世にも不思議な転生者   作:末吉

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蛟竜戦。たった一話で終わりますが。

小説投稿一周年記念です。


48:対蛟竜

*……視点

 

 大智がスサノオの手助けで死の淵から甦る少し前。

 高町とテスタロッサは蛟竜と対峙していた。

 

 もっとも、高町は座り込んで動けないでいたので、実質テスタロッサだけだが。

 

 蛟竜は、未だに動かない二人に対し首をひねる。

 

「ふむ? なぜ小娘らはこの場から離れんのだ?」

 

 それに対しテスタロッサは答えず、高町に向けて叫ぶ。

 

「なのは!」

 

 ビクッと肩を震わす高町。その姿は、今まで仕事を一緒にした中で見ているこちらが耐えられないものだった。

 

 だが、それも無理もないことだろう。いかに管理局で働いていたとして、目の前で友達が、しかも最近仲が良くなった人が爆発に巻き込まれて死亡(したかのように思われる)するのを見て平常心を保っていられるほど精神が強靭ではない。

 

 もちろんテスタロッサも似たような経験をしているため、今の高町の状態を理解できる。それでも彼女は呼びかけた。

 

 否。呼びかけようとした。

 

「な「無視とはいい度胸だ」

 

 テスタロッサが高町の名を呼ぼうとした時、蛟竜が彼女に裏拳を入れたのだ。距離を詰めて。

 

「!」

 

 声も出せずに吹き飛ぶテスタロッサ。その小さな体躯はすごい勢いで飛び、海には落ちなかったものの、ギリギリのところだった。

 

 その様子を吹き飛ばした場所から遠目で確認した蛟竜は「ほぅ」と感心し、テスタロッサの方へ向く。高町のことなど、興味がなかった。

 

 彼が興味を持った理由。それは

 

「いくら弱神、しかも軽いものであるとはいえ、我が一撃を受け、なおも生きているのか」

 

 テスタロッサが自分の攻撃を受けたにもかかわらず生きていたからである。

 歯牙にもかけていなかった存在が予想以上の実力を持っていた。そのことが嬉しくてならなかった。

 

「――――面白い」

 

 ニヤリと笑った蛟竜。それを見た高町はどうする気か知り念話を送ろうとするが、まったく送れない。

 不思議なことに焦ったが、それでも声は出せた。

 

「フェイトちゃん! 逃げてーーーー!!」

「その声は届かぬぞ、小娘」

 

 高町はテスタロッサが飛んで行った方向へ叫んだが、蛟竜は無駄だといって消えた。

 

 消えた蛟竜を探すように高町は首を左右に振って辺りを見渡すと、「あぐっ!!」といううめき声と共にテスタロッサがこちらに飛ばされ、高町はぶつかって一緒に木にぶつかった。

 

 木の幹に叩きつけられる高町とテスタロッサ。それでも高町は意識があったからかテスタロッサの状態を見た。

 彼女は口から血を流しているだけでなく、呼吸が荒く、更には魔力も底を尽きかけていた。

 それを見てさらに血の気が失せる高町。

 

 そこに悠然と歩いてきたが、横からの強襲に蛟竜は吹き飛ばされて一瞬で視界から消えた。

 その代り新たに視界に入った人物を見て、高町は信じられないといった顔でその名を呟いた。

 

「…………長嶋、君?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ。悪かったな。ついさっきまで死にかけてた」

 

 俺は努めて平常心で高町に近づきながら話し掛ける。

 

 はっきり言って蛟竜に対しはらわた煮えくりかえっている。今にでも全力で細切れにして殺してやりたいところだ。

 だが今この場に高町たちがいる。不用意な攻撃が周囲を巻き込みかねないので、今は自重している。

 

 そんな俺の考えを知るはずもなく、高町は信じられない顔をして「うそ……生きてる……?」と呟いていた。

 

 てことは死んだと思ってたのか。そう結論付けた俺は特に何も言わずにテスタロッサを見る。

 

