世にも不思議な転生者   作:末吉

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宿題のほとんどを終わらせた次の日。


52:二日目

 あの後、高町たちと一緒に翠屋で昼食(?)をとってから、三人が遊んでいる姿を一人だけ傍観していた。

 

 いや、混ざれそうなのなかったから。女子三人に男一人で遊ぶとか何しろって話だから。

 

 まぁその後帰宅したわけだが、夕飯作って食べていると携帯電話が鳴り、それに出たところ「宿題どこまで終わった?」と斉原から訊かれ、自由研究か読書感想文で悩んでいると答えたら、「だったら明日図書館に行って調べながら決めたら?」と言われた。

 それだけなのかと質問すると、「明後日に話したいことがあるんだけど、大丈夫?」と聞き返されたので、特に予定のない俺は肯定した。

 

 それから少し他愛のない会話をして電話を切り、食事を再開した時、ふと気になった。

 

「そういえば、リンディさんはどうして斉原を入れなかったのだろうか?」

『いきなりどうしたんですか?』

「いや、俺が鍛えるって話のときにどうして斉原を入れなかったのかと思ってな」

『そういえばそうでしたね』

「管理局の手伝いをやめたんだろうな、理由は知らないけど」

『その推測が当たっているのが恐ろしいんですけどね…』

「真に恐ろしいのは神が無差別にまき散らす力だ」

 

 そんなこと言わせるために言ったんじゃありません! そう突っ込みを入れられたが、俺は無視して食べ終え食器を洗って片づけた。

 

 

 で、次の日。

 

 今日も今日とていつも通りのメニューをこなした俺は図書館が開く時間まで暇だったので課題のプリントを見る。

 

 そこには、自由研究と読書感想文についての注意が書かれていた。

 

『注意! 自由研究のテーマは何でもいいですが、だからと言って公序良俗に反するようなテーマは禁止です。さらに、年齢に合ったテーマにしてください。読書感想文ですが、これは学校が指定した本以外のものを書かないでください。なお、学校指定の本は図書館にもあります』

 

 ……ふむ。自由研究はダメだな。ぱっと思いついたものが十個ぐらいあるが、そのどれもが小学三年生にしては難しすぎる。例を挙げるなら、早く走るための筋肉の作り方とか。

 なら今回は読書感想文か。そう決めた俺は時間より少し早いが財布と筆箱を手提げカバンに入れて、家を出た。

 

 むろん、ナイトメアを放置して。

 

 

 行く途中で原稿用紙を買って図書館の中に入る俺。

 まず感じるのが冷房の冷たい風。外の暑さとは違い、こちらはうだる様な熱気をさせるのがいろいろな意味でまずいからだろう。

 次いで目視できるのが人の多さ。自分の部屋や学校でもできるだろうに、ここで勉強している人たちがいた。

 俺も人のことは言えないが。そんなことを思いながら、読書感想文の本がどこにあるのか司書に聞いた。

 

 案内された場所には指定されたらしいマークと、六冊の本だった。

 

 俺は一つ一つ題名を確認し、次いであらすじを確認し、最後にぱらぱらとめくって書きやすそうな本を探した。

 結果書くことにしたのは『幻想と現実』。タイトルからして難しそうな内容だったが蓋を開けてみるとそうでもなく、どこかの童話をアレンジしたファンタジーものだった。

 

 こんなのを指定するなんて理事長は教育者として大丈夫なのだろうかと思いながらその本をとって席を探すと、横から声をかけられた。

 

「あれ、大智? なにしてるん、ここで?」

 

 俺はその口調で誰だか見当がついたので、持ってきた本を声がしたほうに持ち上げて空いてる席を探しながら、答えた。

 

「読書感想文を終わらせに。そういう八神はまた読書か」

「そうや。……空いてる席探してるのやったら、うちが読みたい本とってくれれば探してやるけど?」

「…わかった」

 

 これ以上長引かせて時間を食うのも癪なので、おとなしく八神に従うことにして横を向いた。

 すると相変わらずの車いす姿だが、元気だけはありありと見て取れた。

 

 ……それが見せかけなのかどうかは置いとくが。

 

