世にも不思議な転生者 作:末吉
翌朝。
昨日と同じ時間に起きた俺は、いつも通りランニングをしようとトレーニングウェアに着替え下に降りたところ。
「よぉ大智。お前朝早いなぁ」
「あら大智。おはよう」
「…………寝てないのか?」
目の下にクマを作った両親が二人で神経衰弱をしていた。
「いやぁ……気を抜いたら寝るな、これ」
「そうね…………Zzz」
「寝てるよ、母さん」
「はっ!」
どうもキャンプだから眠れなかったらしい。ここまで子供みたいな大人を体現している人ってなかなかいないのではないだろうか?
人からすれば、俺の方が大人みたいな子供に見えるのだろうが。
まぁともかく。ここまでテンションが壊れかけている両親を見て早朝ランニング往復四キロをやるほど俺は壊れていないので、仕方なく今日はやめてうちの両親の眠気覚ましを手伝うことにした。
「――――――のだが、結局うちの両親は耐えられず眠りこけた」
「あんたはそんな早く起きて顔色一つ変えないのね……」
「いいなぁ……そういうの」
「すごいねぇ、長嶋君」
とりあえず色々な方法で起き続けさせようとしたのだがギブアップしてしまい、床に着いてしまったところでインターフォンが鳴ったので玄関を開けたところ高町たちがおり、両親の話になったので説明したところ、別なところで感心された。
ところで彼女達の服装だが、とてもキャンプに行こうというものではなかった。
なんというか、動きにくそうな服装なのだ、目の前にいる全員が。
とても口出ししにくいのだがキャンプを舐めてるだろと言いたい衝動をぐっとこらえ、とりあえず聞いてみる。
「もうすぐ出発か?」
「ええそうね」
「分かった。少し待っててくれ」
そう言うや否や家に戻り、昨日両親が準備した荷物の中から使えそうな必要最低限のモノだけを残しておいておき、家を出た。
「……随分荷物少ないわね」
「キャンプだろ? 野外宿泊。携帯釣竿にコンバットナイフ、それに野営用テントとカンテラさえあれば――――」
「それは絶対におかしいよ長嶋君!」
「そうだよ! コンバットナイフなんてつかまっちゃうし、子供が持っちゃ危ないんだよ!!」
月村。やけに詳しいな、おい。そう言ったものを見たことがあるのか?
そう思ったが深く追求せず、また、自分の発言がずれたものだと知ったので、素直に聞いた。
「だったら何を持っていけばいいんだ?」
「ふつう、着替えとかお菓子とかテント、釣竿やランプとか言ったものじゃない?」
「トランプとかあるといいよね」
「そうそう!」
……なにやら盛り上がっているようだが、俺は静かに家の中に戻って荷物を全部出して改めて持っていくのとそうでないものを分けてみる。
…………花火って季節外れだよな? でも音によって野生動物を威嚇できる点ではいいかもしれない。やったことはないが。
これは……蚊取り線香? なぜ着火式なのだろうか。そしてよりにもよって豚なのだろうか。
そんなこんなで選別作業すること十分。
コンバットナイフが名残惜しかったのだがまたとやかく言われるのも面倒なので、置いておくことにした。
ナイトメアも置いておきたかったのだが、『たまには私もつれてけーー!!』と言葉遣いがおかしくなるほど荒れ狂ったので、仕方なく持っていくことにした……バックの中に入れて。
念話が思いのほかうるさいので(どうも魔力を少し解放したようだ)、バックの飾りとしたのだが……良く考えたらリストバンドみたいなんだよな、これ。おかしくないのだろうか?
