世にも不思議な転生者   作:末吉

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今回は二人の転生者メインです


72:戦場を駆ける転生者たち

*斉原雄樹視点

 

「……まったく。こんなんだったら最初から管理局に手を貸さなければよかった」

 

 ビルの隙間から様子をうかがいながらため息をつく。

 ちょうど結界が張られている外らしく、近くには管理局の人たちが結界を維持していた。

 ということは今、あの中ではヴィータやシグナム達が戦っており、僕と同じようにシャマルがいるのだろう。

 となるとクロノに見つかるのは時間の問題だろうから……やっぱり先に結界を壊そう。

 迅速に壊滅させる。神様が作り直したデバイスを手に、守りたいもののために。

 

「セットアップ、ナイト」

 

 バリアジャケットを小声で展開する。どうせバレているだろうけど見逃されていそうなので、僕はもう遠慮しない。

 展開終了。全身銀色の甲冑姿は変わらなかったけど、盾の大きさが手盾から身の丈ほどでデュエル・シールドになり、銀色のロングソードの柄の部分が細くなっていた。

 とりあえず盾を背中に背負う。そしてロングソードを両手に持ってビルの陰から飛び出し、結界を維持している管理局の一人を柄の部分で殴り飛ばす。

 少し弱くなったっぽいと思いながら、僕は結界に沿いながら走り、柄の部分で一人ずつ殴り飛ばしまくる。

 途中シャマルさんが驚いたように僕を見た気がしたけど、今は結界をぶち壊すのが先だからスルーした。

 

「ぐっ!!」

 

 もうすでに結界は解かれ、高町さんやテスタロッサさんが驚いている。アルフさんはザフィーラと接戦中だからか気付いていない様子。

 とりあえず念話で、ヴォルケンリッターのみんなに逃げられる事を伝えようとした時。

 

「雄樹。フェイトの報告でまさかと思ったけど、君まで関わっていたとはね」

「裏切ってはいないよ。僕はもともと管理局に入らずに、こちらを優先したかったのだから」

「おとなしく全てを吐いてくれると助かるんだけどね」

「残念ながら。僕にも守りたいものが在ってね。おいそれとすべてを話すわけにはいかないんだ」

「…闇の書は危険だ」

「知ってる。だから君達には頼りたくない。アルカンシェルでなかったことにしようとする、君達には」

「!? な、なぜそれを!」

 

 狼狽えるクロノ。僕は背を向けたままさらに続けた。

 

「こんな話を知ってるかい? 君の父親は一応助かる見込みだったらしいよ? 君の知ってる提督の誰かがそのまま吹き飛ばしたせいで死んじゃったみたいだけど」

「……!!」

 

 背を向けた状態でも息をのむのが分かる。そりゃそうだ。立て続けに最悪な情報を聞かされて、動揺しない人などいない。

 ……昔の大智だったらしなそうだね。

 まぁ置いておこう。今は現状の対処が先だ。

 僕はそのまま一回転し、柄の部分をクロノの頭に叩き込んで吹き飛ばす。

 

 何かが割れた音を聞きながら、僕はとりあえずシャマルに念話した。

 

『シャマル。そっちはどう?』

『大丈夫ですか雄樹君!?』

『まぁね。三か月前にはすでに完治していたさ。……ところで、シグナムやヴィータ、ザフィーラは?』

『無事撤退したみたいです。私達も逃げましょう』

『了…いや、先帰ってて。ちょっと片付けるから』

『……ご無事で』

 

 念話を切って視線を少し上に移す。そこにいたのは、高町さんにユーノ、テスタロッサさんにアルフの四人。

 僕は甲冑の中で冷や汗をかきつつそれを悟られないように声を張り上げた。

 

