世にも不思議な転生者   作:末吉

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初めてのフェイトさん視点。というより、大智と雄樹以外の視点がぶれてる気がしてならない。


71:転校少女とその頃

*フェイト・テスタロッサ視点

 

「は、初めまして。フェイト・テスタロッサっていいます。これからよろしくお願いします」

 

 初めて同い年の人たちを見渡して緊張しながらも、ちゃんと自己紹介して頭を下げる。

 その時に一斉に男の人たちのほとんどが大声を上げたから、少し怖かった。

 でも少し前に感じたあれよりは怖くない。

 

 彼――長嶋大智君の割り込んできた気迫と、表情よりは。

 

 改めて初めまして。管理局嘱託員、フェイト・テスタロッサです。

 お母さんの管理局入局と同時に、私も嘱託員として働いています。

 今は、なのはのリンカーコアが奪われそうになった事件の捜査としてアースラ艦隊のメンバーのほとんどがここ、海鳴市に来ています。

 

 リンカーコアを必要とする闇の書に関する調査と、私達の前にどういう理由なのか分からないけど立ちふさがった彼に関する調査。

 前者の方が大事なのですが、後者の方が気になっています。

 なぜなら、

 

「えー長嶋君だけど、彼の父方の実家の方が危篤らしくて看病しないといけないから、終業式にも出れないそうです」

 

 こんな先生の言葉を聞いてしまったのだから。

 長嶋君が欠席と聞いて、がっかりする人も少なくないのが分かる。なのはや、なのはの友達のすずかとアリサ、それに男子数人と女子数人。

 一人だけ表情を変えない男の人――斉原君がいたけど、何か知っているのかもしれない。

 早くも手掛かりが見つかったかもしれないと思いながら、私は先生が指定した席に座りました。

 

 隣は、空席でした。

 

 

 この学校への転校は私と姉さんの二人だけ。クロノ君は管理局としての仕事を優先するらしく、家に残りました。

 住民票というものが、私達が拠点とするアパートの一室を借りた時に送られました。差出人は不明。

 良く分かりませんでしたが、リンディさんや母さんが『これで不審者だと思われる心配ない』と言っていたので、無くてはいけないものなのでしょう。

 話がそれました。

 まぁ色々な理由があってこうしてこの学校に通うことになったのですが、本当に緊張しています。姉さんは隣のクラスにいますけど。

 

 今は、クラスの皆さんに囲まれていますし。

 

 次々とくる質問にどう答えたらいいのかわかりません。口下手な私にとって、矢継ぎ早で来られるのは恐ろしいとしか。

 こういう時どうすればいいのか分からなくてオロオロしていると、アリサが助け舟を出してくれました。

 

 そのおかげで一人一人の質問に答えられましたが、最後に現れたすごい整った顔をしてる男の子――天上力也君からは、自慢話と私の隣の席――長嶋君の悪口だけを聞かされました。

 思わず反論しそうになりましたが、彼の事をあまりよく知らない上に転校生なのに知っているのが不自然だと思い我慢することにしました。

 その天上君からうっすらと気持ち悪い魔力がにじみ出ていたのを去り際に感じましたが、一瞬でしたのでスルーしました。

 

 

 お昼休み。私はなのはたちに誘われて屋上で一緒に昼食です。

 が、そこにはなぜか斉原君と同じクラスの男の人――確かきり、きりなんたら君と彼にすごいべったりとくっついている女の子と姉さんもいました。

 

「遅いよ、フェイト」

「どうして姉さんも?」

「どうしてって、私を除け者にする気?」

「そ、そういう訳じゃないけど……というか、斉原君も同じクラスだったんだ」

「あれ? 斉原君も知り合いなの?」

「え? ……あ」

 

 すずかの指摘で私は思い出しました。

 一時期斉原君が管理局にいた頃に面識があったため声をかけましたが、この場では初対面を装わなければ不思議がられる。

 しまったと思い慌ててなのはを見ると、斉原君が弁当箱を開けて先に食べながら「そんなことより僕や元一を呼んだ理由は…うすうす気づいてるから先に答えるけど、僕達だって知らない。隣の高町さんが知らないのに、男友達の僕達が知るわけないよ」とこちらを見ずに言い切りました。

