世にも不思議な転生者 作:末吉
それは丁度お父さんが入院して私が一人で公園にいた時でした。
ぽつんとベンチに座りながらボーっとしていると、後ろからバサバサバサ! と羽ばたく音が盛大に聞こえました。
当然私は驚いて後ろを振り向き、音源に近づきました。
そこで見てしまったのです。
何の感情もうつさず、ただただ鳥さんの死体を眺めている、長嶋君を。
『……やってしまった。やはりどうしようもないらしい』
鳥さんの死体を眺めながらそんなことを言った彼は、丁寧に地面を掘り起こして埋めると、木の枝で十字架を作ってその上に立て、両手を合わせて何事かぼそぼそ言っていました。
私は長嶋君のことを詳しく知りません。
家が隣でお母さんがいて、私達と同じ学校に通っているぐらいで、それ以外の事は全くわかりません。
だからなのか私達と同い年のはずなのに慣れた手つきでお墓を作る姿を見て、どうしてなのか不思議に思いました。
それを聞こうと思い話しかけようとしたら、長嶋君が立ち上がり、そのまま森の奥へと消えていきました。
誰にも話しかけさせないような雰囲気をまとったままで。
―――――――――――――――――――――――
*
「久し振りだな、夜刀神」
「ようやく来たんだね、輪廻」
理事長に用意された空間を歩いてきたら、目の前に夜刀神がいたので言葉を交わす。
「準備はいいか?」
「何の?」
「もちろん、
そう言った瞬間、俺の横を黒い槍が飛び去った。
「もちろん。君が好きだからね」
「だったら最初から当てろ」
「焦らないでよ。まだ時間はあるんだからさ」
そう言うと同時、俺の手が勝手にホルスターから銃を抜き、夜刀神に銃口を向けた。
向けられた奴は満面の笑みで言った。
「これでようやく、だね」
「……」
俺は向けた銃口を下した。
それを見た奴は怒りながら言った。
「どうして!? なぜ君は僕を殺そうとしない!」
それに対して俺は、簡潔に言った。
「興味がない」
「――――ッ!!」
息をのむ奴に、俺はただ淡々という。
「俺はお前を殺すことも、今の状況も、何もかも興味がない。ただあるとするならば、俺が死ぬことだけだ」
建物が崩れそうになっているが、それも関係ない。ただ潰してくれるなら大歓迎だ。
『俺』は『俺』自身の死だけを望む。それ以外はどうなろうと知ったことではない。
たとえ、俺の復讐の相手に殺されようとも。
俺は一歩前へ踏み出す。
夜刀神は何をするわけもなく、ただうつむいている。
仕方がないのでもう一歩。しかし反応がない。
さっさと殺してくれないだろうか……そう思い始めた時、夜刀神の後ろから俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「――――メ! その人に近づいちゃダメだ、長嶋君!!」
「…………」
だがそれも無視をする……はずだったのだが。
そこにいたのは銀色の鎧を身にまとう少年や、白い服を着た少女、サイズが合わなそうな服装の少年と、人に化けた狼にその腕に抱かれている金髪の少女。
が、すぐに視線を夜刀神に戻す。
すると、奴は嗤っていた。
狂気という言葉がしっくりくるように、どこか壊れた笑いで。
「殺さないのか」
あえて訊ねてみると、返ってきたのは黒い槍。しかも、俺を囲んで。
ようやく死ねる。これでやっと……などと思い目をつむろうとして、つむれなかった。
そのうえ、体が勝手にしゃがみ、槍から逃れるように横に跳んだのだ。
「?」
体の調子を確かめるように手を握り開こうとし……出来なかった。
「なんだ、これは」
力を込めて開こうとするが、今度は銃を持っていた手がそれを阻止する。
俺はある可能性にたどり着き、苛立ちながら叫んだ。
「お前はもう出てこれない! なぜ『俺』の邪魔をする!!」
すると、脳裏にこんな声が聞こえた。
――――テメェが死のうがどうでもいいが、仇相手に死のうとするな!
