世にも不思議な転生者   作:末吉

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またの名を斉原家訪問


57:夏休み三日目

 とりえずあの空間から二人で出てみると、座り込んで息を整えている二人と気絶したのかその近くで寝ているテスタロッサ姉、そして『やりすぎた』と思いっきり顔に出ている指導者二人。

 

 高町が座り込んでいる方へ駆けて行ったので、俺は「ああ、今回はもう無理だな」と思いスサノオたちに「次回はやりすぎるな」と注意してから「回廊」と呟いたのだが、何故か発動しない。

 

「……どうしてだ?」

「いや、ここに来たらお前に貸した方法使えぬからな?」

「なら任せた」

「切り替え速いのぉ」

 

 そう言うとスサノオは手を振りながら「また来るんじゃぞ」と言って俺達を光で包み、気が付いたら戻ってきていた。

 

 リンディさんが驚いているが、俺は無視して「ではまた」と言って一人帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

 夏休み三日目。

 今日は斉原との約束の日だが、時間と場所を決めていなかったので九時ごろに電話した。

 

『もしもし大智?』

「話はどこで聞けばいい?」

『それじゃぁねぇ……僕の家へ来てもらっていいかな。高町さん達に見つからないで』

「今から行く」

『うん。待ってるから』

 

 その言葉で電話が切れたので、俺はとりあえず財布と携帯電話を持って気配を消して家を出た。

 

 しかしどうして高町達見つからないようにと注意してきたのだろうか? 玄関先に誰もいないことを確認した俺は、とりあえず前に斉原を送った道を走りながら考えた。

 斉原は管理局の手伝いをやめたとする。となると、高町には知られたくないこと、そしてバニングス達一般人にもっと知られたくないことをやっていると仮定。

 果たしてそれが正しいかどうかは分からないが、あいつらに知られたくないことだけは確か。

 

 ……。八神たちの家も結構不思議だったな。

 

 ここまで考えて思考がずれたことを感じた俺は、そのまま全部を放り投げてバニングスと月村の横を通り過ぎた。

 

「あれ?」

「どうしたの、アリサちゃん?」

「なにか横切らなかった?」

「そう?」

 

 バレてなかったか。

 横切った時はしまったと思ったが、気配を消したままだからか、はたまた横切るスピードが速かったからか気のせいで片づけられた。

 ふぅと息を吐いたが、よくよく考えればあの二人を横切る前に察知してどうにかできたはずである。

 

 これは感知関係を一から鍛えなおさないとヤバいかもしれないと反省しながら、そのまま向かった。

 

 

 

 

 とりあえず着いたのでインターホンを鳴らす。

 ピンポーンという音が外に響き渡り、来客が来たことを中に知らせる。

 とりあえず見つからない様にという事なので可能な限り気配を薄めた状態で待っていると、少ししてドタバタと音がしてからガチャリとドアが開き斉原が顔を出した。

 

「久し振り」

「ああ。そうだな」

「はいってよ。こう暑いと、ね」

「そこは別にどうでもいいのだが……まぁお邪魔する」

 

 そう言えばこいつ気配消したのによく話しかけてきたよな……なんて思いながら、俺は斉原の家へ上がった。

 

「両親は?」

「僕の家は母親だけでね。父は亡くなったとか」

「そうか」

 

 リビングまで案内された俺は、宿題が展開されていない方の椅子に座る。斉原は飲み物を取りにキッチンへ向かったようだ。

 俺は視線を天井へ向けながら訊ねた。

 

「で? 俺に手伝ってほしいことでもあるのか? 殺しとかで」

「殺しなんて依頼しないよ!? 君は暗殺者だったの!?」

「まさか。普段そんなことを言わない斉原だから、最悪なケースで聞いてみただけだよ」

「……冗談だったんだ…?」

「そうともいう」

 

 そこで会話が途切れる。ふむ。はっきり言って暇だ。手持無沙汰はどうしようもない。

 暇つぶしの道具でも持ってくれば良かったかなーと素直に思っていると「はいこれ。烏龍茶だけど」とコップを差し出してきたので受け取り、口に運ぶ。

 

