世にも不思議な転生者 作:末吉
*
「Sランクまで解放」
『了解しました』
ナイトメアに魔力解放の指示をだし、対峙している四人の一挙一動を注意深く見る。
不気味に笑うだけの大天使四人。その顔が美形な上に口が尋常なくらいに裂けているのでもはやホラー。
やっぱり偽神、いや偽天使だったか。やっと確証を得た俺は、「誰の指示だ?」と訊かずこいつらを殺すことにした。
まずはあいさつ代わりとして、馴染みつつある「
挨拶代りなので別に当てる気はなく、むしろ当たるわけがないだろうと思っていたら案の定飛んで避けたので、ニヤリと笑った俺は「
すると、俺の左手にくっつくように身の丈ほどの
おそらく、というか絶対にこの世界には存在しない兵器。それがこいつ。
ま、浮いてるうちにさっさとやろうか。
俺はその兵器に表示されたモニターで偽天使どもを見ながら構え、右手で弦を引く。
「堕ちろ、偽者ども…!」
弦を放す。何も飛ばすものを引いてないのだが、これはそれでいい。
なぜなら、弓の形状をしているが立派な
ビィィン! 放した弦が揺れる。力強く振動しているせいで切れないか心配だが、前世でも使っていたので問題ないだろうと考える。
その瞬間、左手の甲の部分にある砲門から一筋の灰色の光が発射。その速度は光の如く、威力は絶大。
現に発射と同時に避けようとしたミカエルは直撃して貫通。それで終わったと勘違いしたのかその場に留まっていたラファエルは、曲がってきた光による背後からの強襲を直撃。ウリエル・ガブリエルも似たような感じで光に貫かれた。
サジタリウス。前世でいう携帯型光学戦術兵器に分類される武器。言ってしまえばモニターに映った敵をロックオンし、弦を引けば砲門から高速レーザーがロックオンした敵に全員当てるまで追いかける。戦術兵器と呼ばれる所以は『モニターに映った敵』というもの。それに映った人数は関係なく、レーザーの割に生き物のように追いかけるところからそう分類された。
ただ難点なのが、一回攻撃を当てたらそれ以上狙わないこと。生きてる限り当て続けるのではなく、一回当たれば生きてても戻ってこないというもの。…まぁレーザー直撃して死ななそうな人間なぞそういないだろうが。
ちなみにどうやって出したかというと、俺のレアスキル、魔力具現化。
それでもやはり、知っていれば具現化できるのだから恐ろしいものだと思う。何せバリアジャケットを展開せずとも一方的に攻撃できる手段が増えたのだから。
さて長々と説明するのもよそうか。面倒になったし。
俺は上空を睨みながらバリアジャケットを展開。
今度は死に装束が着流し(しかもうすい灰色)に代わっていた。一体どこまで変化するのだろうかと不思議に思えてしまうのは仕方ないはずだ。
バリアジャケットを展開し跳び上がる。そのまま上空に浮きながら、傷口を抑えていない上に笑みを崩さない四人が固まっていくのを見守る。
レーザーの熱により本来なら焼き切れて熱がる筈だが、魔力が発射されていたせいか血が流れている。
しかし、
なにかある。直感した俺は、さっさと終わらせようと奴らに向かった時、それは起こった。
「火は灯りの源」
「水は流れの源」
「土は生命の源」
「光は聖者の証」
「「「「ここに示さん我らの力、マテリアル・エデン」」」」
突如として彼らの目の前に魔方陣が一つずつ展開され、その魔方陣が一つの大きな魔方陣を形作る。
マズイ! 魔方陣が完成された瞬間に目の前に到達した俺は避けることが不可能だと判断し、障壁を展開。
展開し終わったと同時に、魔方陣から様々な色の光が直線状に発射され、押し負けた俺はそのまま光に押され、消えても勢いで吹き飛んだ。
「ぐおっ!」
怪我はないし衝撃もないが、現状に混乱していたから勢いを緩和することが出来ずに吹き飛び続ける。
おかしい。血も出ているし、明らかにそれを見ている。なのになぜ、こいつらは
その上普通に四大天使の力を使ってきた。これは奴らが進化したとでも言うのか? それとも、これが奴らの成功作だとでも言うのか?
