世にも不思議な転生者   作:末吉

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なぜかそこに至るまでが長かった。


58:大筋紹介

 さてどうするか。水梨と霧生がまさか斉原の近所だとは思わな……いや、テスト勉強の時に斉原の家でやる案が出た時俺が遠いと言っていたな。つまり霧生と近所だということになるか。

 困ったな。知り合いに見つかるとどうしてここにいるかとか聞かれるだろうし、そもそも今は見つからないように行動している最中。

 

 本当にどうしようかなどと考えながら弁当が陳列されているところを見ていると、件の二人がこちらに来たので俺はそのままパンの方へ移動。

 

「何…買うの?」

「うーん…コロッケパンに焼きそばパンにイチゴ味のかき氷に、シーチキンマヨネーズ味のおにぎりと鮭味のおにぎり、俺は……余った金で適当に買えってよ」

「そう、なんだ」

 

 チラリと二人を見ると、最初の頃と変わらない水梨と、これまた最初の頃と変わらない霧生の姿が。

 声をかけたいと思えどスルーした方がいいかと考えた俺は移動する。

 飲み物を一瞥し、とりあえず主食を買うために二人が見えない道を通ってもとの位置へ戻る。

 

 お弁当やおにぎりが少ししかないが、まぁ健康を考えたチョイスにするか。

 そう思ってのり弁とサラダ、そして牛乳と健康食品を手にした俺は気配を現して普通に会計を済まし、そのまま気づかれないように自動ドアを出た。

 

「ん?」

「どうか、した?」

「いや。大智がいた気がしたんだけど……気のせいか」

 

 

 

 

 

 

 

 コンビニを出た俺は、急ぎ足で道路を進む。無論、気配を消して。

 危なかった。下手したら見つかっていたかもしれないな。

 そう思いつつ周囲を自然と見渡しながら警戒して歩くこと十分ほど。

 

 知り合いに一人たりとも見つからず、斉原の家に着いた。

 とりあえずもう一度インターフォンを押す。

 

『大智?』

「ああ」

『いいよ、入って』

 

 そのまま玄関まで歩き入る俺。

 バタン、と静かに扉を閉めた俺は、大きく息を吐いた。

 

「ふぅーーーー」

「どうしてそんなに息を吐いてるのさ?」

「いや。知り合いに見つからずコンビニまで行って昼食を買い、知り合いに見つからずにここまで戻ってきたから。あの緊張感を久し振りに思い出せた」

「……見つかっても言い訳でっち上げればいいんじゃないの?」

「出来るだけ見つからない様にと言ったのは斉原だろうが」

「まぁ、そうだけどさ。……ところで、一緒にお昼食べようか」

「ああ」

 

 わざわざ待ってたのだろうかと思いながら靴を脱いで家に上がり、リビングへ。

 

「何買ってきたの?」

「のり弁、牛乳、サラダ、健康食品」

「……随分健康に気を遣うね」

「体あってこその運動だ」

「今からの必要ないんじゃ? それに君、弁当箱重箱だった時普通に完食しても、体重変わってなかったんだよね?」

「ああ。夕飯少なかったから」

「………もういい。食べようか」

「そうだな」

「「いただきます」」

 

 二人同時にそう言って、俺はサラダを、斉原は準備されていた昼食――オムライスを食べ始める。

 

「「…………」」

 

 普段とは違い黙々と食べ続ける俺達。人の家だからなのか、それとも何か別な原因があるのか知らないが、とても静かな昼食の時間…だった。

 

 俺の携帯電話が振動するまでは。

 

 俺は箸をおいてポケットから携帯電話を取り出し発信者を見る。表示されていたのは、『高町なのは』。

 

「誰から?」

「高町」

「出てもいいよ?」

「分かった」

 

 斉原から許可を得たので、俺は席を立ってリビングを出ながら電話に出た。

 

「もしもしどうした?」

『あ、な、長嶋君! 今…大丈夫?』

「ああ。出来るなら用件は手短に話してほしいが……またやるのか?」

『今はまだいいかな…私は長嶋君に突き付けられたことを頑張ってるから』

「根は詰めるなよ」

『分かってるよ……それでなんだけど。明日、大丈夫かな?』

「あ? 大丈夫だと思うぞ」

 

 何故か遠慮がちに聞いてきたので俺は頭の中で予定を反芻しながら肯定すると、先程とは一変して『本当!?』と嬉しそうな声を上げた。

 その声が、聞いた感じ願ってもない幸運が舞い降りたような気がしたがスルーし、ひとまず俺は「ああ」と返事した。

 

『よかったぁ! なら、明日の十時に公園入り口前に来てくれないかな!』

「ん? ああ分かった」

『絶対だよ!?』

「ああ」

 

 そして電話を切る。

 

 ……にしても高町に誘われるなんて初めてのような気が……いや、それを言ったら他の奴らといろいろやったことすら初めてか。

 なんであんなに緊張していたんだろうかと思いながらリビングへ戻ると、一足先に食べ終えていた斉原が。

 

「誰から?」

「高町」

 

 椅子に座って再開させながら答える。

 

「ふぅん。結構交流あるんだね」

「家が隣だからな……そう言うお前だって八神と交流があるんだろ?」

「そりゃそうだね。僕がそうなるように願ったから」

「…なるほど。流れ的には、八神が好きなお前はこの世界に転生するとき家が隣になればいいなぁと思った、と。そういうことか」

「なっ! き、君はエスパー!? なんでわかるの!? 自分のことになると分からないのに!」

「うっさい。単なる想像だよ。前世で俺も好きになった奴がいたからな」

 

 そういうと斉原は途端に静かになり、「そうなんだ……ごめん」と謝ってきた。

 吹っ切れたのに何謝ってるんだこいつとか思いながら弁当を食べ終えた俺は、健康食品のパッケージを開けながら言った。

 