「やぁ二人とも。さっきぶり」

「斉原君……一体どういう事? どうしてヴィータちゃんたちの手伝いをするの?」

「じゃぁ逆に聞くけど、どうして君達はクロノの手伝いをしているの?」

「それは…」

「私は、罪滅ぼしのため」

「冤罪になったのに?」

「冤罪かどうかは関係ない。私自身がやったのだから」

「あぁそう」

「そういうあんたはどうしてやってるんだい!?」

 

 アルフの問いかけにここだと思った僕は盾で左の籠手を隠すように持ち、右手で持っているロングソードの切っ先が四人へ向くように構えて少し引き、四人の方向へ向け叫ぶ。

 

「答える訳、ないだろ! ナイト!!」

『Wカートリッジ・リロード』

「「「「!?」」」」

 

 盾とロングソードの両方からカートリッジが二個ずつ落ちる。

 咄嗟に高町さん達が障壁を作ったみたいだけど、それを無視して僕は吼える。

 

「ブリザード、エクシアァァァ!!」

 

 左の壁盾を引き、右のロングソードを力いっぱい押し出す。

 刀身からほとばしる白い光――冷気。カートリッジにより強化されたそれは、以前自分で確認したものよりもはるかに強力だと理解した。

 スパァァン! という剣で空をついた音がしたと同時、刀身にまとわりついていた冷気が高町さん達全員に当たるように大きな渦で飛んでいく。

 みんな必死に防いでいるようだけど、この魔法は(・・・・・)まだ終わり(・・・・・)じゃない(・・・・)

 

 腰を落として膝を曲げ、踏ん張れるような体勢になってから、僕は引いていた左手を発射させながら叫ぶ。

 この魔法を完成させるために。

 

「……ツヴァイ(・・・・)!」

『ブリザードエクシア・ツヴァイ。シュート』

 

 冷酷なる宣言。さながらそれは冷血な人間のよう。

 だけど僕はこだわらない。彼女達がハッピーエンドになれるのなら、僕は喜んでその役を買って出よう。

 そんなことを思いながらも盾が纏っていた冷気が飛んでいき、重なる。

 

 この冷気は僕のレアスキル――氷属性変換によってつくられたもの。

 その気体の温度は氷点下。大抵のものを凍らせることが出来るらしく、魔力障壁でも同じだとか。

 思わず何このチートと思ったけど、大智を見てたらそうでもないことが分かった。

 話がそれたね。つまり、僕の魔法は二度放つと、魔力障壁を破壊して本人へ貫通する。

 

 ――――今のように。

 

 パリィィンと幻想的な音を響き渡らせ雪のように崩れる障壁。それに驚く四人だけど、そのまま魔法に飲み込まれた。

 

「…それじゃ」

 

 どうなったかを確認せず、僕は踵を返してこの場から立ち去った。

 少し大智に影響されたかなと思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「拙者かように強く小さき武士(もののふ)と戦うこと二回目でござる。たとえ夢の中でも、負けたままでは気が済まぬ」

「今日で二日目、か。にしても一日目は速攻で終わらせちまったが……どうも違うみたいだな」

「いざ尋常に」

「まぁいい。やることは変わらない」

「「勝負!!」」

 

 どことも知れぬ大気の中、俺達は同時に駆けだした。

 

 

 今俺は、スサノオの言う「最後の修行」を行っている。

 相手はスサノオがどこからか連れてきた、江戸時代に存在していただろう武士。名を葉山桐舟。

 スサノオ曰く「島流しの途中で嵐に遭って船から逃げなかったら、喋る動物に妖怪、奇妙な面をした魚や巨大な果物がある島に流れ着いて暇そうにしてたから夢の中にお邪魔して連れてきた」とのこと。

 その島に少しばかり興味を持ったが、「こいつと戦ってもらうぞ。一日一回。七日続けて」と言われすぐさま葉山を観察した。

 

 島流しに遭った時の服装なのか薄くなった青い着流しに草履。髷は残っており、月代(さかやき)はそのまま。左右の腰に一本ずつ刀が差さっていた。

 ただし体格が、生きていたらしい時代にしてはあり得ないほどがっしりとしていて、まるで全身筋肉でできてるかのように錯覚してしまう。おまけに身長も二メートルほどと、ありえないほど高かった。