まぁいいか。そう思った俺は両親に書置きなどせず、ただ普通に「行ってきます」と言って玄関の鍵を閉めた。
「あれ、大智君だけかい?」
「今はおとなしく寝ています、うちの両親は」
「……そういえばそうだったね、あの二人は」
とりあえずバックを背負って高町の家へ向かうと、準備をしていた士郎さんが気付き挨拶をしてきたので答えたところ、何故か遠い目をしていた。
うちの両親のどちらとも面識があるようなのだが、はたしていつ知り合ったのだろうか。謎だ。
「荷物どうする気だい?」
「場所さえわかれば徒歩でも行きますが……」
「遠慮することはないのよ、大智君」
「桃子さん、おはようございます」
基本的に一人が楽な故に発言したのだが、どうも桃子さんは遠慮と解釈したようだ。
まぁ普通は遠慮としかとられないよな、俺の発言。
そう今更納得していると、士郎さんが「なら置いてっても問題ないか」と漏らした。
一見問題発言だと思うが、おそらく両親の事だろうと思うので俺は気にしないでいると、何故かじっと桃子さんが俺を見ていた。
「……なんですか?」
たまらず俺は聞いてみる。
すると俺が背負っている荷物を指差した。
「?」
「重いでしょ?」
「いえそれほどでも……」
「重いでしょ?」
「ですから……」
「ね?」
「…………すいません」
有無も言わさぬといった口調、というより単純なる根負けで俺は士郎さんに荷物を預けた。
今回参加するのは男性陣では士郎さん・恭也さん・鮫島さんと俺の四人。女性陣はバニングスに月村、高町と月村の姉にノエルさんにファリンさんだそうだ(フェレット含む)。
…………女性陣は果たして何とかなるのかわからんが、全体的に見れば何とかなるだろうと思える。
何もなければの話、だが。
「行くわよ! さっさと乗りなさい!!」
「悪い」
バニングスに怒鳴られ、俺は何故か停めてあったマイクロバスに乗った。
……朝飯食べるの忘れた。
――――――――――――――――――――――
「お嬢様。つきました」
「ありがと、鮫島」
どうやら目的地に着いたらしい。終始窓の外を眺めるだけで空腹を抑え込んでいたのでどういう会話をしていたのか全く覚えていないが、少なくとも自然は綺麗だった。
しかしこの車割と乗ってたな。良く湿気がたまらなかったこと。
今更な事実に降りてから感嘆していると、士郎さん達が荷物を下しているのが見えたので、あわてて自分の荷物を取りに向かった。
「これだね?」
「はい。ありがとうございます」
「どういたしまして」
恭也さんから荷物を受け取り、俺は背負ってから辺りを見渡す。
……随分軽装の奴らが多いな。危険とかを考えていないのだろうか?
俺はというと、地味な茶色の薄い長袖に薄緑の長ズボン。完全に自然にまぎれること前提の服装である。
この差は一体何なのだろうかと思っていると、士郎さんがみんなを集めていた。
俺に視線が集まっているのがわかったので、考えることをやめてそちらに向かった。
「全員集まったかな? それでは、注意事項をいくつか言うからそれをちゃんと守るように。一つは――――――」
キャンプの注意事項とやらを軽く聞き流しながら、近くに立っていた看板に視線を向けると、『川遊びと山遊びが楽しめる場所はここだけ!』などと宣伝にしても嘘くさい文句とともに全体図が書かれていた。
……歌い文句はともかく、地図情報は嬉しいな。迷子にならなくて済む。
そう思いながら全体図を記憶していると士郎さんの説明が終わったらしい。みんなが移動するようなので俺は一旦記憶するのをやめ、後は細部を歩きながら覚えるかと思いついていった。
「さて。まずはテントでも借りてこようか」
自分たちが設置する場所に着いた俺達が荷物を降ろすと士郎さんがそう言ったので、俺は自分のバックに伸ばした手を止めた。
……テントとは借りれるものなのか? だとしたら持ってくる意味は?