「同情も憐れみも必要ない。前世の話は今関係ないしな。それに…今じゃもう好きだって気持ちがなんなのかすら分からないかし」

「…………分かるさ、きっと」

「だといいな。…あ、言っとくがこの話内緒だからな。誰かに言ったらお前が八神が好きだってこと本人に言うぞ」

「え、ちょっと待って! 明らかに僕の方が重いよね!? もう告白しちゃったようなものだよね!?」

 

 あわてる斉原。ふむ。こういうやり取りはなんだか新鮮だな。

 なんだか別な話題でやりたくなったが、そんなことで来たわけじゃないことを思い出し牛乳を飲みながら訊いた。

 

「ほろほろほんだいにふぁいらないか(そろそろ本題に入らないか)?」

「そうだね時間はあるけど予定外の事があるだろうし」

「ああ」

「飲み終わったんだね……それじゃ、気を取り直して話そうか。十一月からクリスマスまでの事件について。そして、僕達が今何を行っているのかについて」

 

 やっと聞ける。そう思いながら、俺は斉原の話に耳を傾けた。

 

 

 

「まずは本来の出来事(・・・・・・)から話しておこうか。これから起こる事件は『闇の書事件』と呼ばれるんだけど、六月のその人の誕生日にそれが起動し、その人を守るための守護者四人が出現。そこから大体九月ぐらいまでは普通に暮らしてたのかな、たぶん。で、十月辺りから魔術師のリンカーコアを回収するためにその守護者が活動を開始。十二月に高町さんのリンカーコアが奪われたことで、本格的な物語が始まる。そこからクリスマスまでに色々な出来事が起こり、クリスマス当日に黒幕というか事件が全部収束するって感じ」

「……随分省いた気がしなくもないが?」

「まぁね。闇の書を消そうとしている人物がギル・グレアムで、その娘たちであるリーゼロッテとリーゼアリアが闇の書を消すために暗躍していたこと、発動してから使用者の魔力を奪い体を蝕んでいくプログラムが設定されていたこと、バニングスさん達に魔術師だとばれることぐらいかな」

「なるほど……なんとなくだが、被害者という形に八神はなるのか?」

「そうだね」

 

 ここで今までを思い返し、俺は首を傾げた。

 

「ちょっと待て。俺は今年の四月から出会っていたぞ? シグナムに」

「そう。僕もその時は驚いたよ。なんでこんな早くに、って」

「やはり影響があるのかもしれないな」

「そうかもしれない。でも、話の大筋があまり変わっていないんだよ。時期は早まったけど」

「それってリンカーコアの回収か?」

「といっても、管理局の目が届かないような辺境で、危なそうなモンスターだけだけど」

「そうか。となると俺は、リンカーコア回収の手伝いをすればいいんだな?」

「シグナム達と一緒に、はやて達に気付かれないように」

「了解した」

 

 即答し、やっとつながったこと事に安堵する。

 魔力を持っているシグナム達の正体は八神の守護者であり、起動させた本――どう考えても忘却神具の類から生まれた人格プログラム(だからと言って、別に軽蔑も何もしないが)。そして彼女達が最近出かけている用事というのが、リンカーコア回収。

 

 となると八神の様態は今……と考えようとした時、ふと気になることが思い浮かんだので斉原に質問する。

 

「お前はやらないのか?」

「やれないというのが正しいかな。リンカーコアを渡して魔力の回復を今してるところだし、神様が突然『デバイス持ってくぞ』と回収していったから」

「なるほど……大まかに理解した。今日のところはこれで?」

「うん。ごめんね、手伝わせちゃって」

「構わん。一人でいると暇だと思えてくるようになったからな」

 

 そう言いながら俺は食べたごみを袋に入れて、椅子から降りる。

 しかし本当にこの世界はオリジナルがあったんだな。別段気にしないが。

 

「じゃぁな」

「また連絡するよ」

「分かった」

 

 そんなあいさつを交わし、俺は扉を開けて外に出る。そのまま歩きながら今までの話をまとめながら帰路についていると、声をかけられた。

 

「あ、お前!」

「……ん?」

 

 思考を打ち切り顔を上げて後ろを向く。そこにいたのは、何やら不機嫌そうなヴィータだった。

 ふむ。君子危うきに近寄らず。ここはおとなしく帰った方がよさそうだ。

 そう結論を出した俺は、無視して歩き出す。

 

「ちょっと待て! 何無視してんだテメェ!」

 

 ……なんだ。会話しても良かったのか。

 心配して損したと思いながらもう一度振り向き、そのままの距離で彼女に話しかけた。

 

「昨日の事なら気にしていない。見知らぬ存在を警戒するのは当たり前だからな」

「…なんで、分かった」

「昨日の今日で出会わなかった俺達がこうして会話する件といったら、それしか思い浮かばないだけだ」

「……お前って本当にはやての言ったとおりだな」

「そうか。で、要件はそれだけか?」

「ああ」

「なら別れついでに教えておく。俺も手伝うことになった。よろしく頼む」

「なっ!? テメェまさか!!」

「俺は管理局の人間ではないし、そんなスパイみたいなことをはしない。ただ純粋に友達の手伝いをするだけだ」

「……信用できるかよ」

「別に俺を信用しろとは言っていない。ただそいつがどうして頼んだのか。それだけを汲み取ってくれればいい」

 

 最後にそう言って、俺はヴィータに背を向けて駆け出した。

 

 

 ……最後のセリフ、斉原の株を上げたような気が…別にいいか。




あと二話で六十話……闇の書本編まであと十話あるかもしれません。

でも本編が十話ぐらいで終わりそうなんですよね……

謝謝
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