世にも不思議な転生者   作:末吉

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六月は早く終わるので今日中に登校します。


41:雨の日の登校風景

 あの後。

 

 高町の誕生日会で渡したものが驚愕だったらしくすごい質問攻めにあい、解放された時には帰って寝たいと思いが生まれていた。

 お開きとなったのでさっさと家へ帰る前に片付けの手伝いを行ってダッシュ。その後風呂入って寝た。

 

 で、今は六月。

 特に何事もなく過ぎて行ったのだが、俺はそう言えばそんな季節だったなと窓を見ながら思った。

 

 そう。雨が降っているのだ。

 

「もう梅雨か……」

「いや、お前傘とか持ってるだろ? というか、今までどうやって行ったんだよ?」

「【力】のおかげか全く濡れなかった。だから傘なんて持ってない」

「……体一つで行ったのかよお前」

「これからどうするのよ? もうすぐ時間でしょ?」

 

 母親にそう言われ時計をちらっと見る。

 確かにもうすぐ時間だな。早く決めなくては。

 どうするか……等と考えていると、インターフォンの鳴る音が。

 

「……」

「ほら、早くしなさい。バス代ならあげるし、傘なら適当に持っていけばいいから」

 

 俺が黙っていると誰だか見当がついているらしい母親はそう言って、小銭を渡してきた。

 

 これもうあれだな。素直に従うしかないな。時間もないし。

 あきらめに似た結論に至り、俺は小銭を受け取って鞄を持って傘立てに入っていた傘を適当に一つ持って「行ってきます」と言って外に出た。

 

「おはよう大智君。今日は雨だね」

「そうだな」

 

 そう言って傘を開こうとするが開かない。

 

「?」

「どうしたの? はやく行かないとバスに遅れちゃうよ?」

「……だな」

 

 高町に言われ俺は持っていた傘をその場に置き、そのまま玄関を出た。

 俺が傘を置いて走ってきたのに高町は驚いて、近くまで行くと俺の方に傘をよこして怒ってきた。

 

「なんで傘を置いてきちゃうの!?」

「時間ないし。換えに戻るの面倒だったし。高町が待ってそうだったから」

「……」

 

 最後の方で高町が顔を背けた。一体何が悪かったのだろうか。

 少し考えてみたかったがそれをやるには時間が足りないので、俺は傘から飛び出して「さっさと行くぞ」と言って駆け出した。

 

「あ! 待ってよ!!」

 

 それに気付いた高町が、濡れないように気をつけながらも追いかけてきた。

 

 ……学校着いたら制服どうするか。

 

 

 

 バス停に着いた俺はそのままバスに乗り込む。

 傘なしで走ってきたので全身びしょ濡れ。鞄の中身が心配だが、それ以上に制服とかが肌にくっついて変な感じがする。

 前世だったらこんなことなかったんだがな……なんて思いながら座ることが出来ずそのまま立ちっぱなしでいると、少し遅れて息切れの状態の高町がバスに乗ってきた。

 

 傘を閉じながら乗ってきた高町は俺の姿を見るなり「だから傘置いてきちゃダメだって言ったんだよ!」と怒ってきた。

 俺はというと運転手の優しさで渡されたタオルで髪を拭きながら、「分かったから席に座ったらどうだ? あっちで待ってる人いるみたいだし」と奥を指さして言った。

 

 しかし運転手はなぜタオルを持っていたのだろうか? 高町が何か言いながら通り過ぎて行ったのを見ながら、ふとそんなことを考える。

 もしかして自分も濡れるだろうから持っていたのだろうか? それとも別な理由か?

 

 そんなことを考えていたら、いつの間にかバスは発車していた。

 

 

 

 

 何事もなく学校付近に着いた。

 一番近かったので金は払ったが、出ようにも雨が降っている。校舎まで濡れるのを覚悟すればいいだけなのだが、そうすると上履きとか履けない惨事になることは単純明快。

 

 さてどうするかと他の奴らが出ていく邪魔にならない様に動きながら思案していると。

 

「あんたって、たまにバカみたいな行動取るときあるわよね」

「ある意味長嶋君らしいけど」

「でも傘ぐらいはちゃんと持ってきてほしいかも」

 

 降りるらしい三人に口々にそう言われた。

 

 どうやらこいつらが最後らしい。

 それじゃ、こいつらが降りたら俺も覚悟決めて降りないとだめかと思っていると、不意に腕を引っ張られた。

 

「あ、おい」

「早く降りないと遅刻しちゃうでしょ? だから、あんたが傘持ちなさいよ」

「いや、それは別に」

「いいから!」

 

 そんなやり取りで押し付けられたバニングスの傘。

 とりあえず礼を述べて傘を受け取り、バスから降りて傘を開く。

 今度はちゃんと開いた。なんか感動するな。

 そのまま月村、高町と降りて、最後はバニングス。

 どうするつもりなのだろうかと思ったが、俺一人で使う必要はないかと思い降りる場所まで行って待つ。

 バニングスは驚いたようだが、そのまま降りてきた。

 

