世にも不思議な転生者   作:末吉

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ここでこうして変わり始める物語。流れの存在を無視するかのように。


73:乱入

*……視点

 

「さて、丁度終わったし……どうするか」

「別に何をしても構わん。現状を伝えるなら、今頃ヴォルケンリッターに管理局民間協力者たちが相対するところじゃろ」

「全てを伝えるか、一人で終わらすか」

「まだお主はそんなことをぬかすか」

「護れるものが守れればそれでいい。俺の全てを犠牲にしても。天上を殺しても」

「……わし等にできるのはこれまでじゃ。アレを忘れるでないぞ」

「だったら家に帰らせろ」

 

 分かったわい。そう呟いた男は、ボロボロになった服を着ている男の前に門を作ると、そのまま背中を蹴って門の中へ入れ、すぐさま閉じる。

 閑散としだす世界。元々無人世界にいた彼らだが、先程の男が居なくなったことで一人しかいなくなり、物静かだったために静寂と化した。

 

 男――スサノオは、門が消えた跡を見つめてからため息をついた後、ニヤリと唇をゆがめてから誰に言う訳でもなく呟いた。

 

「大きく化けたのぉ。あやつ、生死の境での矯正が一番効果的なんじゃないか? それはそれでどうにかしないといけない感じじゃが……まぁいいか。久し振りに出張り続けて疲れたし」

 

 その背後に別な男が現れた。

 

「益荒男殿」

「なんじゃい葉山。消えたのではないのか?」

「此度の事、誠に感謝いたす」

「道は、開けたかの?」

「うむ。一先ずは島に来たという男に関しての情報を集めるでござる」

「頑張って未来に生きろよ、輪廻(・・)

 

 スサノオがその名で呼ぶと、葉山と呼ばれた男は不恰好にも笑いながら答えた。

 

「……生きてるからあいつが居るんだろ。やすやすと死にゃしないって」

「ところで、タイムパラドックスはどうなる?」

「問題ないってことぐらいお見通しだろうに。俺の魂には刻まれるが、器には刻まれない。ただちょっとばかし、俺の在り方が変わるぐらいだ。最終地点は変わらない」

「ならわしはそろそろ帰るから。お主も早く戻るがよい」

「この世界じゃなきゃ俺は出れないんだが……ま、いいや」

 

 そういうや否や、葉山は背を向けて歩き出す。その足取りは軽く、進むスピードも速い。

 わずか数秒で消えた葉山がいた方向を見つめた後、スサノオは欠伸を漏らしてその場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 ところ変わって大自然が広がる無人世界。

 ヴィータがシャマルと念話しながら獲物を探していると、目の前になのはが立ちふさがった。

 

「また邪魔するのか、高町なんとか!!」

「なのはだよ、な・の・は!」

 

 名前を覚えてもらえないなのははその場で地団太を踏むが、ヴィータはそんな彼女を観察しながら不意打ちの攻撃に警戒していた。

 

「……で、何の用だ?」

「それはね」

 

 なのはがヴィータに敵対の意思はないと伝えようとした、その時。

 彼女達の上空に人影が突如出現し、彼女達の間に割って入り、ヴィータが抱えていた闇の書を奪い取ったのは。

 

「「!?」」

 

 あまりの早業に二人は驚き、視線をさまよわせる。

 だがその動作も、なのはの後ろから久し振りに聞こえた声で終わることになる。

 

「探し物はこれだろ、ヴィータ」

「なっ! 長嶋!?」

「え? ……うそっ! 長嶋君!?」

 

 驚く二人を尻目に、彼は闇の書を放り投げて弄びながら、『人』らしい笑顔――得意げな笑顔を浮かべてこう言った。

 

「久し振りで悪いが、これは回収させてもらうぞ。なんたって…忘却神具なのだから」

 

 バリアジャケットすらしておらず、魔力を放出していない彼は、混乱する二人をよそに、宙を浮き続けながら佇んでいた。

 

 

 また、別な場所では。

 

「ハァァァァ!!」

「タァァァァ!!」

 

 シグナムとフェイトの一対一(タイマン)が砂漠の中で繰り広げられていた最中だった。

 互いに距離を取り最後の一撃の算段をしていた時。

 

「遅い」

「グッハァァ!」

 

 フェイトの背後からそんな声が聞こえ、勝負の最中だというのにフェイトは振り返り、シグナムは呆然と見ていた。

 

「…無事だったか、長嶋」

 

