世にも不思議な転生者   作:末吉

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闇の書本編、始動。


闇の書事件・本編
68:予見された始まり


 あれからちょくちょくシグナム達の手伝いをしたり、高町達を鍛えたり、霧島に泣きつかれて宿題手伝ったり、如月に助っ人で呼ばれ社会人の草野球チームで無双したり、バニングスにそのままテンガロンハットあげたり(上機嫌だった)、ヴィータにリンカーコア蒐集時に説教したりして夏休みを過ごした。

 海だかプールだかは結局行ってないし、水着なんて買って一度も使わなかった。夏祭りなんて巡査のせいで見回りの手伝いみたいになったし、花火も見れなかった。

 

 で、学校が始まって宿題をすべて提出して今回まともだったことに驚かれ、町内掃除なるものでひと騒動あった九月、全競技参加不可になった運動会があった十月、学習発表会では一人理事長の指示で裏方に徹した十一月が過ぎて十二月。

 

 その間も時たま管理局の三人を鍛えたり、リンカーコアを回収したりしたが、後者の方は斉原から十分なページが集まったから大丈夫だということで、九月の下旬に俺は降りた。

 

 三人の成長度に関しては……まぁ普通だろうか。少しばかり厳しいだろう課題をやらせているので、成長は微々たるものだろうから自覚はしづらいだろうけど。

 

 それでもテスタロッサは俺の全開の半分ぐらいの動きにはついてこられるようになったし(魔力なし)、ハラオウンはトリックスターのスサノオのお蔭か奇抜な魔法の仕掛け方をするようになった。

 

 高町はそうだな……体力もついて精神もタフになったおかげか集中力が増したな。魔力弾一つ一つのコントロールも良くなってきているし、彼女の最強であるディバインバスターの発射速度と時間がレアスキルのお蔭で改善されている。それでも対蛟竜戦で俺が放った虚栄霧散よりは遅いとのこと。

 

 あの時ははっきりいってキレてたから気にしなかったんだが、放った場所から直線状の島が消え、海がしばらく割れたと聞かされた時は、スサノオに目を丸くされた。

 

 そんなことより現在は十二月。十月下旬頃には「これで人を襲わずに済む」と笑顔で斉原が言っていたのであいつが語った原作は起きないだろう。

 

 ――――そう、思っていた。

 

 ナイトメアに言われると同時に知ってる魔力たちが激突しているのを感じるまでは。

 

 

 

 

 

 ――――事の起こりは数分前。

 

 最近ナイトメアをつけて外出することが多くなり、今回もその例に漏れない状態。

 シャンプーを買い忘れたことに気付いた俺は、チラシで安かったところまで足を運んでいた(元々そこで買う予定だったが、巡査に見つかり強制帰宅させられた)。

 その途中、買い物帰りのシャマルとすれ違ったが何やら急いでいる様子だったので声もかけずにそのままスルー。

 

 ……した結果、上記のとおり魔力の激突と結界が張られた。

 

 ナイトメアが咄嗟に魔力を最低限解放し結界からはじき出されなかった俺は、ナイトメアに問いかけた。

 

「一体どうなってる? 今月は闇の書やら夜天の書やらの騒動が起こるはずだった(・・・)月じゃないのか?」

『わかりません。ただこの感じは高町さんと……」

「――――ヴィータか」

 

 何やら破砕音やら衝撃音が聞こえるが、ここからじゃ遠いせいか小さい。

 一体何がどうなっているか調べないといけない。そう考えた俺は、音が聞こえる方向と風に乗っているコンクリの粉の匂いを辿ることにした。

 無論、ビルの壁を走って屋上へ行き、そこから屋上へ跳び移りながら。

 

 

 

 

「にしてもまた広域な結界張ったな」

『何かを探していたんじゃないですか?』

「だとすると……まさか」

『マスター?』

 

 ヴィータ…高町…十二月……そして、結界。

 現状知りうる情報全てを統合した結果、俺は現実にはありえないはずであろう結論を導き出してしまった。

 いや、ありえないわけではなかったのかもしれない。ただ、その可能性が塵ほどのものだったから誰も想像、いや俺が想像できなかった。

 つまりこの原因を作ったのは――――――

 

「くそっ!」

『マスター!?』

 

 やるせない気持ちに俺の速度が上がり、一刻も早く現場にたどり着かないといけないという気持ちが支配する。

 クソックソックソッ!! また俺は後手に回るしかできなかった! どうしていつもこうなんだ…!

