世にも不思議な転生者 作:末吉
六月は結局雨の降った日は合羽にビニール袋(カバン用)、タオルの三点セットで乗り切った。というか、雨が降ったら基本的にこれで行こうと思っている。
まぁ雨が痛かったりしたが。
で、特に特筆すべきものがなく過ぎていき、気付けば梅雨が明けて七月になっていた。
制服は衣替えをしており、基本的に袖が短く生地が薄いもの。
そんな中俺は。
「うおぉぉ!」
バスと並走できるぐらいに走力が上がった……のかもしれない。
さすがにずっと走り続けたり筋トレをしているおかげか、昔に少し近づいた気がする。
そのせいで体育の時間は悪目立ちして一人傍観することが多くなってるが。
いや。ちゃんと抑えてはいる。抑えてはいるのだが……正確無比なコントロールとか、どんな場所でも点が取れるとか、打ったら飛ばし過ぎるとか、走るのが速過ぎるせいでどうにも。
……バントやったはずなのにセンターヒットになった時はさすがに俺も驚いた。
で、その度に何度も斉原や高町たちに怒られる。確かに小学生の動きにしては恐ろし過ぎるだろうが、これでも抑えてる方なんだ。察してくれ。
そんなこんなで、俺は今日も、少し強い日差しの中走る。
「もう少しで夏休みだね」
「最初は何言ってるんだこいつと思ったが……やることがなくて暇になる」
「……なんだろうね。僕と大智は同じことを言ってるはずなのに、会話がかみ合ってる気がしないんだけど」
「だろうな。前世じゃ休みなんて休戦日の大晦日と元日だけだったことを鑑みてそう思っただけだし、宿題が簡単すぎて一日あれば大体終わったから」
「うん前世の話はやめよう? 君の前世を聞きたくないから」
「軽々しく話すものでもないし、別に興味なくてもいいがな」
「おっす。相変わらず仲良く話してるな、大智に雄樹。何の話だ?」
二人でこれからの話をしていると、霧生が話しかけてきた。
ちなみに、あの件(水梨の弁当)以降霧生は俺の事を「大智」と呼び、それに便乗したのか斉原もそう呼んでいる。
俺は委員長の事を「斉原」と呼んでいる。というか、そろそろそう呼べと言われた。
「何って、今月の終わりごろから夏休みだねって話」
「でもその前にテストあるだろ?」
「それが?」
「俺、点数悪かったら夏休み遊べないんだ……」
「ちなみに元一っていつもどのくらいだっけ?」
「百八十ぐらい。これ以上下がったらアウトだぜ」
「大変だな」
俺がそう言うと、急に霧生が舌打ちした。
「どうせ大智は今回も全教科満点なんだろ?」
「さぁな。問題なんて時の運だから分からんよ」
「うわっ、嫌味っぽいわー」
「そう聞こえるのは僻んでる証拠だ。自分で努力して納得しろ」
「良いこと言ってるけど、それって自分で何とかしろってことだよね」
苦笑しながら俺の言ったことを要約する斉原。
だが実際そうだと思うんだが……一体何が悪いのだろうか? と首を傾げていると、霧生が斉原に泣きついていた。
「だから頼む雄樹! 勉強教えてくれ!!」
「え、い、いや……」
霧生の頼みごとに少し困った斉原の姿を見て、俺は「おや?」と思った。
いつも(俺が知っている範囲では)だったら特に用事がなければ即決するいい奴なのだ、あいつは。
なのに今回は渋った。これは如何なことだろうか?