 不意に漏れた彼女の安堵の声。それが聞こえたかどうかわからないが、彼はフェイトを襲おうとした仮面をつけた男を肩で抱えた状態で答えた。

 

「お前のおかげで助かったからな……が、今は関係ない」

 

 そう言い切った刹那。彼の姿はゆらりとゆがみ、そのまま霧のように消えてしまった。

 驚く二人に、彼の声だけが頭に残った。

 

『気が済むまで戦えばいい。闇の書の主の安否が気にならないのならな』

「なっ!? どういう事だ長嶋!! まさか、貴様……!!」

「え、ど、どういうこと?」

 

 突然のシグナムの変貌に戸惑うフェイト。それに伴い、大智の言葉も気になった。

 闇の書の主の安否? それってもしかして……。

 

「くっ。勝負はまた預ける! 今はそれどころではない!!」

 

 考え事をしている途中にシグナムにそういわれ、我に返った時にはすでに遅く。

 シグナムは消えており、残されたのはフェイトと消化不良な謎だけだった。

 

 

 

「返せよテメェ!」

 

 ヴィータは得意げに笑いながら本で遊んでいる大智に向かって叫ぶ。

 しかしながら、彼はもう片方の手を耳に当て「え?」という顔をした。

 絶対にバカにしてるとヴィータが思った瞬間、彼女の手は出ていた。

 

「おうらぁ!」

 

 自身のデバイスであるグラーフアイゼンを叩きつけるように構え、なのはを通り過ぎて大智へと突っ込むヴィータ。

 しかしながらその攻撃は不発。

 振りかぶった瞬間にはすでに姿はなく、声でどこにいたのか理解させられた。

 

「まったくもって遅い」

「なっ!」

「うそっ……肩にとまってる?」

 

 彼はヴィータのデバイスがあった方とは別の肩に片足でとまっており、その重さ自体を感じさせないでいた。

 今の彼はさながら軽業師。今風に言うならサーカス団員。

 なのは達が驚いていると、また大智はいなくなっていた。

 

 とっさに探す二人。

 先に見つけたのは、レイジングハートだった。

 

『マスター。ここから前方二百メートル先に新たな魔力反応があります!』

「え!?」

「そっちかぁ!!」

「あ、待ってよ!」

 

 驚くなのはを無視して、ヴィータはレイジングハートが言った方向へ飛んでいく。

 それを見てあわてたなのはは、ヴィータを追いかけた。

 

「…さて。これで俺の方は揃ったから……」

「ぎっ、ぐっ」

「待ちや」

「帰るか」

「がれ!」

 

 ヴィータの攻撃もむなしく空振り、大智は仮面をつけたものの首を開いていた手で掴んだまま消えた。

 まるで霧のように、姿を揺らしながら。

 

「……どうなってる、の?」

 

 ヴィータが空中で膝をついて「チクショーー!!」と泣き叫ぶのを見た追いついたなのはは、事態の急変について行けず、ただ呆然と見守るだけしかできなかった。

 

 これにより、原作通りになるはずだった物語が急変する。

 誰かが知り、誰もが知らないうちに。

 独りの少年によって、終わりへ向かう。

 

 

 

 

 

「ずいぶん遅かったな、ノス(・・)

「いやだってこれ(・・)の他に彼女(・・)まで捕まえるんだよ? 君より時間はかかるさ」

 

 ここはノス――吸血鬼の真祖であり、吸血鬼と人間が仲良くしている世界の【統括者】――の世界の人里離れた小屋。

 つい最近まで人が住んでいたようだが、ちょっとばかし不幸な目に遭ったらしく無人になったそうだ。

 ちなみに今のノスの姿は俺。高町達のところへ行ったのがこいつだ。

 

 俺は小屋を改造しながら「手伝ってくれて助かった」と言うと、ノスは姿を戻してから「どういたしまして」と答え、「ところで、この子はどうすればいい? あの子(・・・)と同じようにする?」と訊いてきたので、「あぁ」と頷いた。

 

 わかったよ。そう言いながら小屋を出たらしいノスも気にせず、俺は一心に小屋を改造していた。

 

 

 闇の書、いやそうなる前の忘却神具――少しばかり嫌だが――【悪魔召喚の書(デモニック・サモン)】のバグを取り除くために。

 

 

 悪魔召喚の書(デモニック・サモン)。名称は様々あるらしいが、これが正式名称らしい。

 その内容はもちろん、悪魔を召喚する儀式について。

 ただし、それを見るには人の血を本のページ一枚一枚にたらさなければならず、仮に見れたとしても自分の魂を担保にして召喚するので、悪魔に魂をとられたらその本は白紙になってしまう。

