世にも不思議な転生者 作:末吉
「キャーーーーーー!!」
私は思わず悲鳴を上げてしまいました。
「どうしたんだなのは!」
「一体なにがあったんだ!?」
私の悲鳴でお父さんとお兄ちゃんが叫びながら来て、長嶋君の状態を見て息をのんでいました。
「これは……」
「なのは、何か知ってるか?」
思わず頷きそうになりましたが、私のしていることもバレると思い「帰ってきた時にユーノ君が見つけたの」と言うと、お父さんは「そうか……」とだけ言って長嶋君の体の周りを歩いていました。
一周した後、「恭也。救急車呼んでくれ」とお兄ちゃんに指示を出し、頷いたお兄ちゃんは家に戻っていきました。
「お父さん。長嶋君は大丈夫?」
「ああ。心配はいらないよ。だから早く家に戻りなさい」
「……うん」
救急車が来るまで待っていると言ったので、私はユーノ君と一緒に先に家に戻りました。
*……視点
「そこにいるのは誰だ? この子の両親の知り合いか?」
高町士郎はなのはが家に戻った時に、庭の茂みに隠れている気配に対して声をかけた。
声をかけられたそのものは、何のためらいもなく茂みから出てきた。
「まぁな。こいつの両親から頼まれてな。あんたもそうなんだろう?」
「……ああ」
警官の姿をしたその者は肩をすくめてそう言い、士郎は間をおいて頷いた。
すべては大智を挟んで行われているやり取り。そこに、秘密と言う言葉はない。
「ぶっちゃけこいつおとなし過ぎて暇だったんだけどな」
「そうか? 私は隙がなさ過ぎてつい殺気を浴びせてたんだが」
「子供相手に大人げないな」
「剣術家として、あそこまでの境地に至ったものの実力を知りたくないわけがないだろ」
「あっそ。……でもまぁ、結局教えられなかったよな、『日常』」
「頼まれてはいたが……どうにも難しいな。誘おうにも理由も見つけられなかったし、仕事もあったし」
「こちとら巡回中に一度も会わなかったし」
「そういうのは本人の死亡を確認してからにしたらどうだろうか?」
「……チッ。あんたか」
「あぁ理事長。いつも娘がお世話になっております」
長々と話していたところにもう一人乱入してきた。
理事長、と呼ばれた仮面をつけた人は舌打ちする警官と士郎を交互に見てため息をついた。
「そろそろ本気で彼を助けないと危険だぞ」
「ひょっとして……聞かれてました?」
「だったら最初から居ろってんだ」
「私は動く気のない君たちを見て発言しただけだ。まったく、仮にもあの二人に頼まれたというのに」
「痛いところです」
「非番ですら会わなかった俺にどうしろと?」
「とりあえずこの件に関しては警察の介入はさせないでくれ……といっても、君の位じゃどうしようもないか」
「うっせ」
「そこは私が話をつけておくから……君はこの子についてあげた方がいいだろう」
「いきなりの指名だな、おい」
「そうすると私は……」
「まぁ君は家族に『隣の人は大丈夫だ』とでも言っておいてくれ」
「えらい投げやりだな」
「事態の完全な把握はできていないよ。ただ彼について心配させるのは後々に響くだろうから、念のためだ」
そんな会話をしていると、少し離れたところから救急車のサイレンが鳴るのが三人の耳に届いた。
「呼んだみたいだな、恭也」
「ふむ。ならば予定を変更しよう。君を休職扱いにしてもらう。彼を入院先で看病してくれ」
「話が盛大になったな、おい!」
「士郎君は変わらず。これが妥当じゃないか?」
「相変わらずすごい回転をしてますね……分かりました」
「しゃぁねぇ。恩を仇で返すわけにもいかないからな……話に乗るのは癪だが」
「では私はこれで。このおもちゃのナイフやモデルガンなどは全部捨てることをお勧めする」
「完成度パネェ……了解、っと」
言うだけ言うと理事長は姿を消し、警官はその出来のよさに驚きつつ手袋をつけてナイフやモデルガンを拾っていく。
すべて拾ったことを確認した後、
「それじゃ、士郎さん。本官はこれで。後は入院先の病院で会おう」
「分かった」
それだけの言葉を交わし、警官も姿を消した。
残された士郎は、雲がかかった空を見上げながら彼の両親に対する愚痴を呟いた。
「本来は自分たちでやるものだろう? ……いくら世界を飛び越えたとしても」
その呟きは、到着したと思われる救急車のサイレンによってかき消された。
――――様。今日も元気に稲が育っております。
そう言って『俺』に畑を見せる老人。
――――様。貴方様のおかげでうちの子供もこんなに大きくなりました。
そう言って『俺』に子供を紹介する母親。
――――様! 一緒に遊ぼう!
そう言って『俺』の周りに集まる子供たち。
――――様!? 一体何をしていらっしゃるのですか!? 今日は……の日じゃないですか!
遊んでいると『誰か』が『俺』に注意してきた。
意識は混濁しているが、なんとなく夢だというのが理解できた。
だが、その夢が何を指しているのか、一体誰の夢なのか、それは一切不明だった。
行きますよ、――――様。
そうこうしている内に『俺』は『誰か』に手を引かれて歩き出したとこで……その夢は終わった。
「……ここグゥ」
体を起こそうとしたら全身に力が入らず、無理に入れようとしたら激痛が走ってそれどこではなくなった。
痛みをこらえようとしてもどうやら全身に痛みが残っているようで、一か所に力を入れると他全部が痛み出すという始末。
俺は我慢できずに叫んだ。
「グァァァァ!」
「どうしたんだおい!?」
俺の叫び声が聞こえたのだろうか、誰かが驚きながら入ってきた。しかし、それを確認できるほど今の俺はタフじゃない。
「ガァァァ! グゥ! ぐぁぁぁ!!」
「まさか起き上がろうとしたのか!? くっ。こうなりゃ……」
何かを察したのかその誰かは近づいてきて何かを押した。
その後俺は数人に取り押さえられ、何かを飲まされて意識を失った。
ご愛読、誠にありがとうございました。