世にも不思議な転生者   作:末吉

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夏休み効果だからなのかお気に入りが四百件になりました。ありがとうございます。


45:プールのはずだった

 あの場にいた全員と連絡先を交換した俺はその後、一人で走って家に帰ろうとしたが、なぜか高町が「帰り道一緒だから一緒に帰ろう?」と言い、それに乗ったかどうか知らんが「じゃぁ僕たちは鮫島さんにお願いしてもらってもいいかな?」と斉原がバニングスに訊ねて了承をもらったため、二人で帰ることになった日から数日後。

 

 いつも通り学校へ行こうと玄関にいる俺だったが、ふと今日の体育の事を思い出して手元を見る。

 やはりというか、買ったはいいが持ってこようと思ってなかったらしい。

 

 毎回忘れるから怒られるんだが……今日はどうするかと思っていると。

 

「大智。お前今日もプールなんだろ? 準備物位持ってけよ」

 

 と同時に後ろから投げられたので受け取る。

 

 渡されたのは、案の定水着等が入った袋だった。

 もう手に持った以上忘れることもできないので、俺は「ありがとう。行ってくる」と家を出た。

 

 

「おはよう長嶋君。あ、今日は持ってきたんだね」

「ああ。親父が思い出させてくれてな」

 

 そんな会話をしながら高町と一緒にバス停まで向かう。

 ぶっちゃけバス停通らなくても学校へ行けるのだが、最近高町と会う頻度が多くなっているためバス停へ行ってから学校へ行くルートを使う。

 

「今日は泳ぐんだよね?」

「どうだろうな……というか、最近お前こっちにいること多いな。あっちはどうした?」

「色々と仕事はあるんだけど、テスト前というのもあるし、長嶋君の事もあるし」

「なぜ?」

 

 心当たりが本気でないので首を傾げると、高町は驚いた顔で言った。

 

「それ、本気で言ってる?」

「ああ。体育では浮きまくってるし、勉強でも同学年の中ではおかしいと分かったし、表情もうまく作れないくらいで、特に魔法の方ではあまり迷惑をかけてないはずだが?」

「……あのね、長嶋君」

 

 何やら俺の返答に苦い顔をした高町がそのまま続けた。

 

「あの時の事、覚えてるでしょ? ほら、私の誕生日会の時のこと」

「それはな。スサノオに雑用押し付けられたし、お前にプレゼント渡したし」

「あの時はすごくうれしかったしまだ一度も身に着けてないけど……じゃなかった。その時にリンディさんと普通に話してたよね?」

「リンディ……緑髪のまとめ役そうな女性か。確かに」

 

 一人だけ服装が違っていたし、スサノオが名指しした時に反応したからな。一応覚えてる。

 

「で、長嶋君が消えた後なんだけど、リンディさんがこう言ってたの。『彼の話は保留にしておくとして、彼の事は警戒しておいて』って」

「だろうな。あそこまで盛大にボコボコにした時魔力一切発してなかったし、回復魔法使われたらもう完全回復したし。それで警戒しないんだったら指揮官失格だな」

「……どうしてそんな『分かっていた』という風に言えるの?」

「俺がああいう立場だったらそうするからだ。……さて、バス停に着いたな。あまり相手に内密な情報を話すのもどうかと思うぞ。じゃ」

「あ」

 

 高町が何か言いたそうにしていたが、俺は無視して走り出す。

 

 最近暑くなってきたと思うが、それでも風を切るこの気持ちよさは変わらない。

 前世じゃ全くといっていいほど感じられなかったからな。そう思いながら、信号に気を付けつつ軽快な足取りで学校へ向かっていく。

 

 

 

 学校について斉原がいないと言われた俺は特に気にせず自分の席に座って授業の準備をし、その最中に寄って来た霧生と最近俺に話しかけてくる如月と他愛もない世間話をしつつ、水着を持ってきたことに驚かれたりしたら先生が来た。

 

 授業中。

 ノートをいつも通りに取っていると視線を感じた。が、それを探す気もないのでそのまま放置。

 

 授業が終わった。

 先程の視線がまだ続いているので気になって視線の方向を向いたら、なんか、変な球体が浮いていた。

 はて。こんなの見たことがないんだが……一体何なんだ?