 それが本来の内容。

 だが今闇の書と化しているこれは、魔力と魔法を集め全ページが埋まれば使用者をのみ込んで破壊の嵐をまき散らす、只のはた迷惑な本。

 

 よって俺はこの本の編纂をしながらバグを取り除き、少しばかり元に戻すことに決めた。

 そうすれば八神は助かり、斉原も目的を達成し、ハッピーエンドになる。

 

「んな訳がないだろうが、長嶋」

「……来たか、マモン」

 

 改造する手を止めて立ち上がり、振り向く。そこにいたのは、天上を乗っ取った悪魔。そして俺を一度殺し、一度殺しかけ、今俺が持っている本の本来の主の一柱。

 相変わらず天上の体にいるのか、本人がしないだろう下種な笑みを浮かべながら口を――

 

「出てけ」

「!?」

 

 ――開かせる前に小屋の扉と一緒にそいつを殴り飛ばした。いや、そいつを殴り飛ばしたら小屋の扉まで飛んで行った。

 やれやれ、やる前に片付けるか。そう思いながらバリアジャケットを魔力を解放した後に展開して、飛んで行った先へ向かう。

 

「やれやれ。いきなり殴ることないだろ。こいつ、一応お前のクラスメイトだぞ?」

「死んだら墓位建ててやる。それで? 取り返しに来たのか?」

「まぁな。あの女二人は諦めて、とりあえずお前が戻そうとしている本を返してもらう」

「嫌だといったら?」

「仕方ねぇからこうする、ってよ!!」

 

 地面から俺を囲むように現れた黒い帯。それぞれが俺を突き刺すのかと思いきや、包むように回りだした。

 時間稼ぎにでもするつもりだったらしい。が、

 

「無駄以外の何物でもない」

 

 はみ出ていた太刀を軽く横に振るう。それだけでいともたやすく黒い帯が折れる。

 

「バーカ」

 

 俺が黒い帯を折ったことが予想の範囲内だったのだろう。マモンは薄く笑うと、左人差し指で俺の事を指しながらそう言って、銃を撃つ真似をする。

 その瞬間、俺の足元ごと黒い帯が爆発した。

 

 でも俺に効いてはいない。爆風から平然と飛び出し、太刀を放り投げながらマモンへ駆け、同じく平然として黒い剣を生み出しているマモンに対し、右の手のひらで軽く肺のあたりを押す。

 力をほとんどいれていないこの行動。にもかかわらず天上は前のめりに倒れ、マモンが翼を広げて宙を漂いながら混乱していた。

 

「おいこら。どういうことだ、これは?」

「引き剥がされたことが不思議か?」

「…答える気は、ねぇんだな」

 

 考えるのをやめたのか、ため息をついたマモン。そして俺に殺意バリバリの視線を向けながら

 

「死…グワッ!」

 

 投げた太刀が尻尾に刺さり、そのまま地面に落下した。

 腹ばいで叩きつけられたせいで咳き込んでいるらしい。おまけに太刀が地面に刺さったので、尻尾を切らない限り地面に這いつくばったまま。

 そんな状態のマモンに近づき、俺は訊いた。

 

「なんで戻してはダメなんだ?」

「あれがなくなったから、俺達悪魔も神様達と同じように自由に世界を行き来できるようになったんだ。あったら俺達七つの大罪以外の悪魔も閉じ込められちまう。だからこの世界に流して、くれてやるつもりだったんだ!」

「……なるほど。では俺が殺されかけたのは?」

「お前が関わると知って、余計な事をさせないように殺そうとした。だが器の方が拒絶したせいで殺し損ねた。それだけだ」

 

 そう言ったと同時にマモンは俺に飛びかかってきたので、右のミドルキックで吹き飛ばす。

 加減はした。こいつには説明の一つでもしてやらないと、ダメだったから。

 一足飛びで近づいてから、俺は倒れているマモンを見下ろしつつ言い放った。

 

「あの本をあのまま渡したら死ぬぞ」

「…だろうな。だが、この原作の流れならあの本は浄化され、手元に残る。そういわれて(・・・・・・)、な」

 

 マモンはダメージの蓄積量がやばいのか、ゆっくりとそう言った。

 俺は、最後の言葉に反応した。

 

「そう言われて、だと?」

 

 ――――第三者が出てくることに、驚きながら。




さて次の冒頭で真犯人が分かるかもしれません。
ご愛読ありがとうございます。
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