世にも不思議な転生者 作:末吉
転生して一週間が経過した。
どうも俺の家は母子家庭だった。つまり、父親がいないとのこと。
だからといって特に問題などないのだが。しいていうなら、身体能力が生前の同い年と同じだったため多少セーブしないと体がすぐに壊れるということと、そのために筋トレをやらなくてはいけなくなったこと。
体力面も同じ。試しに走ってみたが軽く流して半日ほどは普通に走れた(セーブした状態で)。
家事なども体と知識が憶えていたから特に問題なかった。
まぁ、さすがに包丁を握ろうとすると母親が止めるんだが(当たり前か)。
次に、デバイス、と神様が言っていたリストバンドもどき。これは初期設定と魔力の封印だけをした。
初期設定、と言っても名前とかを決めるだけ。
どういうのがいいか悩んだが、前の世界のパートナー(武器。AI付)の名前を思い出し、そのまま『ナイトメア』にした。
正直言って、チュートリアル的な説明は聞いてない。速攻で自分の魔力を封印させて待機状態にしたから。
困ったことにならなければ使わないでしょ。そんな考えで、俺は今も聴いてない。
そして学校。
次の日(転生して)が入学式だったらしく、母と一緒に学校へ向かった。
入学式が終わりクラスへ向かい、自分の席へすわって先生を待っていると、誰かが近寄ってきた。
「誰だ?」
その人に見向きもせずに窓の方を見ながら尋ねると、そいつは驚いてから訊いてきた。
「よく分かったね?」
窓を指さしながら俺は答えた。
「気配とこれ。お前の姿がバッチリうつってるんだよ」
「なるほど」
窓から見ると、身長は平均で何の特徴もなさそうで頼りがいもなさそうだがストレスに負けなさそうな少年だった。
「なにしに来た?」
「えっと…会話しに?」
そこで俺に確認を取られても困るんだが。そう言いたかったが、その言葉を飲み込んで「先生が来るぞ」とだけ言っておいた。
そこから本当に先生が来、自己紹介だということで廊下側からやっていった。その感想として言いたいことは……、
意外と黒髪ってのがいないのな、この世界。結構特徴的な色してる奴ら多いし。
あと何気に将来有望そうな女子(美人という意)多いよな。だからどうしたと言いたいが。
と、自己紹介を聞き流しながらそんなことを思っていたら自分の番になっていたので、名前と一言だけ添えて座った。
――――――――――――――――――
転生して一ヵ月が経過した。
友達と言える奴は入学式に話しかけてきた奴(斉原、と言っていたがクラス委員長に立候補して当選したので委員長と呼んでいる)ぐらいで、あとは時々話す程度の奴らばかり。
女子とは距離を置いている。前世の経験則により、あまり近づきたいと思えないのだ。
話しかければ答え、こちらからは話しかけない。そんなことをして距離を保っているのだが、気付けば話しかけてくるやつの方が珍しくなった。まぁしょうがないが。
授業は、はっきり言ってつまらない。転生前に習ったものばかりだし、寝ていてもテストの点数は百点とれる自信がある。
体育の時は、はっきり言って超手抜き。二割ぐらいで普通の状態より少し上なので、それぐらいでやっている。じゃないと俺の体壊れるし。人越えてるし。
昼食の時間は一人で空を眺めながら食べている。弁当は母が作ったものだ。
どうして空を眺めているのかというと、生前の世界じゃ見たことのない晴れやかな空だから。あそこいっつも曇ってたし、トルネードとか雷雨が日常的に起こってたからな。ここまで青いとすごい新鮮だ。
…あいつら、一体どうしてるんだろうか?
俺が死んでどう思っているんだろうか?
悲しんでいるのだろうか?喜んでいるんだろうか?悔しがっているのだろうか?それとも
何も感じていないのだろうか。
そこまで考え、俺は弁当のことを忘れ空を注視した。
流れる雲、青い空。その風景が仲間と見たかったものだということに気付き、視線を外して弁当を食べ始めた。
味は美味しかったが、なぜかとても寂しかった。
放課後。
いつも通り一人で帰る。たとえ帰り道の方向が同じ奴が居たとしても、だ。
そして歩きながら思う。
平和だな、と。
あの世界じゃ、登校までに銃撃戦、授業中にテロ事件、下校中に銃撃戦が当たり前。まともな授業を受けられた日にゃ、全員が涙ぐみながらお祭り騒ぎしてたな。いやーあれはすごかった。
そんな風に懐かしんでいたら、後ろから気配がしたので歩みを速めた。誰だかはここ一ヵ月でわかってたし。
後ろの奴は俺が早足になったのに気付き走り出したようだ。
「待ってなの―――!!」
…ご丁寧に声を上げながら。
なんていうか、この状況で知らんふりを貫くのが辛いって、最近理解してきたんだよな。
一種のあきらめを覚えつつ、俺は歩みを止めて振り返って声の主を待つようにしながら返事をした。
「何か用かよ、高町」
こけるぞ、とは言わない。言うとこけるから。
高町、と呼んだ少女は息をだいぶ切らせながら近寄り、二歩手前で膝に手を乗せて止まり息を整えながら呟いた。
「……長嶋君…やっと、止まって、くれたの…」
流石に一ヵ月続けばな。
俺がこいつと接触したのは入学して一週間後。
いつも通り一人で帰ると、紙に『翠屋で好きなもの買って食べてね』と書かれていた。
仕方がないので神様に場所を聴いて向かったところ(願いにカウントされなかった)、なんと家の近くだった。
今まで気づかなかったなぁと思いながら(登校時は遠回りで体力作りをしている)、人の多さに驚きつつ店に入った。
そこで見たのだ。クラスは違うがたまにクラスの男子連中が話をする『高町なのは』という存在を。
栗毛のツインテール。そしてかわいらしい顔立ち。男子たちの間じゃファンクラブが存在するくらいのものらしい。まぁ興味がないし関係ないが。
その時は特に互いに話すことなく終わったが、母が先述のようなものとお金(紙幣と硬貨って旧時代のものかよ・・・)をたまにおいていくので、その度に行ったら顔を覚えられた、というもの。
どうも母とあそこの家の人は知り合いらしい。だからといってどうというわけではないが。
と。息を整え終わったらしいが足ががくがくの状態で高町は笑顔で話しかけて来た。
「一緒に帰ろう?」
一瞬見捨てようかと思ったが、何となく可哀想な気がしたので(同時に嫌な予感)「鞄ぐらい持ってやる」と言って空いてる手を出した。
基本的に背中に背負ってるが、俺は手で持つ。走るときは大変だが、背中で揺れるよりはましだと思ってるから。
高町は一瞬驚き、すぐさま「べ、べつにいいの」と断った。
「そうか。その足で果たしてどれくらいかかるだろうな?」
「うっ。ちょっと休めば大丈夫なの!」
自分の状態を自覚しているのか少し頬を赤くして反論してくる高町。
そんな彼女を見て、俺はとりあえず言った。
「休むのは勝手だが、天下の往来で休んでいると死ぬぞ?」
幸い車は通っていないので今のところ問題ないが、もし来たら事故る。確実に。
そのことを高町も想像したのか少し青ざめて「…行くの」と言って歩きだしたので、俺はそれに合わせるように歩き出した。
「また明日なの!」
「会えたらな」
右手を勢いよく振りながらそう言ってきたので、いつも通り冷静に言って俺は帰った。
……しかし、高町って魔力結構あったんだな。びっくりだ。
頑張っていきます。