 ……これはヤバいな。さっさと治療しなければ。

 そう思いテスタロッサに回復魔法(といっても俺自身は魔力を渡した感じしかしない)を施す。

 ぶっちゃけると魔法を使った気がしない。それでもテスタロッサの傷などが治っていく。

 ある程度治ったので一旦止め、俺は二人に背を向ける。

 

 さぁてどこに行ったあの野郎と思いながら警戒して歩こうとしたところ、「待って!」と高町が叫んできたので、俺は足を止めて忠告した。

 

「さっさとこの場から離れろ。うまくいけば結界が壊れるだろうから、その時に全員脱出させろ」

「やだよ! 生きてたのは嬉しかったけど、そんなこと言うなんて!!」

 

 俺はやれやれと首を振ってから殺気をまき散らし、低い声で高町へ助言する。

 

「――――お前らじゃ相手にならない。身の程を知れ」

 

 そして、二度とこんな風に立ち向かうな。

 

 そう言うと高町が何か言っていたが、殺気に反応した強大な力の下へ俺は駈け出した後なので、聞こえなかった。

 

 

「生きておったか。やれやれ。悪運の強い奴だ」

「見つけたぞ蛟竜! テメェをこの場で殺してやる!!」

 

 そう言って太刀を蛟竜がいたところに叩きつける。蛟竜は避けたが、地面には切れ味とその衝撃が伝わったようで、割れていた。

 ゴォォン! と盛大な音と共に周囲が揺れる。その揺れの中、蛟竜と俺は一斉に駈け出した。

 

「「!」」

 

 すれ違う瞬間に蛟竜は自身の爪を、俺は太刀をぶつけて交差する。

 が、それで止まらず俺達は方向転換してもう一度駆け出す。そして、今度は爪と太刀での鍔迫り合いをした。

 

 ギギギギギギッ!! と火花を散らしながら鍔迫り合いをしつつ、俺は怒鳴った。

 

「蛟竜! なぜテメェはあいつらに手を出した!?」

「それは主だって知っているだろ! 我ら神の行動原理はなんとなくだということを!」

「知っている! だがあいつらは俺と違う奴らなんだろうが! それを分かっていてなぜ、」

 

 力任せに押し続けて前進しつつ、俺はこう叫んで振りぬいた。

 

「なぜ傷を負わせたぁぁ!!?」

「ぐおっ!」

 

 全力での振り抜き。それに蛟竜はたまらず吹き飛び、近くの山に激突し山が崩れた。

 俺は自分の魔力がまだそれほど減っていないことを確認し、「銃弾」と一言つぶやく。

 それだけでいつも通りの形状が一つ現れる。ただし、これにはすべての魔力を込めていない。

 いや、込められないというのが正しいか。

 

 一度形状を固定するとそれ以降はどれだけでやっても同じ魔力しか使わない。それがここ最近やっていた魔法の修業にて判明した。

 といってもこの魔法だけにしか適用されないことも判明した。

 

 俺は感知できない蛟竜を無視することにし、ただ一言告げた。

 「結界を貫け」と。

 

 果たして。その銃弾は上へ向いたかと思うとすぐに消え、あっさりと結界を壊した。

 壊れる音を聞きながら、俺はよろめく。

 

「っとと」

『マスター。いくら頑丈で回復力があってもこれだけ激しく動けば傷が……』

「分かってる…だがな、あいつを殺してかないと」

「中々遠くまで飛ばされたから戻ってくるのに骨が折れたぞ。……で? 我を殺すか。できるのか?」

 

 何とか体勢を戻して呟くと、ようやく戻ってきた蛟竜がそんなことを言ってきたので、「ああ」と言って自然体になる。

 

「ここからが、本気で全力だ」

 

 その状態のままで俺は加速して近づく前に体をひねり、太刀の間合いに入った瞬間全力で斜め右下から上へ切り上げた。

 が、その一撃はあいつの左腕にふさがれる。

 

