 ユーノ君に言われて帰る私でしたが、あの場に来た長嶋君について考えていました。

 

 家に着いた時、そういえば長嶋君はちゃんと帰ってこれたのだろうかと思い、私は家をのぞいてみることにしました。

 

「誰もいないのかな……?」

 

 明かりがついていないのでまだ帰っていないのかと思い戻ろうとしたら、ユーノ君が長嶋君の家の敷地内から戻ってきました。

 

「ダメだよユーノ君。人の家に勝手に入っちゃ」

「それどころじゃないよなのは! 庭に人が血だらけで倒れているんだ!!」

「え!?」

 

 そう聞かされて私は焦りながらも庭に入り……そして見てしまいました。

 

 

 黒い何かがついたナイフと拳銃を握ったまま、全身血だらけで死んだように倒れている長嶋君を。




読んで下さりありがとうございます。
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