「きゃっ!」
「フェイトちゃん! …って、長嶋君!? どうしてここに!」
「なに、長嶋だと!?」
「大智!」
「長嶋、そっちは? ……って、聞くまでもないようだな」
「どういうことだ、長嶋! 説明しろ!!」
何かにぶつかり勢いが殺されたようなので、その場で佇んで思考を切り替え、飛んできた方向へ全力で宙を飛ぶ。
なにやらカオスな空間に入った気がしたが、思考を戦闘に切り替えたので気にならなかった。
とりあえずもなにもなく、殺す。塵一つ残さずに消し飛ばす。
そのことだけを考えながらわずか数秒で戻ってきた時、その天使たちの様子は大分様変わりしていた。
純白だった翼は塗装がはがれたように色を失っており、整っていた顔立ちは崩れて醜悪に、爪が伸びて血を宙に漂わせていた。
「……やっぱりか」
右手で握る太刀に力がこもる。
やはりこいつらは偽神、いや偽天使。憐れに捕まった魂たち。
俺は逡巡もせずにそいつらに切っ先を向け、宣言した。
「
色々と考えたいことがある。一体どこでこいつらが作られているのかや、こいつらをどうやってまとめているのか、等々。
気がかりなこともあるし、不安なこともある。だが今は置いておこう。
誰もが戦闘態勢をしているが襲い掛かってこないため、俺は太刀を降ろしてから宙を蹴ってラファエルの背後をとり、「無音静寂」と背中に手を当て呟く。
魔方陣が展開されずにそれは発動し、エファエルは音もなく姿を
「「「ゲヒャヒャ!」」」
一人消えたからといって、他三人の攻撃性が取り除かれたわけではない。残りの奴らは一斉に血の散弾を、俺に向けて放ってしてきた。
無音静寂。音がなく、静かなこと。そう捉えることができる
ただし発動時に対象者の体のどこかに触れること、魔力をSランク分ほどごっそり持ってかれることぐらいのデメリットがある。
まぁ体の怠さなんてアドレナリンのお蔭か感じないから、普通に血の散弾を避けたり弾いたりしているが。
しかし三対一だとやはり疲れるな。分が悪いわけではないが、血の形状変化が厄介すぎる。
固い球になったと思ったら棘が出てきて避けたり、槍がそのまま飛んできて弾こうとしたら途端に銃弾のような形になって炸裂したり、三方向からの同時射撃だったりと、避けることに必死にならざるを得ない。
魔力の回復はすでに終わっている。このまま全魔力解放したいが、ほぼ全方位での攻撃の嵐を受けていると、さすがに指示を出せない。
何とも歯がゆいと太刀で血の剣を弾き飛ばし、大槌を避け、槍となったものを魔力障壁で防ぎながら思っていると、俺の両脇を桃色と黄色のレーザーが通り過ぎて行った。
無論偽天使の奴らは別なところにいるので当たらないが、それでも俺の周りの血液は吹き飛んだ。
とりあえず後ろにいるであろう二人に礼を言うことにした。
「ありがとな、高町。テスタロッサ」
「…え、う、うん」
「なのは。長嶋君に色々訊きたいようだけど、それは後にした方がいいね」
「その通りだ。結界も張ってないから今頃大騒ぎになってるんじゃないか?」
「今はもう大丈夫だよ、長嶋君」
「そうか」
会話も程々にして、俺はミカエルだった奴の目の前へ飛ぶ。
「死ね」
「グヒャ」
俺が太刀を上段から振り下ろす速度と、そいつが口を開けていつのまにか作っていた血の塊が完成したのが同時だった。
魔力を纏わせて切れ味・強度が上がっている太刀。これも自動身体強化の延長上で、太刀も体の一部と無意識で思っていればできるもの。昔の武士みたいな感覚なので、毎日バリアジャケットを展開して太刀を素振りしていた。その賜物であるはずなのだが……。
やはり偽者でも大天使の長の魂を持つもの。攻撃速度に関してはこちらと変わらない、か。
発射する寸前だった血の塊ごとミカエルを真っ二つにした俺は、太刀の柄をバトンのように右手で回しながら呟く。
「風招滅殺」
ヒュゴォォ!! 回転してる太刀からそんな音が聞こえたと思ったら、偽ミカエルだった肉体は全て塵になった。
単純に太刀の切っ先に魔力を集中させ、レーザーのように細い線を相手に当てながら回転させて肉体を細切れにしただけである。音は多分、その魔力が爆発して風を巻き起こしたのだろう。
これで残るはウリエルとガブリエルか。そう思って先程そいつらがいた場所を見てみると、高町とテスタロッサが思いの外善戦していた。
高町は移動しながら魔力弾で血を撃ち落し、テスタロッサは自身の速さで攻撃を避け続けたり魔法で消し飛ばして攻撃は当たっていなかった。
だがそれだけ。向こうに攻撃を当てることが出来てない。
魔力を全開放しながら様子を見ると、一部の血がおかしな方向へ向かっていた。
ハラオウン達の方ではない。これは……!
「ざけんな!」
その場で血が移動する方向の先に誰がいるのか分かった俺は、そう叫んで宙を蹴り全力で
*……視点
バニングスと月村は塾の帰りで歩いていた。本来鮫島が迎えに来るのだが、父の方が忙しくなったそうでそちらを優先させた結果になる。
「へぇ。図書館でそんな出会いがあったんだ」
「うん。長嶋君の事も知ってたみたい」
「…あいつって妙に有名人よね」
「そうだね。はやてちゃんも『最初の頃とは偉い変わったで』って笑いながら言ってたし」
「少しずれてるわよ、すずか」
「あれ? そう?」
「まったく…」
足を止めてため息をつくバニングス。それを一歩先で待つ月村。
そんな時、彼女達の前に猛スピードで飛んできた何者かが身を翻した勢いで、左拳で何かを殴った。
言わずもなが、長嶋大智である。
彼は己が出したスピードを利用して拳の速度を上げ、慣性の法則によって急激に止まった際に来るエネルギーをすべてその拳に乗せてやってきた血を殴って消滅させたのだ。
血が消滅して少し後にパァァァァン! と音が鳴る。衝撃の風が辺りを襲う。
何が起こったのかわからないが風に飛ばされないようにしていた二人は、それが収まった後に恐る恐る目を開けてこれを行った人物を見て、驚いていた。
「あ、あんた…なによその恰好」
「長嶋…君?」
困惑する二人。その二人を見ずに長嶋は、右手に持っていた太刀の峰で肩を叩きながら言った。
「少しばかり面倒なことになってるんだ。事情の説明はあとにさせてくれ」
「う、うん…」
「……分かったわ」
「――――すぐに終わらせる」
その言葉と同時に浮いていた彼は、再び宙を蹴って戻っていった。
そんな後姿を、頬を少し赤く染めて見送る二人の姿があったが……彼は全く見ていなかった。
次回。戦闘に決着
ありがとうございます。