世にも不思議な転生者   作:末吉

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主人公説明回


39:連行

 俺は今スサノオの爺に押し付けられた厄介ごとを処理したところに居合わせた高町によってボコボコに殴った主犯を引きずりながら、爺が使っていた回廊とはまた別な移動法でこいつらの拠点へ向かっている。

 

 魔力は最後のほうに使い空。速度重視で加減を考慮してなかったからか左手首と右足首が変な風に曲がってそのままで歩いているので、はっきり言って辛い。

 しかも、終わったらすぐに連れ帰すとか言っていたスサノオが迎えの一つもよこさず逃げようとした瞬間に高町の拘束魔法を食らい動けなくなって……この様だ。

 

 ちなみに、主犯はなぜか俺が引きずっている。お前らの方が元気のはずであり、俺はお前らの組織とは一切関係がないのだが、何故か俺が。

 

 文句の一つでも言いたいが、足の痛みと全身を襲う虚脱感のせいで今では黙々とついて行くことしかできない。

 となると必然的に前を歩いている高町ともう一人――見た記憶はうっすらとあるがあまり覚えていない――だったが、急に足を止めた。

 

 俺も足を止める。ひょっとして目的地に着いたのだろうかと思いながら。

 しかし、答えは否だった。

 二人が一斉に振り返ってこう言ってきたのだから。

 

「「ねぇ、ちょっと訊きたいことがあるんだけど」」

 

 見事に息の合った言葉なのでどちらに反応すればいいのか判断がつかないでいると、揃ったことで顔を見合わせた二人がアイコンタクトをしたらしく、高町が先に質問してきた。

 

「長嶋君。どうしてあそこにいたの?」

 

 まさか神様に連行されたとは言えまい。

 しかしながら答えないと一歩も動かなそうな気がしたので「着いたら答える」とだけ言った。

 するともう一人が重ねて聞いてきた。

 

「君、どこか怪我したの?」

 

 ……鋭いな。

 そんなことを思いながら、なぜそう思ったのか訊いてみた。

 

「分かるんだ。私も、自分の傷を隠して生きてたから、なんとなく」

「……そうか」

 

 あまり合点のいく答えではなかったが、納得はできる答え。だから俺は正直に答えた。

 

「あの時スピードの乗せ方を間違えて、左手首と右足首がおかしなことになってる」

「え、それって大変な事じゃん! はやく行かなきゃ!!」

「待ってなのは。それより応急処置をしないと」

「あ、そうだったね」

 

 そう言って少しは落ち着きを取り戻した高町。この二人は結構いいコンビのようだ。

 とはいえ俺の怪我の心配をしてくれている事実は変わらないので。

 

「だったらこいつ連れてけ。俺はこの場で応急処置をすぐにする」

 

 と言って自分の服の両袖を破き、右手と口で左手首を、右手と左手で右足を縛る。

 本来気付いたらすぐにやるべきなのだが、今の今までやる機会がなかった。

 これで少しは動きやすくはなったかと思いながら顔を上げると、片方――声が依然何度か聞いた覚えがあるがそれだけ――は感心して、高町は悲しそうだった。

 

『マスター。心配されてるんですよ』

「いきなりだな、ナイトメア」

 

 突然のデバイスの茶々入れに驚きながら、俺は再び死んではいない主犯の襟首をつかみ「早く進んでくれ」と二人に言った。

 我に返った二人はそれ以降何も言わずに歩き、目的地である船についた。

 

 真っ先に思い付いた感想は、案外脆そうだなこの船、だった。

 未だ前世の記憶を思い返さずにはいられない俺は、前世との船を比較したうえで前世の武器だったらどれを使えば跡形もなく消せるだろうと考え、割と何使っても消せることが想像でき、そんな結論に至った。

 

 まったく。俺はいつまでたっても変われないようだ。

 心の中で自虐的に呟きながら、とりあえず二人の後を追うことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「高町なのは、ただ今戻りました!」

「フェイト・テスタロッサ、ただ今戻りました!」

「フェイト! 大丈夫だったかい?」

「なのは、いきなり行ったから心配だったけど、無事なようだね」

「…………」

 

 艦内に入り高町ともう一人――名をフェイト・テスタロッサと言ってようやく思い出した――が元気よく言うと、犬みたいな耳をつけている女子と俺達と同じような身長の少年がそれぞれの迎えをしにきたので、暇な俺は気配を殺して壁に背中を預けて座り込む。