 内心そんなことを思いながら表情を変えずに授業の準備をして、トイレへ行くふりをして教室を出た。

 

 青い変な球体は、俺の後をついてきた。

 

 ……あーまたなのか。後ろを見てついてきてることを確認した俺はそんなことを思いながら、そのまま歩く。

 それでもついてくる球体。

 こうなったらさっさと話を聞くか。あまり時間をかけられない俺はそう思い歩く方向を変えようとし、先生に見つかった。

 

「何やってるの、長嶋君。もうすぐ授業始まるわよ」

「あ、はい」

 

 仕方がないので、教室に戻った。

 

 

 

 

 始業時間ギリギリで教室に戻った俺は、急いで席に座って授業を受け始める。

 しかし後ろの方から視線を感じる。今は気にならないので無視できるが、そのうち何かが起きそうで怖い。

 俺自身だけなら問題はない。が、俺の周りに被害が及ぶのは避けたい。

 ただのエゴイストだと言われようが、秘密主義だと言われようが、面倒事の処理に足を引っ張られたくないだけだ。

 

 まったく面倒だ。そんなことを思いながら、指された問題を答えてノートをぱぱっとまとめた。

 

 

 次の授業の前。

 俺は準備をすぐに終わらせてからそのまま教室を出て、この球体の話を聞ける場所まで向かうことにした。

 教室を出た時に呼び止められた気がしたが、気にせずに向かった。

 

 

 

「で? その球体の話を聞くために私のところへ来たと」

「ああ」

 

 理事長室をノックして返事も待たずに部屋に入って事情を説明した。

 すると理事長は俺の頭上を指さして訊いてきた。

 

「その球体の事は?」

「知らん。おそらく水神の類だろう」

「さすがの推察力だ。だが惜しい。これは海龍神の遣いだ。ただの」

「海龍神? リヴァイアサンとかのか?」

「そうだ。海を縄張りにする龍の神だ。察するに、非常事態でも起こったのだろう」

「なぜわかる?」

「なぜだろうな」

 

 そう言って仮面の下で笑う理事長。

 一瞬、この狸が…と思ったが諦めて上を向くと、急に球体が落ちてきた。

 

「な」

 

 口を開けて驚いたためそのまま球体に飲み込まれた。

 

「まぁ頑張ってくれたまえ」

 

 理事長のそんな声が聞こえた時、体の感覚がすべて呑まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………そして水中か。まったく。制服が濡れないようになってるのはいいが、肝心の呼び出した本人はどこにいる?」

 

 気が付いたら水の中にいた。一応呼吸等はできるのと服がぬれないことを確認した俺は、周囲を見渡しながら腕を組んでそう呟いてると、下から低い声が聞こえた。

 

『手荒な真似をしてすまんな。我が出向くほどの事ではなかったため、勝手ながら主を呼んだのだ』

 

 その声に聴き覚えのない俺は「誰だお前」と素直に聞いた。

 すると『その心意気やよし! 直接姿を現して名乗ってやろう!!』という声とともに下から地響きが聞こえてきた。

 ゴゴゴゴゴゴゴ…という音共に浮上してきたそいつは、俺の目の前で宙返りして顔をこちらへ向けて名乗った。

 

『我が名は蛟竜! 未だ龍としては道半ばな者なれど、その力人に勝る者なり!!』

 

 ……蛟竜か。なんだか古臭い言い方をする奴だな。

 俺の体位の顔に見つめられながらそんなことを思っていると、急にその顔が渋った。

 

「どうした?」

『ぬぅ。これでも動じぬとは、やはり彼の者の申すことは誠であったか…』

「少し気になるが俺をここに連れてきた理由を答えろ。そして何をさせたいのか、もだ」

『……分かり申した』

 

 そう言うや否や蛟竜は水流を纏い、すぐさま消し飛ばしたと思ったら人の姿となっていた。

 見た目は二十代前半ぐらい。服装は半袖のTシャツに七分のズボン。靴は履いていないかった。

 

「なれるのか」

『無論だ……では、頼みがある。海上にて騒ぐ者どもを黙らせてはくれぬか? はっきり申して、住んでいる者たちが不安がっておる』

「自然災害を起こせばいいだけじゃないのか?」

『起こしても良いがここの長として守る義務があるのでな。無暗に起こせん』

「なるほど……」

 

 少し思案する。

 

 確かに蛟竜の言う事も一理ある。

 守る場所を守らねばならないが、他者の介入に関しては自身の立場上動きづらい。それゆえに俺を呼んだのだろう。

 

 ならばどうするべきか……等と思っていると、蛟竜が上を向いた。

 

「何かあったのか?」

『どうやら戦のようだ。被害に関しては何とか食い止めるが、阻止行動はとれん。だから……』

「やれってか? ……ああ、分かったよ」

 

 すまぬ。という言葉を聞きながら、俺は蛟竜に投げられて水中を上った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今更だが、魔力封印したままなんだよな、俺。ナイトメアいないから。

 水上へ向かっている途中、ふと俺はそんなことに気付いた。




次から厄介ごと……ご拝読ありがとうございました。
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