世にも不思議な転生者   作:末吉

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お久し振りです。忘れてたわけではありません


77:決着からの説明

「はぁぁぁぁ!」

 

 テスタロッサはガブリエルに攻撃しようと接近するが、あちらの血液による攻撃に邪魔をされて近づけない。

 カートリッジを現在四つほど消費し残りが心もとない状態ゆえ、彼女は内心焦っていた。

 前回の様に何も分からずに攻撃を受けるということはなく、むしろ攻撃を避けられるようになったことに自分でも驚いているけど、それでも長嶋君のように攻撃を当てることが出来ない。それは一体どうして? まだ速さが足りないの?

 

 前回似たような存在に攻撃を良いようにされた彼女としては、せめて一矢報いたいという思いに駆られていた。

 

 再度それ(・・)に飛び込む。しかしそれは、血の銃弾の嵐により阻まれる。

 

「くっ!」

 

 急停止してから銃弾を避けることに集中する。彼女は装甲を限りなく薄くすることにより得た機動力と麒麟指導の訓練により、こうして何とか食らいつくことが出来ている。

 しかしながら長期戦に持ち込めるほどの体力があるかと問われれば、否。むしろ、機動力による短期決着がメインとなっていた。

 それでも連続での高速移動による戦闘は、体力を思った以上に削る。その上、一撃でも攻撃を浴びたら危険だと直感してるからか攻撃を避けることに集中するので、前回のシグナム戦より疲弊していた。

 

 その結果、なんとか銃弾の嵐を抜け出せた彼女は、少し距離を置いて少し休憩するかのように立ち止まる。

 

 普通ならそれは悪手だ。……彼女だけが(・・・・・)この場にいるのなら(・・・・・・・・・)

 

「フェイトちゃん!」

 

 呼びかけられた彼女は顔を上げる。すると、ウリエルと闘っていたなのはが、フェイトを襲おうとしていた血の剣を魔力弾で消し飛ばした。

 そしてすぐに目の前に現れるなのは。

 

「大丈夫?」

「うん。なんとか…そっちは?」

「なんか斉原君とシグナムさんが引き受けてくれてね」

「え…?」

 

 なのはの言葉を理解できなくなったフェイト。それを見たなのはも苦笑しながら「私も何がどうなってるか分かってないけど、今はどうやら味方みたいだよ?」と言ったのを聞き、同じく苦笑する。

 

「そんな場合があるかお前ら!」

 

 微笑ましい光景に邪魔をする声。はっと振り返るとそこには、障壁を展開し二人に一切攻撃を通していない長嶋の姿があった。

 彼はその障壁を展開させながら二人を叱る。

 

「偽神相手にそれとは余裕だなお前ら!」

「「うっ」」

「俺が障壁を展開させてなかったらお前らお陀仏だぞ!?」

「「…すみませんでした」」

「謝るんだったら行動しろ! 攻撃全て抑えてやるから、お前らで(・・・・)あいつを(・・・・)消滅させろ(・・・・・)!!」

「「……え?」」

 

 一瞬何を言われたか分からない二人。そんな二人を無視して障壁を解除した長嶋は、太刀を消して(・・・・・・)ガントレットを打ち合わせ、もう一度言う。

 

「俺がガブリエルのあの攻撃をすべて抑える。その間に二人の攻撃であいつを塵も残さず消滅させろ…お前達なら出来るだろう」

「「……」」

 

 まるで確信してるかのように言う長嶋に二人は戸惑ったが、なのはがすぐに嬉しそうに「うん!」と頷いたことにより話が決まった。

 

 それを聞いた彼は「なら俺は行く」と言って飛び出した。

 残された二人も行動を開始した。

 

「それじゃ、なのは。止めはお願い」

「うん。準備かかるから、それまでよろしく」

 

 やるべきことを確認し、二人は別々に行動を開始。

 

 なのははその場に留まり超長距離砲撃の準備を。フェイトは、長嶋が攻撃を抑えている間にガブリエルの動きを止めるために。

 

 

 一方で、シグナムと斉原VSウリエル。

 

「任せてと言ったものの…やっぱりきついな……衝撃が脳を揺さぶってくるよ」

「その隙に攻撃をしているが…あちらはまるで効いてないように見える」

 

 斉原とシグナムは、デュエル・シールドの陰に隠れてそんな会話をしていた。

 時折脇や背後からの攻撃が来るときは、シグナムが全部蒸発させた。

 

「にしても血液が主な攻撃手段って……なにあれ。本当に天使?」

「天使があのような姿なら、信仰心のかけらも生まれないと思うが」

 

 そんな会話をしつつ斉原は前を見据える。

 映っているのは、大量の血液が形作った武器。埋め尽くされているせいで、ウリエルがどこにいるか分からない。

 

