世にも不思議な転生者   作:末吉

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日常をちょくちょく混ぜていたら六十話越え辺りで闇の書事件に関わり始める……なんて見通しに。一話にまとめると話数が減りますが、文字数が増えるという。

という訳で、ご覧下さい。


44:テストに向けて

 放課後。

 とりあえず俺は斉原と霧生に声をかけて話を切り出した。

 

「どこで勉強するんだ?」

「僕の家でもいいと思うけど、大智は少し遠いよね」

「ああ」

「だったらどうする? 図書室でやるか?」

「だったら教室でいいだろ。幸い残ってる奴らほとんどいないし」

「まぁ面倒だっていう考えは分かるけどさ」

 

 そんな風に三人で悩んでいると、まだ帰っていなかったのか月村達が話しかけてきた。

 

「何悩んでるの?」

「どうしたの?」

「珍しいわね、考え込んでるのなんて」

 

 バニングス以外は首を傾げて話し掛けてきた。なんだこいつ。二人に言わなかったのか。

 まだ俺が手伝うと思っているのだろうかと思いながら「じゃぁ図書館でやろう。だったら二人も問題ないな?」と霧生たちに訊いた。

 すると霧生はすぐさま頷いたのだが、斉原は少し渋った。

 

「そこはちょっと困るかな……」

「なぜだ?」

「公共施設ってあんまり長居してると怒られるでしょ? だからね」

「あーそれは確かに」

「それを言ったら入館時間から入り浸りの奴らはどうする?」

「そこまでの人はいないでしょ」

「んで? 結局どこにするんだよ?」

 

 決まらないことに苛立ちはなさそうだが、それでも焦っているのかせかす霧生。

 ならばどうするかと考えていたところで、高町が何気なく提案してきた。

 

「だったらさ、私達と一緒に勉強会しようよ。丁度アリサちゃんの家でやるからさ」

「よし、斉原の家でやろう」

「「「ちょっと(!)待て!」」」

 

 高町の提案を聞いた俺がすぐさま霧生と斉原にそう言うと、霧生とバニングス、月村に待ったをかけられた。

 

「どうしてだ?」

「お、おま! せ、せせせっかく提案してくれたのに!」

「大丈夫か? 声が震えてるぞ?」

「う、ううううるさい!」

 

 ふむ。どうして霧生の声が震えているのかわからないが、提案に乗らなかった理由が知りたいようだ。

 仕方がないので俺は正直に答えた。

 

「俺はお前と斉原と勉強する約束をした。だが、俺はいっぺんに教えることが出来ないのでバニングスの方は断った。だから別々にしたかったんだが?」

「清々しいほど正直に答えるわね、本当」

「これはさすがにフォローできないからね、僕」

「別にフォローせんでいい。……今日はいいというなら俺は帰る。やることはないが」

 

 そう言って鞄を持って教室を出ようとしたところ、ガシッと勢いよく両肩をつかまれた。

 首を向けると、月村と霧生が。

 

「……なんだ?」

「待て。今日出来なかったら俺は多分終わる」

「そういう人を放って置くの、長嶋君?」

 

 そう言って月村のつかむ力が上がる。どうやら怒っているらしい。

 はっきり言って痛みを感じるほどではないので問題はないのだが、さすがにこのまま引きずってくのは面倒だと思った俺は、何度目かのため息をついて言った。

 

「……………………分かったから掴んでる手を放せ。さっさと行って適当に切り上げて帰るぞ」

「おっしゃぁ!」「やれやれ」「最初からそう言えばいいのよ」「本当だよ」「やっぱり来てくれるんだね!」

 

 喜ぶみんなを見ながら、よく考えたらファンクラブの目の敵にされてるんだよな、俺と今更ながら思い、天上からもライバル宣言受けてたんだよなぁと繋げ、結局その思考を投げ捨てて教室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鮫島さんが迎えに来て車に乗せられて移動した先。

 分かり切っていたことだが、バニングスの家である。

 

「さ、こっちよ」

「お邪魔します」

「久し振りだね、アリサちゃんの家に来るの」

「そうだねー」

「……ここもデカいな」

「あれ? どういうことさ」

「前に月村の家にな」

「それはそれは……って、どうしたの元一?」

 

 ふと斉原が霧生に話しかける。

 そう言えば移動中も黙ってたなと思い振り返ると、思いっきりガチガチになっていた。

 どうやら、事態の危険さを今更に自覚したらしい。

 

 下手したら目の敵になるからな。いや、もうなるんじゃないだろうか。

 そんなことを思いながら、黙っている霧生に話しかけた。

 

「今更緊張するな。もう諦めろ。そして開き直れ」

「無理だ! 難易度高すぎる!! そう言うお前は何でいつも通りなんだ!?」

「いつも通りだから」

「わかんねぇーー!」

 

