世にも不思議な転生者   作:末吉

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ここからは日常回となります。
主人公の変化をゆるりと書いていけたらいいなと思います。


日常
22:変わり始めた日常


 『ジュエルシード事件』と銘打たれたこの事件は、容疑者死亡という形で幕を閉じたそうだ。

 

 まぁ高町や委員長から話を聞いただけ……というより俺自身が知っている最後の顛末を言わなかった結果でらしい、となっているようだ。

 

 ちなみに、高町と争っていたらしい金髪の少女――フェイト・テスタロッサというらしい――と狼にも人にもなれる使い魔という存在のアルフ、その少女の母親と姉の四人は被害者ということでお咎めがなかったそうだ。

 

 母親は重体、姉は死んだというのに見事に生き返ったように元気になったので一時検査する必要があるということで、彼女達は一旦時空管理局がある世界に連れて行ったそうだ。

 

 ……という話を目を覚ました日に高町と委員長に言われた。

 

 その母親と姉に俺が一枚かんでいるがそれを説明する気が起きなかったので「よかったな」とだけ言ったら、高町が嬉しそうに「うん!」と言った。

 

 

 まぁ結局目を覚ましたことが医者にバレ、脱走したことを怒られて身体検査したら異常がなかったのでその日に退院したわけだが。

 

 

 さてその数日後。カレンダーを見ると五月の最初だったため、ゴールデンウィークという休息期間中とのことらしいのだが小学生の俺達に関係などなく。

 

 いつも通り朝五時に目を覚ました。

 

「……」

 

 無言で体を起こし、とりあえずトレーニングウェアに着替える。

 

 体が鈍りきっているだろうから今回はとりあえず往復二キロのランニングから始めるか。

 そう思った俺はそのまま下を降りて玄関を開け、「行ってきます」も言わずにランニングを始めた。

 

 俺がこういったトレーニングを再開した理由。それは、身体能力が以前と比べると落ちたからだ。

 

 原因はなんとなくわかる。輪廻という魂が消え、あいつが持っていた力が消えた。それだけだ。

 別段それは喜ばしいものなのかもしれない。だが、俺にとっては問題にしかなりえなかった。

 身体能力が落ちるということは、昔みたいな行動が一切行えないという事。

 例を挙げるなら銃弾を斬ったり、蹴りで地面を陥没させたり岩を礫にしたり。

 これらを何気なくやっていたせいで、落ちた時とのギャップが激しいから困っているのだ。

 

 …………なぜか魔力は最高ランクらしかったが。すぐさま封印して0にしたが。デバイスないと何もできないが。

 己の肉体だけで何とかしてたのにいきなり力が落ちたものだからどうしようもない。

 木なんか一撃で壊せないし、コンクリートすら粉微塵に出来ない。

 

 割と不便な体だな。そう思いつつ俺は、今日も適当に青空を見上げ走っていく。

 

 

 計四キロのランニングを一時間経たずに終わらせた俺は、そのまま庭で腕立てや腹筋、懸垂を百回ずつやっていく。

 前は千回やっていたのだが、いざやろうとしたところ二百回でギブアップしたので、その半分でやっている。

 

 体力だけは相変わらずあの時のまま。それなのに身体能力だけは落ちている。

 何とも言えない不具合感に慣れない俺は、一心不乱にやり続けた。

 

 

「おはよう、大智君。両親はまだ寝ているのかな?」

「おはようございます、士郎さん。おそらくはそうだと思います」

 

 筋トレのメニューをすべて終えたので少し玄関先の塀に上ってボーっとしていると、新聞を取りに来たのか高町の父親である士郎さんがあいさつをしてきた。

 

 どうも翠屋の前を通り過ぎた時に出ていた殺気(俺に分かる程度)の正体はこの人だったらしい。両親が戻ってきた挨拶をするのについて行ったら、そんなことを言われた。

 すまなそうに言われたが別段気にしていなかったというより関わろうとしなかったために実害はなく「気にしていません」と言ったら「そうか」と微笑みながら言っていた。

 

