世にも不思議な転生者   作:末吉

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新年初投稿。色々ありました。


78:語り・知り・決断す

「…バカな。我々が守護していた元々が悪魔に関するものだった、だと…」

「うそ…」

「冗談言ってんじゃねェぞ長嶋!」

「……」

 

 ザフィーラ(ヒト型状態)を除き反論するヴォルケンリッター。だがそこへ、マモンが何の気なしに頷いた。

 

「あぁそうさ。じゃなかったら一度完成まで近づいた本の魔力を十一月下旬ごろにすべてにゼロにし、長嶋を殺そうとし、こんな風にここにいない」

「「「「!?」」」」

 

 周りは驚いて思い思いに視線を向けるが、長嶋はため息をついてつづけた。

 

「で、夜天の書はさらに人の手により改悪され、完成と同時に所有者と認めた人物を取り込んで破壊の雨をまき散らし、たとえそれを止めたとしても別な所有者へと向かうようになってしまった。これが闇の書……そうだろ? 斉原。ハラオウン」

「うん」

「ああ」

 

 絶句する女性陣。しかし彼は、そこに更なる爆弾を投下する。

 

「十年前に暴走は一度起きた。そしてそれはグレアム提督――はやての後見人の指示によって終わった。だが実際は、そんなことなど(・・・・・・・)起きなかった(・・・・・・)

『『!!?』』

 

 全員が驚いてる中、長嶋は淡々と、まるで物語を語るように続ける。

 

「起きたのは闇の書の遠隔起動。歪みに歪んだ結果悪魔の力がその本に潜み、それをもとに発動させただけ。そしてその犯人は、当時リーゼロッテ姉妹に憑りついていたマモン、おまえだろ」

「……あぁ。あの時までのその二人は、あの親父の力になりたいがために力を欲していたようだからな。って、なんでわかった?」

「お前ら悪魔は契約を自分で破棄してもそのあと(・・)が残る。それで操っていたんだろ」

「正解だ」

だが(・・)、真犯人はこいつじゃない。唆したのは、俺と高町とテスタロッサと斉原とシグナムが戦ったあの偽者の天使に指示を出したもの。誰だかわからないから、あの偽天使にでもしておくか。そいつらだ」

 

 そう言って言葉を区切り、長嶋は周囲を見渡す。

 驚き、困惑、理解不能……各々がそれぞれの反応を示していた。

 理解してない人たちに対し特に詳しい説明をせずに続けようと思ったところ、はやてが「それで、うちに回ってきたんか、その本」と先を促すような発言をしたため頷きながら答えた。

 

「俺にもよく分からないんだが…選定基準としては、魔力の高さじゃないのか? それか、お前の寂しさを本が感じ取っていたとか」

「……え?」

 

 彼の言葉が予想外だったのだろう。はやては呆けた。

 それを見た彼は「あくまで可能性の話だ。確証はない」と言いつつ、その根拠を述べた。

 

「今は闇の書となっているこの本。夜天の書の時点で管制プログラムが存在していたのだろう。その派生でシグナム達が作られた。彼女達は自分に足りなかったものと合致するような思いを抱いた魔力の高いお前を偶然選んだ……だと思う」

「…………そか。うちの願いを叶えるために来てくれたんか」

「あくまで可能性の話だがな」

「それでもええ。むしろ、それ以外の可能性は考えたくない」

「分かった」

 

 深くは言わずに長嶋は引き下がる。

 本当は、原作の流れに乗ろうとするなら彼女以外に本の所有者がいなかったからなのだが、彼はあえて(・・・)言わなかった(・・・・・・)

 まぁ勝手に納得してくれたみたいだしいいかと思いながら、彼は進める。

 

「それでだ。その真犯人の奴らの目的は、この本の完全なる所有者確定。つまり、これをお前――八神が持つこと」

「……そこだ長嶋。俺もその目的のために色々しようとした。あいつらの片棒を担ぐ感じだったが。それをなぜ、お前は止めた(・・・・・・)?」

 

 当事者、しかも今回のボス的役割を果たすはずだったマモンは、直球で質問する。

 書に縛られることを嫌っていた故に、完全になくなることは諸手を挙げて歓迎していたところなのだ。それを止められ、こうして説明会を開かれてることが、彼にとっては不思議でならなかった。

 

 マモンは続けた。

 

「お前が連れてきた小僧が言っていた『世界の破滅』はどういう意味だ? なぜそんなことが言えた」

 

 それに対し、長嶋は簡潔に結論を述べた。

 

悪魔の完全なる消滅(・・・・・・・・・)

「? それのどこが世界の破滅になるの?」

「……ハラオウン。後は任せた」

 

 フェイトの質問に対しいきなり説明をクロノへ任せ、自身は三角脚のスタンドの電源を切って小屋に籠ってしまった。

 任されたクロノは全員の視線が集まる中、ため息をついて答えた。

 

「僕もまだ良く分かっていないから長嶋が説明した通りに言うしかできないけど……死んだ後に魂は審判の門で裁きを受け、天国と地獄に二分される。ここの北欧周辺での死生観はそうなっているそうだ。どういう意味だか分からなかったけど」

「まぁ地獄で俺達の中の下位の悪魔が頑張って仕事してるらしい。俺は自由になって世界を渡り歩いていたから聞いた限りだが」

「……ちょっとまってクロノ」

 

 斉原が何を思いついたのかクロノの説明を中断させ、自身が今考え付いたことを彼にぶつけた。

 