 

 あまりにあっさりとした答えに、私は思わず斉原君の方を向いて「じゃぁどうして朝は表情を変えなかったの?」と言ってしまいました。

 静まり返った周囲をよそに、斉原君は少しして弁当箱を戻して立ち上がり、そのまま戻ってしまいました。

 私の横を通り過ぎる際に、「彼が生きてる(・・・・・・)()知ってるから(・・・・・・)」と耳打ちして。

 

「……え?」

 

 思わず斉原君へ振り返る。その時には「誘ってもらったけど、悪いね。変な空気にさせて。それじゃ教室にいるから」と言ってすまなそうに笑う彼が居ました。

 

「あ、おい!」

 

 きりなんとか君も追いかけ、べったりしていた少女も追いかけてしまいました。

 残された私達。

 最初に口を開いたのは、アリサでした。

 

「もう、何なのアレ! 長嶋のがうつったの!?」

「ア、アリサちゃん。落ち着いてよ」

「でも不思議だね。斉原君があんなこと言うのって」

「そうなの?」

 

 すずかの言葉に首を傾げる姉さん。

 その言葉に頷きながら、すずかは説明してくれました。

 

「だって斉原君、いつもあんな風にそそくさと外れて行かないもん。長嶋君と話すときは私達じゃ少しわからない、難しい話を笑顔でよくしてるし」

「いつもは教室で食べてるから話の断片を聞くけど、本当に同い年なのか疑いたくなるんだよ」

「さっきのだって自分がここにいた理由をすぐ当てたしね。その割にはテストの成績私より悪いけど」

「不思議な人だねー長嶋君もそうだけど」

「そうだね、姉さん」

 

 私の知る斉原君は頭がよくて罠にはめるのがうまいぐらいなので、学校ではうまく隠してるようです。

 

 これで一区切りついたと思ったらしく、アリサが「それじゃ食べましょう?」と促して昼食が始まりました。

 食べている間の話題は、天上君の事だったり(おもに悪口で)学校の事だったり姉さんのクラスだったり。

 でも、一番の話題は彼でした。

 

「にしても大変ね長嶋も。あの両親が仕事だからって実家戻っているんでしょ?」

「だよね。また海外へ仕事しなくちゃならなかったんだもんね」

「……うん。そうだね」

「? どうしたのなのは。あいつとなんかあった?」

「べ、別にないよ!」

「そうなの? ……でも意外だったよね。長嶋君がしばらく学校に来れないって聞いて残念そうにしてる人がいたのは」

「すずかってたまにひどいこと言うわね…まぁその通りなんだけど。最近じゃあいつ、結構クラスメイトと仲良くしてたみたいだし。運動会の時はなのはのこと指導してるの見て、クラスの女子が教わりに行ったわよね」

「あ、あの時はクラスの足を引っ張りたくなかったから…!」

「顔、赤いよ?」

「ア、アリシアちゃん!?」

 

 姉さんの一言でますます顔を赤くするなのは。その姿に可愛いと思いながら、やっぱり長嶋君は不思議な人だと思った。

 

「ま、あいつの武勇伝なんて入学当初からありまくりだけどね。悪口もあるけど、あいつが気にしていないし」

「そうだね。前に長嶋君に訊いたけど、『ただの程度の低いいびり方だろ? なぜそんなのを気にしなければならない?』って聞き返されたし。本当にすごいよね」

「我慢強いねー。わたしだったらすぐに怒っちゃうよ」

「ていうか、無関心なのよねあいつ」

「そうそう。知らない人なんてどうなろうと知ったことじゃないってよく言ってたし」

「でも、なんだかんだで助けてくれたり手伝ってくれるんだよ!」

「「それは知ってるわよ()」」

「もうっ」

 

