世にも不思議な転生者 作:末吉
「さて。これでどうなるか……」
とりあえず先程まで使っていたものを消して様子を見ようと思った矢先。
「なら別な場所にせい。完全に修復できたんじゃろ」
スサノオがそう言うと同時に、あの場にいた俺達全員病院の屋上に来ていた。しかも、闇の書とその管制プログラムである彼女が輝いているまま。
全員が呆気にとられ驚いている中、こちら側でも変化が起こった。
「シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ!! あんたら、消えかかってるで!」
「……どうやら、お別れのようです」
「なんやて!?」
シグナム達が消えていくのを目撃した八神が嘘だと叫ぶので、ヴォルケンリッター達が何か言う前に俺は言った。
「水を差すようで悪いが、今から再起動するんだ。また会えるぞ」
「「「「「…………」」」」」
見事に黙った。うんまぁ、気まずいのは分かるが。
ちなみに、なぜ再起動すると分かったかというと、決定を押した瞬間に『データの修復が完了しました。再起動します』とパソコンみたいな文が表示されたからだ。そうでもなきゃ、俺も少しは勘違いしただろう。
……そういえば八神。
「一応、この四人の親といえる存在があそこで輝いているんだが……行かないのか?」
「え、嘘、マジで?」
「ほら行った行った」
「……なんか、長嶋君子供っぽくなったね」
「いや、今までが大人過ぎたんでしょ」
「私も母さんにあれ位甘えられたらなぁ…」
「というよりさ、僕達このままここにいていいの?」
「さぁな。知るかよ。俺は帰らせてもらうぜ」
マモンがそんなことを言いだしたので、俺は黒くなった本を取り出してそっちに向かって投げた。
「それが悪魔の力が宿った本だ」
「……借りだなんて思わねェぞ」
「天上と魂の契約するなよ」
「誰がするか。こいつの頑張りを邪魔するぐらいだよ、精々」
「さすが悪魔。やることが酷いね」
「君は君で結構悪魔っぽいことやってたよね」
「え、そう?」
「「「自覚がないの!?」」」
外野がワイワイやっているが、俺は八神の車椅子を押す。
八神のアレは斉原の言うとおり闇の書によるものだったので脚はもう大丈夫のはずなのだが、それを教えていないのでこのまま押している。
そのあとを消えかけながら続くヴォルケンリッター。
ある程度近づけた俺は、「もうお前、立って歩けるぞ」と八神に伝え彼女達から距離を置く。
それを信じてくれた八神は、自らの力で立ち上がって闇の書の意志へ近づいた。
*八神はやて視点
大智に言われた通り立ち上がれた。大智の言った通りに歩けた。
その事がめっちゃ嬉しいけど、今目の前で消えかけている家族の一員に説教せんといかん。
「……ちょい待ちや。何勝手に再起動しようとしてんねん」
『…主』
こちらに闇の書の意志が視線を向ける。
ってか、名前がややこしいわ。もうこの際うちがつけたる。
「うちは主やない。はやてや…リインフォース」
『それは、私の名前ですか?』
「当たり前や。今まで一度も会ったことなかったけど、シグナム達と一緒なんやからうちの家族やて」
『……ありがとうございます』
頭を下げてくるリインフォース。いや、家族なのになんで頭下げられなきゃならんのや。
少しばかりイラッとしたうちは、怒るのを我慢してリィンフォースの手を握って言った。
「なぁ、再起動したら戻って来れるんか?」
『……えぇ』
「なんでそない自信ないねん。そこは笑顔の一つでも見せて自信満々に『はい』やろ」
『…はい』
笑顔がぎこちないけどまぁええ。家族として信用したる。
そう思ったうちはリインの手を放して後ろを向き、シグナム達を見る。
こっちはこっちで哀しそうな顔をしてる。まったく。大智は再起動するためのお別れと言うたはずやのに。
ここでうちまで哀しい顔したらみんな泣いてまう。それに、またみんなに会えるんや。悲しい顔なんてせぇへん。
そう心に決めて笑顔で見送ろうとした瞬間、シグナム達は消えてしまった。
「え……」
思わず声が漏れてまう。もう一度会えると分かっていても、いきなり消えてしまうのはつらい。
