世にも不思議な転生者   作:末吉

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連続投稿。


05:魔法少女が二人?

少女に脅しを受けて数日が経過した。

 

あれから…あの少女とは一切遭遇せず、あのジュエルシードとか言うものは机の肥やしになっている。誰かにあげたい。

 

 

八神はやてとは図書館でたまに顔を合わす。本人曰く「毎日いるで」とのこと。だが俺は毎日来る気はないので「見かけたら声をかける」とだけ言っといた。

その日、本を借りる手伝いをさせられた。

 

修行の方はもっぱら座学。大体を理解し、正直やることが無くなりつつある。

え?バリアジャケットとかどうしたって?使ってるわけないだろ。意味ないし。

 

 

あと、ナルシストからライバル宣言を受けた。意味が分からなかった。

クラス男子から謎の殺気を受けた。意味が分からなかった。

 

少しばかり高町と仲良くなった。

 

それは以下の通り。

 

 

 

 

買い物帰りに三人が絡まれ(一人は不遜にも喧嘩腰)てるのを発見。

ベタだなぁと思いつつ穏便に済ませようと仲裁に入ったんだが、相手側の一人に大根を折られたのでちょっとオハナシした。

 

 

「うらぁ!」

「「「ぎゃぁぁぁ!!」」」

 

 

それから大根を買いに行かせ待ってる間に高町たちを追い払った。

 

無論、諸々を約束させて。

 

 

 

そして現在。

 

 

「なぁなぁ。なんで猫の本なんて読んどるん?」

「明日ちょっとな」

 

今俺は図書館で八神と一緒に本を読んでいる。あいつが読んでいるのは推理小説、しかも、生々しい人間関係をテーマにしたものである。

俺はというと、猫に関する本である。なぜ読んでいるのかというと、元居た世界に猫が存在しなかったからだ。ついでに言うと、犬も。

 

だから知りたいと思い読んでいるのだが……どうして今読んでいるのかというと、

 

「何かあるん?」

「友達の家に招待された。そこに猫がいるとのことで、急遽調べてる」

 

そう。月村の家に招待されたのだ。ちなみに拒否権はないとのこと。

なんで俺がと訊くと、バニングスと高町が『何かあった時頼もしいから』と言っていたらしく、月村自身ももっとお話ししたいからという理由らしい。

 

そのことを委員長に言うと、呆れた顔で『これだけ針の筵のような視線を受けて平然としていられるって。長嶋君はすごいね』とはぐらかされた。

 

まぁ視線ぐらいなら別に。死線を潜りすぎたから特に。

とは言えないので、「害はないだろ」とだけ言っといた。

 

と。

そんなことを考えていたら、八神がじっとこちらを見ていたのに気付いた。

 

「どうした?」

 

本から顔を上げ、八神にそう訊くと、何やら不思議そうな顔をしていた。

 

「猫って結構おるやろ?なんでそない調べる必要あるん?」

 

そこでふと思った。確かに。猫はいたるところで見かける。それほど珍しい生物ではない(この世界では、という意)。

なのにどうして俺はここで調べているのだろうか…。

 

自分でも不思議なことなので本を机に置いて頭を悩ましていたら、不意に八神が笑った。

 

「どうした?」

「だ、だって、そない真剣に考えるんやもん。くくっ。アカン、ツボや…」

 

人が真剣に考えてるのに笑うってどういうことだ?そう言いたかったが、以前にも仲間たちにこんな風に笑われた記憶が残っていたので、黙って再開することにした。

 

 

 

本を読み終えて棚に戻したところ、時間はもう夕方。

 

家に帰って夕飯の準備しないといけないと思いながら、まだ本を読んでいた八神に声をかけた。

 

「もう夕方だが。帰らなくていいのか?」

 

すると八神は顔を上げて時計を見て、「もうそんな時間か。えらい早く過ぎてもうたな」と呟いて本を閉じた。

 

「戻しといてな」

「人任せにするな」

 

本を押し付けようとしてきたので、俺は距離を取って自分で戻して来いと言った。

 

「届かへんねん」

「嘘つけ。その本があった棚、お前が普通にとって来ただろ」

「うわひどっ!こんな病弱な美少女に対してひどっ!!」

 

自分で美少女というってどうなんだ?一種のナルシストじゃないのか?

