世にも不思議な転生者   作:末吉

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約一ヶ月ぶりでしょうか。久々に更新します


82:記憶無き逃走

「見つけたよ、長嶋君! ……って、えぇ!?」

 

 変な輪っかに動きを封じられたが普通に壊し、声がした方へ向く。

 そこには、栗色のツインテールの少女が杖を持っていた……宙に浮いて。

 敵か味方か分からないが、おそらく拘束しようとしてきたところを見ると、敵なのだろう。

 見た目同い年のような気がしてならないからか、どうにもかみ合わない。

 ビルの下では喧噪。平和である証の人通りの数。

 にもかかわらず、こちらは静寂。まるで探り合いをしてるかのように。

 

 というか、こいつはいったい何者だ? どうして斉原と名乗った男と同様に俺の名前を知っている?

 

 そんな疑問を片隅で考えながらじりじりと距離をとっていると、後ろから気配がしたので思わず裏拳を入れる。

 

「キャッ!」

「フェイトちゃん!!」

 

 何かを吹っ飛ばした感じがあるけどどうでもよかった俺は、栗色少女がどこかへ行ったのを尻目に移動することにした。

 

「見つけたよ、大智」

「……さっきの…斉原だったか?」

「うちもいるで」

「…誰だ、お前」

 

 何か所か跳び移った時、病室で出会った斉原と名乗った男とその隣にいた似非地方語をしゃべる女がいた。その女は俺が首を傾げた時「ほんまに忘れてしもうたんか…」と悲しそうにつぶやいた。

 なぜこいつは悲しむ? 俺はあった記憶(・・・・・・・)などないのに(・・・・・・)

 とても理解に苦しむなんて思っていると、「悪いけど、おとなしく一緒に来てもらうよ」と言ったと同時に姿が変わった。

 

 が、その隙に俺は地上へ降りて人ごみに紛れ、そのまま流されるまま適当に歩いた。

 

 

「よぉ坊主。久し振りだな、元気してたか?」

「……?」

 

 とりあえず人ごみから脱出できたのでそのまま道のりに歩いていると、警官の制服を着た奴が親しげに声をかけてきた。

 前世で警察なんてロクに機能しなかったからこういう姿は新鮮なのだが、いかんせん誰なのか分からない。

 首を傾げたその姿を怪しいと思ったのか、その警官は俺の顔を覗き込んで質問してきた。

 

「なぁ。お前なんかへんじゃね? 記憶でも失った?」

「失うとか何の話だ。 俺はついさっき目覚めたばかりだぞ」

「……? どういう事だ?」

 

 その警官が一人で考え始めたので好機だと思い、その場を疾く立ち去った。

 のだが、それから少しして武器を持ったピンク色の髪の女が目の前に、身の丈に合った小さい槌を持った赤髪の少女が後ろに現れた。

 俺はやはり追われているようだ。貴重なサンプルだからなのか知らないが。

 しかし俺を追うように指示を出してるのはどこのどいつだろうか。どうにも年齢層にばらつきがあるのが疑問だ。

 

 まぁ関係ないか。とりあえず屋根に飛び移った俺は追いかけてこようとした二人を全速力で振り切り、そのスピードに任せて適当な場所へ行った。

 どうやらここは海が見える。大体の人の服装を見ていると季節が冬だというのが分かるので、入っている人間などいないだろうが。

 

 で、そんなことになっている理由は、海岸というか、港あたりに来てしまったから。

 まぁ適当に走った結果だな。体の至る所が悲鳴を上げたので少し休憩をしていたところだ。

 

 休憩しながら、今までの状況を整理する。

 

 俺を捕まえようとしている奴らは、どうやら以前会ったことがあるらしい。今起きたばかりだというのに会ったことがあるというのは、些か不思議だが。

 で、そいつらと一緒に俺は事件を解決したらしいのだが、それも起きたばかりなのに言われたところで首を傾げるだけである。

 

 つまり俺は記憶がない、もしくは俺がもう一人いて、それと勘違いしてるのかである。

 