ついで、先程まで開こうとしていた手が拳のまま、俺の顔に突き刺さった。
『――――あまり彼を舐めない方がいい。長嶋大智は、君の可能性なのだから』
倒れ薄れゆく意識の中、理事長が行く前に言った忠告が、何故か浮かんでいた。
【――――意識介入による阻止行動、失敗。長嶋大智の意識が出現します】
【それに伴い永劫輪廻乃尊の意識的融合の解除――――――無効】
【エラー発生。意識の切り離し不能。同調率80%】
【原因の究明――――不明】
【解決手段――――なし】
【同調率97%】
【システムに異常発生。『厳罰』プログラムに修正不可能のバグが発生。それによりプログラムは強制終了し】
【本来のプログラムである『救済』が発動します】
「…………」
自分で自分の顔を思い切り殴ったせいか、なんかひりひりする。鼻が折れてないか心配だ。
しかしそうも言っていられない。やるべきことをやらんとするため、俺は両手をばねにして起き上がった。
目の前には笑っている夜刀神が。
俺は未だ手に持っていた銃をそいつに向け、目を細めてから言った。
「よう。殺しに来たぜ」
「ははははははっ! ハハハハハハハッ!! 君は本当に僕を狂わしてくれるね!」
嬉しそうであり、怒っていそうなのに笑っているそいつはしばらく笑ってから冷静になり、後ろに浮いていた人とカプセルを消した。
その奥にいた委員長達(なぜいるか知らないが)が何やら叫んだが、俺は冷静に聞いた。
「どうせあの世界と同じ感じだろ?」
「そりゃそうだよ。僕にとって君、いや
それならばこちらも別に問題ないか。そう思った俺は夜刀神の横を抜け、斉原達の元へ駆けた。
「よう」
「よう、じゃないよ長嶋君! 君は一体……!!」
委員長が抗議してきたので腹を殴って悶絶させ、武器を構えてる他の奴らに言った。
「さっさと逃げろ。どうせさっきの奴らはどこか安全な場所に飛ばされてる」
「どうしてそう言い切れるの?」
高町がもっともな質問をしてきたので、俺は夜刀神に向きなおして言った。
「前にも闘ったからな」
「え?」
「もういいかい? さっさと始めたいんだけど」
夜刀神が億劫そうな感じでそう言ったので、俺は新たにナイフを構えようとして……ふとやめた。
「そういえば」
「どうしたんだい?」
「いや、ナイトメアを使ったことがない」
「あぁ。ならどうぞ。今生の別れになるだろうし」
「そうか。この礼は全力を以て返そう」
とりあえずナイトメアを持ってきたが一度も使ってないんだな。
今更な事実に驚きながら、俺はナイトメアに尋ねる。
「なぁ」
『…! マスターですか!? マスターなんですか!?』
「そうだが……お前を起動させる方法は?」
『……そういえば、一度も使ってもらえてませんでしたね』
「ああ」
何やら悲しいのだと分かるのだが、機械にもそう言う感情があるのだろうか?
中々に興味深いものだと思っていると、ナイトメアが説明してくれた。
『セットアップ、ナイトメア。そう仰ってくれれば大丈夫です』
「セットアップ、ナイトメア」
とりあえず言われた通りに言うと、俺の体が光に包まれた。
が、それも一瞬の事。すぐさま光は収まり、俺の手には銀色の太刀と先ほど持っていた銃があり、服装が転生前の最後の衣装だった灰色の死に装束に変わっていた。
「なんだか体が軽いな」
『おそらく魔力放出がある程度やりやすくなったからではないでしょうか? 先ほどまで一定でしたが、逆に言えばそれだけしか放出できませんから』
「そんなものか」
説明を軽く聞き流しながら、新たに出てきた銀色の太刀を軽く振る。
「問題ないな」
「って、長嶋君もデバイス持ってたの!?」
「なんだ、まだいたのか」
俺が感覚が鈍っていないことに安心していると、後ろから高町が驚いたように声を上げた。
「お前たちはさっさと戻れ」
「戻れるわけないよ! 長嶋君が残ってるのに!!」
「いいから戻れ」
「いやだ!」
「戻れ!」
「「!!」」
何度言っても高町が聞かないので、俺は昨日のあの二人の会話の流れと同じように怒鳴った。
高町が黙ったので、俺は畳みかけた。
「いいか? お前達じゃ絶対に束になってもかなわない相手だ。お前達が何のために来たのかわからんが、さっさと戻れ。いいな?」
「でも……」
「でももなんでもない。委員長。話は聞いてたな? さっさと高町連れて戻れ。そこの連れも一緒だ」
「あのさ、意外と君のパンチが痛かったんだけど……」
「気合と根性で痛みに打ち勝て」
「そこは変わらないんだね……じゃ、クロノ君! 行こう!!」
「いいのかい!? 民間人を置いていくなんて!!」
「僕達じゃ邪魔にしかならない! それに、いつ崩れ落ちるか分からないんだから!!」
「……分かった! 行くよ、みんな!!」
そう言うと腕をかばっている少年はそのまま駆け出し、他の奴らも後を追ったが、高町だけが最後まで残っていた。
「行けよ」
「……待ってるよ」
そう言い残すと、高町も後を追った。
「さて」
「優しくなったね。周りから何か言われたのかい?」
「まぁな。口うるさい連中がいるからかなわん」
「言うほど嫌ってないでしょ?」
「……あぁ」
その言葉で俺は構える。
右手で持っている太刀を下し、左手で持っている銃を夜刀神に向ける形に。
対する夜刀神は自然体。しかし、神様ってやつらは自然体でいるほど厄介だと分かるので、警戒心を最大にしておく。
夜刀神はうっすらと微笑み、発した。
「それじゃ、
天井らしき部分から物が落ちてきた時、俺達は駆けだした。
決着を、つけるために。
読んで下さりありがとうございます。お気に入りがもうすぐ二百件に行きそうです。そして最初の事件も終わりそうです。