 その時に剣術家であることを知り、「いつか手合せ願いたい」と言われた時にはどうしようか悩んでしまった。

 

 まぁ了承したが。

 

 そんなこんなでここ最近会話しているのだが、とても剣術家だったとは思えないほど穏やかな人だった。

 

 うちの親父に対しては敵愾心剥き出しだったが。

 

 俺には関係ないので詳しく聞いていないが、どうやら桃子さんを取り合った仲だとか。

 親父いわく『いい加減その誤解解けろっての!』らしいのだが、果たしてどうなのか分からん。

 

 そんなことを考えていると、士郎さんが何やら感心していた。

 

「どうかしましたか?」

「いや。依然の君とは比べ物にならないほどに会話が弾むからね。簡単に変わるんだと思って」

「変わってませんよ、完全には」

「そうかな? 私としては随分変わったと思うけど」

 

 士郎さんの言葉を否定したらそんな感想を言われたので、俺は空を眺めながら言った。

 

「まだまだですよ。簡単に人が変われるなんて、そんなの理想ですって。俺はまだ一歩踏み出したかどうか、ですから」

 

 そう。俺は結局のところスタートラインに立ち始めたばかりなのだ。『人』という果て無き道の、スタートラインへと。

 自分の発言で立場をもう一度理解した俺は、塀の上で片足立ちをする。

 ここから十分間の精神統一。それができたら朝食と昼食を作るか。

 

 そんなことを思いながら、士郎さんの応援する声を聴き、精神統一を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また塀の上で瞑想して。力が落ちたからといってそんなに修練ばかりしてたら体に悪いわよ」

『そうですよ。マスターは自分の体を鍛えるだけで、それ以外――魔法の修業をしないのですから。少しは暇な身を考えてください』

「……この場合、俺はどう反論すればいいのだろうか?」

 

 精神統一が終わり新聞を取って家に戻ったはいいが、母親とナイトメアにそれぞれ違うことを言われた。

 

 うちの両親は、しばらく家で過ごすらしい。

『『仕事から一時解放されたーー!!』』と喜んで叫んでいたので、決定なのだろう。

 部屋は以前母親が使っていた部屋には母親が、空いていた部屋には父親が入居(違う気がする……)し生活している。

 

 あと、俺や高町や委員長がデバイス持ちだということを知っており、俺の修練にはあまり何も言わない。

 ありがたいことだと思いながら、それを信頼して――甘えるという行為らしい――俺はこうして朝から行っている。

 

 まぁ一人暮らしの習慣が身についたおかげなんだがな。こうして毎朝修練できるのは。

 

「ほら朝食出来たから。そこで立っていないでシャワー浴びてきなさい」

「分かった」

 

 しばらく家事は両親がやってくれるという事らしいので、俺はおとなしく従うことにしている。

 

 

「いただきます」

「さっさと食べなさい。じゃないと遅刻するわよ」

「分かってるって」

 

 何気なく会話している自分に少し驚きながら、それでも食べるのをやめないでいると、親父が起きてきたのか欠伸をしながらリビングへ来た。

 

「ファァ……おはよう」

「顔を洗ってシャキッとしてきなさい、あなた」

「わかった……」

 

 そのままのっそりと動くのを感じる。

 気付けば気配を感じる範囲も狭くなった。塀の上に立って精神統一しても俺と高町の家の中までしかわからないし、普段だと俺の半径一メートルぐらいしか感じられない。しかも判別ができない。

 以前は平然と誰だか分かり、本気になれば街のすべてを範囲にできたのだから、ずいぶん落ちたものだと分かる。

 これも元に戻したいが今は特に不便だと思えないので置いといているのだが。

 

 

 朝食を食べ終わった俺は今日も学校に行くかと思いながら「ごちそうさまでした」と言って、食器を片づけることにした。

 

