世にも不思議な転生者   作:末吉

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ここでやっと主人公の人外さが発揮できる……かも


67:初協力

 夏休みも残り二十日ぐらい。

 もうすでにやることがないので暇をつぶす日々なのだが、今日から俺はその暇が暇じゃなくなる。

 なぜなら、斉原の頼まれごとをやらなければいけないからだ。

 別に忘れていたわけではなく、向こうから連絡が来なかっただけである。

 

「……で、集合場所がここか」

「そりゃそうだよ。はやてに何か言われてもここなら言い訳できるから」

 

 現在俺達がいるのは斉原の家。ちなみに、集まっているのは俺と斉原とシグナムとシャマルである。

 月村の誕生日に電話があったので、その日にリダイヤルして知った。

 

「ちなみにザフィーラさんとヴィータは?」

「あの二人ははやてについている。何かあった時のために」

「で、俺はどうすればいい?」

 

 とりあえず残りの二人について質問したところシグナムが答え、俺のやることを聞くと場が膠着した。

 

 良く分からない俺は黙っている三人に首を傾げて質問する。

 

「ひょっとして、陽動か?」

「「!?」」

「……それか、シグナム達と一緒にリンカーコアの回収をするか、だけど」

「なら陽動の方が楽といえば楽だが、その際あっちもバカじゃないだろ?」

「まぁそうだね。一応アースラは動かない時期だけど、他の隊も動いてるし。一番手っ取り早いのは、本当に反応させない状態で三人で回収なんだけど」

 

 今の君みたいに。そう付け足した斉原に、俺は平然と答えた。

 

「だったら俺一人ですべて回収もしてくればいいんじゃないのか?」

「君に『闇の書』いや、『夜天の書』は扱えないよ。ロストロギアなんだから」

「……は?」

 

 ロストロギア、という言葉に俺は間の抜けた声を出した。

 それに集まる奇異な視線。

 俺の表情に何かを察したのか、斉原はこう聞いてきた。

 

「知らなかったのかい?」

「まぁな。しかし……ロストロギア、か」

 

 本来は忘却神具なのだが、それを教えたところで混乱するだろうからそのまま通すことにする。

 しかし書が忘却神具か……一体誰の忘れ物がこんなところに巡ってきたんだ?

 可能ならば返さないといけない。そう決意しながら、俺は斉原の声を無視して色々なケースを考え提案した。

 

「なぁ斉原」

「何? 結構無視してたけど、何か考えでもあるの?」

「無視されて怒ってるようだが……まぁ見つけた」

「どんな?」

「最初から三人ともステルスを使う。攻撃は俺がやるから、リンカーコア蒐集は二人のどちらかがやり、もう片方は周囲を警戒してもらう。それでどうだ?」

「ステルスって……姿を消すだけだよ?」

「だからだ。お前は知っているだろ? 俺の理不尽(・・・・・)

「どういうことだ? 只者ではないのは分かるが……」

 

 ここで斉原が黙った代わりに、シグナムが予想通りの質問してくる。

 俺は説明するのが面倒だったしこれからしばらく一緒にいるのだから見てもらった方が早いと思い、「百聞は一見にしかずだ。その場に行ってくれれば証明できる」と答えたのだが、シグナムは不敵に笑って「それより簡単な方法がある」と言い出した。

 

 少しばかり嫌な予感がしたのだが、それが当たった。

 

「私と戦え。ベルガの騎士である私に勝てれば、その証拠になる」

「そうか…」

「それでいいだろうか雄樹」

「あー……うん」

「いいのか」

「実力を知ってもらえれば仲違いもないだろうし」

「あっそ」

 

 もはやこちらの事情は関係ないようなので「どこでやる?」と訊いた瞬間、俺達がいた空間が変わった。

 

「「「!?」」」

「……」

 

 突然の事に警戒する斉原、シグナム、シャマル。俺はというと、よくもまぁジャストタイミングで飛ばすなぁと思っていた。

 ここは斉原の家のリビングだった。だが今は広大な荒野の中。

 木々は枯れているものしかなく、草は根の力が弱いからか風に飛ばされ、その風に砂埃が舞う。

 見渡す限り荒野な上に砂嵐となっているせいか視界が悪い。しかも俺達の周りに何の反応もない。

 辺りを見渡しながらシグナムは呟いた。

 

「我々はまだ魔法を使用していない……なのになぜ」

 

 他の二人を見ると、斉原はボクシングでもやっていたのか拳を構え、シャマルは来た時から持っていた本を抱きしめながら警戒していた。

 やっぱり慣れてないか…そう頭を掻きながら思った俺は、、身近に落ちていた石ころを一つ拾い上へ投げる。

 上の方が強風だったからか、大した力も入れないで投げた石は勢いよく飛んでいく。

 となると空中戦は無謀だな。そう思いながら、俺は拳を鳴らしながらシグナムへ言った。

 