 コップの表面が結露しているのは中身が冷たい証拠。

 実際冷たく、夏の暑さにはちょうどいいぐらいだった。

 「ふぅ」と息を吐いてコップをテーブルに置き、とりあえず宿題をやり始めた斉原に話しかける。

 

「どこまで終わった?」

「そっちは?」

「全部」

「僕は後これが終わったら自由研究かな。さすがに習ったものばかりだから楽でね」

「それが終わるまで待つか」

「あ、ありがとう」

 

 十分後。

 斉原は宿題を終わらせたようなので、俺は半分まで飲んだ烏龍茶の入ったコップを置いて切り出した。

 

「で? 一昨日の電話の用件は?」

 

 すると斉原は言いにくそうにしていたが、やがて決心したのか真剣な表情をして言った。

 

「こんな風に君に頼るのはお門違いだと思うけど、あの動きを見て敵対だけは避けたいと思ってね」

「なんだ、仲間になってほしいのか」

「そういう訳だけど、これは自分の我が儘だから君が断ろうが構わないよ……だけど事情位の説明をさせてほしい」

「なるほど。とりあえず何をしてほしいか、ではなく事情を話して関心を引こうと。後ろめたいことでもあるのか?」

「……大智の考察力は本当に恐ろしいね。探偵になれるよ、きっと」

「愛憎劇に首を突っ込むつもりはないな……まぁいい。お前の仲間やらと衝突する可能性のある俺を入れたいと。そういう訳なんだな?」

「まぁね」

「そこまで考慮しているのなら話は早い。友達として(・・・・・)手伝ってやるから事情を話せ」

「……え?」

 

 俺が手伝うと言った瞬間に呆ける斉原。それを見て最近俺と会話する奴のほとんどが呆けてる気がするんだがな、と思いながらもう一度言った。

 

「友達として手伝ってやるって言ったんだ。呆けるのは勝手だが、事情の一つでも話せ」

「変わったね、本当。せっかちなのは変わらないけど」

「まぁ急いでたとしてもやることはないがな」

「だよね」

 

 そう言って笑う斉原。いや、それよりも事情を説明してくれ。

 少しイラつきながらコップを持ち、中身の烏龍茶を一気に飲み、氷だけとなったコップをテーブルに置く。

 この光景を見て何かを察したのか笑うのをやめ、再び真剣な表情で話し始めた。

 

「大まかに事情を、というより改めて自己紹介しようかな。知っての通り僕も転生者。ただ中学生の頃に亡くなったからそこまでの体験や記憶しかないけど」

「俺は前世の高校一年の記憶しかない。中学までの知識はあるが」

「じゃぁ君の方が年上なんだ」

「一応は」

「ふ~ん……話を戻すけど、その死ぬ前の記憶にここが舞台のアニメがあってね。で、僕はここを転生先に選んだわけだ」

「…アニメって、あれか? パラパラマンガをもっと滑らかにした奴」

「――そう。そういうもんだと思っててよ」

 

 投げやりに答える斉原。きっと面倒くさくなったのだろう。

 そういえば前にスサノオが「原作が~~」とか言ってたような気がするんだが……

 

「……ひょっとすると、そのアニメが元々の流れだというのか?」

「正解。……というか、良く分かったね。はっきり言って知らないとばかり思っていた」

「実際知らない。が、四月の事件が始まる前ぐらいにスサノオ――俺達を転生させた神様が『原作が~~』と言っていたのを組み合わせただけだ」

「…………さらっと言ってるけど、本当に探偵になれるよ?」

「だからなる気はない」

「ゴホン。じゃ続けるけど、ジュエルシードの事件は覚えてるよね」

「そりゃ夜刀神とタイマンしたからな」

「そう。大智が彼女を倒してこれは幕を閉じた。だけどね、こんな終わり方は本来存在しないんだ」

 

 そう言って斉原は烏龍茶をあおる。

 

