世にも不思議な転生者   作:末吉

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 夏休み編に入ります。あと少しで闇の書に関わる……!


闇の書・序章
51:夏休み初日


 あの後デバイスで一悶着あったり、件のクロノ・ハラウオンと遭遇して口喧嘩(一方的な)をして帰宅しようとしたらテスタロッサ姉に「みんなの訓練の時に私も行っていいかな?」と言われたので了承したりして一日飛んで帰宅した。

 

 荷物は親父が取りに行ったらしい。その時に理事長といろいろと話をしたらしく満足そうだった。

 

 その後テストがあったが別段いつも通りの成績で、バニングスが同率になった。

 「これで追いついたわ!」と張り紙を見た後言われたが、基本的に成績に興味がない俺は「頑張れ」と言って斉原と霧生の結果を聞いた。

 

 どうやら二人とも順位が上がったらしく、霧生に至ってはすごく喜んでいた。

 抱きつかれそうになったので避けてそのまま教室へ向かったが。

 補足すると、高町も成績が良かったそうだ。それを笑顔で報告してきた時の周りの視線といったら、一対百の撤退戦をやった時並みだったな。だからといって特に怖いと感じなかったが。

 

 それから日は過ぎて夏休み初日。

 朝起きたら家に人の気配がなかったので不思議に思ったが、昨日言われたことを思い出した。

 

「……また仕事に行ったんだったか」

 

 昨日の夜のことだ。

 

『私たち明日から仕事でいないから』

『その間ここの留守よろしく! 好きに人を上げて構わんぜ』

『は?』

 

 以上。たったこれだけ。

 いきなりの事だったがそこは切り替え、大変だな仕事と思いながら「頑張って」と本を読みながらそんな風に言うと、両親がいきなりテンションを上げて『『行ってくる!!』』とか言い出して大変だった本当。

 

 昨日の事を思い返した俺はいつものメニューをいつも通り行うべくトレーニングウェアに着替えて下におり、家に鍵をかけて走り出した。

 

 

 

 いつも通りのメニューをこなした後は家に入ってシャワーを浴びる。

 そのあとに朝食を作って食べて食器を片づける。

 

 ここまでやって午前八時半。

 今日中に終われそうだな、この時間帯だと。そう思いながら、俺は自室へ戻った。

 

『マスター。それはなんですか?』

「宿題」

『結構多そうですね』

「四教科全部だからな。いつもよりは多いだろ」

『終わらせるんですか、全部?』

「でなきゃ俺は全部持ってこない」

 

 ナイトメアのくだらない質問に答えつつ、夏休みに出された宿題の解答欄を鉛筆で埋めていく。

 

 終わらせようとしているのはもちろん夏休みの宿題。前世ではそういうのがなかったが、要するに連休中に終わらせる課題なのだろう。いつもと変わらないな。

 さっきから俺が解いているのは国語。面倒以前に記入する量が一番多いからだ。

 黙々と答えを書きながら、俺はぽつりと漏らした。

 

「毎年思うんだが、これのどこが『鬼』なんだろうか」

『量じゃないんですか?』

「こんなの、半日あれば全部終わるだろ。特別課題はともかく」

『……』

 

 突然黙ったナイトメアに声をかけようと思ったが宿題を優先したいので、そのまま宿題を進めることにした。

 

 

 

 二時間後。

 

 今は息抜きに算数のところをぱぱっと終わらせている。水とか飲む必要を感じられなかったので、一歩も椅子から動いていないことになる。

 あと十問ぐらいで終わる……そう思いながら更にスピードを上げようとした時、インターフォンが鳴った。

 

 唐突に切れる集中力。

 

 俺は妙に口が渇いたので水を飲んでから、不機嫌そうな顔をして玄関へ向かった。

 だってそうだろ? ノリに乗ってきたところで水を差されたも同じなんだから。誰だってテンション下がるわ。

 

 これでつまらない用事だったら玄関鍵かけて無視してやる。

 そう思いながら玄関を開けるとそこにいたのは。

 

