世にも不思議な転生者   作:末吉

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蛟竜編終了となります。


50:基準

 さて。この場にいる女性全員が呆けてしまっている。

 が、俺は気にせずに説明を始めることにした。

 

「まず先程まで問答をしてしまい申し訳ございません」

「「「「…………」」」」

 

 だが誰からも返事がない。

 まぁ当たり前かと思いながら、俺は進めた。

 

「あれは単に指揮官の能力を勝手ながら試させてもらうためにしました。結果的には甘く、悩みやすいというものでしたが、高町達がいるのであれば別にいう事はないでしょうね。正直言って、彼女達も貴方と同じで優しいですから」

 

 そこまで言うとリンディさんがようやく事態をのみ込んだのか、「……君の勝ちね、今回も」と両手を上げて息を吐きながら言った。

 

 別に勝ち負けを決めるわけじゃなかったんだが……そんなことを思いながら、俺は続ける。

 

「まぁこんな年端もいかないガキに言いくるめられるようじゃダメです。もっと強く出ませんと」

「……あなたぐらいじゃないかしら? こうも簡単に言いくるめようとするのは」

「詐欺師につかまりますよ、そんなこと言っては」

「十分才能があるわよ、あなたも」

 

 そんな皮肉をスルーし、俺はこのまま事情の説明に入った。

 

「まずはどうしてあなたたちの邪魔をしたのかから話しましょう。あれは学校から強制的につれてこられ、あの世界の神様に『うるさいから何とかしてくれ』と頼まれた結果です。まぁその神様が偽物だったという盛大なオチでしたけどね」

「それで今度は助けることにした」

「別に罪悪感からじゃないと思います。自分も死にかけましたし」

「そう……。ところで、『偽物』ってどういうことかしら?」

 

 リンディさんがそうたずねてきたので、俺は確認を取った。

 

「それを訊ねるってことは完全に神様の存在を認め、下手すると巻き込まれてしまう可能性が出てきますが?」

 

 そう言うと彼女は「もう巻き込まれてるのだから別に構わないわよ」といった。

 これはさっき下した評価を変えるべきか……などと思いながら、「わかりました」と言って説明することにした。

 

「あれは転生前――神様の魂の初期化前のものを封印し、それを人の魂と無理やり合わせた結果できた、人為的な神様です。もっとも、偽物ですので劣化版ですし、自分の血を見ると化けの皮もはがれますが」

「「……」」

 

 蛟竜を思い出したのか、顔色が悪くなる二人。そんな二人を見てテスタロッサ姉は首をかしげていたが、俺には特に関係ないので説明を続ける。

 

「劣化版といえども人の存在を超えた存在者ですからね。いかに戦闘能力があろうとも、人数が多かろうとも、人ならざる者の身体能力に勝らなければ、同じ土俵にもたてません。一方的な虐殺でしかなりえません。また、仮に同じ土俵に立てたとしても神様自身の神格――能力も一応使えます。最低限のものですが、それこそ天災級の威力だったりするのが大概です。本当に」

「……なぜあなたは今そこまで説明してくれるのかしら?」

「説明しろといったのはそちらですし、巻き込まれても構わないといったのもそちらです。ですので、一応の情報だけを先に」

「…………そう」

 

 そのまま説明しようと思ったら「もし仮に、このメンバーでさっきのような敵と戦うとしたら、勝てるかしら?」と質問されたので、俺は即答した。

 

「全滅します」

「即答ね。……ちなみに、あなたなら?」

「やりようによれば勝てる奴もいるでしょうが、スサノオやリヴァイアサンなどの有名どころには時間稼ぎできるかどうかですね」

「長嶋君、ものすごい強いのに?」

「高町。確かにお前らよりは強いが、神様の中に混ざったらすぐ死ぬぞ? あくまで人間よりの化け物だからな、俺は」

「そんなことないよ!」

 

 なぜか高町が必死になりかけてたので、この話を終わらせるために俺は言った。

 

「以上で説明は終わります。処罰なりなんなりに関してはおとなしく従います。ただし、恩赦という形で仲間になることに関してだけは拒否させていただきます。それだと、処罰になりませんので」

「…わかったわ。なら、この場で決定していいかしら?」

「いいですよ」

 

 そう答えるとリンディさんは腕を組んで少し考えてから、俺に対しての処遇を口にした。

 

「――――なら、この件はなかったことに。その上であなたに頼みたいことがあるのだけれど、いいかしら?」

「……事と次第によりますが」

 

 頼みごととは一体何なのだろうかと思いつつ言葉を待っていると、ある意味では納得できる、それでいて意味が分からない「頼みごと」を言われた。

 

 

「高町なのは、フェイト・テスタロッサ、クロノ・ハラオウン。この三人を鍛えてくれないかしら?」

「――――は?」

 

 俺はここで初めて気の抜けた返事をした気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぜ鍛える必要が? 十分強いんですよね?」

「それは私達の基準。あなたの基準だと足元にも及ばないんでしょ?」

 

 そういわれて誤魔化すかどうか悩んだが、素直に頷いた。

 それを見たリンディさんはここで初めて笑顔を作ってこう言った。

 

「今後昨日のようなことが起きないという保証もないのだから、少なくとも生き残れるようなぐらいに強くなってもらいたいのよ。協力してもらっているのだから、生き残ってもらわないと」

 

 そこで俺は真意をうっすらとだが悟った気がした。

 保身……といえば聞こえが悪いだろうが、今挙げた三人には死んでほしくないのだ。たとえ俺と敵対し、神と交戦したとしても。

 それが指揮官の願いなのかそれとも別観点からの願いなのかわからないが、彼女の中では今後俺と一番接触する可能性が高いと思われる三人をすでに推測しており、そこからの可能性を考慮してそう言ったのだろう。

