世にも不思議な転生者   作:末吉

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少々両親の過激な教育がございますが、これぐらいやらないと主人公が変わらないと分かっているからです。


33:地下室にて魔法

『さぁやりますよマスター!』

「元気だなぁナイトメア」

 

 地下室にて魔法の練習をやることになった俺は、嬉しそうなナイトメアを装着した状態で昨日と同じ場所に来ていた。

 

「久し振りだけど大丈夫なのあなた?」

「まぁ昨日機嫌悪かったけど一日居たら何とかなった」

 

 ちなみに両親は見届け人&アドバイザーらしい。横の機械群をいじる親父の横に母親がいる。

 俺はというと、眼前に移る縦に広い空間を見て、改めて広さを感じた。

 

「奥行き四十メートル、幅二十メートル、高さ十メートルぐらいか。この中に……というより、完全に家の敷地外にまで侵入している気がするんだが、気のせいか?」

 

 目測で確認した俺は家の敷地面積と照らし合わせた結果を首を傾げて呟くと、それを聞いていたのか親父が言った。

 

「家の地下にあると言ってもこの場所自体が異空間内だから」

「は?」

 

 俺は思わず耳を疑う。階段は地下に行く様になっているが、この地下室は異空間の中にあると言ったことを。

 

「マジでか」

「ああ。ちょっと仕事先で空間をつなげる装置が売ってたから買ってきて、それを階段の先に着けて作った」

「……」

 

 恐るべきは親父の行動力とその計画性だろう。買ってから作ることを決めたのか、作ることを決めてから買ったのかはわからないが、何の迷いもなくやっていくその行動力。

 親父の尊敬できるところを発見して驚いていると、打ち終わったのか親父が俺の方を向いてきた。

 

「じゃ、やろうぜ」

「……ああ」

 

 こうして、両親監修による魔法講義が始まった。

 

 

「じゃぁまずバリアジャケット展開しろよ。魔力はそうだな……いきなり全開でもいいぞ」

「そうなのか? ……ナイトメア。全魔力解放」

『ちょっと待ってください。プロテクトが複雑ですので少々時間がかかります』

「わかった」

 

 二十秒待ったら解放できたらしい。自分ではその量の違いがあまりわからないが、「伊達に神様宿らせてなかったようだな」「これはどう解釈すればいいのかしらね」と言っていたので結構な量なのだろう。

 

「セットアップ、ナイトメア」

『わかりました』

 

 続いてバリアジャケットを展開する。

 いつも通り灰色の死に装束に銀色の太刀を持った状態になった俺は、太刀を肩に乗せて両親を向き尋ねる。

 

「で? 魔法について教えてくれるんだろ?」

「俺達は計測だ」

「ナイトメアに教えてもらいなさい」

 

 なるほど。そう思ってナイトメアに訊いてみる。

 

「まずは何をやるんだ?」

『その前に魔力出力を落としましょう。ずっと全開ですと、そのうち色々あるでしょうから』

「ならFランクまで封印」

『了解しました』

 

 魔力放出が弱まったのが分かった。

 

「まずは?」

『そうですね……魔力弾を作ってもらいましょう』

「魔力弾?」

『魔力で作られた……銃弾だと思ってくれて構いません』

「なるほど」

 

 ナイトメアの指示通りに俺は魔力弾を想像し……そこで首を傾げた。

 

「どうやって魔法につなげればいいんだ?」

『え~~~~』

 

 それを見かねたのか、母親はため息をついてからアドバイスをくれた。

 

「その魔法に名前を付ければ、あとはナイトメアが何とかしてくれるわ」

「なら……銃弾でいい気がする」

『本気で言ってますか……もういいですそれで』

 

 何やら力なく言われたのだが自棄になっているだけなのだろうかと思うが、良しというなら別に構わないか。

 そう思った俺が「銃弾」というと、目の前にリボルバーに入れる銃弾と同じ大きさの灰色の弾が現れた。

 

「これが魔法か……」

「って、は? お前今の魔力全部こめてそれ一発? しかもなんで球状じゃないんだよ」

「確かに今放出されている分の魔力を使った気がしたが……なんだ、形状が不思議なのか?」

 

 初めてできた魔法に感動していると、親父が変なことを言ってきた。

 

「ああ。普通魔力弾ってのは球状で――それこそテニスボールだかソフトボールみたいな形状で――それに追尾機能だか属性付加だとかいろいろできるものなんだぜ?」

「ふ~ん」

 

 話を聞いて頷いた俺は、現れた銃弾一発がいつの間にか消えてることに気付いた。

 

「ん?」

 

 気になって少し周囲を見渡すが、別段変わったところは――――

 

「って、あなた! 奥の壁に異常があるみたいよ!?」

「は? おいおい何言って……って、はぁ!? 何時の間にこんなに成っちまったんだよ!」

 

