世にも不思議な転生者 作:末吉
「で? 何の用だ俺に?」
『すいませんお門違いなうえに関係ないのにお頼みしまして』
「見えるだけだからであって神の力なんてもう使えないからな」
『それは存じております。以前スサノオ様が顕現され、貴方様のことを聞き及びましたから』
「それで何の用だ?」
『それなんですが……』
小屋に戻った俺は早速小人に話を聞きたかったのにどうして雑談が最初に来たのだろうか?
まぁ結果的に戻ってきたのだからいいかと思っていながら話を聞いていると、小屋のドアが開いた。
「一体どうしたの? また魔法関連?」
「それとは違う。ちょっと説明しづらいんだ」
「どういうこと?」
入ってきた高町が首を傾げたので、俺は頬を掻いてから小人に頼んだ。
「悪いが姿を現してくれ」
『……分かりました。お頼みしようとした時点で掟に触れるのは必至。では!』
「誰に言って……えっ!?」
いきなり姿を現した小人に驚いた高町。
そりゃそうだろうなと思いながら、俺は簡単に説明した。
「こいつはまぁ、俺やあいつのような改造された人間にしか本来視認できない存在で、今は無理言ってお前にも見えるようにしてもらった」
「使い魔みたいなもの?」
「そうじゃない。こいつらを別に使役してるわけじゃない。単に見えて話せるだけだ……話したのは久しぶりだがな」
「そうなんだ」
納得してくれた高町に、俺は釘をさすことにした。
「言っとくが、他言無用だぞ? 言っても信じてもらえないだろうが」
「……うん。分かった」
本当に大丈夫なのかはわからないがそこは考えるものじゃないと思った俺は、小人が言いかけたことについて尋ねた。
「で? 何があった?」
「はい。実を申しますとここ数週間、実に奇怪な気配を感じられるのです」
「奇怪な気配……?」
「常識では考えられない気配ということだ。……となると妖怪の類か?」
「妖怪!?」
「高町うるさい……で?」
「そうでもございません。妖怪ならば我等と交流がある故、何かしらの合図やらがありますので」
「そうなんだ」
「となるとなんだ? ……このことを知っている神様には?」
「スサノオ様には申し上げましたが……『アレは人に任せろ』というお言葉をいただきまして」
「…………なるほど」
ちょこちょこと高町が口を挟んできたが無視して情報収集した結果、何やら変な気配を感じたからどうにかしてほしいというものらしい。
しかしそんなことをする必要があるのだろうかと思っていると、「あの気配のせいで生態系が少しおかしくなっているみたいなんです」と言われ納得した。
そういやあったな。真鯛が釣れたりなんだり。
だったらやらないとだめだろうなぁと覚悟を決めた俺は、小人に向かっていった。
「とりあえず案内してくれ。行ける場所まででいいから」
「私も行っていい?」
現地調査をしようとしたら高町もついてくると言い出した。
別にお前まで来る必要はないんだが……そう思ってそのまま言葉にしようと口を開いたが、そこでふとやめてため息をついてから答える。
「別にいいぞ。ただし、危なくなったらさっさと逃げろよ」
「大丈夫だよ。私だって……」
「夜刀神に傷一つつけられないのなら厳しいぞ?」
「み、見てたの!? アレ!」
「いや。対峙してた場面を切り取っての想像」
「……アリサちゃんが呆れる訳だよ」
ふむ。軽く脅したら何故か呆れられた。一体どういう理解をされたのか。
が。今はそんなことどうでもいいので俺はナイトメアを装着し(なぜか嬉しそうだった)、小人を肩に乗せながら小屋から出た。
「ちょっと散歩してくる」
「なら俺も一緒に行ってやろうか?」
「ふざけてろ。実の息子に何やらすきだ」
そんなやり取りをした後周囲の声を無視して俺は行こうと思ったが、高町が後からついてくるのでしょうがなく待ち、そのあと手を握ってそのまま小人の案内される方向へ走り出した。
何やら悲鳴が聞こえたりなんだりしたが、こちらは急いでいるんだ。気にできるか。
「大丈夫か、高町」
「もう、無理……」
しばらく案内通りに走り完全に後ろから感じる気配が感じなくなったところで少し休憩。