 

 まぁ単純に伸びしろがある三人を選んだだけかもしれない。そんな可能性まで考えていると、

 

「それに、元々はなのはちゃんの願いなのよ、これは」

「…は?」

 

 リンディさんにそう言われ、俺は思わず高町のほうを見る。

 高町と目があったが、何を恥ずかしかったのかすぐさま顔をそむけられた。いや、怒っているのだろうか。

 とかく現実の気持ちの読み取りは難しいと思いつつ、俺は「どういうことですか?」と聞こうとしたが、なんとなく心当たりがあったので高町に確認してみた。

 

「俺があれから寝てる間に頼んだのか?」

「……よく分かったね」

 

 頷く高町。あまり驚かれてないところから見て、薄々気づくとはわかっていたのだろう。

 要は足手まといになるのが嫌なのか。俺と鉢合わせした場合での戦闘で。

 むろん気持ちは分からなくもない。自分の無力さを嘆き、そこから出した結論だというのも考え付く。

 だが、その願いをかなえるかどうかに関しては、別だと感じた。

 そして気付いた。自分が未だに彼女達を巻き込みたくないと思っていることに。

 

 巻き込みたくないというのは完全なるエゴだと、前世で言われた記憶がある。

 エゴのどこが悪いといった時、そいつがこう発言したのを思い出した。

 

『――最初から俺達は一蓮托生なんだ。巻き込む云々なんて元からねぇんだよ。それなのにそんなこと言うなんざ、俺達のこと、仲間だと思ってないって証拠だぜ?』

 

 現状は違うが、状況自体は変わってない。相変わらず巻き込む云々で切り離しをしようと俺はしていた。

 高町が願った『強くなりたい』ということも。

 そしてここにきて、あの島でのテスタロッサの言葉を思い返す。

 

『君のそれは信じてるとは言わないよ』

 

 正鵠だな、正に。

 どうやら俺は未だに変わり始めてすらいないようだ。そう己を結論付け、一回自分の顔を殴る。

 

 周りの奴らが全員驚いたが俺は気にせず、普通に言った。

 

「わかりました。その件頼まれましょう」

「ありがたいけど鼻血出てるよ長嶋君!」

 

 高町にそう言われ、俺は何とも締まらないなと思いながら、ナイトメアに魔力を解放するよう指示した。

 

 ものの一分ぐらいで完全に回復した俺は(顔の痣なんかもできていたらしい)、周囲からびっくり人間を見たような顔をされつつ、続けた。

 

「ただし、条件があります」

「条件?」

「一つはその鍛えた力を普段封じておくこと。これは俺を見てればわかりますが、圧倒的な力を有することになります。神様相手に通じる力というのは、人間の枠での最強を消し炭にしてもおつりがくるものですので。一歩間違えれば力に溺れかねません」

「そんなにとびぬけるのかしら?」

「えぇ。俺なんかがいい例です。まぁ、魔法に関してだけ強くしたいのでしたら、その強くなった部分を犯罪者相手に使わなければかまいません」

「……」

 

 何を想像したのか絶句するリンディさん。

 そこに俺は付け加えた。

 

「もう一つは訓練日と場所です。基本的に俺はやることがありませんのでそちらの都合で構いませんが、場所だけはこちらが指定させてもらいます」

「どうしてかしら?」

「俺一人で全員を教えられませんし、第一狭いと訓練になりませんから」

「以上かしら?」

「まだあります。この話は俺達の夏休み以降でお願いします」

 

 そう言うと、高町が「どうして!?」と言ってきたので、俺は冷静に答えた。

 

「テスト」

「うっ」

 

 テスタロッサ姉妹は首をかしげたが、高町は思い出したのかどんよりとしだした。

 こいつ存在自体を思い出したくなかったのだろうかと思いつつ、俺は進言する。

 

「……このように乗り切らないといけないことがありますので、それが終わったらそちらの都合のいい日に連絡ください。たまに用事でいないときもあると思いますが、そこら辺はご了承ください」

「…さらっと不在の可能性を言われたけど、まぁしょうがないわね。こちらが頼んでいることだし。すべて了承するわ」

「ありがとうございます」

 

 そう言って俺は頭を下げる。頼んできたとはいえ条件をのんでくれたのだ。これぐらいはせねば。

 なのにあちらは驚いたようで、「べ、別にいいのよ頭を下げなくて」と言ってきた。

 そういうものかと思いながら頭を上げる俺。

 完全に頭を上げた時、リンディさんが空気を換えたいのか「じゃ、君のデバイス取りに行くわよ」と言ってきたので無言で従い、この場での話は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*……視点

 

「なんなの、このデータは」

 

 長嶋が起きる数時間前の事。精密検査を行った結果を見たリンディ・ハラウオンは、絶句した。

 彼女が見ているのは大智の検査結果。身体能力や希少技能(レアスキル)、魔力などの状態が事細かに書かれていた。

 

「いくらあんな戦闘をやってしまえるといっても、これは異常よ……」

 

 呟いた彼女はテーブルにその資料を乱雑に置いて頭を抱える。

 

 ある意味転生者らしく、ある意味元神様だったらしい結果を見て。

 

 

 

名前:長嶋大智

魔力:EX

身体能力等:All SSS+

希少技能:魔力収束・圧縮、魔力自動回復、自動魔力治癒、自動身体強化、魔力具現化、???




次回からは夏休みに入ります。そこでさまざまな日常から闇の書へ移行しようと思います。
ご愛読ありがとうございます。
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