世にも不思議な転生者 作:末吉
残り三話ぐらいで蛟竜編終わります。
俺の発言に対して全員の反応は、「何言ってるんだ、こいつ」だった。
当たり前だろうなと思った俺はそれ以上何も言わずに石を上空へ投げる。
すると、先程と同じように盛大な破砕音を響かせながら粉微塵になった。
「分かっただろ?」
手首をプラプラとさせながら上を見て驚いている奴らに向けて言う。
「今はもう犯罪者とか関係ない。脱出したければ全員が力を合わせてこれを壊すしかないだろう」
それ以外にも方法はあるかもしれないが、これが一番堅実な方法だろう。
そう考えながら、ざわめき始めた周囲を無視して俺はもう一度先程の場所へ向かうことにした。
崖の先端にある、小屋へ。
さて。俺は先程と同じ道を歩いている。先程切ったツタや凹ました大木などがある道を。
その後ろを歩いてくる人物が数人……いや、下手したら十人ぐらいか。そのぐらい気配を感じた。
一瞬振り切ろうかと思ったがやっても無意味だと思い直し、そのまま進むことに。
数分で先程着た場所まで戻ってきた俺はそのまま進み、小屋の前まで向かいドアノブを握ってドアを開ける。
「不用心な……」
あっさりと開いたことに拍子抜けしながらそう漏らし中を見渡すと、テーブルに本棚、キッチンに食器棚ぐらいしかなかった。
俺は警戒しつつ中に入ろうかと思ったが、後ろの気配がウザったくなったので、振り返って森のほうまで進み、言った。
「なぁお前ら。そんなに俺の事殺したいなら超遠距離で魔法打ち込めよ」
しかし何の反応も返ってこない。
こりゃ図星か……? などと思いながら立っていると、後ろから聞こえてはいけないはずの声が聞こえた。
「なんでそんな挑発してるの長嶋君!!」
…………ん? 気のせいか? 高町の声が聞こえたんだが……
などと思っていると、急に後ろから肩をつかまれ強制的にそちらに向くことになり、それで理由が分かった。
「なぜお前がここにいる、高町」
「そういう長嶋君こそ。どうしてあんなことを言ったのかな?」
どうも有無も言わさないらしい。肩をつかむ力が増しているのがその証拠だ。
バリアジャケットまで展開して、お前は学校をサボったのか? と思いながら、高町の手を払いのけて俺は答えた。
「第三者として抗争を鎮圧したためだ。はっきりいって、恨みしか買っていないだろう。閉じ込められた場所でなら、復讐し放題だからな」
「……閉じ込められた?」
何やら悲しい顔をしながら、気になったのかそのワードを口にする高町。
俺は頷いて「この島は完全に孤立しているうえに結界で封鎖されている。知らなかったのか?」と訊くと、高町は「……うん。リンディさんとプレシアさんにフェイトちゃんの様子見に行ってと連絡を受けて」と答えた。
それだけでこの島を覆っている結界の構造と犯人が分かったので、高町の肩に手を置いて「俺の後ろの方にテスタロッサ達がいる」と言って俺の後ろに下がらせて小屋に入ろうとしたら、肩に置いた手を高町が離さないでいた。
「なぜだ?」
俺は高町の方へ顔を向いて手を離さない理由を訊ねる。
最初は俯いて答えなかったが、やがて答えが決まったようで顔を上げてこう言った。
「……一人で行こうとするから、だよ」
「それのどこが理由になる? 俺は一人でお前は組織に属している。なのになぜ一人で行ってはならないという?」
「一人じゃない! 私がいるもん!!」
「でもお前は組織に属している」
「それがどうかしたの!?」
「――――組織の総意に勝るほど、お前に発言力はあるのか?」
そう言うと、高町は何を言ってるのかわからなかったのか「……どういうこと?」と聞き返してきた。
やはりまだ分からないか。高町の反応を見ながらそう思った俺は、諭すように説明した。
「いいか。お前は時空管理局という組織に与している。そして、お前はその組織の中の一番末端、民間協力者だかでいる訳だ。そんなお前に言われたことはなんだ? 俺に関わることじゃないだろ。テスタロッサ達の様子を見に行って来い。それだけだろ。だからさっさと合流して一緒にお前達が追ってたやつらの監視でもしていろ」
「……そしたら長嶋君はどうするの?」
「俺は個人だ。良くも悪くも一個人でここに来て、頼まれたことをやり、そのせいで閉じ込められた。だからそれのお礼参り」
そう言って俺は高町を置いて小屋の中に入る。
……ふむ。生活感はあるが人がつかった気配がないな……その割には中が綺麗だ。
そんな風に部屋の中を物色していると、
「……やっぱり、分からないよ」
高町がそう呟いた。
俺はふと足を止めて高町を見る。
裾を握って俯いており、まるで何かに耐えているかのように見えた。
俺はそれが不思議でならなくて首を傾げようと思い……叫んだ。
「高町! 今すぐこの場所から
「え!?」
驚く高町を無視して窓ガラスを開けようとしたがビクともせず、ドアが勢いよく閉まる。
ちっ! 最近不用心すぎたな!!
