世にも不思議な転生者   作:末吉

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気付いたらもうすぐで本編始まります。


65:行くことになった

 さて。あの後普通に森の中でノスが回廊であの四人を引きずって帰ったのを見送り、家へ跳んで帰った。

 その道中月村から「誕生日会に来てね」というメールが来た。

 

 ……。こいつはなぜあんなことが遭った後なのに平然と誘うことが出来るのだろうか? 若干精神状態を疑うぞ。

 

 ――この時点で俺の目論見が外れていたことを、俺は全く知らなかった。

 

 スーツを腕にタオルのように掛けて家へ跳ぶこと約十分。

 普通に、何事もなく家に着いた俺を待っていたのは、家の前で立っている高町だった。しかも、若干そわそわしている。服装も何やら気合の入ったものだし。

 一体どういう事だろうかと思いながら正面の家の屋根から見下ろしていた俺は、高町に気付かれないように気配を消して家の庭へジャンプ。

 音なく着地を成功させた俺はどうやって入ろうかと思いながら玄関まで近寄ると、バニングスまで増えていた。…こちらはよりお嬢様が際立つような感じ。

 

 ――――人の家で待つのが流行っているのだろうか。

 

 入ろうにも鍵は玄関しかないので、もはやそっと入るしかない。

 結構傷だらけな状態なので上手く出来るか不安だが、やるしかない。幸い士郎さんはいないらしいから上手くいくは――――

 

「あれ長嶋君。どうしたんだい、その傷だらけの格好?」

「え?」

「あ」

「やべっ」

 

 ――ずだと思ったら恭也さんに塀越しから言われ二人に気付かれたので、手の痛みをこらえてすぐさま鍵を開けて中に入り、鍵を閉めて進攻を防ぐ。

 

 ドンドンドン! と扉をたたく音を聞きながらスーツとネクタイをリビングに投げた俺は、二階の自分の部屋へダッシュしてナイトメアを装着し、掌に巻いていた袖をほどいて魔力解放を指示。

 文句を言われながらも解放された魔力全てを使って傷をすべて回復し終えてから魔力を封印。

 外傷が完全に消えたのを確認してナイトメアを持って下に移動し、リビングへ置いて風呂場へ向かい、シャワーを浴びた。

 シャワーを浴びてボロボロの服をタオル代わりに使って体を拭いて服をゴミ箱へ入れながらリビングに投げたワイシャツとスーツとネクタイを着用し、ナイトメアをワイシャツで隠すように装着して玄関のかぎを開けてドアを開ける。

 

 その時、振り下ろされた拳二つが。

 

 咄嗟に俺はその二つを受け止めて訊いた。

 

「近所迷惑だと分かってやってたのか?」

「あんたが返事をしないのが悪いのよ」

「ご、ごめん」

 

 とりあえず拳を放して外に出て鍵を閉め、その足で庭へ向かう。

 

「どこ行くのよ?」

「忘れ物取りに」

 

 バニングスの質問に簡潔に答え、俺は庭にある意味をなしていない物置へ向かい地下室へ降りて布でくるめたものを持ってくる。

 

「なによそれ?」

「月村に贈る物。最初で最後になるかもしれない」

「不吉なことを言わないでよ!」

 

 なんでだろうかと高町の言葉に疑問を覚えた俺だったが、こいつらは俺が月村を誘拐した(事になっている)ことを知らないんだったなと完結する。

 なのでそれ以上詳しいことは言わず、「待たせて悪かった。行こうか」と促して歩き出した。

 

 

 

 

 高町一家は恭也さんを除いて後から来るそうで、現在恭也さんと高町とバニングスと一緒にバスで向かっている。

 ちなみにだが、俺は一人でいられる席に座り周囲を警戒しながらバスに乗っている。前世で起きたことが今世でも起きないと思っていないからなのだが、ちょっとばかり奇異な目で見られているのが分かる。

 前回乗った時は何もなかったから大丈夫だと思っていい気がするのだが、最悪のケースを考えるとどうしても、な。

 