「お前らに家を教えたか? バニングスに月村」

「随分不機嫌そうね。ひょっとして今起きたのかしら?」

「あと十問で二教科目が終わるところで水を差されたんだ。不機嫌にもなる……さっさと入れ」

「え? いいの?」

「暑くなるのになぜ押し問答をやらなければならない。宿題やりに来たんだろうに」

「「…お邪魔します」」

 

 もはや何も言わないといった様子で上り込む二人。

 そのあとに俺はもう一人来るかどうか外を覗き込んだら、案の定家の前にいて目が合った。

 

「さっさと入れ高町。勉強しに来たのなら」

「あ、うん!」

 

 高町が入った後、これ以上客が来ないだろうと思って俺はドアを閉めて鍵をかけてリビングに戻ったら、高町達がキョロキョロしていた。

 誰を探しているのだろうかと簡単に結論付けられる疑問をまとめた俺は、答えを口にした。

 

「両親なら仕事でまたしばらくいないぞ」

「私はそれ知ってるよ?」

「それは私も」

「うちにも来たわ」

 

 そうなのか。じゃぁなんで挙動不審になっているのだろうか。

 まったくわからんと思いながら俺はキッチンの方へ移動する間にリストバンドをテーブルから取って持っていき、調理スペースの場所に置いて冷蔵庫の中から冷えた麦茶を取り出し、人数分のコップを出しながら小声で言った。

 

「喋るなよ。念話もするなよ」

『わ、分かりました』

 

 若干引き気味で頷いてくれたのでそのまま放置して麦茶の入ったコップを運び、座ってる三人の前に置いて自分は飲んだコップを目の前に置いてから「分からないとこがあれば訊け」と言ってやりかけの課題を終わらせにかかった。

 

 そしてすぐさま終わり顔を上げたら、何故か動きを止めたままの三人が。

 俺は終わった教科を床に置き、理科をやろうと思ったが、未だ身じろぎしない三人を不思議に思い、首を傾げて訊ねた。

 

「なぜ固まっている?」

 

 すると三人を代表してなのか月村が聞き返してきた。

 

「長嶋君って、課題全部一日で終わらせるタイプ?」

「当たり前だろ。明日は明日の風が吹くからいつ宿題が出来ない事態になるか分からん。その為に暇だと思った日に朝から全部終わらせようとする。それのどこがおかしい?」

「おかしいってわけじゃないけど……」

 

 何やら後に続きそうな感じだったが俺は時間が惜しいので「口より先に宿題終わらせたらどうだ?」と言うことにした。

 それが功を奏したのかわからないが三人は我に返ったように宿題に取り掛かったので、俺も理科をやることにした。

 

 

 

 そこからさらに一時間ぐらいで理科が終わった。残るは社会と、特別課題の読書感想文か自由研究のみ。

 

 一回休憩するか。朝から集中し続けたから。

 そんなことを考えて腕を伸ばしたら欠伸が出てしまった。

 

「ふぁ~あ」

「? 今のってあんた、よね?」

 

 咄嗟に口を隠したが時すでに遅し。俺の欠伸姿を横目で見たらしいバニングスが、確認するように訊いてきたのだから。

 他二人も同様のようで、俺を見てシャープペンシルの持つ手を止めて驚いていた。

 その反応を見て大まかに五通りの推測をした俺は、普通に「疲れたら眠くなって欠伸が出るのは当然だろ」と言って席を立ち、自分のコップを持ってキッチンへ。

 

『マスターも欠伸するんですね』

「しないわけがない」

 

 そんなやり取りをキッチンでした俺はコップを洗って片づけてから、軽くその場で屈伸をしたり足を伸ばしたりした。

 多少眠気が飛んだので戻ると、高町が考え込んで止まっており、他二人は時々悩んでいたが先には進んでいた。

 コップを見ると、全員手を付けていなかった。

 

 俺は席に座り高町に訊いてみた。

 

「どこが分からないんだ?」

「「「え?」」」

「ん?」

 

 高町だけに訊いたのだが、何故か月村やバニングスまで顔を上げて反応した。そして何やら驚いていた。

 そんなに驚くようなことだろうかと思いながら、俺は高町に再度訊く。

 