 

 

 

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」

「おう。頑張ってこいよー」

 

 両親(親父はパジャマ姿)に見送られ、七時半に家を出る。

 バスがあるのだが、俺は前世で襲撃されたことしか記憶にないためここから走ることが習慣化されている。

 さすがにうんざりしたからな、本当。

 

 俺が家を出て走り出そうとした時、前の家から高町が出てきた。

 挨拶する時間も惜しいと思った俺は横を通り過ぎようと駆けだそうとして、振り返った高町と目が合った。

 

「おはよう長嶋君!」

「あ、ああ」

 

 咄嗟に挨拶する俺。しかし生返事が否めない。

 しょうがないだろ。走ろうとしたら挨拶されたんだから。集中力が切れる。

 こうなったら少しは歩くか。そう思った俺は、「ほら。さっさと行くぞ」と言って高町を追い越した。

 

「あ、待ってよ!」

 

 後ろから慌ててついてくる高町の声を聴きながら、俺はその場で足踏みしながら待った。

 

「早くしないとバスがなくなるだろ?」

「分かってるけど、いきなりはつらいよ」

「だったら体力作りでもしたらどうだ」

 

 追いついてきたので俺は高町に合わせてバス停へ向かう。

 ちなみにこれは両親が『『女の子一人置いていくなんて薄情もの!』』という声により改善した結果である。

 

 ……自分の身ぐらい自分で守れないでどうすると思ったが、前世とは違うことを思い出し黙ってうなずいたのはここだけの話だ。

 

 そして高町は俺のこんな行動が未だに慣れないのか大分よそよそしい。

 俺だって慣れてないんだが。

 

 そこからバス停に着くまで、俺と高町は一切会話をしなかった。

 

 

 バス停についた。

 ちょうどバスが来たので高町が乗り込んだのを確認した俺は、そのまま駈け出した。

 以前なら屋根の上を跳んで学校へ向かっていたが、今じゃ道路を走ってギリギリ着くかどうかにあたる。しかも学校着いたら眠くなるし。

 

 本当、大分落ちたなぁと思っていると、バスに追い抜かれる俺。

 一番後ろに座っている高町たちがこちらを見ていたが俺は気にせず、全力疾走を続けながら学校へ向かった。

 

 

 

 

 

 

「……セーフ」

「わざわざ学校まで走ってくる必要はあるの?」

「委員長か……バス代がもったいない」

「それぐらいは払っても損はないんじゃないかな」

 

 苦笑しながらそんなことを言う委員長だが、俺の「小遣いをもらった記憶がない」という発言で完全に動きを止めた。

 ウトウトしながらも最初の授業を揃えHRが始まるまで待っていると、男子数人が俺の席の周りに来た。

 俺は欠伸をした時に誰が来たのか理解し、首を回しながら訊いた。

 

「何の用だ、天上」

「おい。天上様になんだその口調は!」

 

 取り巻きの一人が怒鳴ってきたが俺は肩をすくめるだけにとどまり、その中心人物の同性別――天上に視線を向けた。

 奴は口元を隠すように手を置いてから言った。

 

「意外じゃないか、君がしゃべるなんて。学校にも来てないと思っていたからね、親切な僕が調子を聞きに来たんだよ」

「そうか。俺は入院していた以外は毎日学校に来ていたからそんな気遣いは不要だったな」

「ああ、そういえばそうだったね。あんまりにも影が薄いから気付かなくてごめんね!」

 

 後半部分を声を大にして言う天上。その取り巻き達は口々に賛同し、頷いていた。

 

 前世にもこういうけなし方するやつがいたなぁ、そういえば。

 前にも確かこいつがこんな風に絡んできたことを皮切りに似たようなやつを思い出した俺は、

 

「いや、別にかまわん。俺は元々影が薄いからな」

 

 相手の言うことを肯定することにした。

 

 …………見事に黙ってしまった。頷かれることを想定していないのだろうか?

