世にも不思議な転生者 作:末吉
放課後。
帰る準備をすぐさま終えた俺は席を立って教室を出た。
そして昇降口で靴を入れ替えて待っていると、急いで来たのか肩で息をしているバニングスと月村が。
別に待ってるから急がなくてもよかったんだが……と思ったが、何も言わなかったことを思い出し、「すまない」と二人に向けて言った。
「当たり前よ……」
「もう言ったの忘れたの?」
謝ったらそんな風に恨めしそうに返されたが、さすがに何も言わなかったので俺は黙ったまま。
その間に息を整え終えたのか、バニングスが怒った顔で言った。
「どうしてさっさと帰ろうとしたのよ!?」
「すまない。ただ天上に関して心配して先に出た」
それだけで何を言わんとしてるのか分かったようだが、月村がバニングスに続いて怒った様子で。
「だったら一言ぐらい言ってもよかったでしょ?」
と言ってきた。
「それでも構わなかったが……クラスメイト達と会話していたお前たちの間に割って入るほど俺は『人』じゃない」
「用件があるなら別によかったわよ」
「世間話みたいなものだからね」
「そういうものか?」
「何? それだったらあんたは、人が会話してたらそこに混ざらないの?」
「関わってないからな」
「「……ハァ」」
ため息をつかれた。おかしい。俺は一般的な対処法だと思っていたんだが。
と、これ以上会話が脇道に逸れることを恐れたのか、「さっさと行こうよ、アリサちゃん、長嶋君」と月村が言ってきたので、それもそうだと思った俺はおとなしく靴を履いた。
「誕生日? 高町の?」
「そう。本人が覚えてるかどうか怪しいけど、覚えてなかったら好都合ね」
「俺に関係があるのか?」
「何言ってんのよ。あんたも参加するんでしょうに」
「?」
「分からないの長嶋君?」
「誕生日は……生まれた日のことだろ? それで何に参加するのかが分からない」
歩いて帰る途中。どうして俺がこうして呼ばれたのか理由を聞くと、高町の誕生日に何かするらしく、そこに俺も参加することになっているから……らしいのだが。
誕生日なんて俺にはそもそもないだろうし、前世でもそういうのなかったし、むしろ祭りなんて戦勝記念だか生還記念だかでしかやったことがない。
そんな理由で正直に言うと(無論、戦勝記念だかは伏せて)、分かっていた反応なのかそれほどショックを受けずに何があるのか教えてくれた。
「誕生日っていうのはね、生まれてくれてありがとうってお祝いをする日なんだよ」
「感謝する日なのか」
「そう。だから来週の日曜日――翠屋がお休みになる日に誕生日パーティをやろうって話があったんだけど……もしかして聞いてないの?」
「いや全然。士郎さんと勝負することぐらい」
「「え?」」
月村の質問に思わず口を滑らし、耳を疑ったのか二人が立ち止って聞き返してきた。
俺も少し先で立ち止まって振り返り、「ああ」と答えたところで……しまったと思った。
この二人のことだから士郎さんが剣術家だということは知っているはずだ。そんな人相手に俺が勝負をすることになったとあれば、理由などを言及され更に心配されることがシミュレート(約一秒)できた。
人知れず説教を受ける覚悟を決めていると、予想外の言葉を聞いた。
「なのはのお父さん、意外と早かったわね……」
「そうだね……怪我しないように頑張ってね、長嶋君」
「あれ?」
思わず声に出してしまった。
今までの流れからすると怒られるとばかり思ってたのだが……一体どうしてこんな風になったんだ?
首を傾げながらそんな考えを進めようとしたら、俺の姿を見て何を納得したのかバニングスが説明してくれた。
「なのはのお父さん、前々からあんたのこと気にかけてたのよ。『剣で語り合ったら彼のこと少しは理解できるだろうか』ってね」
「そうなのか……」
剣で語り合う。その言葉を聞いて、前世での戦闘狂を思い出した。
あいつと会ったのは二回目の出撃時だ。
当時はまだ練度が低いという理由で戦場の端のほうで戦っていたのだが、その時に近くで戦っていた敵がソイツだった。
流れるような剣捌き。銃弾ですらはじく運動神経。そして多人数を相手に物おじせずに襲い掛かる胆力。
そして何より特筆する点は、戦った相手をすべて重傷にとどめる事。
ただし笑いながら。
あいつおとなしくしてるのかね。などと懐かしんでいると、「聞いてるの!?」とバニングスの声が。
「悪い。聞いてなかった」
「あんたってたまに上の空の時があるわよね……」
「そこは直したほうがいいよ?」
「善処しよう。……それで、誕生日がお祝いをする日だと分かったが、今から俺達は何をしに行くんだ?」
とりあえず話の流れが途絶えたので今までの話に戻すと、二人は声を揃えて言った。
「「プレゼント選びだよ(よ)」」
「プレゼント……もしかして、祝いの日だからか?」
「それ以外に何があるのよ」
「長嶋君って時々常識を知らない時があるよね」
「……まぁな。図書館でよく常識などについて調べるし」
「え。本当だったの?」
「知ってたんじゃないのか?」
月村が肯定したことに驚いたので聞き返すと、「冗談のつもりだったんだけど」と返された。
するとそこにバニングスが口を挟んできた。