少し考えて出した予想の候補としては、やはり管理局関連なのだろう。それを何も知らない霧生に知られたくないと考えている……といったところか。
こりゃおそらく霧生が絶望するだろうなと傍観していると、急に俺の名前が呼ばれた。
「あ?」
「な、なぁ大智! 勉強教えてくれ!!」
「なんで俺が?」
「雄樹が言ってたんだよ。お前のノートは見やすいし分かりやすいから、教えるのもうまいんじゃないかって」
「斉原……」
余計なこと言いやがってと思い斉原の方を向くと、「僕も教えてくれるといいかな」と訊いてきた。
「ノート見て復習しろ。そんだけやればテストなんて八割取れる」
「残り二割は?」
「努力」
「じゃぁその二割をとるための努力をしたいから、教えてくれない?」
……最近斉原が腹黒い気がするんだが気のせいだろうか。
そんなことを思いつつ、根負け(と言うか張り合うのが面倒になった)した俺は「いつからやるんだよ?」とため息をついて訊いた。
すると二人が(特に霧生が)嬉しそうに「「じゃ、今日からでも!」」と言って席に意気揚々と戻ったので、このぐらいで躓いてるんじゃねぇよ……なんて思いながらため息をついてると。
「何? あんたもテスト勉強するの?」
「聞いてたのか、バニングス」
「いや、さっきの二人の声を聴いてれば分かるわよ、それぐらい」
「……で? 一緒にやらないかと言う誘いに関しては断りたいのだが?」
「………本当、どういう頭をしてるのかしら?」
呆れているバニングスに対し、俺は懇切丁寧に解説した。
「お前が俺のところに来るのは大抵用がある時だけ。そしてお前が今「あんたも」と言ったことから推測すると、お前達も勉強することは明白。となると大体の提案は一緒にやろうというもの……違うか?」
「いや、違わないけど……」
「けど?」
「なんでもないわ!」
「? そうか」
急に声を上げたので不思議に思ったが、本人が何でもないというのだから気にしないでおこう。
そして俺は「もうすぐ始まるぞ」と言ってバニングスを席に返した。
昼食。
「そういえば来週からプールだったね」
「プール……」
「どうしたんだよ大智」
いつものメンバーとなりつつある水梨と霧生が食べている中、俺は斉原の言葉で過去二年の事を思い出して固まり、それに気づいた霧生が不思議そうに聞いてきた。
俺は、言おうかどうか悩んだが、言わなきゃしつこいだろうと思い直し答える。
「一回も入ってないんだよ、プール」
「マジか? でも成績よかったんだろ、お前?」
「気にしたことがない」
「というより、どうして入ってなかったのですか?」
俺の言葉に霧生は呆れ、水梨は尤もな質問をしてきた。
それに俺は答えようとしたが、斉原が口を挟んできた。
「それはね、水着を一度も買ってないからだよ」
「え?」
「おいおい……本当かよ、それ」
「ああ」
実をいうと、学校で水着を販売する日があるのは覚えているのだが、お金だけを毎度のごとく忘れる。
別に泳げないのではない。単純に水着に関して必要性を感じなかっただけだ。
そんなことを思いながら頷くと、霧生が額に手を当てながら言った。
「……ちなみに、今年の水着販売日は?」
「明後日あたりだろ?」
「なんで覚えてて買わないんだよ……」
「別に服着ても泳げるし」
「それだと生活がしにくいから水着があるんですよ」
「はだ「それ以上は言っちゃダメだ大智。みんな気まずくなる」
斉原が即座に止めてきたので、俺は仕方なく黙ったが、内心なぜ裸で泳ぐことを言ってはダメなのだろうかと不思議に思っていた。
前世じゃ海龍神と戦うとき裸だったし、潜水艦まで潜るときもそうだった。
さすがに機雷群に突き落とされた時は普通に制服だったが。
本当によく生きてたなぁと思い返していると、霧生が「お前水着買えよ! 当日に金持って来いよ!?」と怒ったように言ってきたので、「覚えてたら」と言ってその話題を終わらせることにした。
が、そうは問屋が卸さないらしい。
「電話すればさすがに持ってくるよね?」
斉原がそんなことを言ってきたから。
別にいいだろうにそこまで執拗にしなくても。そう思いながら「必要ない」と言うと、「だったらお金を持ってきてね」と笑って言われた。
……やられた。
さっきも似たようなやられ方をしたばかりなのに学習能力ないのだろうかと思いながら、ため息をついて頷いた。
何やら視線を向けられていたが、一体なぜだろうか?
今回から七月に入りまして、ちょっと数話挿んでから夏休みになります。
そこで『闇の書』に関することが始まる…かもしれません。