 俺は囲んでいる奴らが言葉を失ったこの状況を見てそう思い、「お節介ながら言っておくが、もうすぐHR始まるぞ」と呟いて席に戻るよう促した。

 

 俺の声でとっさに時計を見た彼らはすぐさま自分たちの席に座った。

 俺はというと、欠伸を噛み殺しながら外を眺めていた。

 

 まったく。いい天気だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後の授業は普通にしていたため問題の回答者にちょくちょく指名され、眠らないように何とか必死に起きていたのですべて何とかなった。

 ……答えを書くたびに天上達の視線が厳しくなるのだが、これは少し対処しないといけないのだろうか?

 敵意の視線に慣れきった俺はそんなことを考えながら、午前中の授業を乗り切った。

 

 昼休み。

 睡眠。

 

「なわけないでしょうに。午後の授業乗り切れるの?」

「一週間食料がなくても生きていける自信はある」

「……自衛隊の人達でもそんな厳しくないと思うけど」

 

 しようと思ったのに委員長が弁当を俺の目の前で並べ始めたので、俺も仕方なく弁当を出すことにした。

 

「あれ? 重箱じゃないの?」

「母親が『こんな量を食べるんじゃありません!』と怒って没収された」

「それはそうだろうけど……おかずの種類も何もかも違うね」

「そりゃそうだ。つくってもらったから」

 

 そんな会話をしながら食べ始める俺たち。

 

 話題はもちろん、俺のことだ。

 

「にしてもみんな、そんなに戸惑ってなかったね」

「だな。さらに引かれるのだとばかり思っていたが」

「まぁ君、無駄に堂々としているからね」

「それだけで戸惑いが消える要素があるのか?」

「一概には言えないけどね。ずっと影が薄いという印象だったのに何事もなく堂々といるからさ、『あぁ。そういやいたな』で思われたんだよ、たぶん」

「なるほど」

 

 そこで一区切りついて黙々と弁当を食べていると、一膳の箸が俺の弁当箱の上を通過したので、とっさに弁当箱を横にずらしていった。

 

「前までは大丈夫だったがこのぐらいの量になるとこちらとしては死活問題だ。おかずをタダで渡す気になれない」

「いいじゃねぇか。俺としちゃぁ、お前のおかずが生命線なんだから」

 

 そう言ったのは、俺の隣の席で食べている男子。名を霧生元一(きりゅうもとかず)と言う。

 なんでも、料理技能が壊滅的な一家らしく、弁当がロクに食えないものしかないため他人のおかずを食べて学校を過ごすという、委員長の友達としては変わり者の人物である。

 

 ……類は友を呼ぶのだろうか。

 

「元一。コンビニとかで買ってこないの?」

「いや、それがさ。今日は寝坊して忘れてて……弁当を持ってこようものなら餓死することを選ぶぜ、俺」

 

 そういって自嘲気味に笑う霧生。

 それを見た俺達は流石に可哀想なので何とかしてあげたいと思うのだが、その隣の人物を見て「ああ。別にいいか」と思ってしまった。

 

「あ、あの……霧生君」

 

 その隣の人物はもじもじしながら名を呼ぶが、それに気付かないこいつは「だから弁当のおかず分けてくれ、頼む!」と必死になっていた。

 俺達はアイコンタクトで意見を交換し合うと、懇願している霧生に向かって「後ろを振り向け」と言った。

 

「後ろ……?」

 

 そう言って振り向くと、彼は固まった。

 その先には、顔を赤らめ弁当を持つ手をもじもじさせながら立っている女子がいたからだ。

 

「……木在(きさら)

 

 冷や汗を流し顔を真っ青にしながら、霧生は彼女の名前を呼んだ。

 呼ばれた彼女は途端に顔をあげて笑顔で返事をする。

 

