世にも不思議な転生者 作:末吉
別名:月村さんルート
夏休みが始まって一週間が経過した。
残りの日数が二十七日。その間に終わらす宿題など最初の二日に終わらせたので、もうやることがない。
今のところの予定は
・斉原達の手伝い
・高町達の特訓
の二つ。
ん? 月村の誕生日? 呼ばれてないのに行くか。むしろ豪華そうだからこちらから辞退したいわ。
………なんて言いたかったが、そうもいかなかった。
あの日――高町が月村に渡すプレゼント選びをした日――に、月村と一緒に喫茶店で待っていた時に言われた。
『二次会でもいいから来てくれると嬉しいよ』
まさか誕生日会に二次会があるとは思わなかったが、そう誘われたのなら行くしかないのかもしれない。
ちなみに、プレゼントの方は特に言われなかった。来るかどうかわからないからだろうか。
なら別に行かなくてもいいのだろうが、誘いを受けた次の日に招待状の入った封筒をポストにいれられていたので、行かなかった後がどうなるか疑問だ。
まぁそういうわけで行くかもしれないって話なのだが、とりあえずプレゼントを作るぐらいはするか。
そう自己完結し、俺は今
「今回は何を作ろうか」
一人で散歩しながら考えている。
ナイトメアは一応つけているが、外で会話などさせないようにしているので会話など成立しない。
知り合いと一緒に居る訳じゃないのでこうして何かないかと探している。
……。
テンガロンハットを貸したままなので(もしくはあげた)、絶賛輝いている太陽の遮蔽物もないからか、髪の毛が熱い。熱にやられている。
だからなんとだと一人で思いながら周囲を見渡しながら歩いていると、不意に携帯電話が鳴った。
誰だと思いながら見てみると、「霧生元一」。
歩きながら電話をすることにした。
「もしもし」
『お、大智。今暇?』
「散歩出てるほど暇だが」
『マジか。いいなぁ……じゃなかった。散歩で外にいるんだったら好都合だ。ちょっと公園来てくれよ』
「なんで?」
『遊ぶからだよ』
「……宿題終わらせろよ」
『まだ時間あるから大丈夫だって! そんなことより今すぐ公園に来てくれよ!! じゃぁな!』
「…絶対後半に泣きを見るな、あいつ」
通話の切れた画面を見てそう呟き、携帯電話をたたんでポケットにしまってから公園へ向かった。
なにかプレゼントの案が思いつくかと思いながら。
「おーいこっちだ! ……って、早くね? 電話して三分ぐらいだろ?」
「走れば普通」
「だから電話したらすぐ来るって言っただろう、霧生」
「だけどよ裕也。いくらなんでも早すぎないか? どこにいたか知らないけど」
公園に着いたら霧生が手を振って迎え、如月は腕を組んで立っていた。その二人の間には知らない奴がいた。
身長と体格的に俺達と同じ年だろうか。見た感じ男で、どことなく胡散臭そうな雰囲気を纏っていた。
「こいつは?」
俺が素直に訊ねると、霧生が「忘れたのか?
名前の記憶に該当がない俺は内心首を傾げながらも握手に応じ、「よろしく」と返した時、体に衝撃が走り思わず顔を睨みつけつつ確信する。
――こいつは間違いない。神に連なる奴だ。
しかし肝心な正体が分からないのでこれ以上の詮索をする気はなく、俺は手を放してから霧生たちに訊いた。
「どうやって遊ぶんだ? 四人しか来ていないだろう?」
「どうやってって……鬼ごっことか?」
「人数少ないのにやるかよ霧生」
「しかも長嶋に勝てるわけないだろ。毎日走ってるんだから」
「うはっ。それもそうだったっ」
霧生が自爆したのでその案を切り捨て、俺はそれ以外の二人に質問した。
「だったら何がいいか」
「男四人でできるのって一体何がある?」
「なんだろうな……かくれんぼでも勝てる気しないし」
「かといって球技だと俺全部仲間はずれされるし……」
「この場合一対三で試合ができるんじゃないか?」
「だったら土手近くにあるサッカーグラウンド行って混ぜてもらおうぜ!」
