世にも不思議な転生者   作:末吉

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さっ。あと一話で序章が終わる!

……今更ながらに今月よく更新したなぁと思う。


66:転生者と吸血鬼な少女

「…………」

 

 俺は月村の言葉を反芻するように無言で腕を組んで目を閉じて考え出す。

 

 どうやら、バレているとみて良いらしい。

 なら次はどうするか。

 いっそのこと本当に危害でも加えればいいのだろうか。そうすれば後腐れはあるが、離別できる。

 だが離別した後が問題だ。そっから先に待ち受けているのは逃走と戦闘の日々。別に異世界に逃げれば警察なぞ撒けるから構わないのだが、そうなると斉原の約束が果たせそうにない。

 そういえば斉原の電話は一体何の用だったのだろうかと思いながら目を閉じたままでいると、月村はもうお構いなしに語り始めた。

 

「長嶋君。私、分かってるよ? 長嶋君があんなことしないって。確かに以前だったらやったかもしれないしそう思えたけど、今はそう思えないし、思わない」

 

 俺は目をゆっくりと開ける。辺りはもう夜だ。日付的には八月なのだ。夏至を過ぎているため日が短くなりつつあるのだ。

 そんな状況を説明して何の得があると思いながら、腕を組んだまま反論する。

 

「俺の何を分かっているというんだ? 前にも言ったが、俺は冷酷非道なんだよ」

「違うよ。長嶋君は厳しくて優しく、それでいて……責任感のある男の子だよ」

 

 間髪入れずに俺の言葉を否定する月村。

 なので、俺もそれを否定するための言葉を紡いだ。

 

「関わらなければお前を気にしなかった」

 

 が、それすらも間髪入れずに否定する。

 

「でもあんな怪我をしてまで私を助けに来てくれた」

「助けたんじゃないって言ってるだろ。あれは、お前の誘拐がちゃんと行われたかどうか確認するために行ったんだよ。怪我はその前までやっていた仕事だ」

「それじゃ夏休み前にやった勉強会は? あの時だって私達を助けてくれた。あれも嘘だというの?」

「お前達を助けたわけじゃない。斉原と霧生が懇願してきたからやっただけだ」

 

 そういうと、月村はクスクスと笑う。

 建物の窓ガラスから灯りが漏れる。その灯りは丁度俺を照らし、月村は未だに月明かりに照らされている。

 

 笑う姿も似ていると思いながら「なにがおかしい」と訊くと、あっさりと答えが返ってきた。

 

「ほら。やっぱり長嶋君は優しいよ」

「――――チッ」

 

 その答えに込められた意味を理解した俺は舌打ちをし、けれど反論はした。

 

「お前は勘違いをしている」

「してないよ」

 

 それすらも間髪入れずに否定される。

 まるで禅問答、いや平行線の主張だと思った。

 あくまで主犯は俺であるという主張と、それは嘘であるという月村の主張。

 元々嘘設定な前者であるゆえ、これ以上の平行線は望めない。

 次からはもうちょっとマシな嘘で塗り固めて反論を封じて離別できるようにするかとくだらないことを考えながら、俺は両手を上げた。

 

「……参った。月村の頭の回転の速さに完敗だ」

「頭の回転じゃないよ。信じてるからだよ長嶋君」

 

 そういって見せた笑顔は、いつも通り優しそうな感じだった。

 思わず首を傾げそうになるが些細なことだと思い、「そういやお前、主役なのにこんなところにいて大丈夫なのか」と訊ねると、「今はちょっと休憩」と舌を出してそう言った。

 

 大変だなと思いながら俺の横を通り過ぎて猫とじゃれている月村の後ろ姿を見て、誰に聞かせるわけでもなく呟いた。

 

「――――この世界の吸血鬼はロクに能力が使えないそうだ。だから封印しなくても別に問題はないとのこと」

「……え?」

「一応十字架を渡したが、別に使わなくてもいいという事だ」

 

 その呟きに月村は猫とじゃれるのも忘れ……しゃがみながら空を見上げて同じように呟いた。

 

「そうか……私、本当の吸血鬼にならないんだ」

 

