世にも不思議な転生者   作:末吉

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幕間なしでもうすぐ七十話。その八割が日常というもので(おそらく)。
ともあれ闇の書事件開始の幕開けの続きになります


69:事情

 この世界には二通りの術式が存在するらしい。

 夏休み中にシグナムからそんなことを聞いた。

 きっかけは何だったか……あぁそうだ。シグナムが再戦するとか言ってくるもんだから同じようにやった時だ。

 ワンサイドゲームであっさり終わった勝負の後、俺は『そういえばあのカートリッジってなんだ?』と訊いた時に教えてもらったんだ。

 

 まぁそれはおいおい説明するとして。

 

 不意に思い出した俺はそれをすぐに振り払い、現状を確認する。

 

 現在追手らしい存在はなし。シャマルさんをブッ飛ばした屋上でヴィータに集まるよう指示し、ヴォルケンリッター全員が集合したことになる。

 とりあえず自分の頭を一発小突いて平常運転にし(バリアジャケットは当然解除している)、何やら怖いものを見る感じで集まる視線を受けながら、俺は切り出した。

 

「で? 理由は(・・・)分かって(・・・・)るのか(・・・)?」

「「「!!?」」」

 

 俺の言葉が何を指しているのか理解したのだろう。咄嗟に三人は構えたが、ヴィータの「また手伝ってくれるんだとよ」という言葉で全員が少しばかり警戒を緩めた。

 それを見て改めて質問する。

 

「で? ページから魔力が消えた理由は分かってるのか?」

「……分からない。十一月下旬になって突然全ページが消えた」

「……さっき浮かんだ予想が当たるとはな…」

 

 シグナムの答えに俺は思わず歯軋りをし両手を強く握る。

 が、後悔してばかりはいられない。ここから先の事を考えなくては。

 そう決意し、俺はシャマルさんに「今必要だと思われるページ数は?」と質問する。

 彼女はこの中ではサポート的な役割だ。だから闇の書を持っている割合が高く、色々と試算できる。

 咄嗟に振られて少し慌てた様子を見せながら、彼女は答えた。

 

「三割ぐらいでしょうか」

「そうか…」

 

 どのぐらいのページだかわからないな……まぁいいか。

 これから行うことに対し覚悟を決めた俺は、四人を見まわして一言告げた。

 

「俺のを持って行け」

「「「「!!?」」」」

 

 息をのむ四人。どうやら言っている意味を理解したらしい。

 少しして、シグナムが恐る恐る聞いてきた。

 

「……先程あんなに他人から取るのを嫌がっていたではないか」

「自分だったら別にどうだっていい。魔法が一生使えなくなっても、その道がつぶれただけで他にも選択肢はあるし」

「……」

「それに、八神を助けたいんだろ? 俺だってその気持ちは一緒だ」

「長嶋」

「ん?」

「…………いいんだな?」

 

 少しためた質問に、俺は頷いて即答する。

 本音を言うなら、これは俺のけじめみたいなものだ。もちろんこんなことで済まされないとは思うが、それでもやらないよりましだと考えている。

 

 俺をじっとシグナムが質問の返答後も見てくるので見つめ返していると、ちゃんと決意が伝わったのか「シャマル。頼む」と短く指示を出した。

 

 見つめられる中リンカーコアが抜き取られる。

 感覚としては、自分の中に大きな穴が突如開く感じだろうか。それぐらいの喪失感がわが身を襲う。

 だが別に、どうということはない。

 普段から魔力を封印して生活しているのだ。あまり普段と大差なく動ける。

 

 抜き取られた後普通に屈伸しながらそう考察していると、シャマルさんが声を上げて驚いていた。

 これにはたまらず俺達も振り向く。

 代表して、ヴィータが聞いた。

 

「どうしたんだよシャマル?」

「……長嶋君一人で、ページの半分(・・)が埋まったの」

「ふーん」

「……ん?」

「ん?」

「…待てシャマル。半分(・・)、だと?」

「え、えぇ」

 

 上から順にヴィータ、シャマルさん、俺、ザフィーラさん、シグナム、ザフィーラさん、シャマルさん。

 ちなみに俺以外全員が固まってしまった。

 

 俺は自分の魔力量の限界を知らない。というのも使い切った覚えがないからで、魔力を使わなくても大体の奴らを圧倒できるし、してる。

 だから基本的に魔力恩恵に対してそれほど実感がないし、底を見た記憶もない。

 全魔力を解放した状態だったのだが、ページの半分が多いのか少ないのか判断が出来ない。

 

 ……まぁ多いのだろう。彼女達の驚きようを見ると。

 ならば大丈夫かと結論付け、「これでまたしばらくは大丈夫だろ。今後は斉原にでも言って何とかしろ。俺はおそらくお前達とは一緒に戦えん」と助言をして屋上から飛び降りた。

 

「よっと」

 

