世にも不思議な転生者   作:末吉

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一週間ほど更新せずすいません。


49:気が付いた場所

 ここ数回夢を見る。

 俺が力のない只の小学三年生だという夢だ。

 

 その夢では霧生や斉原とは普通に遊び、時に天上と口喧嘩したり、如月とキャッチボールやったりして高町達を遠目に見ているという夢だ。

 

 これが『普通』なのだろうか。この夢を見る度にそう思ってしまう。

 これが普通なら確かに楽しいものだろう。ごく普通に遊び、ごく普通に友達と楽しく話し、ごく普通に一喜一憂できるのだから。

 

 だが、この夢は俺にとっては『異常』だった。誤謬であり、理想であり、叶わないもの。

 

 この『異常』が俺にとっての『普通』なんだと思う度、俺の中の『何か』が埋められていく。

 

 そして何度目かの否定をした時――――

 

 

 俺はベッドの上(・・・・・)で目を覚ました。

 

「…………」

 

 喋ろうと思ったが口に何かがあてられている。鼻や口に風みたいなものを感じるので、おそらく酸素供給用のマスクでもつけられているのだろう。

 等と適当に考えて手を動かそうと思ったが、何やらコードのようなものがつながれているのかあまり自由がきかない。

 一体どうしてだろうと考えたがすぐに思い出した俺は、これからどうするかぼんやりとかんが――――

 

「あ、起きたの長嶋君!? もう体は大丈夫なの!?」

 

 ――――えようとしたところで、高町が顔を覗いて俺が目覚めたことに気付いたらしく、そんな風に叫ばれた。

 その顔はとても喜んでいるようで、まるで生きてくれて嬉しいと、そう言ってる感じがした。まぁ推測でしかないので本人がそう思っているかどうか知らないが。

 俺はとりえず呼吸器を外してほしいと思ったが、言っても聞こえるかどうか怪しそうなので実力行使。

 

 ブチブチブチィ! とコードがついている片方の腕を左右に動かしてコードをちぎり、そのまま呼吸器を外そうとするがなぜか高町があわててその手を抑え始めたので、仕方なくもう片方の腕を動かして呼吸器を外す。

 その時に何かプスッと抜けるような音が腕の方からしたが気にしないで動かして外し、起き上がって状況を確認。

 

 ここは病室ではないらしいが病院のような設備があるところからすると、おそらくどこかの治療室あたりだろうか。

 どこか、ではないか。高町がいるのだとすると、おそらく以前俺が連行された船の中だろう。

 となると今度は運ばれたのか俺。そして治療をしてもらったのか。

 

 今回はさすがにシャレにならなかったから素直にありがたいかと思いながら周りを見ると、右手側には点滴が、左側には電極のコードと高町が。

 

 俺は気を失った後の経緯をすぐさま想像して高町に顔を向けて割とマシになったらしい(両親曰く)笑顔で礼を言った。

 

「――助かった高町。お前達のお蔭で生き永らえた」

 

 そう言っただけなのに、なぜか高町は驚いていた。

 

 堪らず俺は首を傾げて問いかける。

 

「どうしたんだ?」

「今……笑った?」

「一応は。最初の笑顔は笑われるほどひどかったと記憶している……っと。そういや、たぶん初めてだな。学校の連中に笑顔を向けるのは」

「……あ、そうだね」

「で、どうだった? うまく笑えていただろうか」

「なんで今聞くの? ……まぁ笑えてはいたかな」

「なら良かった」

「――――じゃないよ! 話を逸らさないで!!」

 

 いや、別に逸らしてはいないのだが。単純に笑顔の感想を聞いてみただけなんだが。

 礼は言って一応巻き込んでしまったゆえの説明をする予定ではあるのだから、別に話を逸らしたわけではないのだが。

 そんなことを思いながら俺はベッドから起きて自分の服装を確かめる。

 