 後者はあり得ないだろうから俺の記憶がない方が正確なのか……? と首をひねっていると、後ろから気配を感じたので振り向く。するとそこにいたのは、銀髪と茶髪で耳が生えた奴二人。

 腕を組んでる女と静かに構える男。対極的に見えるが、二人とも俺を捕まえる気満々のようだ。

 

 正直もう捕まってもいいと思っている。どうせ前世は死んでしまったし、今世では生きる目標なんてない。

 俺は彼女を殺してしまった。生きて会えることなどない。

 許されるとも思っていないし。

 

 思えば前世は散々な日々だったと思い返していると、「ようやく見つけたわよ、長嶋!!」という声を皮切りに集まる人々。

 

 先程囲んできたピンク色の女と赤髪のチビ、斉原と地方語もどきの女、栗毛の女とそいつに支えられている金髪の女、そして似たような金髪の女とおっとりしてそうな紫髪の女に金髪の女。

 他にも片目を隠すほど前髪が長い黒髪の女とか鮮やかなライトグリーン髪の女とかもおり、はっきり言って現状を察するに、追いつめられた犯人の心境である。

 

 が、俺は追い詰められてると思っていないので「……たかが俺一人捕まえるのに大変だな」と言っておく。

 

 その言葉に反応したかどうか知らないが、茶髪の不思議生物は「あんたが手間を掛けさせるからだ、ろ!」と踏み込んできたので、勢いよく押し飛ばした。

 もはや反射レベルの迎撃。加減はしているから命に別状はないだろうが、少なくとも激突によるダメージは大きいだろう。

 

 なんて思っていると今度は雷が降ってきたので払いのける。前世でも似たような経験をしてたために、その動作も自然に行えた。

 払った瞬間に消える。その瞬間飛びかかってきた者たちの顎を打ち抜いてその場に倒れ伏させ、残りを確認すると、気の強そうな金髪が近寄ってきて俺の頬を勢いよく叩いた(・・・・・・・)

 

「なっ」

 

 反射的迎撃を行えなかった自分に驚いていると、そいつは「なんで人の話を聞かないのよあんたは!」と怒鳴った。

 

 誰なんだこいつはと思う一方で、口からは自然に「すまん」と出ていた。

 

 それに驚いたらしいが気を取り直したらしく、「私に謝るんじゃなくて他の人たちに謝りなさい!」と再び怒鳴ってきたので、俺は地に倒れ伏している人たちに「悪かった」と言ってから、残っていた人たちにも頭を下げた。

 

「話を聞こうとせずに済まん」

 

 頭を上げる。

 するとそいつらの後ろの少し遠いところに人影が見えたので、俺はまた何も言わず地面を蹴ってそいつらを飛び越え、宙を蹴ってそいつに接近。

 

 視線が合ったような気がしたし、その気配に体が反応したゆえの行動。

 無意識的に刻まれたように動くその体に今の俺の意志はなく、俺に気付いたそいつが飛び退こうとしたところを掴みコンテナにぶつける。

 

「ガハッ!」

「……お前は…」

 

 我に返った俺はぶつけた人物を見て少し驚く。

 

「…夜刀神?」

「……久し振りに会ったというのに随分な挨拶だね、大智」

「お前、死んだんじゃ」

「あ、彼女達がこっちに来る。それじゃ、逃げようか(・・・・・)

「は?」

 

 死んだはずの夜刀神がなぜ実体を持ってこの場にいるのかわからないが、彼女に手を引かれるまま俺達は回廊の中に入った。

 

 

「で? お前はなぜ生きている?」

「まぁ一度殺されて短期で復活したら魂の消耗がやばいんだけど。そして最低あと五百年ほどは眠り続けなきゃいけないんだけどね」

「じゃぁなぜ」

 

 のんびり肩を並べて歩いてそんな会話をしていると、夜刀神が「説明したいけどその前に一つ聞くよ。僕は君の好きな人を乗っ取った上に殺させたんだ。恨んでないのかい?」と聞いてきた。