そう思ったが、言ったら反射的に同性別を思い出しそうになると思い飲み込み、代わりにこう言った。

 

「…病弱ならおとなしく入院してろ」

「大智って、冷たすぎやろ!」

 

ん?今名前で呼ばれた?まぁ別に良いが…。

そんなことを考えながら、いじけた八神をどう対処しようか思案しようとしたところで、気配が一つこちらに近づいてきた。

 

「ある――はやて。迎えに上がりましたよ」

「ん?シグナムか。おおきにな!」

 

シグナム、と呼ばれたその女性は、忠誠心の塊のような人であると同時に、そこかしこに血の匂いを漂わせていた。

俺が内心で警戒していると、こちらに気付いたのか彼女が頭を下げた。

 

「ある――はやてと一緒に居てくれてありがたい。私の名前はシグナム。貴殿は?」

 

…この態度を見た限り今のところ敵意はなさそうだな。そう考え、俺は無表情のままで言った。

 

「俺の名前は長嶋大智。こちらこそ色々と世話になっている」

「そうか。なら、これからも仲良くしてもらいたい」

「それぐらいなら」

「シグナムはうちのオカンか!」

 

そんな八神のツッコミに、俺は口元が少し歪み、シグナムは笑った。

 

 

 

 

 

……家に帰った俺を待っていたのは、昼間降った雨(気づかなかった)のせいでぐしょぐしょになった洗濯物と、少しばかり寂しそうにしていたナイトメア、そして食糧危機だった。

 

…コンビニは開いてるだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。俺は高町の家の前に来ていた。

なぜかというと、高町が「一緒に行こう?」と言ってきたからだ。まぁ月村の家を知らないし、ありがたいとは思ったのでこうしているが。

 

ちなみにだが、服装はまるっきり普段着。上下共に青のジャージだ。

……子供のころから家での服装はほぼジャージだし、ジャージ以外の服ってほぼないからな。

などと取り留めのないことを考えていると、

 

「あら大智君。なのはのことを待ってるのかしら?」

「あ、桃子さん」

 

高町の母がそんなことを言いながら外に出てきた。きっと家の前にずっといるものだから、声をかけてきたのだろう。

 

「最近来てくれないわね。どうしてかしら?」

 

相変わらず容姿が変わらないのが(若く見えるともいう)不思議だが、勘が鋭いのでわかっているだろうと思いつつ答えた。

 

「恭也さんと士郎さんが殺気立ってるじゃないですか。なにされるか分からないんで、行きたくないんです」

「そうなの?…あの二人にはきつく言っておかないとダメかしら?」

 

ぼそっとつぶやいた言葉はスルーしよう。どこの家庭も最近はかかあ天下だからな。

 

どうして俺は高町家の人達の名前を知っているのか。単純に家が隣だからというのもあるが、うちの両親と知り合いだったのでその付き合いの延長線上で、ということだ。

 

一度だけ両親の話を聴いたが、父親の方は無鉄砲の気分屋。母親の方はまじめ・天然・放浪癖という、かくも不思議な性格の組み合わせをしているらしい。

 

……父親は一日で冷蔵庫を作るパーツ集めて、次の日にそれでエアコン作ったことがあるとか。

 

どこでどう錬金術を行えばできるんだろうか?あと、家にある無駄に高機能なエアコン(自動風量調整・除湿・加湿・冷房・暖房・その他諸々)のことを指しているのだろうか。

 

人のこと言えないが、チートすぎるだろ、親父…。

 

さて。ここで少しばかり高町のことを気にしなければいけないな。じゃないとただの不審者だし。

 

「高町はまだ寝ているんですか?」

 

少なくとも、アイツが余裕で起きるという光景はあまり見かけない。最近では休日になると昼ごろに起きるとかざらにある。

 

どうしてわかるかって?叫び声を上げられれば誰だってわかるだろ。

 

「あの子なら着替えてるみたいよ」

 

笑顔でそう答えてくれた桃子さん。その笑顔に何らかの思いを測れるんだが、俺に被害はなさそうなのでスルーした。

 

 

 

こうして待つこと一時間。

 

「まだなのはは出てこないの?」

「俺に怒りをぶつけるな」

 

迎えに来たらしいバニングス(高級車に乗って)と一緒にまだ待っていた。

 

……この車で曲がれる角、存在したか?