 

 ふぅ。さすがに疲労感がやばいな。魔力で身体能力を上げた時もそうだったが、やはりオーバーワークは堪えるか。

 

 起き上がろうとした主犯を座ったままで無事な右手で殴って再び気絶させてぼんやりと天井を見上げていると、横から奇妙な視線を受けた。

 なんというか……気味悪がられているというかそこら辺の類だろうな。

 なら別に気にせんでいいかと思いナイトメアに呼びかける。

 

「魔力が回復する前に全魔力を封印してくれ」

『それでしたらここから出られないのでは?』

「スサノオの爺に任せる」

『結構恨んでますね……』

 

 とか言いつつきちっと仕事をしたナイトメア。俺はというと、何で気配を消したのに視線を受けているのだろうかと考えていたのだが。

 視界を白い服に遮られ、その主を見るように顔を上げていく。

 

「何か用か?」

「長嶋君。治療を先に受けてもらうよ」

「別に『お願いします』……」

 

 断ろうとしたらナイトメアが了承した。おかしい。今まで言わなかったのに、なぜ先に言われたのだろうか?

 なぜなのかと思いながら、俺は高町に手を引かれそのまま連行された。

 

「ユーノ君。お願い」

「ちょっと待って。この人の魔力も使わないと完全には無理だよ」

「だから別にいいと言ったんだ。これくらい、二日もすれば治る」

 

 そう言って高町の手を振りほどくと、ナイトメアが勝手に魔力の解放した。

 つくづく勝手にする奴だと思っていると、ユーノと呼ばれた俺達と同じような身長の奴が、いきなり魔力が現れたのに驚いていた。

 俺は魔力の量の具合から、現在Cランクまで回復してると推測。そのうちのDランクまでを解放したのだろうとも。

 こうなると治療が続行されるので、俺はナイトメアにあらん限りの文句を心の中で言いながらユーノの治療を受けた。

 

 完全に動けるようになった左手首と右足首の調子を確かめながら「ありがとう」というと、ユーノが心底驚いていた。

 

「どうした?」

「ふつう、魔法で治療したらハイ終わりってわけじゃないんだよ。それなのにもうすでに完治してる様に動くからさ……」

「実際完治したぞ? 元々、体の頑丈さと回復力の異常さが取り柄だったからな」

 

 そう言うと、今度は周りの奴らが絶句していた。

 

 この場に委員長がいれば『まったく君は……』からのお小言が始まりそうだったが生憎いないので、この空気の対処法を知らない俺は困ったと頬を掻きながら思っていると。

 

「あなたが斉原君やなのはちゃんが言っていた長嶋君ね?」

「確かに俺は長嶋ですけど?」

 

 後ろから声が聞こえたので振り返って疑問で返したところ、その緑色の髪をした女性――横にいる女性の着ている服が違うのでおそらくまとめ役だろう――が苦笑してこう言った。

 

「中々一筋縄じゃいかなそうね、君」

「……まぁバカではありませんので」

 

 肩をすくめていう俺はその女性の隣にいる女性が「あの子だったら絶対にクロノ君の方がかっこいい」とか言っていたのが聞こえたが、別段無視して話をする。

 

「主犯ならそこで伸びてますけど?」

「そうね。じゃぁ彼を連行して」

 

 とりあえずこの事件の主犯を連れて行かせる。

 残ったのは俺に高町、ユーノ、目の前に立っている女性二人とフェイト・テスタロッサと耳ありの女性……確かアルフだったかの七人。

 

 もし危害が加えられそうだった場合どこから切り崩していこうかなどと思案しながら、俺は相手が質問する前に言った。

 

「アレは忘却神具……古より忘れられた神が使いし道具ですよ。貴方たちがロストロギアなどと呼んでいる物は」

「「「「「「????」」」」」」

 

 ――――全員が全員、首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はため息をついて説明した。

 

「質問されるのが面倒なのでこのまま説明します。まず、あなたたちが回収しているものは全部、その世界で祀られていた道具の数々です。神がその世界で顕現していた時に使っていた道具が大半で、まぁ中にはどこかに置き忘れたまま時間が過ぎたものもあるようです。今回の例は後者が原因ですね。次に名称ですが、先程も言いました通り正しくは忘却神具。忘れ去られた神々の道具です。それゆえ、起動方法やら何やらが一切ありません。今回は主犯に誰かが起動法を教えたのでしょう。人の姿なんて簡単に神はとれますからね。最後ですが、なぜこのようなことを知っているのかというと、あの現場に連れて行かれる間に全部説明させました」