そんなことを考えていたら顔に出ていたのか、近くにいた高町が俺に尋ねてきた。
「長嶋君。テント持ってきたの?」
「……ああ」
そう言いつつバックの中から組み立て前のテントが入った袋を取り出し、地面に置いた。
これは確か親父が作ってたらしいもので、『見た目に反して広いんだぞー』と昨日言っていた。
具体的収容人数を聞いていないが六人はいれば問題ないだろうと思いながら説明書まで出すと、士郎さんが近づいてきた。
「そのテントってもしかして……竜一がつくったものかい?」
「そうですけど……何か問題でも?」
これがどういうものなのか知らないので知っているらしい士郎さんに聞いたところ、「いや。問題はないんだ」と言った。
「ないんですか?」
「ああ。ただ……」
そう言葉をきった後、少しためて我が親ならやりかねないであろう言葉を聞いた。
「テントというより、小屋に近い形になるんだよ、それ」
前に見た時は感謝どころか思わず顔面を殴ってしまったよ。そんなことを言いながら笑う士郎さんを見て、俺はそっとテントを戻すことにした。
どんな材料を使っているのかなど聞きたくない。もはやオーバーテクノロジーもいいところだ。
親父の技術力の人外さに一人ため息をついていると、気を取り直した士郎さんがもう一度テントを借りに行こうということで、鮫島さんと俺たち子どもを残して取りに行った。
残った俺達の話題は、無論俺の家族についてだった。
「……あんたの親って何者?」
「どこで仕事をしているのか知らんが、父親は発明好き。母親は世話好きだという事しか知らない」
「それはそれでどうかと思うよ」
「今までほぼ居なかったからな。あんまり詳しく知らなんだ」
「でも長嶋君たちのお父さんたち、愉快そうだったよね」
「愉快そう、じゃない。愉快な人たちなんだ」
「そうですな。お二方は嵐のような方たちですので」
「? 鮫島、長嶋の両親のこと知ってるの?」
「勿論です。お二方は長嶋様を生むまでは『万能夫婦』とまで呼ばれていたのですから」
あの町に住む人なら大体お世話になっているはずです。そう鮫島さんが締めた時、俺は両親の昔の一面を知って驚き、高町たちは純粋に驚いていた。
……まさか自重しなかっただけじゃないだろうか?
更にそんな疑問が浮かんだが、それはもう時効かと思い無視することにした。
と、ここで何かを思い出したのか、月村が俺に尋ねてきた。
「そういえば長嶋君。昨日の体育すごかったね。バス停から学校まで走ってるのはあのためなの?」
「…ああ。厳密にいうと、あれ以上の動きをするためなんだが」
「……あれ以上って、一体何を目指してるのよ……」
呆れてものが言えないらしいバニングス。
「そうはいうがな、いつ自分の身が狙われるか分からないんだぞ? 守れるぐらいの力を得ようとして何が悪い」
「あんたは今ので十分よ!」
怒鳴るように言ってきたので少し気圧された俺は、「……そうなのか?」とたまらず聞いたところ。
「うーん……アリサちゃんの言うとおりかな。長嶋君、前に高校生ぐらいの人を大根で殴り倒してたから」
「そういえばそうだったね」
月村の答えに高町が頷き、ほらみたことかみたいな顔をバニングスがしていた。
そう言われても死にたくないからなぁなどと思っていると、テントを借りてきたのか士郎さん達が戻ってきた。
まぁ体を鍛えるぐらいなら問題ないだろうと思い、今後のトレーニング内容を脳内で軽く見直していた。
テントの組み合わせは俺がその周辺で寝るとか言ったら却下され、結果的に男性陣と女性陣で別れることになった。当たり前だが。
で、そのテントを立てる作業を行っているのだが、これが早く終わった。
男性陣のテントは鮫島さんと士郎さんが二人で終えてしまい、女性陣の方は俺と恭也さんが手伝ったら終わった。
最初の骨組みを終わらせたときの驚かれようはなかったがな。
で、次に材料集め……は別にやらなくていいらしいのだが、腹が減った俺には関係なく。
士郎さんに「ちょっと川釣りしてきます」と断って記憶した場所へ向かった。
「ちょっと待ちなさいよ!」
「ん?」
バケツと釣竿と餌箱や諸々を持って釣り場所へ向かっていると、バニングスに呼び止められた。
「なに一人で行動してるのよ!」
「朝食と昼食を獲りに行くだけだが?」
「みんなと一緒でもいいじゃない」
そう言われて振り向くと、何故か鮫島さん以外の全員がいた。
「?」
「ほら、行くわよ」
首を傾げたらバニングスにそう言われ、俺は前を振り向かされた上に背中を押される形で釣り場所へ向かうことになった。
読んで下さりありがとうございます。
……そろそろキャラ紹介必要ですかね?