世にも不思議な転生者   作:末吉

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最近話がまとまらないことが多くて困ってます。


28:昼過ぎ~夕方

 昼食を食べた後、どんなことがあったか知らないがものすごく疲れたらしい高町と月村とバニングスは眠ってしまい、鮫島さんはその子守をするために小屋に残った。

 

 小屋から出た俺達は、どこから戻ってきたかは知らないが何か持っていた親父を見つけた。

 

 ちなみにだが、恭也さんと月村の姉は散歩してくるといい、メイドさん二人は片方がダウン(眠るという意)してそのお守り、士郎さんは地面に座って空を眺めているし、母親は「私も疲れたから」と言ってテントに戻った。

 つまり、俺しかいないわけである。親父の相手をするのは。

 

 思えばそういった交流など一切なかったのでどう相手すればいいのかわかってないのだが、そんなことお構いなしに親父はその持っていたものを投げてきた。

 

「っと」

 

 反射的につかむ。

 形状は円盤。クレーに似た形だが、素材は軽い。

 これを投げてどうするのだろうかと首をかしげながら見ていると、「投げ返して来いよー!」と親父が言ってきたので、俺は記憶に残っている遠投の投げ方でそれを投げてみた。

 上がったそれだが、フラフラ途中で揺れたかと思うと、親父のいる方向とは違うほうへ流れてしまった。

 

「そんな投げ方するやつあるかー!」

 

 そう叫ぶや否や親父はそれが流れたほうまで走り、ヘッドスライディングして捕った。

 ズザザザーー! という音が聞こえ、そのまま動かなくなった親父。

 

 ひょっとして死んでしまったのだろうかと思ったが、いやそれはないかと思い近づく。

 

「大丈夫か?」

「鼻が痛いわボケ!」

 

 ある程度近づき声をかけたところ顔をあげて怒鳴る親父。

 それは悪いことをしたかと思い、俺は謝った。

 

「すまん」

「……ま、いいさ」

 

 そういうと親父は立ち上がり、ズボンなどについた草などを払いながら聞いてきた。

 

「お前、フリスビーってやったことないの?」

「クレー射撃ならやったことがある」

「……そんな前世の記憶を聞いてるわけじゃないんだが」

「そもそもフリスビーってなんだ?」

「えー? そこからー?」

 

 なんだ。俺はこの世界の常識といわれるものに関してはほとんど知らないことを忘れたのか。

 

「それくらいは知っててもいいだろうが……」

 

 なんか思っていたことに対して言われた気がしたが……そこは気にしないでおこう。

 そう思いながら、俺は再度質問をした。

 

「フリスビーって?」

「……あー、簡単に言うとこのクレーに似たプラスチック製の円盤――これをフリスビーっていうんだが――をキャッチボールするの」

「なぜ固有名詞が競技名なんだ?」

「そこは知らない」

 

 ふむ。だがどういったものかは理解した。それぐらいでなんとかなるだろう。

 そう結論を出して頷いていると「じゃ、もう一回やろうぜ」と言って親父が離れていった。

 

「落としたら負けなー!」

「わかった!」

 

 約五メートルほど離れた俺達はそんな会話をしてフリスビーを始めた。

 

 投げ方に関しては教えてもらわなかったのだが俺はどう投げればいいのだろうか。

 ふとそんなことに気を取られていると、眼前にフリスビーが迫ってきたので、左手でつかんで反時計回りで一周し、戻ってきたところでそれから手を離した。

 

 俗にいう受け流しの類。まともにキャッチしたら手の皮がただれそうなぐらい勢いがあったと思われたので、こんな対処をした。

 

 しかしそんな対処をするぐらい危ないものだったのにもかかわらず、戻ってきたものを素手で止める親父。

 

 バァン! シュゥゥゥゥ…………

 

 なんか出してはいけない音が聞こえた。

 親父はキャッチした手でフリスビーを回しながら、不敵に笑って言ってきた。

 

「おいおいそんなものかよ大智。想像してたより弱いなぁおい」

「(【力】がなくなって)取り戻そうとしてる最中なんだよ!」

「だったら本気でやれよ、な!」

 

 そう言って投げられるは銃弾の如きフリスビー。

 あの親父は俺のことを殺す気か!? などと思いながら、負けた後のことを考える。

 

『なんだおい。俺はまだ本気だしてないんだぜ? 弱いねぇ、お前』

 

 …………なんか、ムカついた。

 

 迫ってきたフリスビー。

 俺は先ほどまでの親父の言動などを考慮して負けた後の発言を作ってみたが、なかなかどうしてイラつかせてくれる。

 ふざけやがって……などと思いながら、俺はそれを両手でつかんで後ろに跳び、持っていかれそうな勢いを利用して一回転して着地。

 

 ふぅ。両手がじんじんと痛むが何とか捕れた。しかし回転してなかった気がするんだがどうしてだろうかと思いながら立ち上がると、親父は拍手していた。

 

「よく捕れたな! あれ!!」

「一歩間違ったら死んでたがな!」

 

 嬉しそうに褒めてきたので、俺は必死に反論するが、親父は近づいてきながら言った。

 

「まぁそれでもお前はちゃんと捕れた。俺は信じたからそれを投げただけだ」

「……テメェ」

 

 俺の頭をポンポンと叩きながら言ってくるので恨めしそうに言うと、笑いながら親父は言った。

 