 そんな考えを気取られないように「どの本を読むんだ?」と聞くと、八神は少し驚いたらしくこう言った。

 

「最近会ってないと思ったら、なんかずいぶん変わったやん。雰囲気もそうだけど、暗さが取れたって感じがする」

「そうか? それよりお前の読みたい本はなんだ?」

「そういうせっかちなところは変わらないんやなぁ、ホンマ」

「どうでもいいだろ」

「はいはい」

 

 そう言って移動しようとしたらしいのだが動かせずにいて何やら首をかしげている八神を見てため息をついた俺は、後ろに回って車椅子を押した。

 

「な、なんや!」

「動かせないのなら本を取らせるついでに俺に言え。ここまで自分で動かしてたんだろ?」

「…まぁ」

「なら腕も疲れたんだろ。開館してすぐに来たみたいだし」

「…なんでわかったん?」

「じゃなきゃ俺より奥のほうで声が聞こえるわけがない」

 

 そう言うと八神は「……そうやな」と小さくつぶやいてから、「なら頼むわ」と了承したので、車いすを押して八神が読みたい本を取りに向かった。

 

「おおきにな」

「構わない。席に関しての文句はこの際言わないことにするし」

「うちの隣じゃ嫌なんか?」

「…ああ」

「ヒドッ!」

 

 読みたい本を見つけて渡して席を探すことになった俺たちだが、丁度いいところに二席あいていたのでそこで座ることにした。

 つまり、八神が隣にいるというわけだ。

 別にここに来ると大抵こうなっていたから大丈夫なのだが、現在の俺の目標である『読書感想文を終わらせる』を達成させるにはいささか不安要素にしかなりえない。

 

 何言われても無視してやるか。そう意気込んだ俺は持ってきた本を読みながら、要所要所を原稿用紙に適当な文字の大きさで書き込み始めた。

 書き込むこと数分(同時に読み終わった)。

 

 原稿用紙五枚にわたって書かれた要点を順番にまとめながら、本を読み終えた感想を呟いた。

 

「ファンタジーなのになぜか固い」

「学校指定はそれが普通ちゃうん?」

 

 それはそうだろうが、なんか納得がいかない。

 …一応内容が硬い割にファンタジー感が出ていたことには驚いているが。

 そんなことは置いといて。本を返してさっさと書いてしまおうか。

 そう考えて本を戻しに行く俺。

 

 その時八神が、「せやったら何か面白そうな本適当に見繕ってくれへん?」と顔を向けて言ってきたので、「戻るまでに読み終わっておけよ」と言い残して戻すことにした。

 

「とは言ったものの……面白そうな本とは一体何なのだろうか?」

 

 本を戻すのはすぐに終わったのだが、八神に頼まれた「面白そうな本を持ってくる」ということに悩んでいた。

 これが自分なら常識の本やら図鑑やらでもいいのだが、八神はここの住人。しかも大分本を読んでいるだろう人。

 大体読んでいるんじゃないだろうかと思いながら本棚の一番上の段を脚立を借りて探していると、ふと一冊の本が目に留まった。

 

「『探偵ギャンブ』。表紙が随分と幼稚な絵だな…」

 

 本棚からその本をとってぱらぱらとめくる。

 ………。

 

「これでいいか」

 

 内容が面白そうだったのでその本を持ったまま脚立から飛び降り、脚立を司書のところまで返してから八神の下へ戻った。

 

「ほれ」

「遅かったやん」

「探すのに手間取った」

「そか……って、なんやこの前衛的な表紙」

「大事なのは中身だろ」

「まぁそうやけどな…」

 

 そう言ってから八神はパラパラと本をめくっていく。

 それを横目に見ながら俺は、放置していた読書感想文を書き始めることにした。

 

 

 

「…意外と面白かったわ」

「そうか」

 

 一時間ぐらいかけて何とかまとめた感想文を手提げカバンに入れていると、ちょうど読み終わったのかそんなことを呟いたので軽く返事をする。だが、内心では自分がずれていなくてホッとしていた。

 

