世にも不思議な転生者 作:末吉
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、仕様です。
【ファーストステップへ移行を確認。『厳罰』遂行のため、阻止行動を行います】
……ん?
妙な声が意識下で聞こえた。
感情などこもっていない、まるで俺みたいな、機械みたいな声。
寝ているはずなのにどうしてこんな声が聞こえるのだろうか?
それだったらまるで走馬燈みたいじゃないか(厳密には違うが)……などと意識の中で考えていると、急に俺という存在が、意識という中で姿を現したのだ。
「なんだ、これは……」
言葉としてしゃべれることにも驚いているが、自分という外見的特徴が意識という中にすべて再現されていることに驚かされていた。
手が動き、足が動く。その場で足踏みもできたし、この意識という中を駈け出すこともできた。
……ただし、道なき道を走るようで終わりが見える気がしなかったが。
ある程度検証した俺は、その場で立ち止まって思考する。
ここが一体どこなのか。その疑問も存在するが、どうして俺がこうしていられるのかの方がわからない。
先ほどの機械みたいな声が関わっているのか。その声の主は一体誰なのか。
考えるたびに泥沼にはまっていく。つまりそれは、俺の理解力の外にこれがあるということを指すのだが、今の俺にはそう考える余裕などなく、そのまま思考の海を漂っていた。
しかしそれも唐突に終わった。
ビキリ。ビキビキビキ……
何かが崩れる音がし、その音の方向へ振り替えることになったからだ。
振り返った俺は目を細めて警戒しながら尋ねる。
「誰だ、お前」
「元神様」
俺と同じ声で、『そいつ』は答えた。
その答えに俺は半信半疑に訊ねた。
「お前が、『俺』なのか?」
コクン。
返事としては簡単で、それでいて確信を得る答えをする『そいつ』――『俺』。
しかしながら、その答えのせいで俺は混乱した。
一体どうなってやがるんだ? 俺は元神様だと分かってはいたが、その神様自体が俺ではなく俺に眠る意識だと? くそっ。訳がわかんねェ。
頭を掻きながらそこまで考えていると、『俺』はぽつりと語りだした。
「『俺』は神格を返上したわけではない」
「『俺』は神格を
「だがそれも、ある時を境に難しくなった」
「お前になった時だ」
「お前は『俺』と似ていた。誰のせいかは知らない」
「その上『あいつ』も現れた」
「だから神々は『俺』達にある術式を覚えさせた」
そこまで言われて俺は待ったをかけた。
「ちょっとまて」
「……」
なんだと言わんばかりに視線をぶつけてくる『俺』。
一回深呼吸をしてから、俺は先を促した。
「すぅ……はぁ…………いいぜ」
「その名は【F式】」
『俺』からそれを言われた時、俺は驚かなかった。
その前に深呼吸したから、というのもあるだろうが、実際ある術式と言われたらそれしか思いつかなかった。
「『俺』達のために編み出されたそれは、『俺』という力の根源から俺が力を引き出すためのもの」
「だがその度に出力オーバーになる故、回復すらも『俺』の力が使われた」
あの異常回復はそれが原因だったのか。どうりでおかしいとしか思えないわけだ。
「その結果俺と『俺』は同調し……」
瞬間。『俺』の姿と俺の姿がぶれ始めた。
「な、なんだ!?」
「
『俺』がいい終わると同時。俺達の姿は消え、俺の意識も消えた。
【緊急阻止行動は成功しました。これにより『厳罰』は続行され、ファーストステップへの道は強制終了しまし……】
「…………」
目を覚ますとベッドの中。別によくあることだ。
起き上がって状況を確認する。
…………。別に異常はないな。
確認し終えた俺は、窓ガラスを開けて飛び降りた。
音などさせず、また気配を感じさせないようにした俺の飛び降りに気付くものなどおらず、無音のまま木の枝を使って回転し、雲梯の要領で飛び他の木の枝をつかみ、同じことをする。
……裸足はまずかっただろうが、別に問題はないだろう。
そう結論付けた俺は、最後に掴んだ木の枝に乗って上空へ飛び、ある程度の高さで
家に到着した。入院前と変わらない状態だったからか鍵がかかっておらず、そのままドアを開けて中に入った。
「……臭い」
入って早々異臭がした。原因はあの時の夕食の残りだろう。
どうにかしようかと思ったが、先に武器になりそうなものを探したほうがいいかと思い自分の部屋へ向かうことにした。
部屋に置いてあった武器の中で役に立ちそうなもの・しっくりくるものを選んでホルスター付きのベルトにさして腰に巻き、下の異臭を何とかするべくリビングへ向かった。
「ものの見事に腐ってるな……」
『!? マスター……ですか?』
「ん? ああそうだが。おかしなところでもあったのか?」
何故か驚いているナイトメア。服装以外で驚く理由が考えられないので、料理を全部ゴミ箱にぶち込み、皿を洗いながら説明することにした。
「あの後呪獣が現れたから滅多切りにして殺した。その時の後遺症で入院した」
『そうなんですか……じゃ、ありません! なんで封印した魔力を放出したままなんですか!?』
「む」
洗う手をつい止めてしまう。
その隙になのか、一気にナイトメアがまくし立ててきた。
『おまけに手術衣のままです! もしかして抜け出してきたのですか!?』
ハァ。文句を聞き流して皿を洗いながら、俺はそうため息をつく。
前にもこういう奴がいた気がする。確か……そうだ。転生前にいた女だ。
妙に俺に小言を言ってくるから面倒だったが……どうなったっけか。
昔のことを思い出しながら作業をしているといつの間にか洗い物が終わっており、それを拭いて片づけてからナイトメアを装着する。
『な、ど、どうするんですか!?』
「探しに行く」
『探すって……いったい何をですか!』
「あいつの気配を、だ」
それだけで何を言わんとしているのか分かったらしいが、ナイトメアは『無理です』と答えた。
「なぜだ?」
『確かにあれだけ特徴的な気配は分かりやすいでしょう。ですが、私にはそんな機能付いていません』
「別にお前に探せと言ったわけじゃない。俺が探しに行くだけだ」
『どうやってですか!』
「しらみつぶしに世界を回って」
「それだと到底終わりに間に合わないがね」
「『!?』」
第三者の声がしてその方向へ振り返ると、そこには仮面をつけた髪の長い奴が存在した。
「お前は……」
俺が名を呼ぶのにためらっていると、そいつはくっくっくっと笑ってから言った。
「今の私は君の学校の理事長だ。そう呼びたまえ」
「……理事長か」
「そうだとも。まぁ今は、もう一つの業務をしている真っ最中なのだがね」
「…………」
「無反応か。そうすると今の君は、あちらの方かね?」
「だったらどうする?」
理事長の問いに問い返すと、ただ一言「別に」と答えた。
「何もしないのか」
「ああ。私は君を制止させる理由も立場もないし、義理もない。よって何もしない」
「そうか」
「だが君を案内することならしてあげられるぞ。彼女――夜刀神の元へ」
『なっ!? 何を』
「案内してくれ」
『マスター!? 一体何を考えてるのですか!?』
理事長の提案に飛びついただけなのに、なぜそうも反対するのだろうか。
そう考えて、ようやく思い出した。
今の『俺』は俺ではない。長嶋大智という個人ではなく、かつて追放された六道の統括者、古き書物にすら名を残すことがなかった、最初にして最後の存在。
――――その名を永劫輪廻乃尊。かつて六道輪廻の概念を司り、その一つの道に関連して闘神まで司った神であり、当時の神々にとっては禁忌を犯しその名を永久に封じた罪神の名である。
読んで下さりありがとうございます。