「丁度いいフィールドじゃないか。誰だか知らねェが、感謝だな」

「……! まさか、ここでやるというのか?」

「ああ」

 

 俺が頷くと、すぐさま斉原が待ったをかけた。

 

「ここじゃなくてもいいでしょ!?」

「悪いが。ここでやらないと帰れない(・・・・)

「え?」

「どういうことですか?」

 

 呆ける斉原と首を傾げるシャマルを無視し、俺はシグナムへ言い放つ。

 

「ここで決闘だ。そして理解しろ。俺という化け物の一端を」

 

 風が俺達を囲むように流れ始める。作為的なものを感じて戸惑う三人を無視し、俺はつけていたナイトメアに「魔力解放F。セットアップ、ナイトメア」といってすぐさま展開する。

 見慣れた銀の太刀。背丈を越えながらも幾度となく使った愛刀。ここまではいい。

 だが、バリアジャケットが変化していたことに俺自身が驚いた。

 なぜなら、左右の手の甲から肘辺りまで覆うような白いガントレット、足は同じく白いレギンスで膝まで覆われている。

 首から口を少し覆うように灰色のマフラーが巻かれ、大事な部分である残りは銀鼠色の死に装束のみ。

 

 ……大分変わったな。 

 右手で握っている太刀を上へ放り投げてそんなことを思っていると、シグナムがどうとらえたのか「それでやる気か?」と訊いてきた。

 俺は太刀をキャッチして視線をシグナムへ固定し、「あぁ」と短く返事をする。

 

「…そうか……セットアップ、レヴァンテイン」

『了解しました』

「シグナム! 本気なの!?」

 

 シグナムが準備をしたことに対し驚いたのかシャマルが叫ぶ。しかし、シグナムはもうすでに展開を終わらせていた。

 

 ようやく舞台が整ったようだと思い、俺は自然体のまま腰に差している剣を抜いて構えているシグナムに軽い口調で投げかけた。

 

「初手はどうぞ。動いたと思ったら始めるか」

「…随分な自信だな。その魔力もその表れか?」

「魔力なしでも勝てる」

「……そうか」

 

 不意に顔が下を向く。構える姿勢が低くなり、距離を詰めて突き刺そうとしてるのがありありと見て取れる。

 しかしながらそんな甘いことではないだろう。分かりやすい構えをこの場で取っている場合の大抵はブラフだったりする。

 まぁ関係がないが。

 

 互いの距離は四メートルほど。一歩でも動けばそれで始まる。

 もっとも、それ以外でも始まるが。

 

 囲むように吹いている風が、まるで監獄に閉じ込められたような感じにさせる。

 前世で一回閉じ込められたなぁとぼんやり思いだしていると、シグナムが視線の先から消えていた。

 あぁ跳んだのか。魔力を探してどこにいるか分かった俺は、普通に見上げる。

 そこには確かにシグナムがいた。何を使ったのか知らないが、彼女自身の魔力量より大きい炎の形をした魔力を纏った剣を振り上げて。

 

 結構な威力になりそうだと思いながら、俺は太刀の持ち方を変えてシグナムめがけ、現段階の本気で投げた。

 Fランクの魔力量全てが全力を放とうとする体を支えるように張り巡らされていくのが分かる。それにより、体に傷はつかず音速はくだらないだろう速度で太刀が飛び、気付いたかどうかわからないがシグナムに直撃。

 そのまま風の壁に飲み込まれ流された…と思いきや、シグナムが使っていた剣が真上から落ちてきたと同時に、シグナムと刺さっているらしい太刀が俺の後ろに流れてきた。

 

「シグナム!」

 

 シャマルがあわてて駆け寄る。俺はバリアジャケットを解除して太刀を消し、息を吐いてから魔力封印をナイトメアに指示する。

 視線を後ろへ向けると、すでにそこは斉原のリビング。

 

「え?」

「! シグナム、太刀に貫かれたんじゃないの?」

「そうだが…。!? 傷がないだと!?」

 

 斉原は事態が呑み込めないのか呆け、シャマルはシグナムの傷がないことに驚き、そのシグナムも刺さっていた場所のあたりを触りながら驚いていた。

 唯一全てを理解している俺は、そんな三人に対し「落ち着け」と注意してから混乱しているらしいシグナムに「これで分かったか?」と問いかけると、一気に不満げな顔を作りながらも不承不承といった感じで「…ああ」と答えた。

 

「これで実力は証明された。八神を助けるのだったら、さっさとした方がいいんじゃないか? 帰りが遅いと怪しまれるぞ?」

「……え、えぇ。そうね」

「…あぁ、そうだな」

 

 何かが釈然としないという二人だったが、助けたいという気持ちで思考を切り替えたらしい。

 ここら辺は戦闘慣れしている証拠だなと思いながら、「場所はもう決めているのか?」とふと疑問に思ったことを口にした。

 その疑問に、シグナムは答えた。

 