「すずかと一緒に行こうと思ったんだけど……意外ね。こういうことしないと思ったわ」

 

 隣に来たバニングスが俺の顔を見ずにそんなことを言ってきたので、俺もバニングスを見ずに返した。

 

「借りたのに貸してくれた本人を濡らそうと思う程、俺は人の道を外してないぞ」

「……そうね」

 

 それ以降の会話が望めないので、俺は「歩くぞ」と言ってバニングスを促し歩き出した。

 バニングスは、普通に俺の横を歩いていた。

 

 あくまで、普通に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助かった。ありがとう」

「べ、別にいいわよ。あんたに前助けてもらったことあるし」

「借りは返す、か」

「そりゃそうよ」

 

 校舎に入った俺はバニングスに傘を返してそんな会話を交わし、教室に向かおうと思ったが、すぐさま放送で理事長室に呼び出された。

 

「……またか」

「あんた理事長に最近呼ばれるけど、一体何かしたの?」

「別に何も」

 

 そこからさらに何か言われそうだったので、俺はさっさと上履きに履き替えて廊下を濡らさないように理事長室まで走っていった。

 

 

「来たぞ」

「体操着に着替えたまえ。如何に自業自得とはいえ、風邪を引かれるとこちらも困る」

「その為に俺を呼んだのか?」

 

 理事長の言葉に従い何故かここにある俺の体操着に着替えながら訊くと、「まさか」と肩をすくめた。

 

「じゃぁなんだよ」

「助言をしておこうと思ってな」

「助言? なんでまた」

「君に死んでもらいたくないから、だな」

「その内死ぬぜ、俺。今は死ぬ気ないが」

「なら助言しよう。夏辺りから君はまた巻き込まれるだろう。その時は面倒くさがらずに関われ。どちらの立場になっても、だがね」

「なんで先の事を?」

「私が忘れそうだからだよ」

 

 そう言って理事長は椅子を回転させ俺に背を向けた。俺はというと、着替え終えていたのだが……

 

「授業始まってるし」

「制服をどうにかしたまえ。それから行けば、この授業が終わった後だろう」

「分かった」

 

 授業が始まっていたので、俺は理事長の言葉に従い濡れている制服をたたんで体操着が入っていた袋の中に詰め込んで理事長室を出た。

 

 ゆっくり歩いたら本当に先程の授業が終わった後で、体操着姿の俺を見たクラスメイトのほとんどが一斉にこちらを向いた。

 

 珍しいだろうな俺だけ体操服だというのは。そんなことを思いながら平然と自分の席に座って次の授業の準備をしていると。

 

「どうしたんだい長嶋君。ひょっとして、雨に濡れて学校に?」

 

 委員長が驚いて訊いてきた。

 

「まぁ。バス停に着くまでは」

「なんでまた?」

「傘が開かなくて時間がなかった」

「……それは本当に傘なのかい?」

「傘立てにあったし傘の形状をしていたから」

「それはまた……」

 

 何とも言いにくそうにしている。

 まぁおそらく親父が作った傘なので、とんでもないオーバーテクノロジーがあるに違いない。

 ……割と単純なものだった気がしないでもないが。

 

 そんなことを考えていたら、急に委員長が小声で話しかけてきた。

 

「(ねぇ。そういえば聞きたいことがあったんだけど)」

「なんだ?」

「いや、大きな声出さないでほしいんだけど」

「(で?)」

 

 怒られたので同じく小声にしたら、委員長はちらっと視線をある一点に移してから俺に訊いてきた。

 

「(……ここ最近高町さん達といろいろあったみたいだけど、何かやらかしてない?)」

 

 ここ数日の事を瞬時に思い返した俺は、「やったな。色々と」と答えた。

 

「(例えば?)」

「(お前と俺を転生させた神様の命令で行った先に高町たちと遭遇したり)」

「(……なんで神様にそんな命令受けるの?)」

「(高町の誕生会に士郎さんに圧勝して怖がられたり)」

「(勝てる方がおか……いや、長嶋君ならあり得るかな)」

「(とりあえず金がなかったから高町にステンレス製のペンダントを作って渡したり)」

「(それもうアウトだよ! 何手作りで装飾品作ってるのさ!?)」

「慣れれば楽だぞ?」

「そう言う問題じゃ!」

「斉原に長嶋。いい加減喋ってないで授業の準備しろ」

 

 そんな先生の声に驚いて周囲を見渡す委員長。そして事態を把握したのか顔を赤くさせて、「すいません」と言って自分の席に戻った。

 

 俺はというと、のんびりと雨に打たれている窓ガラスを見ていた。




【力】を失う前の大智は余程チートみたいだったようです。
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