「細波は?」
「俺かー……「え、無視?」…そうだな。他に仲間が集まらないのなら、さっきの霧生の案でいいと思うぜ」
「あ、聞いてたのかよ?」
「「それしかないか」」
「お前ら聞こえてたんなら反応しろよ!!」
大声で叫ぶ霧生。それを見た俺達はニヤッと笑う。
意外とこういうやり取りは面白いな。だがやりすぎは良くないか。
セーフティーラインを見極めるのが難しそうだと思いながら、俺達は知り合いに電話をかけて行った。
結果。
「霧生は?」
「木在だけだ。裕也は?」
「野球の奴らに声をかけたけど、今からじゃ無理だと言われた……細波は?」
「みんな寝てたんだよ。長嶋は?」
「あ? 斉原は近所の奴と一緒に居るからパスだそうだ。他はつながらない」
「「「「ハァ…………」」」」
水梨以外の援軍が存在しなかった。
これは完全にサッカーだなと空を眺めながら思っていると、「な、なに、き、霧生君?」と水梨が到着したお知らせの声が。
視線を戻したら、水梨の他に忙しいだろうと勝手に思って電話していないはずの宮野巡査が……
「? 非番なのか巡査?」
「非番だがどうした坊主? お前にしては珍しく友達と一緒に居て足を止めただけだ」
「そうか」
「じゃぁな」
「ああ」
買い物帰りだったのだろう。レジ袋を手首にかけている姿を見るに。
そのまま通り過ぎたので単なる偶然かと思った俺は、そのまま見送った。
さて……。
「水梨も来たが、結局はサッカーでいいのか?」
「それしかないよなー」
「だな」
「……なんかスルーした気がする」
「き、霧生君。わた、わたしも頑張るよ」
こんなメンバーで俺達は土手へ向かった。
その道中に霧生が親から逃げるのにつき合わされて細波が不良たちに追われ、その不良を全員一撃のもと鎮め(意識的な意味)てさぁ行こうと歩き出して数分で「ちょっと休もうぜ」と霧生が提案して近くのコンビニでアイスを買って食べながら向かっていたら如月が「あ、当たった。ちょっと交換してくる」と言ったために戻って交換し、再び向かい始めてすぐに霧生が親から強制帰還の命令を受けて水梨と一緒に帰ってしまった。
そのあと三人で歩いていたら如月が、所属する野球チームの練習時間に遅れるとか言って離脱。
最終的に、残った俺と細波だけが土手に座っていた。眼下ではサッカーをやっている奴らが。
この二人だけで混ざるのはなぁと思いながら、俺は細波に「これからどうする?」と訊ねる。すると向こうは立ち上がって「話しようぜ」と答えた。
特に予定もない俺は頷いて立ち上がった。
時刻は午後一時ぐらい。暑いせいか昼間なのに辺りはサッカー少年とその親たちしかいない。
歩きながら切り出したのは、細波だった。
「いやー参った参った。遊ぼうと思ったんだけどなー」
「確かに。けど仕方ないだろ。都合がつかなかったんだから」
「だよなー……けど、俺としちゃ好都合だけどな」
その言葉を皮切りに細波に生じる変化。外見的特徴から雰囲気まで、すべて変わっていた。
俺達と同じ身長だったのに対し180ぐらいまで変化し、髪の色も銀髪に、目の色が赤く染まり、犬歯が鋭くとがっていた。
本来なら驚くところなんだろうがそういった変化を見慣れている俺は大して驚くことが出来ず、ただ淡々と正体を口にした。
「真祖の吸血鬼か。しかも神格持ちの」
「そこは驚いてもらいたかったんだけどなー」
「悪いな。見慣れてるんだ」
「……今度からもうちょっとエッジの効いた変身を見せればいいのか?」
「会うこともないだろうから知らん。…で? わざわざ来た理由はなんだ? 神格持ちが平然と世界を渡り歩いてるのはいいが、与える影響は考慮してくれ」
そう注意すると白いスーツを着ているそいつは頬を掻きながらため息をついた。
「…君といると調子が狂うね」
「合わせていないからな」
「……まぁいいさ。で、僕が来た理由だけど、実をいうとこの世界にいるお仲間を探しに来たんだよ」
「仲間?