 焦る気持ちにスピードの加減を忘れ、天井知らずに加速する体。

 思わず歯を食いしばる。肉体が悲鳴を上げ、神経が切れる幻聴が聞こえ、痛みが走りだすが、それらすべてを我慢するために。

 

 そして、斉原の約束を守るため。

 ――――人に迷惑をかけずにことを終わらせたい。そんな約束を守るため、俺は途中見つけたシャマルさんを体当たりでぶっ飛ばし、そのままの勢いでビルの屋上を跳んでいき、そして――――

 

「くそっ。遅かったか……!」

 

 ――見てしまった。ヴィータやザフィーラ、それとシグナムが、高町とアルフとテスタロッサとユーノとすでに戦っているところを。

 魔法形式が違うと力量にも差が出るのだろうか。夏休み中にシグナムに訊いた魔法形式を思い出しながら、場違いな考えを抱いてしまう。

 ベルガ式とミッドチルダ式。この二つが現存する魔法術式らしいのだが、今は関係ないな。

 

 俺は拳を強く握って深呼吸をし、冷静にしてから親しい奴が聞けばぞっとするような声でつぶやいた。

 

「――セットアップ、ナイトメア」

『了解しました。……! な、なんで!?』

 

 覆う魔力が自然と大きくなる。まるで蓋がずれて、中身が漏れ出すかのように。

 それとは別にバリアジャケットの展開が完了。前回と同じ格好だが、色が黒に近い灰色になっている。

 そんなことを考えてる暇がない俺は、太刀を握っておもむろに一歩踏み出し全力で跳躍。その速度はロケットに比肩するかもしれない。

 

 飛び上がった時に最初に目撃したのはアルフとザフィーラだ。

 俺はそのままの速度でアルフとザフィーラの間を駆け、風圧で二人とも吹き飛ばす。

 その次にヴィータを見つけ、桃色のレーザーが当たりそうだったので首根っこ掴んで回避させる。

 残るシグナムは……っと。面倒な場所に居やがる。

 一回転して勢いを殺し宙に浮きながらそんなことを思っていると、ヴィータが「放せ長嶋!」と駄々をこねるので文字通り放してから言い放つ。

 

「ページの魔力が消えて焦って回収してるんだろ」

「!! な、なぜそれを知ってるんだ!」

「こんな馬鹿騒ぎを起こしたら気付きたくなくても気付く……なぁ」

「うるせぇ! 今はお前に構ってる場合じゃないんだ! 一ページでも取り戻さねぇと!!」

「…黙れよ(・・・)

「ヒィ!」

 

 思わず殺気を放ってしまい、それに充てられたのかヴィータが怯む。

 やりすぎたと思えない今の俺は、淡々と指示だけ出した。

 

「シャマルさんはあっち側のビルの屋上で気絶してるはずだから、ザフィーラと共にそこへ行け。俺はあの四人を徹底的に叩き潰してからシグナムと共に合流する」

「……な、なんでだよ」

「ん?」

「お前は一度降りたはずだろ。なのになぜ……」

「己の不甲斐無さに憤りを感じているため」

「え?」

 

 ヴィータは俺の答えに呆けたが、これ以上問答をする暇すらもったいないと思ったので何も言わず砲撃が発射された場所の近くまで飛ぶ。

 そこにいたのは高町。バリアジャケットもレイジングハートもボロボロな状態で、上にいる俺を見て驚いていた。

 

 信じられない、そんなことありえないという顔で。

 

 だからなのか、彼女は俺を見て叫んだ。

 

「長嶋君!? どうして!!?」

「――これが、現実だ」

 

 思わずつぶやいてしまった言葉。何かに言い訳するように発言した言葉。

 小声だったからおそらく高町には聞こえていないだろう。おそらく、その方がいい。

 なぜその方がいいのかを考えずに俺は、昔通りの冷酷な声で「銃弾千発。雨のように降り注げ」と命令して背を向ける。

 その時にはすでにFランクの魔力が込められた銃弾千発が、一斉に高町がいたビルに降り注いでいた。

 悲鳴は降り注ぐ銃弾の雨によってかき消され、ビルが崩壊する音がけたたましい。

 

 高町の安否などを確認する気がなかった俺は、そのままアルフ達が戦っていた場所付近へ飛ぶ。

 

「あんた…! 一体どういうつもりだい……!!」

「お前に答える義理はない」

「ふざけんな!」

 

 ザフィーラを探しに戻ってきたらしいアルフ。吹き飛ばされてどこかに激突したのか体のいたるところが傷だらけだが、それでも俺に向かってきた。

 が、はっきり言って取るにたらな過ぎる相手。死なないように相手の腕を折り、死なないように顎を蹴り飛ばす。

 それと同時に俺は踵を返し最後――シグナムの方へ向かった。ビルに突っ込んだのか盛大な破壊音が聞こえたが、俺は興味がなかった。

 

 シグナム達の場所は分かっていたので全力だった俺は十秒ぐらいあれば着き、そのままの速度でその場を二秒もかからず鎮圧。

 

 具体的に言うとボロボロのテスタロッサの目の前に踵落としを入れて衝撃で吹き飛ばし、崩れゆく床の状態でユーノに礫を当てて意識を失わさせ、割り込んできたことに対する怒りを殺気で抑えさせてシグナムと一緒に逃亡。

 その時巨大な紫の雷が降ってきたが、銃弾一発で消し飛ばした。

 

 

 

 ――――こうして、斉原が秘密裏に処理しようとした事件が開始された。




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