世にも不思議な転生者   作:末吉

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原作上ではなのはの誕生日は三月十五日だそうですが(となると他の人の誕生日もあるのでしょうが)、このままいきます。


37:勝負後にて

「……久しぶりに徹夜したな。寝たのが三時で今は……八時か」

 

 目が覚め、携帯電話のディスプレイに映っている時計を見て今の時間を確認する。

 そして今日の予定を思い出そうとし……頭が働かないのか欠伸が出た。

 

「眠いが……流石に出ないと体に悪いし、腹減った」

 

 誰もいない地下室(・・・)の中、完成したものをその前に作った箱に入れて持ち、散らばっている失敗作を放置して階段を上った。

 

丸一日(・・・)も地下室にこもってたせいか、眩しい……」

 

 そう呟きながら目をつむり、しばらくそのままにしておく。

 ある程度落ち着いたら、再び目を開ける。

 

「ふぅ」

 

 なんとか慣れたな。この年で徹夜はやるものではない、か。

 出来るだけ計画的に行動する方がしばらく良さそうだと考えていると、窓から両親が顔をのぞかせていた。

 

「よっ」

「おはよう大智」

「おはよう……飯は?」

「ちゃんとあるわよ……で、今日(・・)な訳だけど、ちゃんと出来たの?」

 

 母親がそう聞いてきたので、俺は黙ってうなずく。

 そして思い出した。今日は士郎さんとの勝負の日だと。

 

 時間決めてないけど午前中でいいだろうと思った俺は、さっさと飯を食べるため箱を持ったまま玄関へ向かった。

 

 朝食を食べ終えた俺は、ラッピングというものに挑戦することにした。

 これは、図書館に置いてあった「プレゼントの渡し方・初級編」に載っていた。八神はこれを見て「誰に渡すん?」と訊いてきたが、答える義理もないので無視した。

 

 まずは包装紙を広げる。その対角線上の真ん中に長方形の箱を置き、左斜め上、右斜め上、左斜め下、右斜め下の順で箱を包む。

 最後に右斜め下の先端をセロハンで止めて完成。

 

 本来だとリボンで巻くのがいいとかプラスチックの容器に入れた方がいいとか書いてあったのだが、余裕がなかったのでこれだけ。ちなみに包装紙は、親父が作ったプリンターとパソコンを連動させて作った。紙は家に在ったもの(母親に相談したらくれた)を使った。

 

「これでよし」

 

 とりあえず自分の部屋に置いていき、俺は外に出て準備運動をする。

 昨日はほとんど体を動かしていないのだ。はっきり言って、動きが鈍い。

 何とか調子を整えないと……等と思いながら入念に準備していると、親父が物置(という名の通路)から出てきた。

 

「おい大智。やりっぱなしはだめだろうが」

「……あ」

 

 親父の言葉に動きを止めて思い出した。

 

「今から片づけてくる」

「もう片付けてきたよ。よくも一日であんなに作ったよな。そんなに納得いかなかったのか?」

「……まぁ」

「……だよな。お前が初めて他人に渡すものだからな」

 

 そう言うと親父は俺の頭に手を乗せた。

 

「ありがと」

「気にすんなって。あれだけ努力した後見せられちゃ、文句は言いにくいからな」

 

 そう言ってワシャワシャワシャ! と俺の髪の毛をいじりだす親父。

 二秒でうっとうしくなった俺は、親父に向かって速度的に本気のひじ打ちを脇腹にやったのだが、気付けば親父は二歩ほど横にずれており、「まだまだだなぁ」と笑っていた。

 

 反則的な速さだと思いながら、離れた隙に家に戻ることにした。

 

「あっ、おい!」

 

 あわてた声が聞こえたが、無視だ無視。

 

 

 

 

 

 

「行ってきます」

「怪我させない様にね」

「頑張ってこいよ」

 

 両親からそんな声援を受け家を出る俺だが、そんなに歩く距離はないので平常心のまま。

 というか、家に士郎さん以外いないって一昨日言ってたが……。

 歩いてる途中、ふと気になって高町の家を見上げる。

 

「……なんで二つ気配があるんだ?」

 

 それも、玄関近く。

 

 ひょっとすると家を出るところなのだろうかと思いその場で気配を消したが、一向に出る気配なし。

 だったら待っているのだろうと思った俺は気配を現してそのまま高町の家へ向かいインターフォンを鳴らす。

 

「は~~い……あ、長嶋君。どうしたの?」

「そういう高町こそどうした? 俺は士郎さんに呼ばれて」

「お父さんに? ……私は、何しようか悩んでたの」

 

 すぐさま出てきたのは、玄関先で悩んでいたらしい高町だった。

 そういえば今日自分が祝われる事を知っているのだろうか思ったが、バニングスや月村、そして士郎さんに「言わないで」と口止めをしつこく言われたので、思いとどまった代わりに嘆息して言った。

 

「勉強しろ」

「うっ……だ、大丈夫だよ。アリサちゃんやすずかちゃんが見せてくれてるから」

「次のテストが悪かったら二人には申し訳ないな」

「……最近長嶋君って意地悪だよね」

 

 事実を言っただけなのに恨めしそうに言われたので、「事実だろ」と言って封殺。

 何も言わなくなったので「入っていいか?」と訊いたが、答えてもらえず。

 やれやれと思いながらその場に立ち尽くしていると、玄関が開き、今回俺に勝負を提案してきた士郎さんが動きやすそうな格好で現れた。

 

「おはよう大智君」

「おはようございます、士郎さん」

 

 俺があいさつし返すと、近くで何も言わないでいる高町を見つけ首を傾げた。

 