知らず知らずの内に力が抜ける。それを見た雄樹がうちを支えてくれたけど、今は消えてしまったみんなにかけたかった声が掛けられなかったことに悲しんでいた。
シグナム。いつも何か手伝ってくれて助かったわ。もうちょい表情豊かやったらもっと良かったけど。
シャマル。家事のほとんどをやってくれてありがとう。料理以外は完璧やったわ。
ヴィータ。なんか妹が出来たみたいで楽しかったわ。ありがとう。
ザフィーラは……まぁペットみたいやったな。なんか癒されたわ。
……再起動しても、うちの事覚えててな。忘れてたら承知せぇへんで。
言いたかった言葉。すぐに再起動すると分かっていても、今までのお礼を。
けど言えへんかった。それが悔しかった。
「う、うぅぅ……」
「悲しんでいる暇はないよ、はやて」
「分かってる、分かってるけど……」
「だってもう、再起動は始まっているのだから」
「え?」
雄樹の言葉に慌てて後ろを向く。すると、夜天の書の輝きが増した。
「あ……」
ゆっくりと立ち上がる。雄樹がそれに合わせるように身を引いてくれたから、何のふらつきもなく立てた。
そのまま夜天の書へ向かう。一歩一歩確実に、地面を踏みしめるように。
うちは最初から最後まで何も関わることができひんかった。自分の身に起こっていることなのに、自分が所有していたものなのに。
そんなのはもう二度と嫌や。シグナム達がうちに隠れて何かやるのは。何も知らないところでシグナム達が傷つくのは。
せやから今度は八神家総動員でやれるよう、うちも魔導師とやらになる。なって一緒に笑ったり泣いたりしたる。勿論、雄樹や大智も一緒に。
そう覚悟を決めた時丁度書の前にたどり着いたので、うちはその本に手を当てて語りかけるようにつぶやいた。
「夜天の書――いや、リインフォース。起動」
『夜天の書。起動します』
その瞬間、うちを中心に巨大な円が現れた。
*
どうやら、起動に成功したらしい。凄いホッとした。
八神を中心に魔法陣が展開される。その四隅から四つの異なる色が出現し、それが消えていくにつれ先程のシグナム達の姿が現れる。
そういえば闇の書の意志――リインフォースはどうなっただろうか。管制プログラムだからあまり表に立てないのは納得できるのだが……。
そんなことを考えていると、八神がシグナム達にしがみついており、当のシグナム達は困惑しながらも嬉しそうだった。
とりあえず微笑んでいる斉原に近づいてどうなったか聞いた。
「シグナム達の記憶はそのままだったのか?」
「そうみたい。リインフォースが切り離したって聞こえたから」
「で、なぜリインフォースは現れない?」
「……それは」
そんな会話をしていると、八神が「何言うてるの!? 元に戻ったのになんで消えなアカンの!」と泣き叫ぶ声が聞こえたので、そちらに視線を向ける。
シグナム達が八神の後ろにいるせいで様子がうかがいしれないが、どうやらリインフォースは自分で消えることを決め、八神がそれを止めようとしているらしい。
なんというか、この世界の奴らって自己犠牲が多いよな。俺も人の事を言えた義理ではないと思うが。
「やれやれ……」
「どうしたのさ大智。立ち上がって」
「
「何を言ってるの?」
首を傾げた斉原を無視し、俺は四角い箱をポケットから取り出して八神たちの下へ向かった。
『短い間でしたが、言葉を……』
「何勝手に消えようとしやがる。せっかくプログラム直したのによ」
『「「「「「!!?」」」」」』
とりあえず時間稼ぎに似た形で会話に割り込む。案の定八神たちはこちらに向いたので、俺はリインフォースに近づきながら話し掛ける。
「八神は消えて欲しくないって言ってるだろうが。自分が消えれば万事解決ってか? そんなのは間違ってるっての」
『…私が居れば主はやては命を狙われる。それを回避するためなら――』
「だから、そんな物騒なこと起こるわけないだろ。仮に起こった場合、それこそお前が居なくて八神は大丈夫なのか?」
『そう信じてます』
「……ハァ」
面倒になったので八神に話を振る。
「なぁ八神」
「な、なんや」
「リインフォースが勝手に消えるそうだが、嬉しいか?」
「んな訳あらへん! 家族が消えるなんてとんでもない!!」
「なら、一緒に居て欲しいんだな?」
「せや!」
これで両者の意見が出そろった。
