世にも不思議な転生者   作:末吉

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お久し振り?になります。


38:本音を聞く

*高町なのは視点

 

 

 長嶋君と会話をした後、私はそのまま自分の部屋まで走っていきました。

 そして入ってからドアの鍵を閉め、その場で蹲ってしまいした。

 

「……怖かった」

 

 そう。あの時の長嶋君の目がとても恐ろしく感じたのです。まるで自分の気持ちをすべて見透かしているかのような、そんな目が。

 

 あの事件以降、長嶋君は何か吹っ切れたのか積極的に会話をしてるらしく、いつの間にかクラスに馴染んでいました。

 時折難しいことを言うのと正直にしか指摘しない点を除けば――以前からあった気がしないでもありませんがよく覚えていません――以前より表情の変化が出てきているようです。

 それにもかかわらず、斉原君や長嶋君の両親以外だと信用していないのか距離をとっているのは変わっていませんでした。

 だから私達はゴールデンウィークにキャンプに誘いました。

 二泊三日の間に色々起きましたが、それでも距離というのが縮まった気がします。

 

 ですが今日のあの眼を見て、私はそうじゃないと思ってしまいました。

 

 その人を観察するような眼。自分とあなたは結局赤の他人だと言われるような眼。

 お父さんと打ち合った後だからあんな目をされたのだと思いますが、それでもあの眼はフェイトちゃんと初めて会ったとき以上に悲しくもあり、恐ろしくもありました。

 

 あれじゃまるで――――

 

「機械のようだったよ……」

「なるほど。それが躊躇った原因か」

「!?」

 

 思わずドアから離れて後ろに下がります。

 先程の声はどう考えても長嶋君の声。あの後お父さんとどんな会話したか分かりませんが、どうしてここにいるのでしょうか?

 

「機械、か。ならばなるほど。どうにも『人』と折り合いをつけていくのが大変なわけだ」

 

 私の疑問を知ってか知らずかなにやら難しいことを呟いていますが、聞かれたことには間違いなさそうなので慌てて訂正することにしました。

 

「ち、違うよ!? 長嶋君の事じゃないって!!」

「……それならばプログラムを求めるように感情を求めるのにも……何か言ったか、高町?」

「な、なんでもないよ」

 

 ダメでした。長嶋君は色々と難しく考えていたので、訂正はおろかもうすでに『自分は機械のようだ』と思ってしまったようです。

 どうしたら分かってくれるのだろうかと思っていたら、長嶋君が「ありがとう」と扉越しに言ってきました。

 反射的に私は「どうして?」と聞き返しました。その声は知らず知らずのうちに震えていました。

 

 それに気付いたかどうかわかりませんが、彼はこう言いました。

 

「それがお前の本音だからだ」

「ちが……!」

 

 違うよ、と言いたかったのですが、最後の方であの眼を思い出してしまい何も言えなくなりました。

 黙った私を気にせず、彼は続けます。

 

「本音というのは本心から言う言葉。つまり、『言いたいけど言えない言葉』だ。それを普段隠してお前たち(・・・・)は生きている」

 

 俺達ではなくお前達。その言い回しの違いが気になった私はつい「長嶋君は違うの……?」と訊いていました。

 その答えは説明を続けながら言ってくれました。

 

「違う……とは言いにくいな。今はまだ違うが…………それはともかく。本音とは本心。ならば心の中で自分が思った気持ちのある言葉だ。俺はそれを聞きたかった」

「……」

「そうすれば俺が知らない一面が理解でき、問題点が見つかり、それを改善することが出来る。『自分』を『人』にするために」

 

 本当に長嶋君の言っていることは良く分かりません。ですが、彼の言葉を聞いて私はこう言ってしまいました。

 

「どうしてそんなに焦ってるの?」

「…………焦ってる気はないのだが」

 

 少し間を置いた返事。きっと考えたからそう言ったのでしょうけど、私から見たら急いで『何か』を求めている気がしてなりません。

 

 生き急いでいる。そんな言葉が思い浮かびました。

 

「まぁその話は置いておこう。今は俺が機械のようで怖いと、その本音をぶつけ……」

「どうしたの?」

 

 途中で言葉が途切れたので、私は恐怖心を忘れ扉の近くまで行って彼の名前を呼びますが、返事はありません。

 急いで鍵を開けて扉を開けるとそこには誰もおらず、代わりに魔力に似た力の痕跡がありました。

 

 私はすぐにレイジングハートに訊ねました。

 

「これって魔法?」

『おそらくは……』

 

 その時、携帯電話が鳴りました。

 私はどこから来たのか確認せずに電話に出ます。

 

「もしもし」

『あ、なのはちゃん? 私なんだけど』

「リンディさん? どうしたんですか?」

『時間がないから手短に事情を説明したいんだけど……え!? どうなってるの一体!?』

「リンディさん!?」

『ともかく急いでこちらに来て!』

 

 焦った声のままリンディさんは電話を切ってしまいました。

 とても大変な事態だと直感した私は、カレンダーをちらっと見てレイジングハートを握りしめて呟きます。

 

「……早く帰ってくるから」

『行きます!』

 

 レイジングハートの声で、私は部屋から飛びました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リンディさん、一体何があったんですか!?」

「なのはちゃん。いいところに来たわ! 今すぐあそこに行ってもらえないかしら!?」

 

 そう言われてディスプレイに映っている映像を見ましたが、私は咄嗟に目を逸らしてしまいました。

 なぜなら、杖を持った男の人が管理局の人たちを何のためらいなく、何の抵抗もさせず殺していたのです。

 巨大な火の玉が建物とその周りを消し炭にし、嵐によってすべてが吹き飛ばされ、雷によって焼け焦げた死体が――――

 