「どこで悩んでいるんだ?」

「…………長嶋君なの?」

 

 随分疑わしく聞き返してくる高町。なぜ手伝おうとしただけでそこまで疑われるのだろうか。

 なんだか心外だと思いながら、俺は「手伝う必要がないなら俺は社会を終わらせるが、いいか?」と宿題のページを開きながらそう言うと、慌てて高町は「こ、ここ!」と言って俺に開いてあるページを見せてきた。

 

 ……ここは普通に数行前を書けばいいだけなんだが、何でこいつは気付かないのだろうか。

 国語の読解問題で悩むとしたら自分の言葉で書く時ぐらいだろうにと思いながら、俺は椅子を持って高町の近くまで近寄り、座ってからアドバイスをした。

 

「いいか。この問題はこいつがこの下線部の感情を抱いた理由を聞いてるだけだ。その感情を抱くようになったのは、ここ…って分からんか。高町、シャーペン借りるぞ」

「え! う、うん」

 

 何やら小さい返事だったが気にせず、俺はシャーペンを借りて高町の課題に書き込んでいく。

 

「下線部の感情を抱くようになったのはここ――この鉤括弧で区切った場所だ。この結果こいつはそんな感情を抱くようになった。分かったか?」

「……あ、う、うん!」

 

 そんな風に言われるといささか不安でしかないのだが……そんなことを思いつつ俺はシャーペンを置いて椅子から降り、その椅子を持って元の場所に置いて座った。

 これで幾分かましになるんじゃないかと思いながら社会の課題を終わらせようと鉛筆を握ったら、正面にいる月村が意外そうな顔で、横にいるバニングスが不機嫌そうな雰囲気でいた。

 理由を考えるのが面倒だと思った俺は、宿題に視線を落として課題をやり始めながら二人に言った。

 

「最初に麦茶を置きながら言っただろう。分からなかったら訊け、と。それに、その麦茶は飲んでいいからな」

「…あ。そういえばそうだね」

「……」

 

 さて、さっさと宿題終わらすか。

 

 

 

 社会の課題を終わらせ、残るところ自由研究か読書感想文のみ。

 去年は読書感想文、一昨年は自由研究だったが……今年は何をやるか。

 やはり無難に読書感想文だろうかと悩んでいると、「長嶋君」と月村の声が聞こえた。

 考え事を中断し、俺は訊き返した。

 

「なんだ? 分からないところでもあるのか?」

「違うよ。私達今日の目標終わったから、みんなでなのはちゃんの家で遊ぼうかって話になってね。長嶋君もどうかなって」

「……その前に昼だな」

 

 答えをはぐらかすように時計を見て時間を確認し、そう呟く俺。

 というより、女子三人のところに男一人混ぜるとか何を考えているのだろうか。俺はどうしようもないぞ。

 

 今日の昼飯どうするかと頭の片隅で考えていると、「じゃぁみんなでお昼食べようよ!」と高町が言ってきたので、ここがチャンスだと思い言った。

 

「俺は家で食べるからこれでお開きだな」

 

 するとそこにバニングスが待ったをかけた。

 

「なによそれ。私達と一緒に食べれないの?」

 

 逆に聞こう。どうしてお前達と一緒に食べる必要がある?

 そう言いたいのを我慢して、俺は反論した。

 

「お前達は一緒に遊ぶ約束をしたのだろ? 生憎だが俺は全てを終わらせる気だから今日は遊べない。またの機会でな」

「あんまり根を詰めるのは体に毒だよ?」

「そうよ。あとほとんど宿題ないんでしょ? 今日だけが休みじゃないんだから」

「夏休みはまだ始まったばかりだよ、長嶋君!」

「……」

 

 ここまで言われるとなぜだかこちらが申し訳ない気持ちになるのだが、一体何がそうさせるのだろうか?

 そんなことを疑問に思いながら説き伏せるには骨が折れそうな気がした俺は、ため息をつきながら頷くことにした。




ここまで三十話ほどオリジナル話となっております。といいますか、原作になったところでオリジナル展開が混じるのでほぼオリジナルとなるかと。

ご愛読ありがとうございます。
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