「「「「「「ちょっと待って」」」」」」

 

 今度は待ったをかけられた。とはいってもすべて説明したから何もいう事はないのだが……はて。

 

「どうかしました?」

「ちょっと整理させてくれないかしら」

「はぁ……別に構いませんよ。言いたいことは全部言いましたので」

 

 そう言うとその女性たちは少し離れぶつぶつと呟きあっていた。内容が聞き取り辛いが、おそらく俺の言ったことが本当かどうかだろう。それか俺に対する悪口かなんかか。

 ちなみに後ろは振り返らなくても分かる。なぜなら、全員が黙ってしまったからだ。

 

 これでやることが終わった。早くスサノオ来ないかなぁと思いながら立っていると、服の後ろ側を引っ張られた。

 

「?」

 

 振り返ると何故か疲れた顔の高町が。

 

「どうした?」

「いつも通りだね、本当……ところで、神様っているの?」

「いるぞ? お前がキャンプで見たあの小人だって一応森に棲む神霊で、神様に近い存在だし」

「いるならどうしてわからないの?」

「普段は姿を隠してるんだよ。それこそ、俺みたいに神様はいるって考えを持ってないと見えないぐらいに。後は……人の世に紛れて生活してるとか」

「へぇ~~……って、あれ? ということは前言ってたのって」

「ありゃウソだ。というか、そんなことのために来たのか?」

「…………あ」

 

 ようやく思い出したのか、高町がさっきとは打って変わって元気な声でこう言った。

 

「そうだよ! 長嶋君に色々訊きたかったんだ!!」

「そんな決意込めていう事か、それ?」

「いいんだよそれは! ……でさ、さっきも訊いたけど、長嶋君は何でそんなに急いでるの?」

「またその質問か」

 

 最初の質問がまさかあの時の質問だとは思わなかったが、少し考えた俺はこう答えた。

 

「……いつ死ぬか分からないから」

「え?」

「自分がいつ死ぬかどうかわからないから、だろうな。ここから帰るときに俺は死ぬんじゃないかと思うし、明日にも死ぬかもしれない。そう思うがゆえに、だな」

 

 口に出し、やっぱり変えられねぇなと改めて思う。

 この考えは前世での教訓だったりするので、余計に。

 

 案の定高町が黙ってしまった。が、すぐに呟いた。

 

「哀しいね、それ」

「だろうな。微塵もそう考えられないが」

「生きたいとは思うんでしょ?」

「まぁ。死にかけでも生き延びようと考える位には」

「……やっぱり、悲しいよ、それ」

 

 俯いてしまった高町。それに対し俺はどう声をかけるべきか分からなかったので黙る。

 と、ここで不意に高町が顔を上げた。

 

「どうした?」

「え、えっと……今更なんだけど、キャンプの時はありがとうね。それと、あの時も」

「別に構わないが……あの時って夜刀神と闘った時か?」

「うん。あの時の長嶋君は色々とおかしかったけど、それでも私たちを助けてくれたよね」

「あいつには個人的な借りがあったんだ。それを返すためにお前らが邪魔だっただけ」

「……本当にいつもの長嶋君だね。良かった」

「この会話の流れでなぜ安心したんだ?」

「な、なんでもないよ!?」

 

 急に高町がアタフタしだしたので首を傾げていると、「お待たせ」と言って再び戻ってきた女性二人が。

 二人で話を整理したからなのだろうかと思いながら、ついさきほどから感じる新しい気配をスルーしつつ訊いてみた。

 

「信じますか?」

「到底は無理ね。いきなりそんなこと言われても、ねぇ?」

「だそうだスサノオ。姿現して証明してくれ」

「元から現しておるぞ? ただ杖の力でちょいっと、の」

「「「「「「!?」」」」」」

 

 俺が視線を向けた先にいきなり杖を持った爺さんが現れたのに、全員が驚く。

 そんな全員を無視し、俺は聞いた。

 