「今はなのはのプレゼント探しよ」
「あ、そうだったね」
「……ん? だとしたら俺はなぜ来たんだ?」
今更な疑問が頭をよぎり口にしたら、当然という顔で言われた。
「あんたも選ぶのよ」
「……所持金ゼロだぞ?」
「「え?」」
まさか持っていないと思わなかったのだろう。二人ともまた足を止めてしまった。
「意外か?」
「そりゃそうよ。あんた、一人暮らししてたときあるんでしょ? その時はどうしてたのよ」
「誰から聞いたんだ一体。……その時は両親が現金を金庫の中に入れていた」
だから金庫を開けて必要な金だけ取り出したが? そう答えると、二人は閉口してしまったらしい。何も言わなくなった。
驚かれるのは分かったが、ここまでとは思わなかったな……なんて思っていると、ややあって月村がバニングスに言った。
「どうしようね。長嶋君にも選んでもらう予定だったのに」
「そうね……お金を貸してもいいけど、それだとあんたは良しとしないしね」
「……まぁ自分で作るさ」
すぐに俺は結論を言う。長話をする必要性が皆無だと判断したからだ。
にもかかわらず、俺が呟いた結論に食いついてきた。
「作るって……お金ないんでしょ?」
「材料だけには困らないからな。家の中漁ればなんか見つかるだろ」
「ていうか、あんた何作るのよ?」
「考えてない」
「「…………ハァ」」
あっさりと未定と答えたら、二人してため息をついてこめかみを抑えていた。
プレゼントという単語で首を傾げていた俺がそこまで考えていたと思ったのだろうか? なんて不思議に思っていると、これ以上は無駄だと悟ったのか、二人して俺の手をつかんだと思ったらそのまま進んでしまった。
しかし片方、バニングスの体温が若干高い。だったらやらなきゃいいのにと思う一方で、なんでこうなってるのか皆目見当がつかない。
状況についていけないので、困惑したまま二人に尋ねた。
「なぜ引っ張られているんだ?」
「「埒が明かないから(よ)」」
これまた、息が合った答えだこと。
途中からつかまれた手を解き横一列で歩き、バニングスたちの目的地に着いた。
まぁ、ショーケースに熊の人形やらが置いてあるところを見ると、玩具店だろう。
意外と中の人が多いなぁと思っていると、「ほら、あんたも行くわよ」と言われたので、おとなしく店の中に入った。
「ずいぶんと色々な匂いが混じってるな……鼻が曲がりそうだ」
「そんなに気にするものじゃないと思うけど?」
「割と匂いに鋭いんだよ、俺の鼻は」
中に入ったが、人の多さとそのせいなのか鼻を刺激するきつい匂いに、顔をしかめた。
なんか吐きそうだな、このまま居ると。
そんなことを思いながら商品を眺めながら歩いているバニングスたちの後ろを歩いていると、赤髪のちっこい奴と金髪でおっとりとしてそうな女性が、ぬいぐるみを見て何やら口論しているのを目撃した。
何やら魔力を感じたが、別段関わる気がないのでスルー。というより、頭のおかしい人間に見えるからやろうと思わない。
しっかし、世界が変わればこういうのが増えるんだねぇと適当に視線をさまよわせながら二人の後をついて歩いていると、急に二人が立ち止った。
「どうした?」
「これだね、アリサちゃん」
「そうね」
そう言って二人が見ているものを眺めると、そこにあったのはウサギのぬいぐるみだった。どうやら、お目当てのモノが見つかったらしい。
値段を見ると小学生にしては高いんじゃないかと思えるものだが、二人で一緒に買うようだ。
俺はどうするかとあたりを見渡すと、アクセサリーコーナーと看板が吊るされている個所を発見した。
あそこならば作れそうだと思い「装飾品の方へ行ってくる」と残して向かうことにした。
「で、見つかったのあんたは?」
「参考になるものなら」
「良かったね」
「ああ。……二人とも、ありがとう」
参考になるものを見つけ、じっくりと観察してから二人と合流して店を出て帰る途中。
誘ってくれたお礼を言ったら、何故か驚かれた。
理由を考えたところ、感謝の言葉をこの二人に口にしたことがないことに気付き、なんといえばいいか分からず頬を掻くだけにとどまった。
すると、我に返ったバニングスが「……言えるんじゃない、お礼」と呟いた。
一瞬返事をしようか逡巡したが、頷くだけにとどめた。口論は面倒だからな。
それから俺は二人が車に乗るまで一緒におり、乗ったのを確認すると家へと走り出した。
「さて」
『どうしたんですか、パソコンで設計図製作プログラムを開いて』
家に帰った俺は、先程までの記憶を忘れないうちにパソコンに保存するためにソフトを起動させた。
ナイトメアが質問してきたが答えず、マウスやキーボードを駆使して先程までの形状を書き込んでいく。
記憶の情報は鮮度が大切だ。メモをする暇もなかったので出来るだけ脳裏に焼き付けないとだめだ。
作業開始五分。
「……ひとまずは、これで。これを基にして作るか」
『なんですか、これ?』
ソフトに保存して背筋を伸ばしているとナイトメアが聞いてきたので、俺は立ち上がって電源を切り、部屋を出る前に答えた。
「装飾品の一つだよ」
ご愛読ありがとうございます。
それにしても、感想が急に消えるって不思議ですね。