 

この世界の不思議なところをまた一つ見つけた。

 

と。そんな風に待っていたら、ようやく決まったのか玄関の方でなのはの慌てた声が聞こえた。

 

「来たわね」

「そうだな」

 

やっと来たか。全く。着替えるのに手間取るとか子供か―――

 

ビタンッ!

 

こけた。盛大に、顔面から。

 

「うぅ…痛い……」

 

のっけから前途多難だった。こりゃ隣の修羅のお説教が長いな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月村の家は猫屋敷。バニングス達がそう言っていたので猫が多いのだろうと思ったが、事実はそれ以上だった。

 

「一部屋埋まるほどって…百越えてるだろ、絶対」

「にゃはは。相変わらずすごいね、すずかちゃんの家」

「ほんとね。よくこれだけ飼えるわね」

「だって可愛いんだもん」

 

月村とメイドに案内された部屋は、見渡す限り猫、猫、猫……。まるで猫の大博物館だ。しかも、どれもこれもが拾ったネコらしい。遭遇率がすごいな、おい。

 

「でも長嶋君って動物に好かれやすいんだね」

「意外よね」

「そうだね」

「俺もだ。てっきり逃げられるのとばかり思ってた」

 

現状。俺の周りに猫がいる。ソファに座っているんだが、足元、膝元に結構な数の猫が集まっている。

 

おかしい。猫や犬ってのはその人の気性によって近寄らないかわかれるらしく、それだったら俺みたいな最悪な奴には近寄らないと思っていたのに。

自分で思うほど最悪ではなかったのだろうか。そう思いながら、俺は離れて座っている月村達に助けを求めた。

 

「どうすればいい」

「どうすれば…って、あんた、猫と触れ合ったことないの?」

 

バニングスが呆れ顔で言ってきたが、

 

「ああ。近くに猫がいなかったからな。本で調べて知識としてならあるが」

 

猫という言葉は知っていたが、生態などを本格的に知ったのは昨日だ。何せあっちではそんな生物はいなかったからな。

 

「えっと、ここにすんでいるんだよね?」

 

その月村の質問で、俺はマズイと悟った。

 

先ほどから猫の対処で頭が回らなかったが、よく考えたらこの世界に猫がいるのは当たり前だ。そんな当たり前の世界に全く存在を知らないと言い張る人間がいたら、深く突っ込まれて俺が転生者だとばれてしまう。

まぁばれたからどうなのかと思うが、何かしら問題が起きそうだと考えられる。

 

となるとここは……嘘を信じてもらう必要があるな。

そう考え、俺は言った。

 

「ペットショップとかは行ったことないし、動物番組とか見たことなくてな。道を歩いていても見かけたことが無いから」

「それでも知らないっておかしいんじゃないかしら?」

 

すぐさまバニングスからの追及。っく。自分でまいた種とはいえ、ここは何としてもこの話題を納得させなければ…!

そんな風に思っていたら、急に高町が連れてきたフェレット(ユーノ、と呼んでいた)が部屋を飛び出し、自身も追いかけて行った。

 

これに乗じて何とかはぐらかさなければ!!

 

「実は親が大の動物嫌いで、ペットは飼えない、動物に関する話は一切ダメっていう徹底ぶりだったんだ」

 

我ながら渾身のこじつけだ。だがだいぶ無理があるような気がするが……

 

「…そう。そんな事情があったのね」

「大変だったね……」

 

どうやら信じてくれた。ありがたい、純粋な心よ。

 

 

こうして、何とか転生者だとばれることが無くなった。……次からはボロを出さないようにするか。

 

 

 

 

 

 

 

高町の方だが、もう一人の同い年らしい少女(鎌を持った)に負けたらしい。

らしい、というのは、帰りに本人がブツブツと呟いていたから。

 

フェレットは、心配そうな顔をしていた。




あと一話ぐらい投稿します。
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