「なんで俺を無視したんだ?」

「いや、お主なら大丈夫じゃろうと思ってゲームを買いに。今はその帰りじゃ」

「死ね」

「ね、ねぇ長嶋君。このお爺さん、いつからいたの?」

 

 俺とスサノオの会話に困惑した高町が割り込んできた。

 

「あ? 高町がアタフタしてる時から」

「ウソっ!?」

「なんじゃ、気付いておったのか」

「えぇ!?」

 

 高町が一人で狼狽えているが、俺は気にせず緑色の髪をしている女性に声をかけた。

 

「この爺さんが神様のスサノオだ。神様から煙たがられ、人間から英雄視されたと云われている」

「何気に痛いところついてくるのぉ」

「証拠はあるのかしら?」

「その杖。さっき俺が送り返したものだ」

「これがないと自分で買えなくてのぉ」

「……確かにそのようね。でも、証拠にはなりえないわよ」

「随分疑り深いな。いっそのこと本当の姿見せたらどうだ?」

「これ、壊れるぞ?」

「知ってる」

「……どういうことかしら?」

「身長二メートルぐらいだっけ?」

「まぁギリギリじゃろうが、頭一つ抜けるかもしれんのぉ」

 

 そんな他愛もない会話を繰り広げる俺達に、緑髪の女性は絶句していた。

 いや、周りの奴らもそうだろう。そんな雰囲気を感じてなんとなく察する。

 見た目ただの爺だし、神様なんて目に見えてる奴ほとんどいないから信じてもらえないだろうなぁと思いこんな会話をしたが、どうやらこれでも無理なようだ。

 

 となるとコミュニケーション能力がほぼない俺にどうすることもないので、「爺任せた」と丸投げにすることにした。

 

 丸投げされた着物姿の杖を持った見た目五十代のスサノオは、「さっさと帰ってゲームやりたいんじゃが……」と呟いたが、それでも決めていたのか緑髪の女性に声をかけた。

 

「リンディさん、じゃったかな?」

「!? どうして!?」

「まぁそこら辺は別世界でこいつの生活眺めながら適当に見ておったし、何より知ってるからのぉ。夜刀神にすぐさま船に戻され切り札を使えなかった、空しい艦長?」

「!!」

 

 スサノオの発言が当たりだったのか、なぜか構える女性。

 だがスサノオはそんな気はないようで。

 

「わしは別に何もする気はないぞ。人の世に神の干渉はなるたけ少なく。例外としてはこの小僧ぐらい。じゃから、お前さん達が何をしようと別にわしはどうでもいい」

「俺はまた巻き込まれるのか」

「それはしょうがないことじゃよ。……ただ、今後忠告することがあるなら、一つだけじゃな」

 

 もはや神様である証明など忘れ、忠告をし始めた。まぁぶっちゃけ誰も言わないので俺は黙っているだけだ。

 

「わしとは逆の考え方をする輩もおるからの。その時はまぁ、小僧を通して忠告させてもらうわい」

「おい」

「別にわしが神様だという証明はいいんじゃないかの。それこそ、受け止めるのは相手側じゃし」

「逃げんな!」

 

 なんか話をまとめようとしていたので遮ろうとしたがもう話す気がなくなった爺は、その場から姿を消した。おそらく、杖と回廊の合わせ技で逃げて行ったのだろう……って。

 

「逃げられたら俺帰れねぇし……」

 

 あの野郎、完全に見捨てていきやがった。今度会いに来たら顔を殴りまくってやる。

 そんな黒い思いを胸に秘めていると、誰かに肩をたたかれた。

 誰だろうと思い振り返ると、何やら全員が全員疲れた顔をしていた。

 

「どうしました? 疲れた顔をして」

「……今日はもういいわよ。ごめんなさいね、無理やりとはいえ連れてきちゃって」

「はぁ……」

 

 いきなり言われ、俺は戸惑う。先ほどまで結構剣呑な雰囲気だったはずなのに、なんでかみんなげっそりしていた。

 

 そこまで俺はおかしなことをしただろうかと思いながら「また出頭してこいとか言いませんよね?」と念のために聞いてみると、「もういいわよ。なんか、あなたと話しているととんでもないものが来そうだから」と言われた。

 

 まぁ実際あの破天荒爺来たしな。そんなことを思いながら「分かりました」と答えたら、また後ろから引っ張られた。

 

 ……なんか慣れた自分が怖い。




ご拝読いただきありがとうございます。
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