 膨れるなのはを見て姉さんが笑い、それにつられたのかアリサやすずかも笑い始めました。何がおかしいのか首を傾げた私でしたが、必死になっているなのはを見てクスッと笑ってしまいました。

 

 こうして昼食の時間は過ぎ、放課後になり、一日は過ぎていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次。体全体に薄い膜をはりつけるように」

「…………」

「さすがじゃ。もう細かな調整が出来る様になったようじゃの」

「感覚よりは数字を思い浮かべた方がやりやすい」

「しかし本当に呑み込みが早いの。あれから二週間ぐらい経ってるというのに、一日で一つ目の課題を終わらせ、二日目でお前さんが持ってるほぼ全部のレアスキルの扱い方が…まぁ元々あんまり介入できるものじゃなかったんじゃが、うまくなり、三日目からこうして野生動物相手にハンデありの戦闘するしかなくなるとはのぉ。しかももうやることがなくなるとか」

「俺は帰れないのか?」

「帰さぬよ。まだすべてを話し終えておらんしな」

「……転生者たちの起源と理事長の正体なら聞いたが?」

「まだ現状に至った経緯を教えておらんし、そもそもお前が自分を否定してこの流れに最後まで参加するか否かが分からん」

 

 そういって適当な岩場に座るスサノオ。

 答えにくいそれに対し、俺は首を横に振って「未だわからん」と答え、空を見上げる。

 

 雲一つない澄み切った空。光を遮るものがないので、照りつける光が眩しい。

 きっとこれは精神状態を揶揄しているのではないだろうか。俺のではなく、たとえばそう…高町とか。

 …ん? なぜ思い出したのだろうか。もう縁を切った(・・・・・・・)()思ってるはず(・・・・・・)なのに(・・・)

 自分で思ったことなのに良く分からない。いや、理解しようとする頭が拒絶している、のだろうか。

 

 自分でも良く分からない。それが今の俺の精神状態。

 だから俺はその迷いを無視したいがために、修行をすぐに終わらせた。

 ……そう、考えればいいのだろうか。

 

 手で光を遮りながら空を眺めていると、その姿を見ていたらしいスサノオは不意にこう呟いた。

 

「……さながらお主は、泥沼にはまった、哀れな男よのぉ。自分自身が見えなくなってしまってる」

 

 聞こえた俺は空を眺めながら「あぁそうかもしれない」と答えた。

 ……自分で答えてなんだが、スサノオは心を読んだのだろうか? ふと疑問に思ってしまう。

 

「そんな迷い人のお主にある話をしてやろう」

「は?」

 

 考え事をしていたら急にそう言われ、俺は戸惑う。

 だがお構いなしのスサノオは、ささっと始めてしまった。

 

「ある少年が事故に遭い幽霊となりました。その幽霊は自分で行きたい場所へ行こう計画を邪魔した神様に内心悪口を思いながら、ある世界へ転生する際こう言いました。『僕に彼女達を守る力をください』と。神様はその彼女達を理解し、その少年に力を与えました……と、いうものじゃな」

「…斉原か」

「特定せんでいい。それより重要なのは……力を求めた理由じゃ」

「……迫りくる災厄を払うため。そうじゃないのか?」

「本当にそうかの?」

「何が言いたい」

 

 俺が視線を戻して睨むと、スサノオは肩をすくめて言った。

 

「前世では仲間のため、国のために力を求めたんじゃろ?」

「…知らん」

「なら今世では如何様な理由がある? お主が力を求めるに足る、柱となる理由が」

「…………」

 

 答えられない俺を見て、スサノオはため息をついた後提案した。

 

「この次が最後の修業にしよう。それが終わったのなら、すべてを話しお主の答えを聞くとする」

 

 俺が黙ってうなずくと、スサノオは最後の修業の内容を口にした。

 

「これから一週間ある人物と戦え。そして感じろ。感じられないのなら、お前はもう、死んでも構わんじゃろ」

 

 ――――とてつもなく、厄介なものを。




さて、どうなりますかねー。

ご愛読ありがとうございます。
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