 バリアジャケット前まで着ていたいつもの学校の制服。しかし何故か元通り。

 これもスサノオあたりがやったのだろうかと推測し、あとはナイトメアだが……などと周囲を見渡そうと思ったが、聞けば早いと思い質問した。

 

「なぁ高町」

「どうしたの?」

「ナイトメアは?」

 

 そう尋ねると高町が何か答える前に扉があいた。

 

「あなたのデバイスなら勝手ながら検査させてもらっているわ」

「……リンディさん、でしたよね?」

「えぇそうよ、長嶋大智君」

 

 入ってきたのは緑色の髪のリンディさんと、その後ろからテスタロッサ、そして彼女に似た、それでいて明るそうな女子。

 俺はとりあえず「助けていただきありがとうございます」と頭を下げて礼を言ってから、気になることをいくつか質問した。

 

「今回の件で死亡者はいますか?」

「いないわ。君のおかげで」

「……あなたたちが追っていた集団は?」

「全員身柄を拘束できたわ。猛省しているのか罪を全部認めてくれたし」

「……そちらの事情(・・・・・・)は分かりましたので、今度はこちらが説明しましょうか?」

 

 そう訊ねたところ、リンディさんは一瞬驚いたかと思うとすぐに息を漏らし、「……あなたは本当に物怖じしないのね」と呟いた。

 そんなわかりきった感想など新鮮味のない俺は「生きていれば誰だってそうなりますよ」と皮肉めいたことを言ってから「場所を変えますか?」と質問した。

 

 今度こそ絶句したリンディさん達。

 俺はとりあえずさっさと話して学校に戻りたいだけなんだが……などと思いつつ彼女達が驚きから覚めるまで待っていると、慣れたからか高町がすぐに驚きから覚めて質問してきた。

 

「どうして場所を変える必要があるの?」

 

 俺は考えるそぶりも見せないで即答した。

 

「こんな場所だと記録が取れないだろ? それに、いつまでもここを占領するほど俺の体は弱くない」

「……あんなに傷だらけで、魔力も空だったのに?」

「魔力自体は回復中だろう。傷は……もう治った」

「ウソッ!?」

 

 そう言って高町が俺の体の傷を確認しようとしてきたので、自分で制服を腕まくりして傷の有無を確認させた。

 

「ほらな」

「本当だ……」

 

 信じられないとでもいう風に驚く高町。お前は表情がころころ変わってすごいな。

 というより俺の回復力は前から知っていたはずだろうに。なぜ今更驚いているのだろうか。

 

 ふと疑問に首を傾げていたところリンディさんが咳払いをしてからこういった。

 

「それじゃ、いつまでもここにいる訳にもいかないし、デバイスも返したいし、移動しましょう?」

 

 それに俺は無言でしたがうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リンディさんたちの後をついてあたりの構造を記憶しながら歩いていると、いつの間にやら隣に来ていたテスタロッサに似ている女子が話しかけてきた。

 

「心配いらないよ」

「別に心配しているわけじゃない。有事の際にこの場所の構造を覚えておかないと不利になるからだ」

「……どういうこと?」

「ところで誰だ?」

 

 これ以上質問に答える気がなかったので正体を聞く俺。

 隣を歩いている少女は「アリシア・テスタロッサだよ。……それで? どういうこと?」としつこかったので、「……避難経路を組み立てるためだ」と息を吐いて答えた。

 するとアリシア・テスタロッサ――テスタロッサ姉でいいか――は目を見開いて「すごーい! 本当に同い年?」と言ってきた。

 

「それ以外にどう見える?」

「お母さんみたいな大人かな」

「そこまで成熟した覚えはないぞ」

「でもそういう風に見えるよ、君は」

「あっそ」

 

 少し歩く速度を速める。これ以上おしゃべりに付き合う気はないという意味で。

 するといきなりリンディさんが止まったので、俺もすぐに止まらざるを得なかった。

 

 一体なんだ……と思いながら前を見ると、部屋の前だった。

 

「じゃ、ここで話を聞きましょうか」

 