 建物内から音楽と人々の談笑が聞こえる。音楽はクラシック。娯楽などに関心がない俺でも、学校の授業で習ったぐらいの知識はある。

 対し外は、セミや猫の鳴き声が合唱を繰り広げている。時たま風の音が聞こえるのがまた何とも言えないのだろうか。俺には分からん。

 と、その中にグスッという音が混じり元気がよかった鳴き声が、途端に心配そうなものへと変わる。

 ふむ。泣かれてしまった。何かないのだろうか。

 現状の対処についていい案が浮かばない俺は、泣き止むまでその後ろ姿を見ているだけしかできなかった。

 

 

 

 

 流れていた曲が別な曲に変わった時。月村は何とか泣き止んで立ち上がり、俺に振り返る。俺達の足元に猫がじゃれついているのが確認できるが、そんなことは気にしていない。

 

「改めて……ありがとう、長嶋君」

「すまないな、月村」

 

 頭を下げず、立ったままで互いにお礼と謝罪を交わす。

 それが終わったというのに動こうとしない月村。俺もまた、動かない。

 

「…行かないのか?」

 

 止まった空気を引き裂くように確認する。

 それに対し、月村はある意味予想できたことを言ってきた。

 

「…長嶋君は?」

 

 いつもよりおとなしめに質問してくる。その変化の意味を考えずに俺は行くと答えた。

 

「そっか」

 

 一転して声が弾む。そのままこちらへ来たかと思うと、俺の腕に抱きついて顔を近づけて「行こう?」と笑って促してきたので、俺はつられて「――あぁ。分かったよ」と笑いながら答えてそのまま建物へ歩き出した。

 ……しかし、このまま進んで大丈夫なんだろうか。

 ガラにもなく、俺はそんなことを思った。

 

 ので。方針変更。

 俺は抱きついてる月村を上げてから振り子のようにお姫様抱っこにシフトし、猫が近寄らないことをいいことに建物を飛び越えるように跳んだ。

 

「な、長嶋君!?」

「舌噛むぞ」

 

 短く注意し、垂直跳びで一番高い屋根の端にかけた足でもう一度跳躍。今度こそ建物を越えるように。

 

「―――っと」

 

 普通に飛び越えた俺は誰もいない入り口付近にトン、とつま先から綺麗に着地した。それに伴い月村の服が少しふわっとしたが、別に気にしない。

 しかしこのスーツの機能性十分だなと思い、月村を降ろしてから袖を引っ張ったり裾を引っ張ったりして伸び具合などを確認する。

 月村はというと、顔を俯かせてこちらを見ようとしない。そこまでの事をしていないのだが、なんか悪い気がしてきた。

 

「あー、大丈夫か?」

「う、うん…」

 

「「…………」」

 

 気まずい。何が気まずいというと、全体的に。この、特に悪いことしてないのに何も言えないという空気が。

 さてどうやって月村と一緒に入ろうか……待てよ。

 あることに思い当り、俺は月村に声をかけた。

 

「先行くが「待って!」

 

 こちらを向いて手を伸ばした月村。

 再び固まる俺達。

 どうしたものかと別な案を考えていたら、丁度入り口近くに気配を感じていたので、このタイミングしかないかと思い、入口へ向かい扉を開ける。

 すると、ノエルさんとは違うメイド――ファリンさんが顔面から流れ込んできたのでスルー。

 ビタン! という音を聞いた俺は、手を差し伸べることなく「大丈夫ですか?」と訊ねた。

 

「だ、大丈夫ですよ」

「ファ、ファリンさん! も、もももしかして、見てたんですか!?」

「え!? み、みみ、見てませんよ!?」

 

 必死に否定するファリンさんに顔を赤くする月村。

 最近顔が赤くなる病気でも流行っているのだろうかと思いながら、俺は二人を放置して勝手に屋敷の中に入ることにした。

 

 

 適当ににおいがきついところへ向かうと、パーティー会場に着いた。

 大小様々な人間が、ドレスや礼服を着て談笑したりしている。

 この輪に入らなくとも俺もその一人かと嘲笑を浮かべながら、俺は紛れるように気配を消して歩き出した。

 

 様々な話が様々な場所で聞こえる。すべての声を聴くというのは不可能に近いが、聞きたくなくとも色々な話が聞こえる。

 こりゃどこかでボーっとするしかないかと思った俺は、面倒ながらも流れるように人ごみから外れて気配を紛れさせて窓の方へ移動し、背を預けて傍観する。

 やはり暇だ。誰が誰だかわからない。いや、分からなくていいのか。

 