「っ!」

 

 ダメです。もうこれ以上見れる自信がありません。それに、もう見たくありません。

 そんな私の様子を見たリンディさんは「やっぱり無理そうね……」と呟いたようですが、私は体の力が抜け、全身が震えたまま動けません。

 あの事件以来様々な事件にかかわっていましたが、これほどのモノは初めてです。

 私がそのままでいると、ディスプレイからこんな声が聞こえました。

 

『――――ったく。いきなり“回廊”に引き込みやがって。しかも面倒事は全部俺任せかよ。あの野郎、絶対に殴ってやる』

「――――え?」

 

 先程まで会話していた声。電話が鳴る前に急にいなくなった男の子。

 恐る恐る顔を上げてみると、先程と同じ格好をしていたその男の子が上空にいる男を見上げながら頭を掻いていました。

 

「長嶋君!? どうしてそこにいるの!!?」

『まぁあっちに責任はあるのが明白だから殴らせてもらえるだろう――――理解者にすべて押し付けるのもどうかと思うがな、本当』

 

 私は驚きの声を上げますが、聞こえていない彼はそんなことを呟き準備体操をしていました。

 と、リンディさんは私の言葉に何かを思い出したのか、「あの子が……?」と考え込んでしまいました。

 そんなことなど気にできず、私はバリアジャケットを展開してから他の人に「あそこに行かせてください!」と言って魔方陣に乗りました。

 

 彼に、色々と聞くために。

 

 

「なのは! 来てくれたんだね!!」

「フェイトちゃんも来てたの!?」

「うん。元々あの杖の確保のために動いていたんだけど……」

「じゃぁあの杖が?」

「そう。ロストロギア」

 

 転移した場所からすぐ飛ぶと、同じく向かっていたフェイトちゃんと合流し、少しばかりこの事件の事を聞きました。

 

「どうして起動しちゃったの?」

「分からない。ただ男の人が杖を横取りして起動させたから」

「なら早くいかないと! 長嶋君も何故かいるし!」

「長嶋君って……あの時私達の事を逃してくれて、つい最近マーメイドの不法侵入者を逃がした手術衣の人?」

「そう!」

 

 だったら早くいかないと。そう決めた私達はさらに速度を上げて現場へ向かいました。

 

 

 私達は現場へ到着しましたが、思わず目を覆う光景が広がっていました。

 倒壊している建物。クレーターとなっている場所。所々にできている竜巻。そして、血だらけで力なく横たわっている人たち。

 実際に見るとさらに力が抜けそうになりますが、私達は頷きあって強大な魔力の方へ行きました。

 

「くそっ! なんなんだテメェ! 管理局でもないのになぜ邪魔をする!?」

「しぶとい奴だなあんた。さっさと気絶してくれないか?」

「ふざけガッ!」

 

「……ウソ」

「強い……」

 

 魔力を辿ってここまで来たら、未だに魔力を感じさせない長嶋君が、ロストロギアを操っている男の人を圧倒していました。

 男の人が杖を振るって何かを出そうとするたびに、長嶋君が近づいて殴り飛ばす。

 殴り飛ばされた人に反撃の隙を与えないかの様に長嶋君はそこから駆け出して近づき、殴ったり蹴ったり地面に叩きつけたりします。

 あまりの速さと常識外れな光景に、私達はその場を動けませんでした。

 ようやく我に返れたのは、三度目の地響き以降、ぱったりと音がなくなってからでした。

 

「長嶋君!」

「待ってよなのは!」

 

 音がなくなりその魔力が段々と小さくなっているのが分かった私は、長嶋君が無事かどうか確かめるためにいてもたってもいられず飛び出し、フェイトちゃんは後を追いかけてきました。

 

 

「ふぅ。後はこれを……」

「時空管理局の者です! あなたには聞きたいことがあるのでご同行願いたいのですが……」

「長嶋君、無事!?」

「……なんでお前がここにいるんだ、高町?」

 

 長嶋君を見つけた私は、フェイトちゃんのいう事を無視して近くに行って呼びかけました。

 呼びかけられた当人はロストロギアの杖を持って首を傾げていましたが、やがて理解したのか「これを取りに来たのか、お前たちは」と訊いてきました。

 相変わらずの頭の良さに言葉を失いますが、今はそんなことを気にしていられません。

 

「そうだけど! どうして長嶋君はここに!?」

「それを答えたいのだが……今はこちらを何とかしないと」

 

 その言葉の後に長嶋君から感じる先程と同じぐらいの魔力。

 思わず警戒しますが、次の彼の行動に目を瞠りました。

 なんと持っていた杖を両手で、しかも水平にして持ち直したのです。

 そして

 

「我送るは制止の力。動きを止めて真の所有者に戻れ」

 

 と言ったと同時に杖が消え、更地になっていたこの場所に急に建物が現れました。

 どうやらここは屋上らしく、幸い私達は落ちずに済みました。

 ですが、理解が追い付きません。

 一体何がどうなっているのか。あの杖がどこへ行ったのか、どうして長嶋君がここにいるのか。

 何もかもわかりませんが、唯一分かったことは……

 

「さて。これでお前らの仕事も終わりだ。さっさとこいつ連れて戻れ」

「長嶋君もついてくるんだよ」

「なんで?」

「全部、話してもらうから。隠してること」

 

 ……この機会を逃すと長嶋君の本音を聞けないことです。




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