「あぁ。管轄外の無人世界だ」

「ふ~ん」

「それじゃ、行きますよ二人とも」

「「分かった」」

 

 いつの間にか準備をしていたらしいシャマルの呼びかけに俺達は応じ、斉原が見送る中世界を跳んだ。

 

 

 

 

 

「今回はここ。寒いだろうけど」

「心配しなくてもいいですよ。氷点下でもいつも通りの動きが出来る様に鍛えてはありますから」

「そ、そう」

 

 しれっと心配は無用だと言ったら、シャマルさんが引いた。

 おかしなことを言ったわけじゃないんだがと思いつつ、俺はこの吹雪いている世界を見渡す。

 

 体感的にはマイナス10℃位だろうか。極寒の地(しかも神様が作った舞台)で戦った記憶が体に刻まれているせいか、そんなに寒いと思えない。

 視界も悪いなと思いながら、俺は周囲を警戒しているシグナムとシャマルを左右に突き飛ばして上空へ跳ぶ。

 

 そこに来たのは、吹雪とは違う白銀の風。方向性を持ったその風は、俺達がいた場所の直線状を突き抜け、通った後に氷が出来た。

 その上に着地した俺は、突如として現れた巨体を見て感心する。

 

「ほぅ。白い西洋竜か」

「GRUUU!」

 

 俺を見て警戒しているのか、唸るだけで宙に浮いている白い竜。

 首を回して俺も迎撃準備を整えていると、戻ってきたシグナムが竜を見て剣を構え、シャマルは本を抱きしめながら気を引き締めていた。

 

「助かった長嶋」

「ところで、どうやってリンカーコアを回収するんだ?」

「あぁそれは…」

「来るわ!」

「GYAAA!!」

 

 シャマルさんの警告と同時に竜は咆哮。あまりの音量にうるさいと思いながら、俺は竜が何かする前に距離を詰めて跳び、その速度のまま左拳を竜の腹にぶち込む。

 ドスン! と吹雪の音に負けない衝撃音が響き渡る。

 

「GYA,AAA……!」

「ちっ。体を労わろうと力を出さなかったせいで殺し損ねたか」

 

 腹部からの衝撃のせいで竜は叫ばないうちにぐらりと力なく落ち、俺はその体の上に乗って圧死を避けた。

 

「魔力を使わないでアレを気絶させるほどの一撃を放つ…だと!?」

「信じられない…」

 

 竜から降りて二人がいる場所へ向かうと、そんなことを言われ驚かれた。

 新鮮な反応でも何でもないので特に反応せず、俺は淡々と聞いた。

 

「あのまま放置していいのか? リンカーコアを蒐集するには」

 

 俺の発言に現実に戻ってきたのかシャマルさんは我に返り、抱きしめていた本を開いて何やら呟く。

 するとシャマルさんの目の前に穴が開き、そこに手を突っ込んだら気絶していた竜から透明な球体が手を伴って現れ、次の瞬間シャマルさんの手にはその透明な球体があった。

 

 これがリンカーコアか。こういうのが俺達の中にもあるのだろうか。

 

 そんな感想を抱きながらそれを本に入れるのを見守っていると、シグナムが「長嶋! 後ろだ!!」と叫んだので、俺は迫りくる相手の左足の裏を見据えて正拳突きで弾き返す。

 驚いているらしい相手を確認せずに俺は弾いた左足に飛びつき、全力で地面に叩きつけた。

 響き渡る地響き。木霊して消える悲鳴。全力に耐えきれなくなったのか、痛む両腕。

 

 改めて相手を確認してみると、これまた同じ白い竜。

 縄張りにでも入っていたのだろうかと他人事のように考えながら魔力を解放して回復させていると、シグナムが「大したものだな。魔力もなしに巨体を圧倒するか」と近づきながら賞賛してきたので、俺は普通に動くようになった腕の調子を確かめながら魔力を封印してこう返した。

 

「蒐集はもういいのか?」

「あぁ。長嶋のホワイト・ドラゴン二体の魔力が高くてな。今日の目標ページは達成した」

「そうか」

「今日は助かった」

 

 頭を下げるシグナムに、俺はただ一言「気にするな」とだけ言った。

 だがあちらも食い下がる。

 

「騎士として何か礼がしたい。被害もなく終えられたのだから」

「俺はお前達の頼みではなく斉原の頼みとしてきた。結果はどうあれ助けたと思っていない」

「結果的に助けられたし、先程の非礼も詫びたい」

「今詫びてもらったから結構」

「…どうしても嫌だというのか」

「あ「そんなことより帰りますよ、二人とも」

 

 タイミングよくシャマルさんが割り込んできたのでそれ以上シグナムに何も言わず頷いて戻った。

 戻った時シグナムの顔が何やら不満げだったが俺はスルーし、斉原に「終わったから帰るぞ」と告げて家を出た。




次は闇の書・本編へ続きます。

ご愛読ありがとうございます。
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