「大智が言っていた世界の破滅。それってつまり、天国と地獄という世界があり、その間に僕達の世界がある。そのバランスが崩れた結果のことじゃないかい?」

「さすがだ雄樹。長嶋もそんなことを言っていた」

「どういうことなの?」

 

 あまり分かってない様子で質問してくるなのは。それは当事者であるマモン以外そうらしく、全員がクロノと斉原を見ていた。

 そんな中、マモンが不意に「……そういうことかよ!!」と体を震わせながら叫んだ。

 驚いて視線を向けると、悪魔らしからぬ態度で彼は説明した。

 

「俺達悪魔は一度、本の中に閉じ込められた。その本の縛りが緩くなったおかげでこうして自由に動けているが、結局のところ大本は、あいつが今持っている本に籠っていた悪魔の力――人々の醜い欲望。今の状況はバックアップなしであの本にのみしかない。そのまま所有者が確定されれば悪魔の力も消え、俺達悪魔の存在がすべて消えちまう。それが天使、いや偽天使の本当の目的だったんだ! そうすれば世界のバランスが崩壊し、お前達がどこにいようが関係なく……全員死ぬ。あの世界の出身の奴らは」

『!!?』

 

 女性陣が息をのむ。一方で斉原は「そんな大事になってたのか…」と呟き、クロノはそのまま続けた。

 

「その通り。だから長嶋は、あの本のプログラムのバグを完全修正して八神はやて――君に譲渡することにした。雄樹の願いも叶えるためにね」

 

 本当は渡すの困るんだけど。そう呟いていると、斉原は質問した。

 

「僕の願いって?」

「長嶋が言っていた。『八神が幸せな未来を送れるように力を貸してほしいと頼まれた』と」

「え…」

「雄樹…?」

 

 いきなりぶっちゃけられて言葉を失う斉原に、信じられないという思いで斉原へ顔を向けるはやて。

 事前に聞かされていた言葉通り、クロノは言った。

 

「君は惨劇を起こしたくないという願いと、彼女を助けたいという願いを叶えようとしていた。その気持ちをくみ取った長嶋は、今この両方を(・・・・・・)、いや、すべてを救うため(・・・・・・・・)にやろうとしている」

「えっ!?」

「な、なんだと!?」

 

 言ってることがピンと来ないらしい女性陣を無視し、斉原とマモンは驚きの声を上げる。

 彼らは理解したからだ。長嶋が行おうとしているのが、いかに無謀で欲張りなことか。

 闇の書による破壊とはやてにかかる心の絶望。それらを一切合財なくした上に、前世で己を殺した悪魔を助け、世界を救うのだというのだから。

 無論それは容易なことではない。どちらか一方――それこそ世界を救うことが優先され、個人の願いなど無視されるのが当たり前。

 だが長嶋は、はやてにかかる絶望の払拭も、闇の書による破壊も、世界を救うことも、等しく解決しようとしているのだ。しかも、独りで。

 

 次第にそのことを女性陣も気付いたのか次々と驚きの声を上げ騒がしくなるが、小屋から長嶋が出てきたとき一斉に静まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 静まった全員を見て、俺は首をかしげた。

 

「一体どうした? 説明が終わったか? こっちは準備が終わったぞ」

 

 さっきまで少し騒がしかったのだが、俺が出てきた途端に静まった。これに首を傾げないわけがない。

 すると八神が「おおきにな、大智」と笑顔で言うので、俺はますます首を傾げる。

 

「今からやることに礼を言われる意味が分からん。それに、説明が終わったのならちゃんとそう言え。ただでさえ現状の把握できてるかどうか怪しいんだから」

「……で? テメェはカッコつけるわけか」

「俺は俺ができることを、出来るようにやる。別にカッコつけてるわけじゃない。そういう意味では斉原のほうがカッコつけてるだろ」

「…あぁ、確かに」

「えぇ!?」

「で? お前はどうする? 天上との契約を破棄するか?」

「……ああ。破棄して、改めて契約しなおすさ。『お前が長嶋と並び立つまで一緒にいてやる』っていう内容でな」

「そのうち抜くだろ、あいつは。俺には与えられたものを生かすことしかできない。あいつは努力して得たものすら生かすことができる。そういうのを天才っていうんだよ……残念だったな、マモン」

「そうでもないさ……で? そろそろやるんだろ?」

「そうだった。長話などやってる余裕じゃなかった」

「……本当に変わったね、長嶋君」

「そうね」

「うん」

「そうだね」

「せやなぁ」

「はい」

 

「「「「「…………」」」」」

 

「さて八神」

 

 しんみりしたのでこれ幸いと思い、八神を呼ぶ。呼ばれた本人は少し間をおいて「なんや?」と聞き返してきたので、俺は尋ねた。

 

「あの本の戒めを解く。いいか?」

「それを解いたら、シグナム達はいなくなるんか?」

「やってみなければわからない。だから確約はしない」

「……分かったわ。よろしく頼むで」

「了解した。全身全霊を賭して修復しよう……だからシグナムを借りるぞ」

 

 そう言ってシグナムの方を見る。あちらは少し警戒してるようだったが、当の本人は毅然とした態度で「分かった。それではやてが助かるのなら」と答えたので、俺は他の奴らに「時間がかかるが待っててくれ」と言っておき、シグナムと一緒に闇の書を戻すための小屋に入った。

 

 さぁ、いよいよ大詰めだ。




闇の書が終了するまであと四話ぐらい…だった気がします。

ご愛読ありがとうございます。
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