「アレがなんなのかいまいち分からないけど……とりあえず僕達だけじゃ、このままジリ貧状態を続けるしかないのかな…」

「そういえば、その盾にもカートリッジが入っているのではなかったか?」

 

 背中合わせで前方以外の攻撃を蒸発させるシグナム。

 それに対し斉原は、「危険すぎるからやりたくてもできない、が正しいかな。シグナムの攻撃を受けても平然としてるなら、望みが薄いし」と答えた。

 

 そんな中、少し遠くから「全力全開! スターライト・ブレイカー!!」という声と共に、莫大な魔力が発射されたのが感じ取れた。

 なんとなく予想がついた斉原が「あっちはもう終わったみたいだね」と呟いた瞬間、「色即是空!」という声とともにデュエル・シールドに衝撃を与え続けていた血液が一斉に消し飛び、目の前にそのままその人物が立ちふさがった。

 聞き覚えのある声に安心した斉原は皮肉めいてつぶやく。

 

「まるでヒーローじゃないか」

「俺にそんな気はない。さっさと終わらして、この件に片をつけたいだけだ」

「それには賛成。僕に黙って何をしようとしてるのか聞きたいし」

「お前に許可をとる気なんてサラサラなかったがな」

「……云う様になったじゃん。答えが見えたのかな?」

「まぁな」

「長嶋…お前は一体何をしようとしている」

 

 シグナムが警戒したように訊ねる。それに対し、彼は「これを片づけたら答える。斉原。お前の魔法であいつを凍らせろ」と答えた。

 

「…なんで知ってるのさ?」

「スサノオが教えてくれた」

「…スサノオ?」

「お前がいたずらメールを送った相手だ」

「マジ?」

「ああ。だからさっさと凍らせろ。それで片が付く」

「……分かった。信じるよ」

 

 そう言って盾に籠るのをやめた斉原。そしてロングソードのカートリッジを三つほど消費して、それを振り下ろす。

 

「フリーズ・ブレイカァァァ!!」

 

 ロングソードが纏うは巨大な氷の剣。全てを凍てつかせる絶対零度の剣はそのまま動かなかったウリエルを切断し、その切り口からそれらを凍らせた。

 パキパキパキとすべてが凍り、音がしなくなったころには、半分になったウリエルは全て氷漬けになっていた。

 

「これで、終わり……?」

「ま、あとは砕くだけの簡単なお仕事だな」

 

 そう言って長嶋はウリエルに近づき殴りつける。

 ただそれだけで凍っていた全てが砕け、粉となって消えた。

 その光景を見ずに斉原達に向き直り、すべてを終わらせるためにこう言った。

 

「じゃ、ハラオウンの方へ行くか。そっから八神の家へお邪魔して、全員連れて事情を説明してやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 偽天使を全滅させた長嶋・斉原・シグナム・フェイト・なのはの五人は、先ほどまで自分たちがいた場所へ戻ってきた。

 

「終わったかい?」

「あぁ。で、天上は……」

「いったいどういうことか説…」

「本は?」

「……僕が持ってるよ」

「ならこれから八神の家でも行くか」

「「「「ちょっと待て(待って)」」」」

 

 クロノが本を掲げ、それを見た長嶋がそう言うと、ついてきた四人が一斉に待ったをかけた。

 だがそれで止まるような彼ではない。「全員そろってからだ」と一蹴し、伸びた天上を担いで飛んでしまった。

 

「……じゃ、行こうか」

 

 その言葉を漏らしたクロノは長嶋同様飛んでいき、残る四人も慌てた様に後を追った。

 

「あ。忘れてた」

 

 長嶋は天上を担ぎながら空中浮遊をしていたところ、思い出したかのように進路を変更する。

 その変更先にいたのは、やはりというかバニングスと月村。

 何故か動いた様子が見当たらない二人に首を傾げながらも目の前に着地し、声をかけた。

 

「おい」

「!? な、なによっ!」

「な、長嶋君!? ど、どうしたの?」

 

 慌てて反応する二人。その頬が赤いのは、厚着をしているだけではないだろう。

 無論そんな細かいことを気にしない長嶋は、「説明するからついて来い」と言って二人の間を通り過ぎたので、慌てて二人はついて行った。

 

「どこいくの?」

「八神家」

「……それって、すずかが最近知り合った子の家?」

「知らんが。多分そうじゃないのか?」

「多分て…」

「俺の知りうる限りじゃ、この界隈で『八神』という苗字は数件しかないから」

「なるほどね…」

「でも、長嶋君のこと知ってたよ? 『前と大分変ったんよ』って言ってたから」

「……なら、あいつしかいないな」

 