 水梨木在。霧生とは昔馴染みらしい。詳しいことはあんまり委員長から聞いていないのでわからないが、霧生は彼女が苦手だということがここ最近分かった。

 なんか執拗に追いかけてくるらしい。まるで俺(または輪廻)と夜刀神みたいな関係だな。

 

 まぁここは傍観しておこう。そう心に決めた俺が食事を再開させたら、いつの間にか霧生は消えていた。

 

 一瞬で消えるとは。この学校に使い手でもいるのかね。

 そう思いながら、俺は弁当を食べ終えた。

 

 

 

 

 午後の授業。初っ端から体育。

 ちなみに、体育は基本影の薄さで見学していたので、最近受け始めたら先生には驚かれた。

 

「じゃ、今日はサッカーやるぞー」

 

 男女混合の授業でこの教師は何を言っているのだろうかと思わずにいられない発言を受け、ため息を見えないように付いた俺。

 まぁ当然のごとく男女別れてやるということなので、内心ホッとしながらサッカーをやることにしたのだが。

 

「模擬試合とはいえ、こうもぴったりマークをつけられると……さすがに動きづらいな」

 

 最後に試合やるぞーと先生が言ったので今その真っ最中なのだが(途中の練習は特に問題なかった)、相手チームに委員長がいるせいか、俺に三人のマークがついていた。

 

 その委員長は指示を出しながらこちらに攻め込んでいる。

 

「守りたいのだが……どう動くか」

 

 動き自体のイメージはできているのだが、体が追い付かない恐れがあるのでここはやめておこう。

 そう考えて三人に囲まれて過ごしていると、囲んでいた一人がゴール前へ向かった。きっとシュートしに行ったのだろう。

 これで残りは二人。

 

 と思ったら決められてしまったらしい。これで一対零。

 残り時間を目測すると五分強。俺へのマークが一瞬いなくなるので、これなら何とかなるだろう。

 

 そう考えた俺は、隣のパスを受けて固まっている霧生に向かって言った。

 

「こっちだ!」

「任せた!!」

 

 バックパスを受け取った俺は、そのままダイレクトで上にあげた。

 

『『『はぁ!?』』』

 

 周囲の奴らが驚いているが、俺は気にせず自分が打ち上げたボールを見ずに走る。

 前世でもこういうスポーツをサバイバル訓練形式で行っていたので、経験則で自分がどこへ蹴ったのかわかる。

 

 そうでもしないと、自分の投擲物で死ぬとかいう、シャレにならないことがあるからだ。

 

 まさかこういうところで役に立つとはなぁと内心思いながら、俺は呆気にとられているゴールキーパー前まで来ると、ちょうどボールが飛んできたのでヘディングしてゴールを決めた。

 

「これで同点だな」

 

 まだまだ脚力がないのは否めないが、このぐらいなら今のところ何とかやっていけるだろう。

 そう思いながら自軍ピッチへ戻ろうとしたのだが、誰も動かないことに首をかしげた。

 

「? 何を固まっているんだ? まだ授業中だろう?」

『『『小学生以上の動きをして何首傾げてんだテメェ!!』』』

 

 怒鳴られた。これはやりすぎたのだろうか。

 委員長に視線で確認すると頷かれたので、やはりやりすぎたのだろう。

 

 結局、その一点以降俺へのマークが厳しくなりボールが回ってこなくなったが、その隙に天上が二点ぐらい入れたので本末転倒だなと思いつつ、さわやかな笑顔を浮かべ声高にしゃべる天上を無視して教室に戻った。

 

 

 

 

 学校が終わり。

 おとなしく帰ろうとしたが今まで黙っていたのか、高町達が帰ろうとしていた俺を呼び止めた。

 

「なんだ?」

「本当に変わったわね、あんた」

「言っておくが、俺はまだ変わり始めだ。……まぁ、人間なんてのは変わろうとすれば変われるんだがな」

「えーっと……?」

 

 なんかよく分かってないらしい高町。言い回しが難しかったのだろうか。

 俺はほか二人の顔を見たが、どちらも同様の顔を浮かべていた。

 