その時に高町の様子を見たが、まぁ酷い有様だ。午前中に親父のせいで過酷な山登りを強いられて体力が底を尽きかけていた上、今の様に俺のペースで走ったので完全に息も絶え絶えだ。
座り込んでしまった高町を見て頬を掻いた後に小人(木に登っている)に訊いてみる。
「あとどのくらいだ?」
「もう少し、といったところです。このまままっすぐ行けば着きます」
「ありがとよ。後は何とかしてみるわ」
分かりました。後はお任せいたします。
そう言うと小人は木々を曲芸のように移動して去っていった。
まるで猿みたいに飛び移るなと小人が消えた方向を見ながら木に背中を預けて思っていると、荒い息を整えている高町が心底不思議そうに聞いてきた。
「…………どうしてそんなに動けるの?」
まぁ午前中の山登り行かなかったし、体力には少し自信があるからな。
その旨を伝えると学校までの登下校風景を思い出したのか、「……なんだかずるいよ、それ」と嫌味っぽく呟いた。
それを耳にした俺は特に反論せず、別な話題を振った。
「なぁ高町」
「……え?」
「魔法って、どういうものなんだろうな」
『「『え?』」』
魔法に関して質問をしたところ、何故かナイトメアと高町、それともう一つの声が驚かれた。
「ん?」
『マスター……それ、本気で言ってますか? 私、説明しましたよね?』
「…………忘れた」
ナイトメアに説明された魔法について思い出そうとしたが思い出せなかったので正直に答えたら、ものすごく呆れられた。
『まったく……』
「で? どういうものなんだ?」
呆れたナイトメアを無視して高町に訊くと、高町もあれっ? て顔をしていた。
「わからないのか?」
「……どういうのなんだっけ、レイジングハート」
『……マスター』
どうやら聞きなれない声の正体は高町のデバイスらしい。そして、そちらの方も呆れていた。
二人して頭を悩ませていると、ナイトメアが嘆息してから説明してくれた。
『いいですか? 魔法というのは自分の中にあるリンカーコア――いわゆる魔力製造機みたいなものです――から放出されている魔力を私たちデバイスを使い発動させる、自分専用の技です』
『デバイスも様々ですので、その人に合ったものを見つけるのが最初ですね』
ナイトメアの説明に補足を入れるレイジングハート。
それを聞いた高町は納得していたが、俺は聞きたいこととは違ったので「違う」といった。
「違うって……今の説明が?」
「ああ。俺が聞きたかったのは発動原理じゃない。存在の意義だ」
『『…………』』
黙りこくったデバイスに、俺は畳みかけた。
「なぜ魔法が存在するのか。それが分からないから聞いているんだが?」
『……それは……分かりません』
申し訳ないのか消え入りそうな声で答えるナイトメア。
そこまで強く言ったつもりはないんだが……等と思いながらナイトメアを見ていると、ようやく復活したのか高町が立ち上がっていった。
「そんなこと気にしてる場合じゃないよ! さっさと行かなきゃ!!」
ようやく回復したかと思った俺は、首を横に振ってから木から離れ小人が指した方へ向く。
「行くか」
「うん!」
元気のいい返事を聞きながら、俺達は奥へと進む。
そこからさらに数分も経たずに、俺達は目的地の近くまで来れた。
「覆われて中が見えないね……」
「覆われているというよりは、あれだな。渦を巻いて守っているというのが正しいかもしれない」
「何を?」
「知らん」
ところまではいいのだが、緑の何かが渦を巻いてるせいで中を確認することができないでいた。
試しに石を投げてみると、ジュッと音がして消えた。
一種のブレード系防御壁なのだろうかとあたりをつけていると、「ユーノ君もつれてくれば良かった」と高町が呟いた。
どういった人物だかわからない俺は、とりあえずナイトメアに言った。
「ナイトメア。魔力解除。ランクD」
『わかりました。ランクD相当の魔力量までを解除します』
その言葉が言い終わると同時に俺の体の外側に魔力が出てきた。
「え? いきなり長嶋君の魔力が!?」