 ――――あった。奥の壁の方に何やら異常が発生したようだ。

 俺は気になって親父に訊いてみた。

 

「何があった?」

「ああ。実はどんなものでも大丈夫なようにこの地下室三十層ぐらい包んでいるんだが、そのうちの二十七層ぐらいまでお前の魔力弾が突破していったんだ」

「は?」

 

 思わず聞き返す。聞き間違いじゃなければ、さっき作った魔力弾は親父が作った強固な層をぶち抜き続けたと言ってるのだから。

 しかし親父はナイトメアに訊いていた。

 

「非殺傷設定には?」

『なっていますが……』

「そうか……」

 

 何やら空気が重くなっている気がする。一体俺は何をやらかしたのだろうか。

 

 その答えは、次の親父のセリフによってもたらされた。

 

「大智。その魔法は単体だけだったら人に向けて撃つな。あと、Fランクの時だけにしておけ。じゃないと、人が死に(・・・・)かねない(・・・・)

 

 それを聞いた俺は、戸惑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 前世では戦争ばかりやっていた世界に生まれた俺にとって、『人が死ぬ』なんて言うのは別段日常で、『人を殺す』というのも同じだった。

 ほとんどのクラスではたいてい一回の戦闘で二人とか死者を出すのだが、うちのクラスだけは最後の戦闘で巫女が、そのあとの戦闘で俺が死ぬまで死者はいなかった。そのあとの事は知らないが。

 しかし、だれ一人欠けなかったということは、それ以上に殺していることを示す。つまり、『人が死ぬ』行為を人一倍行っていたクラスなのである。

 

 

 そのうちの一人だった俺は、今戸惑っていた。

 

 

 人が死ぬ。それは戦闘を行う事では必定となる現象。不可避な事実。

 だというのに、なぜそれを注意されるのかわからなかった。

 それが顔に出ていたのか、親父は言ってきた。

 

「いいか? この世界の魔法に人を殺すほどの威力があるモノはほとんどない。そんなものを使ったら、一発で捕まる。分かるか? お前のその魔法はどうあがいても致命傷を負わせることのできる魔法だ。非殺傷設定でも、バリアジャケットを相手が着ていても、お前のその銃弾は貫通する。まるで、その設定など関係ないように」

「……」

「お前が生きてるのは前世とは違う世界だ。あそことこことでは情勢が違う。技術進歩も違う。何もかも違う。その違う世界で生きてるんだ。はっきり言うぞ。お前のその前世の考え方を捨てろ。戦闘になったら人が死ぬのは仕方のないことだとか、周りに誰もいない状態で自分が死にそうになったら助けを呼ばないとか、そういう『人の死』に関する考え方を捨てろ。生きるためにあがくことを覚えろ」

 

 次の瞬間。俺は顎を打ち抜かれ、地下室内に吹っ飛ばされた。

 なんとかダメージを逃がし空中で一回転して着地した俺は、先程まで俺がいた場所に立っている親父を睨みつけて叫んだ。

 

「どういうつもりだ!」

「今からお前には死にかけてもらう。生きることを諦めなければ、の話だがな」

 

 その言葉の後に、俺がいる場所と親父達がいる場所の間にシャッターが下りた。

 

「おい!」

『テメェには色々覚えてもらう。せいぜい足掻いてみろ』

 

 その言葉と同時。

 

 俺がいた空間がすべてねじ曲がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空間が捻じ曲がったかと思ったらすぐに戻った。

 が、変化はすぐにわかった。

 空間内の色が黒に変わっているからだ。

 

『マスター……何やら変な感じがします』

「そうだな。暗視系の修業なんだろうか」

『そんな修行じゃないと思いますが……』

 

 だろうな。俺も言ってみただけだ。

 そんなことを思いながらその場に立ち止まっていると。

 

――――キィン、と耳鳴りがした。

 

「ん?」

『どうかしましたか?』

「いや……幻聴だろう」

 

 頭を振って周囲を見渡す。

 黒黒黒黒…………辺り一面真っ黒。

 ここはもはや人の気配がない。元から存在しないという風に。

 音もないはずだろうになんで幻聴が聞こえたのだろうと、辺りの不気味なまでの静かさと裏腹に聞こえたものに首を傾げていると、今度はキィィンと音がした。

 

 ……またか。しかも少し長くなった。

 これはなんかの予兆だろうかと警戒していると、すぐにそれが来た。

 

「!?」

『ど、どうしました?』

 

 俺が太刀を両手で構えて前方を睨みつけたのに驚いたのか訊いてきたナイトメア。

 それに答えずジリジリと前へ進んでいると、左脇腹を蹴られた気がした。

 

「なっ!」

 

 驚きながら横に吹っ飛び、右手を地面につけて一回転し着地。

 そこから蹴ってきた方へ向かおうとしたら、追撃とばかりに前方から右腕にナイフかなにかが掠った(・・・)