 

 初日に関しては、俺がバリアジャケットを展開した状態で太刀を振り抜いて真っ二つにしてすぐ終了。感じるものが何一つない状態でその日を終えた。

 

 そして、今。

 

「おぉぉぉぉ!!」

「葉山流二刀居合い、罰!!」

 

 俺は昨日と同じように太刀を横から振り、葉山は左右の刀の柄をそれぞれ持って抜いた。

 腕の筋肉が盛り上がるのが見てわかる。その腕から抜かれた刀の速度は恐ろしいものだったが、俺は構わず太刀を振り抜こうとする。

 一瞬互いの刀が触れる。その次の瞬間、俺達はたがいに吹き飛んだ。

 

 何とか足もとに太刀を刺して勢いを殺す。向こうの考えも同じようで、刀を二本刺していた。

 止まる足。焦げる靴底。微かにその匂いを嗅ぎ取りながら、俺は不敵に笑いながら言った。

 

「お前強いな」

 

 それに対し、葉山は表情を変えずに質問してきた。

 

「長嶋殿こそ。それ以上ない強さで、何を迷っている(・・・・・・・)?」

 

 俺は戦闘中だというのに太刀を抜かずにそのまま聞き返す。

 

「何を言っている」

「拙者、久し振りの強敵に血が滾っていた故に気付いたでござる。長嶋殿は今分からぬのでござろう? 自分のしたいことが」

「……」

 

 その通りなのかどうかさえ分からないので、沈黙。

 

「沈黙は是ととらせていただくでござる。……しかし拙者では教えることかなわず。ならば勝負に戻ろうではないか。弁より学べるものが在ろうぞ」

 

 左右の刀の柄を握り右足を一歩下げる葉山。それを見た俺は整理のつかない頭を無視して反射的に太刀を抜いて中段に構えた。

 

「いざ参らん!」

「っ、ハッ!」

 

 俺はそのまま駆け出し、それを迎え撃つように、葉山は左の刀だけを抜いた。無論、俺の速度は地面を蹴ればすぐさま葉山に肉薄できるのでその速度は尋常ではないだろうが、俺は逆手持ちで下から袈裟斬りしようとする左をそのまま太刀で受け止める。

 衝突による衝撃が周囲に飛び散って鍔迫り合いの状態で、俺は何となく聞いた。

 

「なぁ。島流しって何をしたんだ?」

「あえて言うなら山賊の真似事…でござるか。拙者は知らないふりをしてただけでござるが」

「それだけでか」

「武士道に反する行いをしたのは拙者でござるからな。市中引き回しや切腹にならないだけマシでござろう?」

「知るか」

 

 そういって俺は一旦距離をとるために刀を押し込んで、弾かれるのを利用して後ろに下がる。

 その瞬間、俺は堅い柄を顔面に食らい、吹き飛んだ。

 

「これぞ葉山流の姿。変則二刀流でござる」

 

 そんなことが聞こえた気がしたが、止める障害が何一つないこの場所では勢いがなくなるまで飛び続けるので、若干遠くから聞こえた。

 やがて体は着地し、なおも勢いは止まらず引きずられる。

 摩擦熱と顔面に感じる痛みとで声を上げる。

 脳震盪でも起こしたのか、腕が飛ばされてから動かない。

 

 負けた、のか…?