「……そうなのか?」

「そう。本来はアリシアさんとプレシアさんは生きてなどおらず、フェイトさんはリンディさん達の養子として引き取られることになる」

「だけどそうはならなかった」

「でもその過程は変わっていなかった」

「それは置いておこう。……それで? これから先も何か起こるのか?」

「うん。実をいうと、君にはその手伝いをしてもらいたいんだ。僕はまだ動けないし、彼女達の出現が早すぎたせいで計画がおざなりになっている。一応僕が何とか彼女達を抑えてるからおとなしいけど、今あれ(・・)をやられるわけにはいかない」

あれ(・・)? 彼女達? 一体何を言っている」

「それを今から説明するよ。これからクリスマスまでに起こる事件を」

 

 そう言った瞬間、俺の腹が鳴った。

 

「「…………」」

 

 気まずくなる俺達。

 互いに何も言えなくなったので、俺は先手を打った。

 

「悪い。腹減った」

「このシリアスブレイカー!」

 

 怒られた。

 

 まぁ怒るのももっともだろう。なんせこれから先に起こる事件の話を説明しようとした時に中断されたのだから。

 俺だったらちょうどいいから中断するんだがなと考えながら、携帯電話で時間を見て訊ねる。

 

「今は十二時半ぐらいなんだが……昼はどうすればいい?」

「それなら僕はあるけど……」

「俺の分がないのは当たり前だろうが。…さて、買ってくるか」

「お金あるの?」

「両親が仕事で行ってしまったからな。金に関しては事前に降ろしたので何とかやりくりしている。持ってきてはいるぞ、こうして」

「……じゃ、デバイスは?」

「いや、全然」

 

 見ればわかるだろうと左腕を見せながら俺が答えると、斉原はこめかみを抑えながら息を吐いてこういった。

 

「良いから買ってきなよ。もちろん、知ってる人に見つからずにね」

「ああ、分かってる」

 

 そう言いながらリビングを出た俺は、玄関を出る前に気配を消し前世での潜入作戦のような慎重さで玄関の扉をそっと開けて家を出た。

 

 さぁ久し振りの隠密行動だ。頑張りますか。

 

 意気込んだ俺は塀に足をかけてから電柱へ跳び、そこから別な電柱へ三角跳びの要領で上をめざす。

 三本目あたりで一番上へ到着した俺は、そこから周囲の眼下を見渡し、誰もいないことを確認して屋根へ飛び降りる。

 さぁ久し振りだ。少しばかり興奮してるのが自分でもわかるぞ。

 そんなことを思いながら着地した屋根を全力で蹴って他の人の屋根へ跳躍。そして間髪おかずにまた跳躍。

 

 そこからは目的地であるコンビニ近く(おそらく歩いて十分ぐらい。場所は電柱に登り切ってから確認済み)まで屋根を跳躍しまくる。

 

 そしてある程度近づいたら電柱に……っと。

 見知った姿を確認し、俺は奥の方へ隠れる。

 

「ん?」

「どうした、シグナム?」

「いや……気のせいのようだ」

「? まぁいいけどよ。さっさと帰ろうぜ。アイス溶けちまうし」

「そうだな」

 

 ちらっと陰に隠れながら顔を出して姿の正体を確かめる。

 ……あのピンク色の髪はシグナムで、小さい奴がヴィータだったな。

 どうやら、買ったものをさっさと持ち帰りたいらしい。

 俺としても早く戻ってほしいと思いながら見ていると二人が移動したので、その隙に俺は飛び出して塀に飛び降り、そのままコンビニへ入ろうとしたが、自動ドアが開かない。

 

 ……だよなぁと息を吐きながら出てくる人を待ち、開いた瞬間にすれ違う様に店に入り、気配を現す。そうでもしないと、俺は買い物ができないのだ(気配を消したままだと気付かれないため)。

 

 さて、何を買おうか。

 適当に物色しながらそんなことを考えて店内を歩き回っていると。

 

「なんで木在までついてくるんだよ」

「手伝い、だから……」

 

 自動ドアが開くと同時にそんな声が聞こえたので、慌てて気配を消した。

 水梨や霧生が入ってきたから。




自分なりにキリが良かったので分割。

ご愛読、ありがとうございます。
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