「なぜ傷つけたことにそこまで怒る?」

 

 その時の衝撃が周囲に伝わって地面が陥没して木々が少し浮いたが気にせず、俺はすぐに返す刀で振り下ろす。

 だがそれも同じく左で防がれるが、先程と同じ箇所で防いだせいなのかスパッと切れた。

 

「神が不用意に一般人を傷つけたからだよ!!」

「ぐおぉぉぉ!」

 

 斬り飛ばされた先を抑えながら蹲る蛟竜。

 そのまま行きたかったのだが俺の方も痛み出したので、その場で片膝をつく。

 

 くそっ。なんだってこんな時に! そんなことを思いつつ蛟竜の様子を確認するために顔を上げる。

 するとすでに立ち上がっており、出血していた腕をそのままに俯いていた。

 

 俺も太刀を支えに何とか立ち上がる。

 完全に立ち上がった時と蛟竜の顔が上がったのは奇しくも同時で、その顔を見た俺は冷静になり我が目を疑った。

 

「お前……一体なんだ(・・・)?」

「ゲヒャヒャヒャヒャ!」

 

 高笑いし始める蛟竜。その顔は先程までの好青年っぽさはなく、醜く崩れた上にどこか壊れていた。

 そこで俺は不思議なことに気付く。

 蛟竜も一応は神に連なるもの。にも拘らず、斬られた腕は再生していない。更に、神壁を今まで一度も出していなかったことに。

 俺の攻撃など生身で受けずにいられたはずなのに、そのすべてを受け切った。

 

 その状態に身に覚えがある俺は、出し惜しみする気もなく「銃弾百発」と呟いて魔力弾を生成し、蛟竜を指さして「行け!」と指示を出す。

 その百発の弾丸は全て蛟竜に当たり全身風穴だらけになったのだが、それでも笑っていた。笑って、

 

 無事だった右手(・・・・・・・)で俺を指さした(・・・・・・・)

 

 それだけの動作でも予測が当たった俺は、全力でその場から飛び退いた。

 次の瞬間。

 

 俺がいた場所に血の槍(・・・)が地面から生えてきた。

 

「やっぱりか!」

 

 飛び退いた俺は蛟竜の視界に入らぬように森の中へ入る。

 風穴だらけの蛟竜は、首を三百六十度まわしながらその場で笑ったまま立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァハァハァ……畜生。なんであいつが居やがるんだ。この世界にそんな技術持ってる奴、いるはずがないのに」

『一体何なんですか、あれ!? いきなり魔力が変化しましたけど!?』

 

 少し離れた枝の上に座り込んで息を整えているとナイトメアが驚きで騒ぐので、ある程度呼吸を整えてから俺は説明した。

 

「ありゃぁ前世に現れた偽神だ。神の魂を転生前に回収して、それを無理矢理人の魂に混ぜ合わせて作った、なれの果てだ。……夜刀神に使われて研究所もろとも更地になったがな。俺も何度闘ったことか」

 

 そこでいったん区切り、背後に気を遣いながら傷口の部分を触る。バリアジャケット越しのせいか正確なことは分からないので、傷口が開いてるかもしれない。

 

 まぁ痛みがないからまだ大丈夫だろうと思い直し、説明を続ける。

 

「あいつらの怖いところは致命傷を受けても死なない、流した血が武器になる、自分の血を流すまで元の神様の能力や姿かたちを使えることだ」

『!? それって最強じゃないですか!』

「いや。神壁が使えないから生身で受けなきゃいけないし、再生能力もない。おまけに【力】自体も強いものが使えない」

『それでも十分です! でもどうやって!?』

「塵一つ残さず消し飛ばした。もしくは燃やしたり氷漬けにした。最悪、神様の力借りてボン! したけど」

『……だったら今回はどうするんですか?』

「そいつは……」

 

