世にも不思議な転生者   作:末吉

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訓練の話はあまり触れなかったりします。


56:訓練開始

「――――というわけで、俺が三人も教えられないだろうというスサノオの計らいによって、麒麟にも来てもらった。まぁ実際一人で三人も教えられないし、魔法の得意分野を伸ばした方が手っ取り早いけど俺はそこらへん知らないので、スサノオと麒麟にも手伝ってもらうことになった」

「教えないんじゃなかったのか?」

「言葉のあやだ。そうでもしないと本気で来なかっただろうし」

「…僕はあまり事情を知らないんだが、彼らは?」

「これからお前達が戦うであろう相手の身内。下手に手を出したら瞬殺されるような強者がごろごろいる」

「私なんてスサノオさんやあなたに比べたら弱者ですよ」

 

 麒麟がそんな風に謙遜しているが無視し、俺はスサノオに言った。

 

「じゃ、誰の訓練相手する?」

「わしが決めるのか」

「俺は誰が何が得意かなんて知らないし興味を持ってすらいない。ここは色々と知っている神様が決めた方が迅速だ」

「まったくお前は……」

 

 そんな風にぼやきながら、横一列(高町、ハラオウン、テスタロッサの順)に並んでいる三人を左から順に見て迷うそぶりも見せずに即決した。

 

「わしはクロノ・ハラオウン。麒麟はフェイト・テスタロッサ。大智は高町なのは。これが妥当じゃろ」

「その根拠は?」

 

 反対する気はないがとりあえず根拠を尋ねると、まるで分っていたかのように説明してくれた。

 

「お前さんが担当するのは同じレアスキル所有者じゃからよ。麒麟も同じ理由じゃ。儂はまぁ……こやつの話を聞きながらどうするか決められるからじゃの」

「レアスキルってなんだ?」

「まぁまだ知らんでもいいもんじゃて」

「そうか」

 

 とりあえず引き下がり、そして高町達を見る。

 ちなみにだが、テスタロッサ姉には誰の下へついて行ってもいいことにしている。そうでないと暇になるだろうし、救急箱(スサノオが持っていた)を持たせた意味がない。

 何故か緊張している面々に、俺はため息をついてから言った。

 

「…ハァ。まぁともかく。お前達は俺との練習(・・)で、力量差を理解しただろう。それを踏まえたうえで今回訓練を行うのだが……いくつか忠告する。まずは訓練方式。これは教える人によってまちまちだから頑張れ。次に訓練場所。俺と高町は先程の空間だが、麒麟とテスタロッサは別な場所に行くのか?」

「そのつもりです」

「ならその時に回廊を使うだろうから、出た場所に目印をつけておけ。そうじゃないと帰るに帰れなくなるからな」

「え?」

「そしてハラオウンとスサノオの場所だが……そこに関しては触れない」

「どうしてだい?」

「知らないからだ」

「……」

「それで最後だが、訓練中、何が起こっても死ぬな。終わるまでに死んだらシャレにならないからな、お前ら。以上訓練開始」

 

 その言葉を皮切りに俺と高町、麒麟とテスタロッサ姉妹は消えた。

 

 ――――さて、どうやって鍛えるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*……視点

 

「一体どうして僕なんですか?」

 

 先程の場所に残っていたクロノは、正面に立つスサノオに尋ねた。

 その質問にスサノオは答えず、「とりあえずついて来い。話はそこからじゃ」と言って身を翻して森のほうへ歩き始めたので、彼は慌ててついていくことになった。

 

 

 

 また、別な場所では。

 

「あの、麒麟……さん」

「なんですか?」

「ここ……どこでなんですか?」

「あぁ、あそこです」

 

 地上に広がる景色を慄きながら見下ろして質問するフェイト。

 その質問に彼は、彼女が見ている場を指さし何の気なしに答えた。

 

「あそこは彼女が住む場所で、あなたの修行場所でもあります」

「……」

 

 眼下に見えるは山。ただし、ただの山に非ず。

 そのことを離れた場所からでもわかったフェイトは、バルディッシュの持つ手が震えていることに気付いたが、ほかの二人を思い浮かべて決心し、「行きましょう」と促した。

 