驚く高町。しかしそんなことに構っていられない俺はそのまま近づき、あと一歩となったところで右腕を後ろに引いて腰をひねり、
「おうらぁ!」
思いっきり殴った。
殴られた緑の何かが動きを止めたかと思ったら、あっさりと音を立てて崩れた。
俺が魔法の存在意義について訊いたのは高町が回復するまでの雑談の話題の一つであり、ナイトメアから魔法の説明を聞いて以降疑問に思っていたものを解決するためだ。
すなわち、「魔力自体で体の強化ができるのに、なぜ魔法が必要なのか」というもの。
呪獣の時の【F式】。あれは後になって魔力ごと解放されていたことを知ったのだが、その結果生身じゃ倒すのが厳しかった奴を瞬殺した。
更に、魔力で自分の限界を突破した体を保護してる感覚があった。
以上の事から、「魔力で強化できるになぜ魔法があるのか」という疑問が生じた。
まぁ、分からなかったが。
改めてやってみると本当不思議だよなと右拳を見ながら思っていると、おそらく渦の中心の場所に、何かが落ちてるのを見つけた。
気になったので後ろで何やら騒いでいる高町を無視して近づく。
拾ったのは、扇子だった。
「これは……」
『わかるんですか?』
「ああ。おそらくだが……」
「長嶋君! 話聞いてるの!?」
そう言ってこれについて説明しようと思ったら、いきなり近くで声をあげられた。
耳が痛いだろうがと恨めしそうに振り返って言いたかったのだが、なぜか涙目だったのでいうのを我慢し、謝ることにした。
「無視して済まない」
「もぅ! だったらちゃんと話を聞いてよね!!」
「分かった。……で? 何を言っていたんだ?」
余程聞いてほしかったのだろうと思い訊いてみると、高町は顔をそむけて「何度も言ってるのに聞いてくれないから教えない」と言ってきた。
この場合いつもの俺なら「なら別にいい」と言うのだが、今回はそれを我慢して再度謝ることにした。
「悪かった。少々目先の事象が気になってつい高町のことをおろそかにしてしまった。放置して済まない」
「……なんか棒読みのような気がするから、ダメ。許さない」
なんかひどい理由で許されなかった気がしたのでさすがにイラッとした俺は、「じゃぁ別にいい。お前もうさっさと戻れ」と言って扇子を持ったまま奥へ向かおうとし……足を止めてその場で意固地になる。
棒読みっぽいからダメとか何様のつもりだ、おい。などと心の中で毒づきながら奥のほうを見据えていると、前方から特定の人物へ向けての強大な気配を一身に受けた。
俺はとっさに後ろに跳んで警戒態勢を取りながら、後ろにいるであろう高町に向かって言う。
「……喧嘩の仲直りなどは後だ。とりあえずはここから離れてろ」
しかし返事がない。
一体どういうことなんだろうかと振り返ると、そこには高町がいなかった。
「……チッ」
思わず舌打ちする。こんな風に
俺はイラついて扇子を折ろうとしたが、それをやる前に吹き飛ばされた。
「がっ!」
衝撃に吹き飛ばされ一本の木にぶつかった俺は、酸素とともに声を上げる。
ナイトメアが心配そうに言ってきたが、俺はそれを無視して立ち上がり、衝撃が出てきたほうを睨み付けながら言った。
「やっぱりか……なんでこんなところにいるんだ、【風神】」
「その名で私を呼ぶってことは……長嶋大智か。スサノオがお前を転生させたと知ってこの地に来てみたが……小さくなったお前を見るのは存外刺激されるな」
「黙れド変態」
俺が折ろうとした扇子を持って口元にあて優雅に笑いながらこちらに向かってくる胸がでかく怒り顔の冷徹女神――風神――は、俺の最後のセリフに怒ったのか無言で扇子を振り下ろした。
ギュオッ! と本来の風であらば出ない音をさせながら飛んできたので、回避が間に合わないと察した俺はナイトメアに「全魔力解除しろ!」と言って少しでも時間稼ぎをしようと思い後ろに跳んだ。
が。
「甘い!」
と、風神が叫んだと同時に、後ろからも風が現れた。
やべぇ。全魔力解除するまでに至ってないのに後ろからもきやがった。
内心焦りながら突破口を即興で見つけようとしたが、前後で向かってくる風に挟まれ、俺は宙を舞った。
読んで下さりおおきに。