が、俺は初めから決めていたのでその意見が無意味だったりするのだが。
頑として譲らないという二人の間にいる俺は、四角い箱を掲げる。
「なんやそれ?」
「八神の意見を通すための魔法の道具……開錠」
事前に言われた言葉を口にすると、その四角い箱にひびが入っていき、壊れた。
現れたのは白い火の玉みたいなもの。ユラユラと燃えているように見えるが、実際のところは違う。
俺はそれをリインフォースへ向け、
『グゥ!』
「リイン! なにすんのや大智……って!!」
なんだというのだろうか。たかが倒れ込んだだけだというのに。
何故か周りに人だかりができたが、俺は気を失った。
「やっぱりこうなったか」
「――――っつ。ここは…」
「――私は」
聞き覚えがある声が聞こえて意識を取り戻した。といっても
起き上がって辺りを見ると、いつぞやに来た真っ白な空間。
俺は事情を把握していないのか困惑しているらしい彼女を無視し、声をかけてきた奴――仮面をつけている理事長に、「やっぱり計算通りだったのか?」と質問した。
「まさか。月読さんではあるまいし」
「あっそう……で? 何か用か?」
「その前に彼女に説明しようではないか。余程混乱しているようだから」
「…だな」
そう言って俺達を見ているリインフォースに視線を向ける。
あちらは少しばかり警戒した様子で訊ねてきた。
「私に何をした」
「こいつ――
「相変わらず簡潔に説明するね、君は」
「どういうことだ」
「だから――」
「私が説明しようリインフォース君。今大智が説明した通り、私は神様
「私を、人間に……?」
「驚くのも無理はない。ただのプログラムだった君が主と同じ人間になれるということ自体、奇跡に等しいのだから」
実際奇跡以上の事なんだがな。そう思いながら俺は「ついでに言うと、シグナム達ももうプログラムじゃないぞ」と付け足した。
途端に足から崩れていくリインフォース。その顔は信じられないとはっきり出ていた。
「う、そ……」
「まぁここから覚めれば実感するだろ」
「だろうな」
「う、うぅ…ありがとう、ございます……」
「礼は八神に言えよ。手段を持っていたから俺がやっただけに過ぎない」
「では大智。【対価】を払ってもらおう」
「!?」
「分かってる」
理事長に向き合ってそう言うと、リインフォースは信じられないという驚きから、どういう意味なのかという困惑に変わっていた。
それを理事長はご丁寧に説明する。
「人の器というのはただで作られるわけがない。神が気まぐれに作ったりするが、現状では転生する人数が増加しているから作る必要もない。そして本来は魂を元に肉体構成をしていくのだけど、今回は異例中の異例。その結果、長嶋大智に対価を払ってもらうことで一致したわけだ」
「もっとも、それを聞いたのはここ最近だがな」
肩を竦めていうと、リインフォースが俺に向けて怒った。
「なぜそこまでしてやる! 私にそんな価値はない!!」
「俺こそ生きてく価値はない。一度死んでるからな」
「なっ!?」
「これは内緒にしてくれ……っつても、死人に口なし。俺がこれで死んだら別にどういおうと、あんたの勝手だ」
「『人』になれたのにすぐ戻るか…何とも君らしい」
「終わりよければすべてよし。過程なんて、気にされなくなるさ」
「私はお前とあまりかかわってなかったが、その終わりの過程で関わった人たちはどう思うか分かるか!?」
「
「だったら!」
なぜか彼女が説得しようするので、俺は頭を掻いて答えた。
「だから、
「え…?」
俺の言葉が予想外だったのか呆ける彼女に「くっくっくっ……」と笑う理事長。
良く分かってなかったのかと思いながら、俺は説明した。
「悲しまれるのが分かってて誰が魂を渡すか。まだ生きたいと思ってる身だぞ、こっちは」
「いや……だったらさっきの会話は…?」
「演技」
「なっ!」
今度は目を丸くした。赤い目がよく見える。
スゴイ綺麗だなと思いながら、俺はそのまま理事長へ言った。
「だからさっさとやってくれ」
「管制プログラムがなくなっても大丈夫かね?」
「そこは大丈夫だろ。あいつが教えれば」
「それもそうだ……では【対価】をもらおう」
「ああ。持ってけ――
――――
いつもご愛読ありがとうございます。