 そう。掠った。その事実に驚きを隠せない。

 

 いくら真っ暗でも見えるのだから視界は確保されている。にもかかわらず、一切その中に入らずに体に傷ができている。

 

 訳が分からないが故にその場で立ち止まっていると、腹にジワリと滲む音がした。

 

「……嘘だろ」

 

 何事かと下を向いてみると、左腹部の服部分がごっそりと消えていた。

 まるでその部分だけの魔力を食いちぎった、あるいは消し飛ばしたような状態。

 

 なんでだ? 気配を感じないのに攻撃が繰り出されているのは。真っ暗だというのにすべてが俺に当たっているのは。

 

 左腹部を左手で押さえながら立ち上がり、慎重に周囲を見渡しながら警戒する。

 

『マスター。大丈夫ですか?』

「……少し整理させてく」

 

 ナイトメアの質問に答えると同時に整理しようと考え始めが、答えかけたところでおかしなことが発生した。

 

 声が消え、バリアジャケットまで解除されたのだ。

 

 別に声が消えたことに関してはいいだろう。だが、バリアジャケットまで消えたのには焦った。

 

 何せそれで魔力はそのままFの状態で生身という、最悪のケースにまで陥ってしまったのだから。

 

 どうするべきかも考えられずに動けないでいると、今度は後頭部に何かが一撃加えられた。

 声が消えたのでうめき声も上げられずに前のめりに倒れる俺だったが、その顔面に何かが突き刺さり、後ろにのけぞる。

 かと思ったら右を腕ごと攻撃され、吹き飛んだ。

 

 腕がミシミシミシッ、と音を立てたのを聞いて次食らったらやばいかとぼんやり考えながら受け身を取ろうと左手を地面につけようとしたら、それが払われ、そのままの体勢で叩きつけられた。

 

 口が大きく開き、声の代わりに酸素が漏れる。叩きつけられた衝撃で左半身が埋まり動かせない。右半身も攻撃を受けたからかしびれて動けない。

 

『――――! ――――!!』

 

 埋もれた方から何やら聞こえるが、視界が明滅し、意識がおぼろげになっている俺にとっては聞き取れないものだ。

 はっきり言って、ここまでボロボロになったのはずいぶん久し振りだ。いつぶりだったか思い出せないが、このまま死んじまうだろう。

 

 まぁ強かったのだから仕方がないかと思ってしまうが、ふと親父に先程言われた言葉を思い返した。

 

『お前が生きてるのは前世とは違う世界だ。あそことこことでは情勢が違う。技術進歩も違う。何もかも違う。その違う世界で生きてるんだ。はっきり言うぞ。お前のその前世の考え方を捨てろ。戦闘になったら人が死ぬのは仕方のないことだとか、周りに誰もいない状態で自分が死にそうになったら助けを呼ばないとか、そういう『人の死』に関する考え方を捨てろ。生きるためにあがくことを覚えろ』

 

 前世での人の死に関する考え方。それを捨て、生きるためにあがくことを覚えろ。

 そう言われたが、人は死ぬ時には死ぬのだから足掻いてどうすると思っている。

 だが、少なくともこの世界ではその考え方は良しとされないことだけは理解した。

 

 助けを求めた人間のために命を張った高町。

 なんだかんだで面倒見のいい委員長。

 委員長曰くツンデレ(未だに意味は分からない)のバニングス。

 親父の頼みらしいが入院先で面倒を見てくれた巡査。

 

 彼らは見知った人がひどい怪我を負ったり、死にかけたりすると心配したり怒ったりしてくる。

 そんな事を思い出すと、親父の言ったことが納得できた。

 

 つながった人は、その相手が死にそうになったら生きてほしいと思うのだから、そんなに簡単に諦めるんじゃねぇ。きっと、これが言いたかったのだろう。

 

 そう言えばあいつもそうだったなぁと前世を思い出した俺は、右手を地面につけ力を入れて起きようとする。

 

 その時に腹に衝撃が加わり、俺はそのまま転がり仰向けになって止まったので、全身に力を入れ起き上がる。

 

 畜生。声が出ねぇ。意識が朦朧としてやがる。体にダメージがあるせいかフラフラだ。

 これだけ死にそうな条件がそろっているにもかかわらず、俺は諦める気などなかった。

 おそらく、前世でもそういう奴らがいたのだろう。そういう奴らを、俺は何気なく殺していたわけか。

 同じ立場になってやっとわかる。死にそうになってるのに、なぜ諦めなかったのか。

 

 永く生き、決めたものを守るため。それだけだろう。

 

 ならば俺はどうして今回も諦めていないのだろうか。そう自問自答した結果、すぐに答えが出た。

 

 

 ……もっと生きて、こんな生活を続けたいから、だな。

 

 

 そう決めたら、急に光で空間が満たされた。




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