 そのまま歩いて行くことしばらく。

 天上がなぜここにいるのかという質問を軽く流し、目が覚めて騒ぎ始めたので引きずり、おとなしくなったから自力で歩かせたことがあったが、なんとか着いた。

 

「どこ行ってたの、一体…って、アリサちゃんにすずかちゃん!? どうしてここに!」

「長嶋、彼女達もいいのか?」

「どうせバレるんだったら別に」

「斉原にフェイト、それになのはまで」

「シグナムさんも…?」

 

 なのはたちと合流する形となった長嶋達。互いに言いたいことがあれど、この場は長嶋が支配しているせいか言葉を発しない。

 

「では行くか」

 

 玄関前に今回のメンバーが集まったことを確認した彼はそう呟き、指をパチンと鳴らす。

 その瞬間、彼がつい先程までいた小屋の前に、家の中にいたはやてにシャマル、ザフィーラにヴィータも一緒に転送された。

 

「な、なによこれ!」

「なんやこれ!」

 

 驚きで辺りを見渡すバニングスにはやて。

 その二人を無視する形で、長嶋は口を開いた。

 

「んじゃ、この本を直す前に種明かしと行こうか。二重三重とややこしくなった、今回の事件の全貌を」

 

 ――よく知ってる人間が見れば驚くほど自然な笑顔で。

 

 

 

 全員バリアジャケットを解除し、長嶋に至っては魔力まで封印した後。自分の笑顔で騒然となったことなどつゆ知らず、彼は説明を始めた。

 

「まず俺と斉原と高町とテスタロッサとハラオウン、そしてそこにいるシグナム、シャマル、ザフィーラ、ヴィータ。俺達は魔導師、あるいは魔法使いと呼ばれる類の不思議生物だ」

「ちょっ」

「それぞれデバイスと呼ばれる機械で変身し、自身に宿る魔力で魔法を使って正義のために戦う。俺はまた別だから俺以外の奴らだと思うが」

「それって、誰でもなれるの?」

「知らん。出会ってなければ高町はこんなことになってなかっただろうから、なろうとすればなれるんじゃないか?」

「色々審査があるから厳密には誰でも、という訳ではないぞ」

「だそうだ」

「そういえば、なしてシグナム達の事もその魔導師に挙げたんや? 確かに来たときは驚いたけど」

「今から説明する」

 

 そう言うと彼は小屋の中に入り、少しして三角脚のスタンドみたいなものを持ってきた。

 地面に置き、同じく持ってきたリモコンを操作したかと思うと、そのスタンドの先から全員が驚くような大きさの画面が現れた。

 ざっと五十インチぐらいだろうか。その画面には簡素な感じで『今回のあらまし』とだけ書いてあった。

 

 これについて説明する気がないのか、それとも時間が惜しいからか、進めて行った。

 

「全員が闇の書と言ってるが、本来これは天上に憑いている悪魔…強欲を司るマモンなどを呼び出すために必要な本だった。作者はルシファー。書いた本人も本に閉じ込められたため、人の手に渡った」

「ちょっと待って。それはロストロギアなんだ」

「それはこちら(人間)側の話。本来は神が忘れた、神に忘れられた道具たち――忘却神具と呼ばれるものだ」

「あーゴメン。さっぱり話が分からない」

「だったら口を挿むなよ斉原。ざっくりと理解するか、聞き流せば問題ない。言ったところで簡単に理解できるわけがないし」

「……あ、うん」

 

 このやり取りの間にいつの間にか画面は変わっていて、『神様と世界の簡単な関係』という題名の下に図解で神様と世界の関係が書かれていた。

 それを見たはやてが、首を傾げて呟いた。

 

「これ見る限りやったら神様ってホンマに居るんやと思うんやけど、普段どこで何してるん?」

「暇つぶしで世界に現れて俺達みたいにゲーム買って遊んだり、監視だけしたり、厄介ごとをけしかけたりして意地悪く眺めてたりしてる」

「なんでそんな詳しいん?」

「俺が神の遣いみたいな役割に不本意ながらなったからだよ。高町とテスタロッサは知ってる」

「どうなのよ?」

「う、うん。まぁ」「私達もお世話になったし」

「…そう」

「いいからさっさと進めろや。テメェの言葉がどういう事か、納得するところまで」

「少し待てマモン。…で、その人の手に渡った本は一回神が回収し、バックアップとなりうる本を残して原本を改造し無害なものにした」

「あぁ」

「だがそれは何者かの手によって盗まれた。バックアップごと」

「そうだ」

「バックアップはそのまま流されて段々と効力を失いつつ天上の家へ。原本は改悪されて人の手に渡った。それが斉原が言っていたこの本――夜天の書の正体だ」

 

 画面には、夜天の書の成り立ちを年表にまとめて表示されていた。




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