 アリシアは、麒麟にお姫様抱っこされた状態だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようやくか……」

「何が?」

「なんでもない」

 

 先程と同じ空間に来た俺たち。今は何をしているのかというと――――

 

「どうした高町。数があったところで制御しきれないなら意味がないぞ?」

「分かってるよっ!」

 

 高町が放つ魔力弾を、俺は避け続けていた。しかも、十分ぐらいずっと。

 この時の俺はバリアジャケットを展開した状態で、さらには一分当たらなければ一発追加させるというルールで行っている。ちなみに一切手は出していない。

 ただいまの魔力弾は十発だが、その内の五発は集中力の限界なのか、すぐに壁を破壊するだけ。なので、実質五発ほどで俺に一発入れることになっている。

 

「当たって!」

「祈るな。せめて自分で動かせ。相手の避ける動きを先読みしないと当てられもしなければ、避けられもしないぞ……十一分経過」

「…いくよ、レイジングハート」

『了解しました』

「『シュート!』」

 

 そういうと高町の周りに十一発の魔力弾が形成され(それまで追っていたものは他のところに当たった)、そのすべてが一斉に俺へ向かってきた。

 物量押しだったら当たると思っただろうなぁと思いながら、俺は魔力弾の隙間を縫って前方へ移動。

 すべて避けたかに見えたが全部がすべて真上から降り注いできたので、俺は瞬間的に後ろに飛び退いてからそれを追いかけてきた魔力弾を見据え、再び突破することにした。

 

 

 

 結果。

 

「もう無理だよー」

「十四分でギブアップか……せめて二十分もたせれば俺に当たったかもしれんな」

「だからなんでそんなに当たんないの……?」

 

 大の字になって寝転がる高町がそんなことを言うので、俺は横に座って答えた。

 

「動体視力と身体能力と予測など。これらをフルに使ったから」

「……うぅ。やっぱりずるいよ、一発も当らないなんて」

「それは集中力の問題だろう」

「え?」

 

 顔だけこちらを向けてきたのが分かったが、俺はそちらを向かずに説明する。

 

「最後の二分。あれは完全に集中力が途切れていたな。その証拠に一発一発の動きが単調になっていた。一番よかったのは十一分ぐらいだな。すべての動きのコントロールができていた」

「……長嶋君に褒められるなんて、初めてかも」

「褒めるような行動を目撃したことがないからな」

「…その一言がなかったらなぁ」

 

 そう言ってそのまま黙る高町。

 俺はというと、この初めの訓練で得たデータを頭の中で整理し、そこから次に行うべき訓練や課題などを立案、そしてあとどのくらい休憩するかを思案していた。

 

 

 

 

 

 

 五分後。

 

「やるぞ高町。立て」

「え、うん」

 

 俺の言葉に慌てて立ち上がる高町。一応この空間での回復は早いのだが、それはおそらく精神的なものが含まれていないのだろう。

 

「さ、やろう、長嶋君!」

「……」

 

 元気にそう宣言する高町だったが、俺は銀色の太刀を床に突き刺して訊く。

 

本当に大丈夫か(・・・・・・・)?」

「うん、大丈夫だよ!」

 

 そう言って自分が大丈夫であることをアピールするかのようにその場で回ったり、レイジングハートを回したりする高町。

 俺はそれを見て少し考える。

 

 高町は自分の事をよく隠して頑張りすぎる。その結果バニングスと喧嘩したり、必要以上に何かを抱え過ぎる。

 ならば先程までの態度と今この場の態度の差を当て嵌めたらどうなるのだろうか? おそらくだが、高町は最初に俺と腕試しをして疲労し、今のでさらに限界まで行ってしまい、それを悟られないために空元気を見せていると結論付けられる。

 

 となるとやはり……

 

「長嶋君、何考えてるの? もしかして、もう一度同じのやるの?」

 

 考えてる途中で高町がそう質問してきたので、俺はそれを放棄して答えた。

 

「いや。やめる」

 

