世にも不思議な転生者   作:末吉

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二話目です。そしてまだ訓練行きません。次で訓練終わります。


55:腕試し

「全員回復したか?」

 

 小屋から出てきた俺は何の会話をしていたのか知らないが、とりあえず高町たちに話しかける。

 すると、三人が三人とも首を傾げた。

 

「「「回復?」」」

「あぁ。この空間は魔力回復を促進させてくれる……と、どうやら三人とも大丈夫のようだな」

 

 視てみると三人とも魔力が完全に回復していた。やはり子供だからか、回復力が速いのだろう。

 まぁそんなことはどうでもいい。大事なのは、三人が万全な状態になっているという事実。

 

 俺は何やら覚悟を決めた表情の三人に対し、これから行おうとする前準備をさせることにした。

 

「それじゃ、さっさとバリアジャケット展開しろ」

「う、うん」「分かった」「うん」

 

 そういって思い思いの言葉でバリアジャケットを展開する。

 それを見届けずに俺は、スサノオに話しかけた。

 

「空間での注意事項は?」

「特には。ただ、お前が全力で撃たなければ壊れる心配はない」

「耐久力に難ありだな」

「たった数十分で作ったことをほめてほしいんじゃがの」

「……こんなことに付き合わせてすまないな。ありがとう」

「儂も用があったから構わんわい」

「いいよ」

 

 言われた俺は三人に視線を向けず、そのままスサノオにお願いした。

 

「じゃぁ頼む」

「任せろ」

 

 そう言うとおもむろに右腕を上げて指を鳴らした瞬間。

 今度はどこを見ても白い壁しか見えない空間に移動した。

 

 さすがに二度目だからか驚きは少なかったが、それでも新しく来た空間を警戒しながら周囲を見渡す三人。

 ちなみにだが、テスタロッサ姉とスサノオはこの場にいない。いるのは、俺、高町、テスタロッサ、ハラオウンの四人。

 これ以上無駄に時間を費やす気がなかったので、見渡している三人に対し俺は種明かし兼これからやることを告げた。

 

「まずこの空間だが、ダメージを受けたところでここから出れば回復する場所だ。魔法なんか撃っても問題ないらしい。だから、お前達は今から俺に一撃いれてみろ。入れられたら今日から始める。出来なかったら今日は終わりだ。無論、三人一緒に攻めて、だ」

 

 そう言うと、いきなり三人が動揺した。

 まぁ動揺するだろうと見当をつけていた俺は、その動揺をなくすように肩をすくめて言った。

 

「おいおい。俺が魔力を出してないことに動揺してるのか? 甘い甘い。ここじゃ死なないんだから大丈夫だっての。それに、いきなり魔力出したらお前らが攻撃を当てるチャンスがなくなるって」

 

 反応を見ると今度は動揺ではなく何やら葛藤していた。

 やれやれどうしたものか。俺はため息をつきながらどうやって攻撃させようかと考えていると、いきなり魔力弾が後ろから来たのが気配で分かったので考えるのをやめて右へ体をずらして避け、発射してきた奴までダッシュ。

 

「なに!?」

「惜しかったな」

「ぐっ!」

 

 避けられて間近まで迫られたことに驚いたハラオウンに惜しいと言って、そのままの勢いで膝蹴りを腹に当てる。

 食らったハラウオンはそのまま壁に激突。ドゴォォォン! という音と瓦礫の音が混ざりながら全体に響いた。

 一応だが、これでも加減している。力を小学三年生に、速度だけ本気という具合に。

 

 だがハラオウンはしばらく目を覚まさないだろう。崩れた壁を見つめながらそう思っていると、テスタロッサが自身のデバイスを鎌の状態にして突っ込んできた。

 この速さは感心するなと思いながら俺はテスタロッサに突っ込み、衝突寸前で鎌をつかんでその場で右足を軸にして半回転して投げ飛ばす。

 

「キャッ」

「うわっ!」

 

 ちょうど撃つ予定だったのか高町がテスタロッサと衝突。

 これ幸いと思いそのまま跳んだ俺は体勢を整えている二人の間に割って入り、両手で二人の腹部に掌打を打ち込んで壁に激突させた。

 押し出す形で吹き飛んだことに満足しながら俺は無事に着地。そしてテクテクと空間内の中心まで歩き、立ち止まる。

 そこで周囲を見渡しながら、俺は頭を掻きつつ考える。

 

 これからどうするか。一応全員壁に激突させて埋めたから、出てくるより意識を失うほうが高そうなので、もうどうしようもない。

 死ぬわけがないから大丈夫だろうが……なんて柄にもなく心配していると、なんとなくこの場に留まると嫌な予感がしたので、少し距離をとる。

 

『マスター、上です!』

 

 ナイトメアの言葉を素直に受け取った俺は、先程までいた場所で起こった爆発を見ながら左へ跳ぶ。

 すると上から飛んできた魔力弾が追いかけてきた。

 それを視界の端にとらえた俺はすぐさま全速力で直進し、壁までたどり着いたらそのままの勢いで壁を登る。

 

「うそっ! 壁を走ってる!?」

「何はともあれチャンスだ!」

「待って!」

 

 どうやら三人とも復活していたようだ。そして念話で作戦会議でもしていたところか。

 壁を一直線に走りながらそう考えた俺は立ち止まる。

 無論、急に立ち止まると体に異常な負担がかかりこのままだと一撃いれられてしまうだろうが、それ以前に問題がある。

 それは、魔力を使わずに走っていたことだ。

 魔力を出していた状態だと急に立ち止まったとしても問題なく、更には壁に足をつけたまま立っていることも可能。

 だが今はただの全速力。魔力もなしで走って壁に足をつけたまま立つことなど壁と一体にならないと不可能なので。

 