「なのははどうしたんだい?」

「少し論破してしまいまして……」

「……」

 

 何も言わなくなった士郎さん。

 おかしいことを言ったわけじゃないんだが……と思っていると、やれやれと云う様に首を振った士郎さんが俺にこう言った。

 

「何を言ったか知らないけど、あまりストレートに言うのはやめた方がいいよ」

「そうですか?」

「そうだよ。でないと、いつまで経っても仲良くなれないよ」

「……そういうものですかね。言わなきゃ伝わらないと思いますけど」

「それも一理ある。けど、そのまま言わなくても伝わる時の方が多いんだよ」

 

 そう言われて如月との会話を思い出す。

 あの時の最後、俺は別な言い方をしていた。

 それにより会話は円滑に終わったと思われたので、なるほどとうなずいた。

 

 それに満足したのか、「それじゃはじめようか」と言ってきたので、それに対してもう一度頷き、士郎さんの後をついて行くことにした。

 

「……あ、待ってよ!」

 

 我に返った高町は、何故か俺達の後をついてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中々歴史を感じられますね」

「そう言ってくれると嬉しいね。朝の瞑想をやりにでもくるかい?」

「いえ。あれは平常心を鍛えるのも兼ねていますので」

「なるほど……君は考え方が本当に実戦向きだね。竜一の影響かい?」

 

 そう聞かれて俺は返答に困った。

 さすがに『いえ。昔からこんな考え方です』と答える訳にもいかない。かといって親父の所為にする気もないので。

 

「……インターネットで調べたんです。『精神力の鍛え方』で」

 

 現実味のある嘘をつくことにした。

 

「今はそんなことまで調べられるのかい?」

「えぇ。といっても、素人が書いたような感じでしたよ。納得できるものは少々ありましたけど」

「へぇ」

 

 士郎さんが納得したように頷いたので、俺は「そろそろ始めませんか?」と提案した。

 

「そうだったね。防具は?」

「要りません。邪魔で仕方がないので」

「そうだろうね」

 

 苦笑しながら士郎さんは、木刀一本を俺に渡してきた。

 とりあえず木刀を握って軽く上から下に振る。

 ヒュッ、と音がする。

 

 結構丈夫だなという感想を抱きながら木刀を見ていると、さっきから入口の近くでこちらを見てくる高町が、これから何をするのか気付いたらしい。

 

「あ……」

 

 だが俺達は何も言わず、代わりに言葉を交わす。

 

「勝負は参ったと言うまで時間無制限。いいね?」

「はい」

 

 そう言うとそれぞれ好きな様に構える。

 士郎さんはオーソドックスに中段。俺は自然体のまま。

 俺の立ち姿を見て士郎さんは驚いたが、すぐに真剣な顔をして俺を睨む。まるで動きの一つ一つを観察するように。

 俺はと言うと、相手がいつ攻撃してくるのか待っていた。

 

 開始の合図は、ない。動けばそれで始まりだ。

 この部屋を包む静寂と張り詰める緊張感により、体感時間が随分と遅い。

 あちらも隙がなさそうだから持久戦になりそうだと腹をくくったところで、あちらが動いた。

 

「はっ!」

 

 体を沈め二歩で距離を縮め右から左に袈裟斬りをしてきた。

 その鋭さに思わず木刀で防御しようかとしたがやめ、左に半身をずらし、振り下ろしてきたのを真下から木刀で弾き飛ばす。

 

 ――――カラン。カラカラン

 

「……続けますか?」

 

 弾き飛ばしたまま木刀を振り上げた俺は、士郎さんの顎の下で木刀を止め、そう聞いた。

 木刀を探し、自分の状況を察した士郎さんは少し間をおいて「――いや。参った」と言って息を吐いた。

 

 俺も木刀を下ろし、息を吐く。

 

 やれやれ。隙がない人間は本当にやりにくいな。

 そう思いながら、飛ばした木刀と一緒に士郎さんに返す。

 

「ありがとうございました」

「こちらこそ。君の強さを実感できたよ」

 

 士郎さんが木刀を片づけている間、俺は未だ入口にいる高町に話しかけた。

 

「よっ」

「強いね、長嶋君! お父さんに勝つなんて!!」

 

 驚きと称賛の混じった言葉。しかし、どこか切なさを滲ませていた。

 そこを指摘しようかと考えたが、先程言われた言葉を思い返し、やめた。

 その代り、返事もしなかったが。

 

 俺の無言に高町は慌て、「じゃ、じゃぁ私、出かけてくるね!」と努めて(・・・)明るく言い、そのまま行ってしまった。

 それを黙ったまま見送った俺は、「すまなかったね、大智君」と言われ、振り返った。

 

「別に気にしていませんよ」

「ははっ。でも、なのはと喧嘩させてしまったんだろ?」

「どうなんでしょうね……」

 

 ぼんやりと高町が去っていった方向を見ながらつぶやき、俺は考えていた。

 

 高町はきっと俺に対して何か言いたかったのだろう。今までの気持ち……みたいなものを。

 でも言わなかった。もしくは言えなかった。

 遠慮なのか、それ以外の理由なのか知らないが、それが俺という評価であるならば。

 

「主観的でもいいから正直に言ってもらいたい」

「なのはは優しいからね。人が傷つくようなことはあまり言わないんだよ」

 

 そう言って隣に来た士郎さん。

 俺はその言葉を聞いてそれはただ臆病なだけではないか?と思ったが、特に言う事でもなかったので黙っておくことにした。

 

 が、それとこれとは話は別だ。

 

 そう思った俺は士郎さんにあることを聞いた。




では、またお会いしましょう。
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