「はっはっは! これを捕れるってことは、まぁ大体のやつに負けないぐらいになってるってことだから心配いらねぇよ」

「……あんなの取れる一般人そうそういねぇだろうが」

「だから大体のやつには負けない! 以上、証明終わり!!」

 

 よっしゃー、第二ラウンド行くぞー! と叫ぶ親父の後姿を見てため息をつきながら、これが親父なりの励まし方なのだろうかと思い、なんだかうれしくなった。

 

 そして二ラウンド目。

 今度は親父が先ほどより遅く、ちゃんと回転しながら飛ばしてきたので、俺も飛ばし方を真似しがら返していったのだが。

 途中からだんだんと白熱していき、仕舞には起きてきた母親に怒鳴られるまでに縦横無尽に曲がるフリスビーをキャッチアンドリリースの要領で投げるという域まで達していた。

 

 地面で正座してガミガミと怒られる俺たち親子を見た士郎さんが「やっぱり似てるよ大智君は」と言ったのが聞こえた。

 

 割と初めて説教を真面目に聞いた俺は、とても長くて精神的にクルものがあるなと辟易していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 説教から解放されたら日が沈み始めていた。どうやら一時間ぐらいは説教されていたらしい(詳しい時間は分からない)。

 もうすぐ夕食だがどうするつもりなのだろうかと思いながら木に登って枝に座っていると、下から俺を呼ぶ声が聞こえた。

 

「長嶋くーん! もうすぐ夕食だってーー!」

「ああ。わか……!」

 

 飛び降りようとして立ち上がったところ、不意に後ろから視線を感じたので振り返る。

 しかし俺ではとらえられない場所にいるのか気配だけが微妙にわかるぐらいで、性別も人数も分からなかった。

 

 一体俺に何の用だろうかと思いつつ振り返った先をじっと見ていたが、次第にその気配が消えたので息を吐いて飛び降りた。

 

「どうしたの? 急に後ろを見て?」

「……いや、なんでもない」

 

 難なく着地した俺は呼びに来た高町に訊かれた質問を誤魔化し、チラリと後ろを見る。

 

 何かが俺を見ていた気がするのだが……本当に気のせいだろうか。

 そんなことを考えていると、「やっぱりなにかあったの?」と聞かれたので、「野生動物でもいたんだろう」と適当なことを言いながら歩き出した。

 

 

 

 夕食はバーベキューという、外泊定番らしいものだった。

 要は焼き肉みたいなものと母親に言われたが、言いえて妙だと思った。

 

 鮫島さんと士郎さんが焼き、親父と母親は何もして……ないのだろうか?

 

「失敬な。俺は恭也君と忍さんを呼びに行ったぞ」

「私は野菜を切ったわよ」

 

 なぜ両親はやったことを報告しに来るのだろうか。

 そんなことを思いながら俺は、何故か強制的に椅子に固定されたままボーっとしていた。

 

「なぜ?」

 

 訳が分からないので呟く。椅子が一種の拘束具に変形した限りじゃどう考えても親父が作ったものだろうが、なぜこうなったのかがわからない。

 そんな考えがわかったのか、母親が説明してくれた。

 

「だって大智、下手したら気付かせないで消えてそのまま夜まで戻ってこないじゃない」

 

 それに頷くは親父、鮫島さん、士郎さんに高町、バニングス、月村の六人。

 

 さすがに普段の行いのせいかと思ってしまい、これを挽回するには『信じてもらう』ことが必要なのかと考え、それから更に考えた俺は、力なく呟いた。

 

「…………だな」

「でしょ? だからよ」

 

 まぁ今の態度なら離して問題ないでしょ。そう付け足した母親は、いともたやすく拘束具を外した。

 なんでビクともしなかったのに壊せたんだろうかと思いながら立ち上がると、皿を渡され、箸を渡された。

 

「食べるわよ、大智」

「なんで偉そうなんだ?」

 

 そう言いつつ士郎さんの元へ向かうことにした。

 

「貰いに来ました」

「主語が欲しいかな」

「主菜と野菜をください」

 

 貰いに行ったら苦笑された。

 仕方ないので欲しいものだけを言ったら、「まだ固いな」とまた苦笑された。

 

 ちゃんと肉と野菜はもらった。

 

「いただきます」

 

 とりあえずもらった場所から少し離れそれなりに混ざってる場所で食べ始める。

 こちらの世界じゃ毒を盛られる可能性など皆無だろうから心配はいらないだろう。

 前世で起こったことを参考にしているせいかどうしようもなく警戒しすぎたなと思いつつ食べていると、近寄ってくる気配が三つ……いや。

 

「ん?」

「どうしたのよ?」

「何かあったの、長嶋君?」

「大丈夫?」

 

 俺が顔を上げたのに驚いたのか口々にそう聞いてきたが、今の俺には関係なく周囲を見渡す。

 にもかかわらず気配を感じず、近づいてきたのは高町達だけだった。

 

 思わず首を傾げる。

 

 気配を感じたのにすぐさま消えた。とても人間業とは思えない消え方。

 となると神様である奴らが来ているのだろうかと食べる手を止め考えていると、ポスンと背中に当たった。

 

 なんだと思い背中を見ると、なにやら小さい男が。

 おそらく小人の類だろうと見当をつけていると、俺の背中をよじ登って肩まで来た。

 

「どうしたんだ?」

「誰と話してるの?」

 

 そう言えば見えないんだっけか、普通の人には。

 前にもこういう光景があった気がするなと思いながら「悪い。少し席を外す」と言って皿と箸を持ったまま小屋に戻った。




読んでいただき感謝いたします。
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