世にも不思議な転生者   作:末吉

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なぜこうなった


25:キャンプ初日 夕食

 バニングスに引きずられるままにしていたら昼食まで抜いていた件。

 

「……久しぶりにこのまま絶食でもしようかな」

「いや、そんなことよりさっきのあの態度何よ! どれだけ釣ったか知らないけど、あそこまでムキになる必要ないんじゃないの!?」

 

 俺を引きずるのをやめたバニングスが俺に向かってそう怒鳴るが、俺はただ肩をすくめるだけにした。

 

 まさかたった二匹のためにあれだけ激怒してたと知られたら、さらに怒られること間違いなしだからだ。

 ……俺にとっては貴重な食料だったから死活問題だったのだが。

 

 俺が肩をすくめたのを見てバニングスはさらに何か言おうとしたらしいが、ハァッとため息をついてそのまま前を向いた。

 

「……なんか、これ以上あんたに言っても意味がない気がしてきたわ」

「意志の固さは平行線の長さにつながる」

「は?」

「なんでもない。只の独り言だ」

 

 バニングスの発言を受け咄嗟に昔言ったことがあるセリフが出てきたが、俺は何とか誤魔化した。

 ……しかし本当にどうするか。時刻的には三時ぐらい。もうすぐ夕飯になるだろうからこのまま抜くというのも一つの選択だ。

 が、それは自分の事だからそういう選択ができる訳であり、バニングスにとってどうするべきなのかは知らない。

 

 そこで、俺は同じくお昼を食べていないであろうバニングスに訊いてみた。

 

「なぁバニングス」

「何よ?」

 

 なんとなく不機嫌そうな声。だがそこら辺を気にする気など今はさらさらないので、俺は質問した。

 

「お前、昼はどうした?」

「食べたわよ。みんなと一緒に」

「……そうか」

 

 やはり一人で釣りをしていたからだろうか。そう言う情報が一切入ってこなかったのは。

 ならやっぱり絶食か。そう結論付けた俺だが、釣り道具をさっきの場所においてきたのを思い出し、取りに行こうと戻ることにした。

 

 で。

 

「来た道を戻れば合流できるのに、なぜついてくる?」

「う、うるさい!」

 

 俺が先程の場所へ戻ろうと歩き出したら、何故かバニングスまでついてきた。

 だがよく考えたらバニングスが使っていた道具類も置いてあったので、一緒に取りに来ようと思ったのだろう。

 なら別にいう事はないか。そう思い直した俺は、先ほどの場所まで向かった。

 

 

「いない?」

「さっきの女の人、どこに行ったのかしら?」

 

 戻ってきた俺達だが、先程の女が消えてることに首を傾げた。

 時間にして数分ぐらいだろうが、それだけで存在した事実ごと消えるというのは少しおかしい。

 となると魔力を持っていたから魔法でも使って消えたのだろうかと考えていると、バニングスが自分の道具類を持とうとしていたので、慌てて俺も道具を片付けバケツを持ったところでカランと変な音がした。

 

「?」

 

 覗き込んでみると、空だったはずのバケツの中に白くて丸いもの――おそらくパールが一個入っていた。

 

 ひょっとするとあの女の謝罪を込めたものなのかもしれない。そう思った俺はバケツの中からそれを取り出し、ポケットの中につっこみバニングスに近寄る。

 

「持ってってやるぞ、そのバケツ」

「……なら、頼もうかしら」

 

 そんな感じで俺は両手にバケツ(片方は空なので餌箱などを入れて)、肩には釣竿が入った袋を掛けながらバニングスと一緒に戻ることにした。

 

 

 

 

 

 戻った先は誰もおらず、全員テントを張った場所へ戻ったのだろうと結論付けた俺達は、そのままテントがある場所へ向かった。

 

 その道中。バニングスはなぜか俯いていた。

 俺は何か気に障ることをしたのだろうかとその横顔を見て思ったが、結構していたなぁと思いどうしたものかと前を向いて歩きながら考えていると、横から俺の名前が呼ばれた。

 

「どうした?」

「……なんでもないわ」

「そうか」

 

 それから黙って歩く俺達。俺としては腹が地味に鳴っているので会話する余裕もない。如何に腹の音を抑えるかに集中しているので、人に構える状態ではないのだ。

 

 そんな状態を知らないバニングスはもう一度俺の名前を呼んだ。

 

「だからどうした?」

「えっと……聞こえてたの?」

「さっきから聞こえてたぞ、横にいるんだから」

「それもそうね…………ねぇ」

 

 急に足を止めたので、俺は少し前で立ち止まる形となり、バニングスの呼びかけに俺は振り返ることとなった。

 

「なんだ?」

「二回目だけど、ありがと。あんたって、意外と優しいのね」

「意外か」

「そう。滅茶苦茶人付き合いが悪いのに人は助けたし、エサは取り付けてくれるし、魚釣るの手伝ってくれたし」

「その代り俺の分はなくなったが」

「私のでよければあげるわよ。夕食は焼き魚らしいから」

「そうなのか……」

 

 夕食のメニューを聞いて俺は気が重くなった。

 まったく釣れてない俺にとって焼き魚はどうしようもないメニューだ。はっきりいって、うちから持ってきた非常食(もしものためという意味)を早速食べなければならないという事態に陥っている。