 混濁する意識と閉じる瞼に何も思えず、ただ葉山との勝負の結果だけ気にしながら、俺は気を失った。

 

 

 

「……ッ痛」

「見事に眉間ぶち抜かれたのじゃから当然じゃて。穴はあいとらんから、心配するなよ?」

「スサノオ…」

 

 痛みで目が覚めたら、スサノオが焚火を挟んで鎮座していた。

 ボウボウと勢いよく燃え、ユラユラと大きく揺れる炎。

 俺は起き上がってスサノオに向き直った。

 

「「…………」」

 

 何も言えず、薪が燃える音と揺らめく炎だけが、俺達のいる空間に動きをつける。

 最初に口を開いたのは、たぶん俺だ。スサノオが返事をしたのだから。

 

「――――本当は、分かっていたのかもしれない」

「なにをじゃ?」

「割り切ることが、出来ないことを」

「……」

 

 俺は高町達に攻撃するのを、『仕方ない』と割り切った。

 しかしながら、本心ではそれを否定していたのではないかと疑える。

 負けてすっきりするというのはよくマンガとかであるが、まさしくその通りだと思う。

 敗者にならなければ気付くことがないことの多さ。俺の場合は、自分のやりたいこと、高町達に対する思い、自らの目的……など。

 結局のところ抱え込み過ぎたのだと思い知る。常時独りでこなそうとしていただけ。

 

 これじゃぁ高町の事は言えないな。

 そう思いながら空を見上げる。気付かなかったが夜だったらしく、星空が輝いていた。

 

 輝ける星たち。その下には自然と人が集まる。

 高町然り、バニングス然り、八神然り。

 こいつらはきっと名を残す存在となるだろう。今更ながらそう考える。

 その根拠となるのはやはり、ひたむきさ、カリスマ性、そして……他人を慮る心だろう。

 などと脇道に逸れた思考をしながら俺は苦笑する。

 

 まったくもって不可解。自分という存在がごちゃごちゃになっているからか知らないが、自分が考えてることすら予想がつかない。

 今は何のことを考えていたか。次に考えるべきことは何か。その事すら分からない。

 

 こんなことは生まれて初めてだ。

 

「ははっ」

「ん? どうした、いきなり笑いおって」

「いや、何。俺は考えすぎるきらいがあるようだと理解できてな」

「それは良かったではないか。『人』になろうとしていたんじゃろ? 立派に人じゃ」

「………そうなのか?」

 

 スサノオに言われ俺は首を傾げる。

 そんな俺を見て奴はため息をついた。

 

「やれやれ。人が如何なものか分からんというのに人に成ることを夢見るとは……どこか抜けておるのぉ」

「そうか? 人を探りながら人に成るというのは悪いことなのか?」

「…まぁ、見解の相違じゃな」

 

 あっさりと折れた。

 とりあえずここぞとばかりに文句を言う。

 

「とりあえず言いたいことがあるんだが」

「…なぜこんなことをしたのか、じゃろ?」

「ああ。葉山と闘う理由は?」

「なに、似た者同士じゃったからというものじゃ」

「は?」

「お主らは似た者同士じゃ。ただ転生したかどうかの違いだけ。護りたかったものを守れなかった。いや、気付けば手から離れておったんじゃ。両親と、兄と、そして美人で名高かった妹を、な」

 

 そう言われて、似た者同士の意味を理解する。

 

「大切だったものを守れなかった。その一点に尽きる」

「…そうだな。俺も、守れなかった。むしろこの手で殺したのだから、酷さではこちらに軍配が上がる」

「どちらも同じ事じゃ。……さて、この話はここまでにしよう。それで? 少し吹っ切れたようじゃが、分かったか(・・・・・)?」

 

 そう問われ、俺は首を横に振る。

 質問の意図は理解している。それらしき答えも見出せた気がする。

 だが、それではまだ不十分だと思う自分がいた。決めるとしたら明日。その日に俺は、俺を否定する。

 

 それを汲み取ったのかどうかわからないが、スサノオは鼻で笑った後に言った。

 

「では、今日の分を話しておこうか。お主らが闇の書と呼んでいる、一つの忘却神具の昔話を」

 

 俺は特に覚悟を決める訳もなく、平常心で頷いた。




さぁここから物語が終わりへ向かい始めます

ご愛読、ありがとうございます。
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