「「「あ!」」」

 

 俺は頭から落っこちた。

 が、こうして落ちている以上考えがある。それも、三人に攻撃し、俺は無事に着地するという考えが。

 まず俺は落下中に顔を上げ、体を地面と水平にする。

 落下距離の少ないスカイダイビングみたいな状況だが、これで終わりなわけがない。

 あわや地面と全身が正面衝突するかのような状態で腕を突き出した俺は地面を軽くタッチして衝撃を殺し、その反動で宙返り。

 この状態で狙われたら間違いなくアウトなんだが、高さが低いからか攻撃を仕掛けてこない。

 着地した瞬間に見上げると、すでに三人とも砲撃準備なのか、杖(?)を一様にこちらに向けてきたので、俺はここまで走った本来の目的である「あるもの」を拾い、

 

「「「シュー!!?」」」

 

 三人に向けて一つずつ投げてぶち当てた。

 すべて直撃し、三人とも落下する。

 それを確認した俺は立ち上がり、空間の床に落ちている「あるもの」を拾い、上へ放ってはキャッチしながらつぶやいた。

 

「まったく。瓦礫だろうがなんだろうが、とりあえず堅かったら凶器足りえるんだがな」

 

 今俺が持っている「あるもの」。それは、ハラオウンが激突した壁の瓦礫。高町たちを撃墜した正体が、これだ。

 

 

『マスター。さすがに危なかったんじゃないですか?』

「俺は魔力を使わないといったが、この体だけで戦うとは一言も言っていない」

『そうでしょうけど、さすがに今回の戦い方はあちらがかわいそうだと思いましたよ』

「これでも神様基準だと下あたりなんだがな」

「いや、流石に中の下辺りじゃろ」

 

 ナイトメアとの会話に割り込んできたスサノオ。見るといつの間にか空間が解除されていて、テスタロッサ姉が三人のもとへ駆け寄っていた。

 俺はスサノオの評価に眉をひそめて反論する。

 

「馬鹿な。あの程度で中の下だったら、俺は沙悟浄あたりには勝てることになるぞ」

「体術だけじゃったらな。妖術――いや神通力を使う総合力だったら相討ちがいいとこじゃろ」

『……それはそれですごい気がしますけど』

「ナイトメア。その感想はあくまで同列視した感想だ。この肉体と体術だけだったら相討ちまでにこちらの体力が持つかどうか怪しいからな」

 

 そう言うと、スサノオがうさん臭そうな目で俺を見てきた。

 訳が分からないので首をかしげる。

 

「どうした?」

「いや。謙虚なのか自分の戦闘能力だけをちゃんと理解していないのか、ちと判断が付きにくくての」

「?」

 

 そんなことをやっていると、後ろから、しかも俺のすぐ近くから、声が聞こえた。

 

「しばらくぶりです、猛き英雄」

 

 その声に体が勝手に反応し、俺は振り返りながら距離を取って相手を確認した。

 体もやや細身と男という点はスサノオと似ているが、違う点は杖を持っていないところと、見た目は二十代にしか見えないほど若いところ、そして着流しに似ているが中国の伝統衣服である漢服の曲裾を着ている点だった。

 

 俺は突然の出現に警戒したが、スサノオは片手をあげて嬉しそうに言った。

 

「おう。態々悪かったの、麒麟」

「いえ。私もやることがなくて暇でしたので」

「麒麟…」

 

 スサノオが呼んだ名を反芻し、頭の中で思い出しながら警戒を解かずにそいつとの距離を測る。

 

 麒麟。確か中国では帝を守る神霊として崇められていたやつだったか。そして獣達の長であり、殺生を嫌い、雷を操るもの。

 

 そんなやつがどうしてスサノオとなんか……なんて考えた結果、ある仮説が生まれた。

 

 おそらく、スサノオのその荒ぶる気性ゆえに嵐の神格が付き、その延長上で雷を操ることのできる麒麟と仲良くなったのだろう、と。

 しかし、現実は違った。

 

「そういえば、そちらの古都に住んでいる白虎様はお元気ですか?」

「まぁの。パシられなくて安心か?」

「えぇ。今ではユニコーンと仲良く走り回ったり、雷神様にご教授願いに気軽に行けますから」

「……」

 

 具体的な話が見えない。

 どうやら日本で昔信仰された(今は名を知られているぐらいだろう)白虎との関係での知り合いらしいのだが……。

 そこまで考え、そう言えばこいつはどうしてここに来たのだろうかと根本的な疑問に至った。

 

「なぁスサノオ」

「ん?」

「おや、あなたが……」

「なんでこいつも――」

 

 何やら麒麟も反応したが、俺は無視してスサノオに質問し――――

 

「長嶋君! さっきのアレ何!?」

 

 ――かけたところで高町に遮られ、場が混迷を極めた。

 

 とりあえず高町を先に黙らせることにした。

 

「今の実力差を分からせるための腕試しだ。分かっただろ。まだ全力じゃない俺にここまでいいようにあしらわれたんだから」

「うっ」

 

 とりあえず成功したので、俺は改めてスサノオに質問した。

 

「なんで麒麟も呼んだ?」

「今回は察し悪いのぉ……こいつにも手伝わせるためじゃよ」

「今日からよろしくお願いします」

 

 そう言って麒麟は俺に向かって頭を下げた。




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