 こちらを見ずにそう言ってきたので、俺はそのまま部屋の中に入った。

 

 

 

 部屋の中はテーブルが一つ・椅子が一列に十個ぐらいあるという簡素なもので、リンディさんが上座に座り、俺はその反対側に座った。高町達は適当に座った。

 結構遠いなと思っていると、リンディさんが口火を切った。

 

「君に対してなんていえばいいのかしらね……邪魔されたから捕まえればいいのか、助けてくれたのだからお礼を言えばいいのか」

「それはそちらの勝手です。こちらにはこちらの考えがありますので」

「そう……なら聞かせてもらおうかしら」

「参考にするためですか? 別にそちらの決断を鈍らせたくないので黙秘します」

「…………」

 

 なんとなく情に流されやすそうだったため黙秘権を行使すると、案の定リンディさんは口を閉ざした。

 そこに俺は追撃する。

 

「別に俺は情状酌量を望んでいません。罰というのはその罪状に見合ったものでなければいけませんからね。誰かに従ったとしても行動を起こしたのは自分ですし。責任などはとりますよ? おそらく反対の立場といえど、現段階では土俵に立っていると認識していますから」

「……」

 

 未だ黙っているのでもっと言ってやろうかと思い口を開いたら、「どうしてそんなこと言うの長嶋君!?」と高町がテーブルを叩いて俺を向き、叫んだ。

 対する俺はそんな高町を一瞥し――すぐさま黙っているリンディさんに顔を向けて言う。

 

「あなたが今この場の最高決定者だ。あなたの言葉がこの場の決定になる。保留も何もできない。この場で決めるしかないんですよ。そうでもしないとあなたは……」

 

 パァン!

 

 ある言葉を言おうとしたら、高町が我慢できなかったのか俺の頬を思いっきり叩いた。

 痛みなど感じなかったがとりあえず高町を見ると、どこか悲しみに耐えながら涙を浮かべていた。

 俺が見たことをチャンスだと思ったのか、そのままの状態で彼女は畳み掛けてきた。

 

「長嶋君のバカ! どうしてそんな風に言えるの!? リンディさんが折角……」

「折角……なんだ?」

「「「!!?」」」

 

 俺が殺気をこの場にいる全員に当てながらそう訊ねると、リンディさんを除く三人が構えた。

 そのままでいたので、俺は殺気を収めてから言った。

 

「はっきり言おう。判断を即決できない指揮官は部下を見殺しにする。事態は刻一刻と変わるのだから当然のことだ。俺の事を目が覚めるまでに何の処罰も決められなかった時点でそれが浮き彫りになっている。いわば、無能だな」

「「そんなこと……!」」

「いいのよ。なのはちゃん、フェイトちゃん」

「「「リンディさん!」」」

「彼の言う通り。時間があったのに何も決められなかった私が悪いのだから……指揮官失格ね」

「そうですね。あの時通信が戻ったのに彼女達をさっさと戻さなかった判断にも呆れます。幸い死にはしなかったようですが、一歩間違えれば全滅(・・)していたのですから」

「「「…………」」」

 

 重くなる部屋の空気。そんな中、テスタロッサ姉がテスタロッサに訊ねた。

 

「そんなに厳しかったのフェイト?」

「う、うん。私も手も足も出なかった」

「何せ相手は人工的の偽物とはいえ神様だからな。お前達に勝てる見込みなどない」

 

 そう断言すると高町とテスタロッサが勢いよく睨んできたので、肩をすくめながら「ならお前達はあの時勝てたか?」と訊ねると、黙って下を向いた。

 

 全員が全員黙って俯いてしまったのでここらでいいか(・・・・・・・)と思った俺は、頭を掻きながら言った。

 

「――それじゃ、説明しますかね」

「「「「え?」」」」

 

 全員が全員、俺の言葉に呆けた。




蛟竜編終了まで残り一話となります。ご愛読ありがとうございます。
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