 持ち物すべての荷重が重くなった感じがしながら歩いていると、テント場所に着いたのだが。

 

「……ねぇ。なのはのお父さん、あんたが持ってきたテントが小屋みたいになるって言ってたわよね」

「ああ、そうだな」

「どちらかというと、ログハウスに見えない?」

「というより、なぜテントが張られているのか疑問に思うだろ、普通」

「テントはどこにしまったの?」

「バックの中」

「どういう構造してるのかしら……じゃないわね。いつのまに?」

 

 今の会話の流れで分かる通り、俺が持ってきたテントが何故か張られていた。

 隣のテントより存在感があるとか、一体何の素材を使ったのだろうか。そう思わずにはいられないのだが、作った本人がおぼえてるかどうか怪しそうなので無視しておく。

 

 ともかく。この原因について気になった俺とバニングスは、とりあえず入口の方へ向かった。

 

 そこにいたのは。

 

「だから悪かったって言ってるだろうが!」

「許すか!!」

 

 いつの間に来ていたのかわからんが親父が片手に飲み物を持ちながら士郎さんの攻撃を避けており

 

「遅かったじゃない大智。もう夕食よ」

「一体どこまで行ってたの二人とも?」

「心配したんだからねー」

 

 俺達を見つけた母親たちが口々に焼いた魚を食べながらそんなことを言ってきた。

 

 俺はバケツを下して頬を掻きながら、事情を説明してもらうべく母親に尋ねた。

 

「何があった? そしていつ来た?」

「ついさっきよ、私達が来たのは。何があったのかと聞かれると……いつもの事かしらね」

「そう言えば長嶋君。釣れたの?」

 

 母親が親父たちを見てそんなことを言うと、高町が興味津々といった風に聞いてきたので空のバケツを見せて「ボウズだ」と正直に答えた。

 それを見た高町と月村は、心底驚いていた。

 

「意外か?」

「うん……長嶋君、結構釣りそうだと思ってたから」

「私達もそんなに釣れなかったけどね……アリサちゃんは?」

 

 そのままバニングスに話を振ると、胸を張って俺が持っていたもう一つのバケツを指さして「大量よ!」と言った。

 

 そう言えばその中に真鯛が入ってたような気がするんだが、果たして活きがいいままなのだろうか?

 そんなことを思いながら、俺は自分のバックを探した。

 

『私って、いらない子なんですかね……』

「いきなり何を言い出すんだ。【力】がなくなった今、魔力を使わんと俺が死ぬというのに」

『でもそれって夜刀神みたいな神様が出てきた場合ですよね? そうでないと思いますが』

「念のためだ」

 

 見つけたらナイトメアに愚痴を言われたので何とか言い聞かし(俺が持ってきたテントの中においてあった)、バックの中身を取り出す。

 ちなみにこの小屋、俺達が建てたテントの2倍位の高さがあり、大人が普通に立って生活したり出来るほど。

 

「おぉ、あったあった」

 

 見つけたのは非常食(食パン)一斤。もはやこんな最終手段をいきなり使うとは思わなかったが、とりあえず一枚切って食べるか。

 今日の空腹感でいけば一枚を厚く切らないといけない気がするが、慎重に四等分になるよう目印をつけていく。

 

 さぁ斬るか。そう意気込んで手を目印の上に置き、手刀の要領で斬ろうと上に振り上げた瞬間。

 

「中まで小屋みたいね……って、何しようとしてるの、長嶋?」

 

 バニングスに集中力を乱された。

 

 

 

 

「自分の分は自分で釣ろうとして無くなったから、幸い持ってきたパンでしのごうと。そういう訳ね?」

「当たり前だろ?」

 

 俺がそう言うと、バニングスはため息をつき、月村と高町たちは苦笑していた。

 恭也さんは忍さんと一緒におり、その後ろにファリンさんとノエルさんが佇んでいる。

 親父と士郎さんは未だに続けており、鮫島さんは魚を焼いていた。

 顔色一つ変えずに焼くその姿は、本当にすごいと思う。

 

 ……真鯛すらも焼いてるのに。

 

 今更だが、パンを手で斬ろうとしているところをバニングスに見つかり、こうして外に引っ張られている。

 

「折角こうしてみんなでいるんだからさ、一緒に食べようよ」

 

 苦笑していた高町がそんな提案をしてきた。

 それに母親も乗ってきた。

 

「そうそう。私達なんて来たの遅れたし、魚一匹も釣ってないけどこうして食べてるし」

「俺は二人みたいに図々しくないんでね」

「あなたー! 大智が辛辣よー!!」

 

 なにー!? という声が聞こえたが無視し、俺は小屋に戻ろうとしたが母親に襟首を掴まれた。

 

「な、なにを」

「ふふっ」

 

 意味ありげに笑った母親は次の瞬間、俺を投げた。

 

「あなたー! 説教よろしくね!!」

「おう!」

 

 そんな会話を繰り広げる夫婦だが、投げられた俺は驚いている高町たちの顔を最初に見、次に暗くなり始めた空が見えただけで落下した。

 この後どうなるのだろうかと頭から落下してる中思っていると、後ろから親父の声が聞こえた。

 

「周りと助け合うのが普通だっての! これ常識!!」

 

 そのあとの意識など、あるわけがなかった。




お読みいただき光栄の極みです。
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