 路地裏に飛び降りた俺は普通に表通りに出る。

 そこはいつもと変わらぬ風景。つい先程までビルが崩壊していたことなど嘘のような周囲。

 そういえば俺シャンプー買いに来たんだったな。目的を思い出した俺は、目的地へと駈け出した。

 

 

 

「何とか買えたか……閉まる直前だったが」

 

 ついつい漏れる息と言葉。

 現在帰宅の一途をたどっている。というか、シャンプーを買って帰宅以外特になにもない。

 八神の家へ行く理由もないし、あの場に留まって管理局に捕まる理由もない。

 さっさと帰って風呂に入って寝る。学校の登校に関しては、朝起きたら考える。

 

 高町が戻ってきたら真っ先にうちに来そうだと予想をつけながら街灯がまばらな道を歩いていると、仮面をつけているローブ姿二人が目の前に立ちふさがった。

 

知ってたさ(・・・・・)。後をつけてきたことぐらい。気配の消し方が雑だったからな」

「「なに!?」」

 

 何か言われる前に気付いていたと教えると、二人は案の定驚いた。

 まぁ常人には気付かれない消し方だっただろう。だが、魔力を抑えてない時点で存在は丸わかりである。魔力と気配、その両方を自然に溶け込ませない限り、俺という化け物は分かってしまうのだ。

 とりあえずさっさとこいつら撒こうかと考えながら、一応何の用だか聞いてみた。

 

「リンカーコアをとられた俺に何か用か?」

「用があるのは彼女達(・・・)じゃない。()だ」

「ん?」

 

 聞き覚えのある声で違和感のある呼称を使っていたので、首を傾げながら声がした方へ体を向ける。

 そこにいたのは天上。の、はずなのだが……違和感がある。

 

お前は誰だ(・・・・・)? 学校で会う天上じゃないだろ」

「まぁ違うな。いつも学校で会っている俺とは……ていうか、俺の事分からないわけ?」

 

 学校で見る笑い顔より数段酷く醜く笑う天上。

 その顔に本当に記憶がないのだが……なぜだか嫌な予感がした。

 

 こいつの正体が(・・・・・・・)この事件の黒幕(・・・・・・・)な感じがして。

 

 俺が警戒レベルを一気に引き上げて拳を構えると、そいつは気にした様子もなく逆に天上の顔に似合わない下種な笑顔を作ってから、あっさりと(・・・・・)自分の正体を(・・・・・・)ばらした(・・・・)

 

「前世でお前を銃殺した悪魔だよ! 西洋悪魔。いや、名前を言えばわかるか? なぁ? 永劫輪廻尊の器(・・・・・・・)

「!? テメェは……!」

「おう! 俺は……!!」

「……誰だ?」

 

 俺が本気で首を傾げると、天上に憑りついているらしい西洋悪魔は盛大にこけた。

 いや、本気でお前のことなぞ知らんのだが。お前に殺されたことぐらいしかわからないんだが。

 腕を組んで本気で記憶の中を捜査していると、いい加減我慢の限界だったのか天上(こっちで今はいいか)は顔を上げ、目を細めて命令した(・・・・)

 

「殺せ」

 

 途端に背後から迫る攻撃。その速度には少し驚くが、俺を殺すほどではない。

 右へステップを踏んで攻撃を回避。

 そのまま壁を蹴って飛び上がり、俺がいないことに驚いている二人のうちの一人の頭を思いっきり殴った。

 

 思いっきりといっても本気ではない。精々勢いに任せた殴打である。

 それでも恐ろしいことに、殴られていない人までも一緒に壁に激突した。

 ……うし。これで無力化でき

 

「!?」

「ほぅ。避けたか」

 

 着地する少し前に地面から生えた黒い剣が勢いよく脇腹めがけて発射されるのが右目の端に映ったので、俺は体をひねりギリギリでかわして着地して天上へ体を向ける。

 避けたことに感心していた天上だったが、すぐに獰猛な笑顔に変わり

 

「が、甘い」

「ぐはっ」

 

 後ろから先端の尖った黒い何かに突き刺された。

 心臓ではなく内臓の部分が幸いしたのだろうか。服にジワリと血がにじんでいたり、口にこみ上げてきた血を吐き出したりして、なんとか生き永らえている。

 が、いきなりの大量出血。体のふらつきや意識の希薄化、体力低下による生存確率の低下を伴い、俺の体はいう事がきかない状態で、睨むことしかできなかった。

 

 それを見た天上は「冥土の土産に教えてやろうかぁ?」と片膝をついて何とか倒れないようにしている俺と同じ体勢・視線でそういうと、突き刺さっていた何かが消えたのと同時に人間とは思えない力で殴られて壁に激突し、意識が完全に途切れる少し前にその名を聞いた。

 

 

「俺の名前はマモン。強欲を司る、お前を二度殺した悪魔だ!」

 

 

 ――――悪魔らしく高笑いを最後に、俺の意識は途切れた。




ご愛読ありがとうございます。せっせと更新できるように頑張ります。
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