 そこまで難しく言った気がしないのだが……なんて思いつつ、俺はなるべく簡単な言い回しで今の言葉を説明することにした。

 

「これは俺の持論だが、俺たち人間を作り上げているものが『今』の俺達だとしよう。その作り上げているものの一つ……たとえば性格とするか。それが少しでも『変化』……泣き上戸だったり引っ込み思案だったりになったら、それはもう『変わった』俺達になるということだ」

「なんとなく云わんとしてることは分かったけど……」

「言い方がまどろっこしいのよ。もっと簡単に説明しなさいよ。なのはがショート寸前よ?」

「…………」

「すまん。……要するに、何かを変える意志さえあれば、あとはそれを行動に移すだけで変わったことになるということだ」

「そういうことなんだ……長嶋君は本当に頭がいいね」

 

 やっと理解してくれた高町。

 俺の場合頭がいいというよりは、高校までの知識と今の考え方があいまった結果なのだが、ここでは黙っておこう。口は災いの元だ。それと、朝と違うようなことを言った気がするが俺自身に例えると変わらないので別段気にしない。

 

 と。そういえば俺は何で呼び止められたのだろう。話に夢中(正確には説明するのに夢中)になっていたのですっかり忘れていた。

 

 なので、俺は三人に聞いてみた。

 

「俺は一体何で呼び止められたんだ?」

「「「あ」」」

 

 どうやらしっかり失念していたらしい。まぁ仕方がないだろうが。

 俺は内心だけでため息をつき、もう一度質問した。

 

「で、何の用だ?」

「えっとね……明日から四連休だよね?」

「そういえばそうだったな」

「何か予定あるの?」

「特には。早朝ランニングからの筋トレ以外は」

「だからあんなに足速かったんだ……」

「って、すずか。食いつくところ違うでしょ」

「あ、ごめんごめん」

 

 バニングスに注意されて謝る月村。その間で俺は少し話を整理する。

 まとめると四連休で何かすることなのだが……はたして何をするつもりなのやら。

 そんなことを思いながら、俺はとりあえず予想できる提案の一つを言ってみた。

 

「出かけるのか?」

「うんそうだけど……言ってないよね?」

「流れで考えただけだ」

 

 月村が確認してきたので予想しただけだと答える。実際そうなのだが。

 まさか当たるとは思わなかったので、今俺は驚いている。

 

 あっちも驚いていたが、バニングスがすぐに気を取り直していった。

 

「ちょうど私たちも予定ないし、キャンプしようという話になってね。昨日までに私たちの両親には話を通してあるし、あとはあんただけだから」

「……俺以外に誘う奴いないのか?」

「あんたが一番頼りになりそうだし、あんた以外だと委員長ぐらいでしょ? 私達に普通に接してくれる人」

「で、その委員長は?」

「『悪いけど用事あって無理』って断られたわ」

「ふむ」

 

 委員長がいかないほどの用事か……おそらく管理局とやら関係だろうな。

 そう適当にあたりをつけ、俺は少し思案したが、別段断る材料がないため、頷いた。

 なのに、なぜかまた驚かれた。

 

「どうした?」

「以前までは普通に渋ってたのにあっさりと頷かれたら、そりゃぁ驚くわよ」

 

 そういうものだろうかなどと思ったが、バニングスの言葉に月村も高町もうなずいていたのでそういうものかと納得することにした。

 

 

 で、俺は行きと同じでランニングで家へと帰り、両親に「明日からキャンプ行くことになった」と言ったら道具の準備をやりきった上に赤飯を買ってきた。

 あまりの速さに目を瞠ったが、人数がちゃっかし三人に増えていたこと、集合する時間と場所を聞いてなかったので分からないこと、固定電話以外で電話がないので個人的に電話できないという問題点が出てきたため、間に合うかどうか考えながら、九時に寝た。




過去最長ですが、読んで下さりありがとうございます。
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