 バスに揺られること数分。

 その間他の利用客が乗り降りせず俺達だけだったのが不幸中の幸いだろうか。こんなの見られたら、確実に警察に連絡がいくだろう。それだけはヤバい。

 等と思いながら月村の家の近くに着いたらしいので、そこで金を払って降りる。

 そのあとにバニングス、高町、恭也さんの順で降りてバスが発車したのを見て、俺達は月村の家へ向かうことになった。

 

 その道中。

 

「そういえば長嶋君。傷は大丈夫かい?」

「えぇ」

「あんた。連絡したのにどうして返事しなかったの?」

「知らなかったから」

 

 そんな世間話をしながら歩いていると、月村の家の敷地内にいつの間にか入っていた。

 本当広いよなぁと感心しつつ布でくるんだものを脇に挟んで歩いていると、高町が「そのスーツ似合ってるよ、長嶋君」と笑って言ってきた。

 まぁノスが金に物言わせて作らせたものだからなぁと思いつつ、俺は「ありがとう」と返した。

 

「確かにそのスーツ似合ってるわね……というかむしろ、似合いすぎじゃないかしら?」

「それをいうならバニングスもだろう。赤を基調としたドレスなぞ、小学生で着こなすお前が俺には恐ろしいとさえ思う」

「な、なによいきなり…って、あんた褒めてないでしょ?」

「何を言う。小学生でそれが似合うなぞ、世界広しといえどそういないはずだ。その一人がお前なんだから、褒め言葉だろ」

「……ストレートに言われると、なんだか照れるわね」

「?」

 

 何故かバニングスは顔を赤くして小声でつぶやきだした。照れるようなことなどなかった筈だが、一体何が原因だろうか。

 本気で首を傾げていると、恭也さんが後ろで苦笑しているのが聞こえた。

 

「どうかしましたか?」

「いや、気にしないでくれ。君にも弱いところがあるのがうれしくてね」

「それじゃ大成しませんよ。相手を貶して自分を上にあげようなど、小物のやることですから」

「……すまん」

 

 一気に落ち込んだらしい恭也さん。小学生に諭されたという事実がショックだったのだろう。俺には関係ないが。

 

 というか、この全身黒ずくめ(比喩でも何でもない)の格好で布でくるまったものを抱えているって、本当に犯罪者みたいだよなぁ。

 適当にそんなことを思いながら歩いていると、いつの間にか家が見える場所まで来ていた。

 ここから見える限り入り口前だというのに人が多いな……俺達が行っても邪魔にならないだろうか。

 

 そんなことを考えていたら足取りが重くなったのか、高町達より遅くなっていたらしく、振り向かれて心配そうな表情を浮かべられた。

 

「大丈夫?」

「…ああ」

 

 返事をしてネガティブな思考を振り払うように頭を振って、三人に追いつく。

 

 まったく。未だに抜けていないようだなこの思考。人が多い場が怖いからかなのか知らないが、少しは踏みださないといけないというのに。

 何とかしないとなぁと思いながら、俺達は玄関先へたどり着いた。

 

「相変わらずすごい人数ね……」

「お父さん達分かるかな?」

「分かるさ、きっと」

「……ざっと百人ぐらい、か。厳選した結果なんだろうな、きっと」

 

 各々違う感想を抱きながらなんか列っぽいのに並んでいると(実質俺が最後尾)、前にいた恭也さんが招待状と書かれたチケットみたいなのを取り出したのを見て……思わず声を上げた。

 

「あ」

「どうしたんだい長嶋君?」

「…それ、忘れたんで」

「え?」

「取りに行ってきます」

 

 そういうや否や俺は来た道を引き返す。無論、荷物を持ったまま。

 

「あ、おい!」

 

 恭也さんの声が後ろから聞こえたが俺はその時すでに全力で走りだしたところで、少しばかり遠く聞こえたので無視して走った。

 

 ……スケボー作ろうかな。自転車も捨てがたいけど。

 

 そんなことを思案しながら士郎さん達とすれ違い、仮面をつけた奴とすれ違った時に家に着いた。

 