焦る気持ちを抑え、俺はぶち破ろうと殴ったが壊れず、家具なども動かなかった……ことを確認した時。
俺がいた小屋が
*高町なのは視点
長嶋君が中にいた小屋が爆発した。
その事実を認識するのに二秒かかった。
「う、そ……」
思わずその場でへたり込んでしまう。目の前の状況が信じられなくて。
「どうしたの!? ……って、なのは! どうしてここに!?」
「フェイト、ちゃん…」
後ろから聞き慣れたフェイトちゃんの声が聞こえたので、ゆっくりと顔をそちらに向けました。
その顔を見て何かを察したのか、フェイトちゃんは視線を目の前に移し……そしてその場で固まってしまいました。
「え……どうなってるの?」
『ふむ。あの小僧はくたばったか。これで、最大の障害は消えたわけだ』
「「!?」」
崖が崩れ、私の近くまで削られたのを見てフェイトちゃんが呟いた時、どこからかそんな声が聞こえ、フェイトちゃんは辺りを警戒しましたが、私は……立てませんでした。
なぜなら、あんなに必死だった長嶋君を、見殺しにしてしまったから。
彼は、きっと気づいたから私に避難するように言ったのでしょう。それから自分も脱出しようとした。それなのに私は長嶋君の言うことに混乱して動けずにいて、その上どうして必死そうにしているのかと考えてしまった。
その結果小屋は崖もろとも崩れ落ちてしまった。
不意に全身が震えだす。言い知れぬ恐怖心と見殺しにしたという罪悪感に駆られて。
思わず自分の体を自分で抱きしめていると、その様子を見たフェイトちゃんが驚きの声をあげました。
「なのは! しっかりして!!」
「……フェイ、ト…ちゃん」
「そんな顔しないで!」
『なんだ、まだこやつらは残っておったのか。今は気分がいいから見逃してやる。疾く逃げぃ』
再び聞こえる声。それと同時に、先ほど崩れた場所に人の姿が浮いていました。
見た目は私がよく見かける大人みたいな人で、なぜか裸足。それでも、底知れない威圧感を感じました。
フェイトちゃんもそれを感じたのか、バルディッシュを強く握って構えながらその人に尋ねました。
「あなたは……?」
「ふむ。人の子の分際で我が名を訊ねるか。その意気やよし! 貴様らに我が名を教えてやろう!!」
その人は宙を歩きながら私たちに近づいて名乗りました。
「我が名は蛟竜! この世界の神であり、支配者である!!」
――――これが、私達と神様の三度目の遭遇でした。
*
――――俺は死ぬのだろうか。
何とかテーブルに乗って直接爆発に巻き込まれなかったが、それでも腹に木の破片が刺さっており、天井にたたきつけられて酸素を吐き出し、意識が朦朧としたまま小屋と一緒に海の中に落ちた。
今は腕や全身にうまく力が入っておらず、腹部から少しずつ血が流れ出ている。
浮かぶはずなのに沈んでいる。そんな不思議な状況の中で、俺は考えた。
――――ああ、信じていたんだな。俺。
思えば蛟竜は最初からおかしかった。そんな違和感を無視して俺は従った。
その結果がこれだ。
制服はボロボロに、全身に力は入らず、かろうじて思考はできるが流れ出る血のせいでそれもいつまで続くかわからない。
瀕死の重体。それがぴったりだろう。
さらに沈んでいるのでそのうち水圧で潰れて死ぬんじゃないかと思えると、逆に笑える。実際は口すらまともに動かそうと思えないが。
そういえば。ここでふと考える。
高町は目撃してどう思ったのだろうか、と。そして、さっさと帰ったのかだろうかと。
前世では集団で行動し、仲間の心配などあまりしてなかった……といえば語弊があるが、それでも今のように一個人に対しこうも心配するのはなかったりする。
遥佳の場合は心配されるほうだったな。俺が。
……。
だんだんと意識が遠のき始めてきた。血が流れすぎたからだろうか。
「やれやれ。お主は全く世話が焼けるわい」
…ん?
「ほれ」
声の主は俺に何かをつけてから、無造作に何かを抜いた。
途端に腹の方に痛みが走る。途方もなく痛い。
『しっかりしてください! マスター!!』
「頑張って助けて来い。あんな若造、軽く潰して来い」
痛みに耐えているとそんな声が聞こえ、急に体中から力がわいた。それとともに覚醒する意識。
…生き延びたか。
そんな風に思い目を開ける。大分深いところにいるからか、水上で何が起こっているか分からない。
俺は、体勢を整えて腹部を見る。
傷はあったが木の破片はなく、血も止まっていた。
誰がやったか推測し、俺はフッと漏らした。
「助かったスサノオ。ナイトメアを持ってきてくれて」
『マスター……?』
不思議そうにナイトメアが呟いたので、俺はナイトメアに「お前もありがとう」と感謝した。
驚いたのか何も言わなくなったナイトメアをいつまでも見ていられないので上を向き、俺はこの場でやることを呟いた。
「ナイトメア、セットアップ。蛟竜ぶちのめすぞ」
『…………はい!』
バリアジャケットを展開した俺は、水中であるにもかかわらず、抵抗力を感じさせない速度で上昇した。
応。そんな声が、先ほど俺がいた場所の方で聞こえた。
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