 別に他人に感性をどうこう言われたからといって何をするわけでもないが、やはり紹介したものが面白いといわれないとこちらが間違っているのかと思ってしまう。

 

 …たまにクラスの奴らがほかのやつに強く勧めてるのを見ると、よくあんなにできるなと感心する。他者の感性が自分と同じわけないのに。

 

「なぁ大智」

「……なんだ?」

「何を考えてんの?」

「同一感性に関しての考察」

「……は?」

「なんでもない。忘れてくれ」

 

 そう言ってから壁に掛けられた時計を見ると、見事に十二時半。

 もう昼かと思っていると、「もうこんな時間? シャマル達が遅れるなんて珍しいこともあるんやな」という八神の呟きが聞こえたので首を傾げる。

 

「シャマル? 俺とお前が会う時は大体シグナムという女性だったはずだが、他にもいるのか?」

「せや。うちに前から居候しててな。シグナムとシャマルの他に、ザフィーラやヴィータって名前や」

「居候? 家族じゃないのか?」

 

 そう訊ねたところ、八神は急に歯切れが悪くなった。

 

「う~ん。家族といえば家族やけど、ある日いきなりやからなぁ。しかも先月ぐらいから時折夜遅くまで帰ってこんし」

 

 いったい何してるんやろ? と呟く八神を見ながら、俺は「俺は帰るが…お前はどうする?」と訊くと、先ほどまでの考え込んだ顔はどこへやら。いきなり表情を明るくして「だったら家まで送ってくれる?」と期待するような目で頼んできた。

 

 特にこの後用事もなく、ただ家に帰って昼を食べるだけだったので俺は頷き、「案内してくれるなら」と言って八神の後ろに移動した。

 

「ほな、この本返して家に行こうか」

「そうだな」

 

 そして八神と一緒に本があった場所へ戻り、司書の下へ脚立を借りて本を返し、八神が座っている車椅子を押しながら手提げカバンを持って図書館を出た。

 

 

 

 

 

 

「大智の家ってどこなん?」

「どこと言われるとお前とはだいぶ離れているとしか言えない」

「そりゃそうやろうけど……何か目印はないん?」

「長嶋という表札」

「そりゃそうやろうけど! それ以外に何かないんかい!!」

「……電柱の近くにある長嶋という表札がある家」

「探せるかアホォ!」

 

 そんなやり取りをしながらゆっくりと歩く。

 早く移動しても八神にいいことなさそうだしな。そう考えた結果ゆっくりと歩くことが最適だと考えて実行している。

 八神はというと、先程の会話でため息をついてから「あ、ここ右や」と指示を出してきた。

 無言で従う俺。

 

 右に曲がってから、八神がさっきの話題を続けた。

 

「にしても、教える気あるんか?」

「一応。目立ったものがないから説明しづらいだけだ。それに、説明したことないからな、俺」

「友達おらへんの?」

「いるが一緒に遊ぶことがほとんどない」

「寂しいなぁ……ここは左や」

「はいはい」

 

 何やら悲しまれたがスルーして曲がろうとした時、その角から二人飛び出してきた。

 その顔を見た時八神は驚き、俺はどこかで見たことがある顔だなと思った。

 

 俺達が(おもに八神が)何か言う前に、あちら――シグナムと銀髪の男らしい青年が片膝をついて口を開いた。

 

「申し訳ありません! 少々出かけ先でトラブルが発生してしまい、遅くなってしまいました!!」

「申し訳ない!」

 

 ただならぬ忠義に俺が呆気にとられていると、顔を真っ赤にした八神が二人に対して怒った。

 

「何してんの二人とも! ここは天下の往来やで!! そんな恥ずかしい真似せんといて!」

 

 だが二人は納得しなかった……と思いきや、あっさりと立ち上がって自然体で「申し訳ございません」「悪かった」と謝った。

 

 これはもう俺要らないだろう。そう結論付けた俺は一歩ずつ後ろに下がると、シグナムが俺の姿に気付いたのか、「長嶋か。わざわざすまなかった」と言われたのでその場で止まり「ああ」と答えるしかなかった。




このまま八神家へ。読んで下さりありがとうございます。
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