世にも不思議な転生者 作:末吉
前略。
高町がクラスにフェレットを連れてきました。
これにて男女ともに高町のところへひっきりなし…という訳でもなく、同性別のナルシストが陣取っていた。
あのあと、夜に魔法による戦闘が発生したのを感じたが、関係がなかったので寝た。いやぁよく寝た。
で、現在。
今はバニングス達と一緒に居る。誰がって、高町が。俺は気配を消して自分の席に座って寝た振りをしている。
さて件のフェレット。うっすらと魔力を感じるし魔法を使った形跡があるので、おそらく人間が変化したものだろう。
なぜ俺がこんな推測ができるのか。それは、単純に魔法についてデバイスに教えてもらったから。以上。
ま、ともあれ。俺にとってはどうでもいいのでそのまま寝た。
ユサユサ……
「なんだ、よ…」
ユサユサユサ……
「う、ううーーーーーん」
ビタン!
俺は起きた。
はたかれたか何かされた痛みで、俺は起きた。
「ってぇな!!」
叩いてきた奴の目星ぐらいはついていたので、俺は恨めしそうに言った。
「…何か用か、バニングス」
「一緒にお昼食べないかしら?助けると思って」
「それは俺に死刑宣告を迫ってるようなものだが?」
そうかしら?と首を傾げるバニングス。どうでもいいが、月村と高町はどうして期待した目で見ている。それとクラスの奴ら。どうして殺気立っている。テメェらに殺気を送り返してやろうか?
とかいいつつ……
「空が綺麗だな…」
気付けば俺は屋上にいた。高町たちと一緒に。
「なんであんた一人だけ離れてるのよ?」
「長嶋君、こっちに来たら」
「一緒に食べよう?」
そういわれてもな。俺としちゃどうして拘束されて連れ出された先が屋上なのか、はなはだ疑問に思えるんだが。こんなところにいたら真っ先に狙われるって。
……などと思ったが、ここは俺がいた世界じゃないことを思い出し仕方なく高町たちに近づいて弁当を広げた。
その時の彼女たちの反応は、全員驚きだった。
「どうした?」
食べ始めようとしたら高町たちが驚いていたので、どうしてなのか質問したら彼女たちが質問してきた。
「あんた、その弁当一人で食べる気なの?」
「お母さん、大変じゃないの?」
「一体どんな食生活してるの?」
俺の弁当は重箱(中サイズの)二段。中に入っているのは一段目におかず、二段目にご飯という簡素なもの。
面倒だと思いながら、食べ始めつつ俺は言った。
「バニングス。これを食べられないなら持ってこないぞ。高町。これは最近俺が作ってる。月村。いたって普通の食生活だ。以上」
食べている間、高町たちの箸のスピードがやけに遅かった。信じられないとでも思っているのだろうか。
放課後。気配を消してすぐさま下校している途中、光る宝石を遠目で見て素通りした。どうでもよかったから。
家に帰ったら、弁当箱を洗って洗濯物をこみ、買い物などをすませて寝た。
―――――――――――――――
それからしばらくして。
俺は今重大な場面に直面している。
きっかけは些細なことだった。
「暇だ」
『友達と遊びに行かないので?』
「最近魔力がぶつかり合う戦闘がありまくって修行できないじゃん。それで暇なんだが」
『とか言いつつクロスワードは埋めていますよね』
「もうすぐ終わるし」
最近なんか変な事件が(主に魔法が関わっているもの)が発生しすぎて修行どころじゃないので、ナイトメアとそんな会話をしつつクロスワードを埋め終えてしまったので、暇になってしまった。
「あー暇だ」
『久し振りに翠屋へ行ってはどうです?お母さんがいなくなってからあまり行かなくなったじゃないですか』
「あそこは最近ピリピリしてる人が多くてなー」
翠屋の前を通り過ぎるたびに殺気が貫いてくるので(しかも複数)、あまり行きたくないところナンバーワン。
かといって散歩するとまた宝石っぽいものと遭遇する可能性があるので却下。
筋トレはもうすでに終わっているので本当にやることが無い。
何かやることないかなーと思っていると、急に地響きがした。
「な、なんだ!?」
『この反応…最近のものと同じです!』
「あの宝石っぽい奴か!」
そう言ってナイトメアを左手首にはめ、家を飛び出した俺の目に飛び込んだのは埒外な光景だった。
「デカいな、あの木…」
巨大な木がそびえたっていたのだ。正直言って、これはヤバい。
「どうすっかな…」
『いかなくていいので?』
俺がその木を見て考えていると、ナイトメアが訊いてきた。
そりゃ行きたいのも山々なんだけどな…なんて思っていたら、白い服を着た少女とフェレット、それに騎士風な格好をした男が現れた。
『よく見えますね。ここから二キロぐらい離れているのに』
「魔力って扱い次第で視力強化できるんだよ」
そう嘯きながら、俺はこれなら問題なさそうだと思い家へ戻った。
問題はその後。
終わったことを確認した俺は、外に出て買い物をしようと思い財布と買い物袋を持って家を出た。
そしていつも通りの買い物が終わったところで目撃、いや発見した。
宝石っぽい輝きを放つ石を。
ってか、これって確か昨日から放置されてたよな?まだこんなところにあったのか?
なんとも不思議なものだと思いながら、面倒なのでポケットに突っこんで家に帰ることにした。
その時だ。
背後から気配が近づいてきて俺の首筋に刃物を突き付けてきたのは。
そして今に至る。
俺としては殺気のないこの状態が脅しだということを経験則で知っているので、特に怯えたりせずに背後の奴らに声をかけた。
「警察呼ぶが…構わないか?」
すでに俺の片手はポケットに突っこんで110番を押す準備ができている。
銃刀法違反、恐喝罪、傷害罪。これらの罪を現行犯で立件できる状態。
だが相手はそんなことは気にしなかった。
「やってもいいけど…あなたの首が飛ぶよ」
声は女。なんだかこの声を聴いただけで美少女っぽい気がするのはどうしてなんだろうか?
俺は買い物袋を両方地面に置いて両手を上げて言った。
「それは怖い。怖いから抵抗するのを止めてしまおう。誰だって、命は惜しいからな」
そんな俺を見た彼女は鎌を動かさずに言った。
「さっき拾ったのを渡して」
少し考えて出した答えは、
「残念」
と言ってしゃがみ、荷物をすべて持ってから三割の身体能力で走りだした。
ベコッ!ドバン!!という音と共に「キャッ!」「フェイト!!」という声が聞こえたが気にしない。
卵がダメになった音が聴こえたが家に帰って後悔しよう。
とにかく今は彼女たちから逃げることを優先しないと死んじまうと思い、必死に走った。
結果。逃げきれたが卵がすべてダメになったので買いなおした。拾ったものは、とりあえず家に放置した。
「しかしあいつはホントに人間なのかい?魔法を使わずにあんな速度で走るなんて」
「分からないけど…次は絶対にジュエルシードをもらうから」
「そうだね」
こんな会話が意外と近くで繰り広げられていたが、本人たちは気付いていなかった。