 

 大規模にやる意味が分からないなぁと思いながら、終了するまで誰にも話し掛けられずにぼーっとしていた。

 

 訳がない。

 

「あ、いた!」

「見つけたわよ長嶋!」

「…ん?」

 

 声の方に視線を向けると、左右から挟む形で高町とバニングスが、息を切らしてこちらに来た。

 片方は金持ち、片方は可愛いからか何事かと視線が集まる。

 面倒ながらも回避する術を持たない俺は、視線を無視する形で二人に接した。

 

「慌ててどうした?」

「今までどこ行ってたのよ!? 大変だったんだから!!」

「そうだよ! お兄ちゃんは忍さんと一緒に行っちゃったから大変だったの!!」

「招待状を取りに家に戻り、少し月村と話していた。もう少しで来るだろう」

「「そういう問題じゃなくて!」」

 

 顔がくっつきそうなほど近づいてそう怒鳴った二人に対し、じゃぁどういう問題なんだと内心思いながら「ナンパされて悪い気はしなかったのか?」と怒っている二人に対し聞くと、「「しなかった」」と即答された。

 バニングスはまぁ毎回のようなものだろうが、高町はどうして……

 

「あんた年上の人しか声かけられなかったものね」

「みんな大体馬鹿にした感じだったから!」

 

 あぁ、なるほど。それはどうしようもないか。

 そんなことを思いながら、俺は「士郎さん達は?」と首を傾げて質問した。

 

「お父さん達なら料理のお手伝いとか――――」

「やっと来たみたいだね、長嶋君。もうすぐ一次会終わるから、楽しんでね」

「あ、はい」

 

 高町の説明の途中で美由希さんが俺達を見つけたのか、給仕姿で近づいてそう言い残して去っていった。

 あっちで働いてこっちでも働くのか。大変だな、高町一家。

 休めるのかと心配しながら、とりあえず美由希さんの言葉を信じて終わるまでバニングス達と談笑することにした。その間にも色々あったが、とりあえず割愛する。

 

 

 

 

「はぁ緊張したぁ」

「お疲れ、すずか」

「お疲れ」

「ありがとう二人とも……ねぇ、長嶋君は?」

「呼んだか?」

「「「わっ!」」」

 

 少しばかり片付けの手伝いをしたら呼ばれた気がしたので近づいて声をかけたら、驚かれた。

 

「どうした?」

「び、びっくりさせないでよバカ!」

「いきなり声をかけないで!」

「そうだよ!」

「なら俺はさっさと二次会開く手伝いしてるから。ごゆっくりどうぞ、お嬢様方」

 

 最後の方は冗談で言ったのだが言葉が返ってこず、内心首を傾げながら俺は片付けの手伝いをしに戻った。

 

 というわけで二次会。

 しかしながら俺は一人料理を食べるだけに集中して他人との会話を避けていたかったのだが、どうも問屋は降ろさないらしい。

 

「手伝ってくれてありがとうございます、長嶋様」

「こちらこそすいません」

 

 ノエルさんに始まり、

 

「娘を助けてくれてありがとう」

「ノエルさんを傷つけてすいませんでした」

 

 月村父、

 

「凄い活躍だったそうだね、大智君」

「一応は、ですけど」

 

 士郎さんが、月村誘拐に際しての俺の事を褒めに来たので、大体を謝罪で終わらせた。

 

 更に、俺のプレゼント――高町から借りた三人で映っている写真をキャンバスに模写したもの――を見た月村が「どうして長嶋君いないの?」と質問してきたので「必要があるなら自分で描いてくれ」と投げやりに言ったら、全員から小言をもらった。

 

 疲れた。

 

 

 

 

 

 

 

 余談だが、その絵に俺の顔も描いてという月村の希望により、翌日描きに行った。

 面倒だったので自分の特徴を残すように適当に描いた。

 「ありがとう!」と嬉しそうに言われたので、帰りながらもう少し丁寧に描けばよかったと、少しばかり後悔した。

 

 ……?




手伝う話は一話だけとなります。さっさと闇の書へ行きます。

…ほぼオリジナル展開になりますけど。
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