 ナイトメアの質問に答えようとしたところ真下から笑い声が聞こえたので、俺は咄嗟に息を殺して下を見る。

 見えたのはやはり偽神・蛟竜。血を垂らしながらここまで来たようで、その血がまるで生き物のように蠢いていた。

 きっと高町達が見たら卒倒ものだろうと思いながら機会をうかがっていると、蠢いていた血の動きが止まりやがてある場所に集合し始めた。

 

 その場所が俺の枝の真下だと気付いて他のところへ移動しようとした時と、その血が間欠泉の様に勢いよく射出されたのがまた同時だった。

 

「くっ!」

 

 ちょうど離れた瞬間に枝が貫通して切断された。と思ったらその血がそのまま矢の様に俺へ向かってきた。

 今空中にいる俺は弾き返すこともできないので太刀で防御するが、足場がないので力を入れられず、そのまま地面に叩きつけられた。

 

「ぐおっ!!」

 

 地面にめり込む。酸素を吐き出す。どこか折れる音がする。

 いくら魔力を纏っているとしても衝撃のダメージは逃せない、か。

 ともかく急いで起き上がらないと。そう思って体を動かそうとした瞬間、血の槍が眼前にまで迫っていた。

 首を全力で横に振る。ズパァン! と先程まで俺の顔があった場所に突き刺さる。

 

 だが、これで俺は自分の終わりを悟った。

 

 血は液体だ。故に形状を任意に変えられる。槍から棘、棘から銃弾、銃弾から矢、矢からナイフといった具合に。

 現に俺の視界で血が蠢いている。この状態で逃げられたとしても、致命傷になりかねない攻撃を受けるだろう。

 ならばもう……と思ったが、いつぞやの親父たちの説教を思い出し

 

「うおぉぉぉ!」

 

 俺は地面を転がって最初の棘を避け、ある程度で起き上がって地面から突き出てきた血をバックステップでかわし、その先端が膨れ上がって爆発して飛び散ってきたものを木々を移動して避けた。

 

 にもかかわらず向こうの方が上手だったのか、枝に飛び乗った瞬間に血でできたハンマーにぶっ飛ばされた。

 

「ッカ!」

 

 そのまま木にぶつかり意識が飛びかける。

 思わず太刀を落としそうになるが何とか握りしめる。

 ……まだ、大丈夫だ。あいつと戦える。傷口が開いてるだろうが、死ぬことはない。

 そう思って顔を上げると、再び血の雨が。

 

 避けるのは不可能だと思った俺はそのままで太刀を振り回して弾き飛ばすが、掠って腕や足や頬から血が流れ出す。

 ようやく収まった時には完全に満身創痍。血が全身から流れ出て地面に落ちる。

 

『マスター! このままじゃ本当に死んじゃいますよ!?』

「うっせ……まだ魔力で何とかなってるんだろ。次攻撃しかけてきたら決める」

『そんな! 無茶ですよ!!』

 

 そんなやり取りをしていると、少し近いところで悲鳴が上がった。

 

「チッ!」

 

 思わず舌打ちして体を起こし、悲鳴が上がった方へ走る俺。

 段々と怒号や悲鳴が大きくなったのでそのまま行くと、急に血の矢が飛んできたので地面を太刀で割った衝撃で飛んだ土砂で防いだ。

 土砂が落ち終わったのを見計らって先に向かうと、やはりというか、あいつが居た。

 

 ただし、周りには死んではいないが地面に倒れている奴らが数人と、ボロボロの高町とテスタロッサ他数名が対峙していた。

 

 その光景を見た瞬間、俺はその場で切っ先を偽神に向けて何も考えずに呟いた。

 

「虚栄霧散」

 

 それだけでいつの間にか先端に集まっていた魔力が一直線に発射され、蛟竜はもちろん射線上の地面までもが全部蒸発した。

 

 

 それを見て俺は、やっと倒したと思う前に、気を失った。

 

 

 ナイトメアや、誰かの声を聴きながら。




蛟竜編残り二話は…今日中に無理そうです。

ご愛読ありがとうございます
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