 後ろでそう叫ぶ霧生。

 

 なんだ普通に叫べるじゃないか。これなら問題なさそうだ。

 そう思っていると、「さっさときなさい」とバニングスが扉越しにそう言ってきたので、頷いて向かった。

 霧生は、慌てて俺の後をついてきた。

 

 

「……最近よ」

「どうした?」

 

 高町達は待っていたようで、バニングスが先導して洋風の造りなのか土足のまま家の中を歩いていると、後ろにいた霧生がポツリと漏らしたので、俺は振り返らずに訊く。

 すると、何やら哀愁漂わせながら答えた。

 

「お前と付き合い始めていつかこうなるんじゃないかなーって思ってたけどよ。思ったより早くてな……」

「は? 何を言っているんだ、お前」

「お前本当にわからないのな……」

「ああ。クラスメイトを特別扱いする必要ないしな」

「そんな考えだったのか……」

 

 と、何やら霧生が納得したようで呟いていると、ビクッと前方の人たちが反応した。

 

 ……一体どうしたというのだろうか。

 そんなに不思議なことを言ってるわけではないだろうにと思っていると、何やらテンションが低いバニングスが「ここでやりましょう」と、いつもより低い声で扉の前に立ってそう言った。

 

 そのまま無言で部屋に入っていく俺達。

 部屋の中はまぁ外装と違わず、十人ほど座っても余裕がありそうなテーブルに先着順に座ったところ、俺は正面に月村、右隣に高町、左に霧生に挟まれた。

 いや、視界にバニングスや斉原も見えるからほとんどが視界に入る場所に座ったんだがな。

 だからなんだと思いながら、俺はカバンを机に置いて言った。

 

「とりあえず、今ある教科の勉強しようか」

 

 

 

 

 

 勉強を開始して数分が経過した。

 現状を簡潔に述べるならば、やることがない俺は教えるのに忙しくなり始め、斉原は傍観し、月村達はなぜか俺に教わりに来た。

 

「……なぜだ」

「そりゃぁ、君が懇切丁寧に教えるからじゃないかな?」

「そう教えてるつもりはないぞ? 教師の話をかみ砕いて教えてるだけだ」

「……そのことを言うんだけどね」

 

 はぁまったく。これでは自習(図書館から借りてる本『誰でもわかる相対性理論』を読書すること)が出来ないではないか。

 あと数ページで読み終わるから一気に読みたいんだがなぁと思っていると、霧生が俺の肩を揺さぶってこう言った。

 

「お前さっさと教えろよ! こちとら夏休みかかってるんだぞ!?」

「だからさっきから教えてるだろ。その答えは教科書に書かれているその公式を使えば求められるって」

「その公式はどうやればそうなるんだよ!」

「そこからかよ……」

 

 揺さぶられながら呆れた俺は、「とりあえず揺さぶるのやめろ。そこから詳しく教えてやる」と言って解放させ、霧生にその公式について教えた。

 

 一方高町たちはというと。

 

「長嶋君のノートって綺麗だね。しかも見やすいし」

「これが毎回テストで満点取ってるあいつのノート……悔しいけど、負けたわ」

「しかもノートのところどころに教科書のページや、ノートの別ページまで書いてある。これならいちいち探さなくてもわかりやすいよ。本当にすごいね、長嶋君」

 

 俺が貸した(強制的に貸すことになった)ノートをめくりながら、そんなことを言っていた。

 そのノートの書き方は小学一年のころからだ。

 あまりにも授業がひますぎたので、いっそのこと本みたいにするかと思いながら書いていたら、いつの間にかそんな風になっていた。

 今では斉原に貸すのでより分かりやすく『ポイント』とか注釈を書いたりする。

 

 ……それが必要だったかどうかは置いといて。

 

 ここまででわかったのは、高町は理数系が得意で、委員長やバニングスや月村は全教科、霧生は特にないこと。

 逆に不得意なのは、高町が文系、霧生がほぼ全教科(といっても過言ではない)といった具合だ。

 何? 俺? 俺は前世で勉強しながら戦争してたが、あそこの世界での高校生レベルまでは理解している。

 この前図書館で大学の参考書を見つけてぱらぱらとめくっていたら見知った問題が出てきたので、こちらでは大学レベルの学力があることになるのだろう。

 

 我が事ながら末恐ろしいな。将来のことなど考えていないが、色々と出来るだろう。

 

 そんなことを思い霧生に教えていると、携帯電話が鳴った。

 

「すまん電話だ」

「お、おう」

 

 とりあえず席を離れ奥の方へ移動しつつ電話に出る。

 

「もしもし」

『よぉ大智。今何やってるの?』

「テスト勉強の手伝いだが?」

 