「??」

 

 一体どういう事かと現状をの解析を開始する。

 確か士郎さん達とすれ違った後仮面をつけた奴……あ。

 

「なんだ、理事長か」

「なんだとはずいぶん軽率じゃないのかね?」

「ありがとう。そしてなんか用か?」

「君の親代わりにあそこに侵入しようと」

「何しようとしてんだよ」

 

 俺は後ろの壁に背を預けながらクックックッと誤魔化す理事長を無視して、鍵を開けて家の中に入る。

 前回は確か最終局面に飛ばされたのだからもはや何も言うまい。一応敵ではないらしいし。

 そんなことを思いながら正体を考えるのを放棄して、招待状を探すことにした。

 

「……捨ててはいないはずなんだがな…」

「探し物はこれかね?」

「…なんで持ってる?」

 

 振り返ると理事長がいつの間にか家におり、しかも件の招待状と書かれたチケットを指で挟んで見せつけていた。

 俺の質問に対し、理事長は「普通に置いてあったぞ、地下室に」と答えて渡してきたので、それをひったくってから礼を述べた。

 

「ありがと」

「何とも棒読みな気がするが……いいか。さっさと行かないと怪しまれるんじゃないかね?」

「…この際何も言うまい」

 

 なんか親切心でモノを言われるとムカついてしまうのはどういう事だろうか。知ってるから急いで探していたのに。

 なんだかなぁと思いながら、俺は布で包んだものを抱えて家を出た瞬間に理事長とともに月村の家の前に来ていた。

 

「さっきからそんな風に使って大丈夫なのか?」

「些末な力の変異など、誰も気にしないさ」

「あっそ」

 

 なんだかあっちのペースに乗せられている感じがしたのでこれ以上の会話を避けたくなった俺は、何も言わずに並ぶことにした。

 

 のだが。

 

 俺の番になった瞬間に受付をしていた鮫島さん(ん?)に笑顔で「こちらへどうぞ」と、腕を引っ張られて入口とは別な場所へ連行された。

 

「なんで受付を?」

「人が足りないとのことでしたので。私以外にも数名来ておりますよ」

「そうですか」

 

 とりあえず腕を放してもらい後をついて行きながら進む。

 鮫島さんは構造を知っているのか大分スムーズに進んでいくので、楽といえば楽だ。

 

 とはいえ……さすがに覚悟を決めなくてはいけないか。

 一人だけ別な案内をされている時点でどうなる事か予想できた俺は、そんなことを思いながらついて行くと、とある広場に着いた。

 

「ここは? というか、猫?」

「こちらでお待ちくださいとのことです。それは持っておきましょうか?」

「……お願いします」

 

 なんか猫だらけの広場に連れて行かれたので荷物を鮫島さんに預け、俺は猫と対峙する。

 どうやら俺と同じようにあぶれた奴らなのかもしれない。だからといって親近感がわくわけでもないが。

 とりあえずスーツがボロボロにならないように過ごすか。そんなことを思いながら、俺は猫に気付かれないように木の上へ跳んで天辺でボーっとすることにした。

 

 

 

 

「来たか……」

 

 星空を眺めるなんて前世以来久しくやらなかったことをして時間を潰していると、ようやく人の気配が下の方でしたので俺は首を左右に曲げて木から飛び降りる。

 

「よっ」

「きゃっ! ……な、長嶋君。驚かさないでよ」

最後の(・・・)悪戯なんだ。別に構わんだろ。それに、驚く方が悪い」

 

 そういうと来た人物――月村は毅然とした態度で返してきた。

 

「もう嘘はつかなくていいよ、長嶋君」

 

 ――月明かりに照らされそう言い放った彼女の姿は、前世で好きだった少女を思い起こさせた。




月村さんの家で対面する二人。果たしてどういう話をするんでしょうか。

そして次話で月村編が終わります。いよいよリンカーコア回収の手伝いの話の次が闇の書本編!

ご愛読ありがとうございます。
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