「僕が既婚者だって知ってた?」
「前世でいろいろ勉強した際に吸血鬼の生態が気になってな。少しばかり調べて判然としなかったところは全部想像だ」
「………なるほど。さすがは輪廻の元守護者。死ぬことがある種族の生態系に関しては知っているわけだ」
「知っているが、あくまで調べた範囲だ。そこまで全知じゃないし、何より神様じゃない」
「まぁ元だしね」
さすがにここまで来ると脇道にそれたことが分かりやすいので、俺は話を戻すことにした。
「で? そのお仲間には出会えたか?」
「う~ん。まだかな?」
「あっそ。で、俺に何をさせる気だ?」
すると奴は「そうだねー」と白いシルクハットを深くかぶり、その場で考え出した。
その姿を見て無策なら考えてから出直して来いと言おうとしたら、そいつが帽子を戻して「思い出したよ」と笑った。
「笑う要素があったか?」
「僕の中ではね。……それでなんだけど」
そういうや否やスーツの内側に手を突っ込み、あるネックレスを取り出した。
「これを持っていてほしい。仲間の誕生日までに」
「純銀の
「僕は別に。ただ、ずっと持っているのもしんどいから、ね」
「だろうな。ジリジリとくるだろうし」
「本当、日焼けみたいだよね…じゃなかった。実をいうと、それにはある術式が刻まれている。それまで知ったうえで受け取るか決めてもらおうと思って、こうしてきたんだ」
「どうして?」
そう訊ねると奴は困ったような顔をして「この話長くなるからさ、君の家へ行かないか?」と提案してきた。
特に用事のない俺は、十字架を受け取って普通に頷いた。
「ただいま」「お邪魔するよ」
家に戻った俺は吸血鬼であるノスフェラトゥ(吸血鬼の総称を名にしているそうだ)を上げ、リビングへ案内して座らせた。
「中々清潔感があるね。カーミラにも見習ってもらいたい」
「本来なら客人に対し何か飲み物を出したりするが……いるか?」
「水でもいいから欲しいね」
「あっそ」
台所へ行きコップ二つに水道水を注ぎ、冷蔵庫の氷置き場からいくつか氷を入れて運ぶ。
「ほら」
「ありがとう」
手渡した俺は反対の席に座り水を飲んでから聞いた。
「吸血鬼の中の王様がどうしてこんなことを?」
ノスフェラトゥは水を一気に飲んでコップを置き、説明しだした。
「実はね…どうも僕達の世界にいたヴァンパイアハンターがこちらの世界に来てしまったようなんだ。ここにも吸血鬼がいるって、どこかで聞いたらしい噂に乗ったようでね」
「ここにいるのか?」
「いるようだよ。空気的には間違いない」
「…」
「そもそも噂の割に信憑性があるってもの妙な話ではないのだろうけど、他世界に乗り込んでまで仕事をするのはタブー。世界のバランスを保つために過度の干渉を避けている時代にね」
「……お前は【統括者】なのか?」
「そうだね。今はカーミラに任せているけど」
統括者。それはその世界――例えばここの地球という世界を見守り、間接的に手助けする存在。大体が神格を持っている神様が就任するもの…らしい。スサノオが雑談のような口調で高町が誕生日の時の連行時に回廊で話していたのを思い出した。
大変だなぁと思いながら、「【統括者】としての責任か?」と質問すると、笑いながら「まね。他世界でやらかそうとしている奴らに鉄槌をってところさ」と答えた。
俺は少し考える。
元々の原因はこの世界に吸血鬼がいるということ。しかも確かな情報らしい。
ならばその吸血鬼を先に見つけて事情を説明するか、ヴァンパイアハンターをブッ飛ばすかのどちらかだな。
「……ふむ」
「というわけでさ、しばらく家に泊めてくれないかな?」
「良く分からんからもう一度話してくれ」
「聞いてなかったの…? だからね、吸血鬼性が少し高まる誕生日に奴らも特定のために泳がせるだろうから、それまで泊めてくれない? って話」
ここで俺は気になったことを聞いた。
「誕生日に吸血鬼性が高まるのはどこの世界でも同じなのか?」
「こっちの【統括者】に確認したから間違いないよ」
その瞬間、俺の頭の中にその吸血鬼の正体が駆け抜けた。
まさか……あいつだったのか。
十中八九当たっているだろうが、それからの手立てが考えられない。
……………。
「構わんぞ、泊まっても」
「いいの?」
「ああ。その代り、守るぞ」
「分かってるよ」
こうして俺達は彼女を守るために手を組んだ。
「ところで、誕生日にもらえるとしたら何がうれしいと思う?」
「さぁ? 僕の家には絵画ばかりだから分からないよ」
「……それでもいいかな」
これもまた四話ぐらい続くんですよ……
どうしてこうなった
リンカーコアの回収話はその後で、その後にようやく闇の書事件に入る予定
ありがとうございました。