 そう言うと、掛けてきた奴――親父は感心したように言った。

 

『ふ~ん。お前が勉強の手伝いね~』

「用は?」

『いや。帰りが遅いから電話しただけ。あんまり遅くまでいるなよ』

「知ってる」

 

 親父の注意を聞いた俺はそう返して電話を切る。

 

 まったく。知ってるのにわざわざ言うなっての。

 そんなことを思いながら携帯電話をポケットにしまって戻ると、斉原が驚きながら訊いてきた。

 

「大智……携帯電話持ってたの?」

「ああ。母親が買うと言ってな」

「なんで「「いつ買ったの!?」」

 

 斉原の質問はバニングスと高町によって遮られた。

 俺はというと、そんな二人の必死な声に疑問を覚えたが、隠す気はないので正直に答えた。

 

「ゴールデンウィーク最終日に」

「なんで言わなかったのよ?」

「自慢にならないからな」

「今まで使ったことはないよね?」

「あるぞ。両親と巡査の三人だけだが」

「私達の前じゃないわよね?」

「かかってこなかったからな……というか、なぜ俺が携帯電話を持ってるだけでそこまで食いつくんだ?」

「! そ、それは!」

「え、えぇっと!!」

 

 思わず首を傾げて質問したところ二人は慌てだした。

 そうやって慌てると体温が上がって血圧が上昇するぞ……と言ってやろうと思ったら、月村がクスクスと笑いながらこう言った。

 

「二人は長嶋君の電話番号が知りたいんだよ、ね?」

「「すずか(ちゃん)!?」」

 

 そうやってすぐさま二人は月村へ向く。

 俺はそんな光景を目の当たりにして、そんなに知りたいのだろうかと不思議に思ったが口に出す気にならず、ため息をつく。

 

「そんなの後でいいだろ。ところで、勉強は終わったのか?」

 

 そう訊ねたらほぼ全員が頷いたので、「じゃぁ帰るぞ俺は」と自分のカバンを持って扉に手をかけたところ、後ろから呼び止められた。

 

「一緒に帰らないの?」

 

 俺は振り返らずに答える。

 

「ノートは明日にでも返してくれればいい」

「ちょっと!」

 

 そんな声が聞こえたが俺は構わず扉を開け、先程の道を引き返して帰ることにした。

 のだが。

 

「おや大智様。お帰りですか……っと」

「前は猫だったが、ここには犬がいるのか……というより鮫島さん。リードを放さないでください。何故か俺に集まってきたじゃないですか」

「失礼しました。どうしても力に引っ張られますので」

 

 鮫島さんが散歩で連れてる犬が俺に一斉に集まってきたので、帰るに帰れなくなった。

 

 前の猫もそうだったが、なぜ俺を見る度に集まってくるのだろうか。俺は神様じゃないし、中身は最悪だというのに。

 犬に囲まれながらそんなことを思っていると、後ろの扉があいた。

 

「待ち……って、あんた、何やってるの?」

「その声はバニングスか。見ての通り犬に囲まれて進めない」

「猫もそうだったよね、あんた」

「なんとかしてくれ」

 

 そろそろ鬱陶しくなったのでそう言うと、バニングスに「あんたでも出来ないことってあるのね」と呟かれてから提案された。

 

「なら、交換条件はどうかしら?」

「交換? 別に構わないが」

 

 俺が了承すると、バニングスはその条件を言った。

 

「あんたの電話番号を教えてもらえない?」

「いいぞ。それくらいなら」

 

 断る必要がないのですぐに肯定すると、バニングスは一匹一匹に「ほら離れなさい」と言ってどかしてくれた。それを真似て俺もはがして地面に置く。

 それが終わった時、丁度斉原達も来た。

 

「あれ? まだいたの?」

「犬に囲まれてな」

「どんだけ好かれてるんだよ」

「すずかちゃんのところの猫もそうだったよね」

「うん」

「じゃ、交換するわよ」

「ああ」

 

 携帯電話を取り出してとりあえず赤外線で交換する。

 ……やはり前世の方が使いやすい。音声だけでデータ飛ばせたからな。

 一応作り方は知ってるから作れないことはないのだろうが……等と思っていると、「ほら、早くしなさい」と言われた。

 

「何を?」

「あんたも受け取るのよ」

「……あぁ」

 

 前世で習った通信機器の変遷の中で『赤外線通信では一方通行の通信しかできませんでした』という説明があったのを思い出した。

 本当に不便だと思いながらバニングスのアドレスを受け取って登録した。

 そしてさぁ帰ろうかと思ったら、

 

「「じゃ、僕も(私も)いいかい(な)?」」

 

 斉原と高町までもが携帯電話を取り出してそう言った。




お読みくださりありがとうございました。
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