 

「恨んでないと言えばウソになる。が、それこそどうすることもできないだろ。もう戻って来れないのだから」

「そう……まぁ君も死んだしね。一度」

「あぁ…ところで、その身長は俺に合わせたのか、それとも回復途中だからか?」

「回復途中だからだよ。少しばかりずるい方法だけど」

「で、俺に何の用だ?」

 

 そう訊ねると、こっちに来なよと手招きされたのでおとなしく従って一緒に入った時に言われた。

 

君を捕まえに(・・・・・・)、ね」

 

 着いた場所は、石造りと鉄格子の牢屋だった。

 

「おい」

「じゃ、僕はこれで。見張りとかいるし、拷問とかかけられないから大丈夫。ただ僕的にはちょっと気に食わないかなーと思ったり」

「は?」

「ま、輪廻の隣で寝れるから、今となっては器の君が可愛がられようとかまわないと思ったりするけど…少しは、ね。助けは来るだろうからおとなしく待っててね~」

「おい! ……消えやがった。畜生一体どうなってやがる」

 

 急な展開に頭が辟易していると感じながら、とりあえず周囲を見渡して状況確認。

 

 ……見事に牢屋だ。隣にもあるのかどうかわからないが、鉄格子越しから見える景色は鏡のように映した牢屋。

 とりあえず手錠と鉄球をつけられなかったのは幸いだったか……? と座り込んで首を傾げていると、カシャンカシャンと音が聞こえた。

 狭いせいか周囲に反響する音が大きい。そしてこの音は鎧が擦れる音。

 

 となると甲冑あたりだろうかと当たりをつけながら、俺は警戒しつつ鉄格子から離れて壁近くへ移動する。

 カシャンカシャンカシャン……という音が鳴り響き、俺を通り過ぎようとしたところで立ち止まった。

 

 予想通り全身銀色の甲冑。武器は腰に差してあるロングソード。

 まるで新品同様な上に場違いなそれを着ている奴は、俺の方へ向き直り喋った。

 

「お前、頼まれた『商品』か」

「商品?」

「違った。『景品』か」

「そこら辺は知らない」

「まぁいい。出ろ」

 

 そう言って鍵を開けたらしく、カチャリと音が響く。

 

 ……何がどうなっているか知らないが、ここはおとなしく出るか。

 警戒心を緩ませ、俺はおとなしく牢屋から出た。

 

 甲冑の後を追うように歩く。そのことにそいつは何も言わない。

 どうも文章で話すことが難しいようだ。理由を聞いたら「俺、戦士。強ければ、いい」と返ってきたから。

 にしても、一体ここはどこだ? 牢屋は石づくり(しかも誰も入ってなかった)で地下。地上へ出たら王の住まう城みたいな中。

 しかしやたら廊下が長いな。いったいどのくらいの長さがある?

 そんなくだらないことを考えていると、「ここだ」と足を止められ扉が開けられた。

 

 その扉の先にいた人物達に俺は慄き、後ろへ一歩二歩下がってからその名を口にした。

 

「――ランスロット、雷神、ミカエル、ペルセウス……そして、ゼウス、オーディン……一体、なぜあんた達(・・・・)が」

 

 その問いに対し、白い髭を蓄えた見た目八十ぐらいの白い修道服を着た奴――ゼウスが答えてくれた。

 

「気まぐれじゃよ。今じゃお前の活躍を耳にすることが多いから――というのもあるが、実をいうと頼まれたんじゃ。このシステムを提案してきた奴からな」

「はぁ」

「なんでも――――お前の記憶を(・・・・・・)返すか否か(・・・・・)見極めて(・・・・)ほしい(・・・)、とな」

 

 ニヤリと笑ったその顔に、俺はそれだけじゃないと直感した。




これにて闇の書本編は終了し、ここから第三期までの間のオリジナルストーリーが待ってます。

ご愛読ありがとうございます。
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