 そう言った途端、高町は驚いて詰め寄ってきた。

 

「どうして!? 私まだやれるよ!」

「外見上はな。調子もまともに管理できない奴に教えても早死にするだけだ」

「ちゃんとやってるもん!」

 

 俺はそんな高町を見てため息をつく。

 

「では訊くが。お前は本当にギリギリの領域まで自分を追い込んでいないと、そう胸を張って言えるのか?」

「うん!」

「ではなぜさっき倒れ込んだまま五分後にきちんと立ち上がれなかった?」

「……それは」

「即答できなかったのなら、心当たりがあるということだ。それはつまり、毎度のごとくギリギリまで追い込んでいる証拠」

「でも!」

「でももへったくれもない。従えないのなら訓練はやめる。神様に遭遇したら、必死に逃げろ」

 

 そう言って一蹴し、俺は背を向ける。

 

 『従えないなら訓練はやめる』。この言い方は実に卑怯だと我ながら思うが、こうでもしないと高町はあのまま張り切りって……取り返しのつかないことになる可能性がある。

 ここでの訓練はそういう事だ。一つの判断で相手の人生を狂わせ、余裕を持たなければ常人では二日も持たない。

 今回は初日ということもあり、腕試しで全員平等に疲れたさせた上での訓練なのでそれほどでもないが、初日にやりすぎて次回どころか明日トラウマになられでもしたらどうしようもない。

 

 ……スサノオなら平然とやりそうだが、そこは何とかなるだろう。

 

 まぁともかく。そんな何とかできない俺が本気で鍛えるとしたら、確実にトラウマ作りまくって逃げ出されるに決まっている。

 ならもう今日はやめてまた次回にした方が、幾分かゆとりというものが双方にできるはずだ。そのゆとりこそ、心休まる時になる。

 

 ――なんて考えてみたが、よくよく考えたら俺も高町も小学三年生。こんな論理的かつ実際に訓練を受けた人間じゃないと分からない教育論をつらつらと語られたところで、伝わるはずがない。

 ならなんて言おうか。そんなことを考えていると、後ろから高町が「…うん」と言ったので、振り返る。

 

「分かったよ。今日はやらない」

 

 そう言った高町の表情が曇っているのが分かった俺は、そんな高町に頭を掻きながら近づいて「悪いな」と謝った。

 

「気にしなくていいよ!」

「そうか。ただ……これだけは言いたい」

 

 そこで高町の顔を見据える。思いのほか俺が真剣な表情だったらしく高町が息をのんだのが分かったが、そのまま続けた。

 

「俺はお前に死んでほしくない」

「……え?」

 

 何故か急に高町の顔が赤くなったが、そこは別にいいか。

 

「教える以上、強くなる保証はしよう。だが、その過程で死にかけるようなことが何度起こるか分からない。その時に余力がありませんでしたといって何も出来なかったら元も子もないんだ。分かるな?」

「……う、うん」

「訓練中に無茶や追込みは今のお前には早すぎる。先を見据えた方が幾分か楽になる。…いいな?」

 

 そう言うと高町は俯いてバリアジャケットの胸の部分をつかみながら「…うん」と小さい声で返事をした。

 

 これだけ言えばさすがに大丈夫だろう。そう思った俺は戻って太刀を抜いて肩に乗せ、呼びかける。

 

「高町」

「…………」

 

 返事がない。

 

「高町? おい高町」

 

 近づきながら名前を連呼するが、それでも返事がない。

 とりあえず肩を揺さぶってみる。

 

「大丈夫か、高町」

「…あ」

 

 揺さぶられて顔を上げた高町が俺の顔を見て声を漏らしたかと思ったら、急速に顔が真っ赤になり、ワタワタと慌てだした。

 それを見た俺は高町の肩から手を放し、これだけ元気だったらまだ本当はやれたんじゃないだろうかと自分の判断に自信が持てなくなった。




おや? 高町さんの様子が……?

次は闇の書事件の概要説明を聞きに斉原君の家へ。そして何故か二話になってしまった…

お読みくださりありがとうございます。
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